ガストより2012年4月26日に発売されたPS Vita用ソフト「シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~」。いよいよ発売を迎えた本作について、ディレクターの土屋暁氏にインタビューを実施し、スタートから発売後の展開までさまざまな話を伺った。

「シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~(以下、シェルノサージュ)」は、“遙か七つの次元を越えた先に、本当に存在する世界”というコンセプトを元に、さまざまなゲームジャンル、そしてさまざまなハードウェアで展開するシリーズ「サージュ・コンチェルト」の第1弾として発売するタイトル。

発売前からその独特の世界観とゲームシステムから多くの反応があった本作、そして「サージュ・コンチェルト」の今後について土屋氏にたっぷりと語っていただいたので、その内容を紹介しよう。

ゲームをずっと遊べるコンテンツという発想とPS Vitaというハードが生み出した「シェルノサージュ」

――まず、本作のアイデアはどういったところから生まれたのでしょうか?

土屋暁氏
土屋暁氏

土屋氏:前回「アルトネリコ」(バンダイナムコゲームスより発売)というシリーズで私がディレクターをやっていた時、ゲームが「1」から「2」、「2」から「3」と続いていく中で、タイトルごとに大体1年以上のスパンがあることで、せっかく盛り上がってくれていたユーザーさんが、間が空くことで少しずつ気持ちが沈んでいってしまうのがもったいないと思っていました。

常に火を絶やさないようにというコンセプトの中、「アルポータル」というファンサイトをWEB上で展開し、毎週更新しながらキャラの掛け合いなどを入れて楽しんでもらうなど、「アルトネリコ」の世界でファンのみなさんが楽しんでいただける場を作っていたのですが、ゲームが終わるとお客さんもそこで「終わってしまったのか」と感じてしまうのかなという懸念がありました。

そうではなく、ずっとゲームの世界の中で遊び続けられるコンテンツを作れないかと考えていたとき、ネットワークが普及し、ユーザーさんのネットに対する親和性も上がっているご時世で、しかもPS Vitaがネットワークと順応性の高いハードであるということに注目しました。

そして、「アルトネリコ」が展開していたようなWEB上でのスピンアウトコンテンツではなくて、ゲームそのものでユーザーさんと交流しながらずっと続いていって、ずっと世界に浸っていられるものを作ってみたいと思いました。

――「アルポータル」のようなユーザーさんひとりひとりが深く作品に入り込むファンコンテンツはすごく面白いですし、それがゲーム上で楽しめるというのはファンにとっても嬉しい要素ではないかと思います。

土屋氏:ゲームとファンコンテンツの垣根を完全に取り払うといいますか、ゲームの中でのコミュニティやメッセージボードなどでユーザーさん同士で盛り上がってもらいつつ、スタッフとユーザーさんの中でもコミュニケーションをとりながらゲームそのものが成長していくといったことをコンセプトとして今回やっていきたいなと思っています。

――それは社内で共有するのも難しかったのではないでしょうか?

土屋氏:RPGなどの既存のジャンルでない時点でやっていること全てが冒険なので、やはり社内で意思疎通するのは大変でした。

――その後、開発がスタートするにあたって考えた点はありましたか?

土屋氏:初めての試みということもありましてかなり試行錯誤はしているんですけれども、まず考えたのが、「朝起きて少しやって寝る前に少しやる」といった具合に毎日少しずつ、ずっと継続していくかたちで、ライフサイクルの中にこのゲームが存在していて、PS Vitaの向こう側にいるイオンという女の子と1年間接していくというビジョンをユーザーさんと共有していきたいということでした。

それを実現するためにどういった内容がいいのかなと考えた時に、ゲームというよりはコミュニケーションツールという色合いが濃いほうが長く飽きずに遊んでもらえるんじゃないかと。その結果として、イオンとのコミュニケーションという部分と、TVシリーズのようなかたちで続いていくメインシナリオという部分を重点に置いたゲームのコンセプトに落ち着きました。

――先ほど、ネットワークの部分でも少しお話ししていましたが、ハードをPS Vitaに決めた理由はなんでしょうか?

土屋氏:最初、PS Vitaに関する情報が入ってきた時に、「ものすごくネットワークに強いハードだな」というのが第一印象でした。今回やろうとしていたことがネットワークを使ってのスタッフとユーザーさんのコミュニケーションであり、3Gもあるためゲームをサーバーに入れるということもやりやすかったので、いいなと思っていました。

あとは今もそうですが、当初からネットワークを使ったコミュニティをハードウェアとして作っていこうとしている感がありました。例えば、今SCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)さんがプレコミュ(※プレイステーションファンのためのコミュニティサイト)など、ネット上でのコミュニティを強化しようと頑張っていらっしゃいますが、PS Vitaはコミュニケーションという点において、ハードウェアもそういう目的で作られていると私は感じました。

そういった意味で、今回私たちが作ったソフトも同じファンの交流の場であったり、ファンがコミュニティを形成し続けてくれるというのを最終的なビジョンとして持っている作品ですから、これはハードとソフトの目的が合致しているなと思い、PS Vitaしかないなということで決めさせていただきました。

――当然ながら今回初めて開発するハードということで、苦労した点があればお聞かせください。

土屋氏:初ハードは苦労がつきものなんですが(笑)、一番大変だったのがハードウェア的なところでいうと使用できるエンジンやミドルウェアが絞られていることでした。自社でエンジンから開発するというのも現実的ではなかったので、一時期は暗礁に乗り上げた時期がありました。

そんなとき、CRI・ミドルウェアさんが、「これどうですか?」と、元々お願いしていたPC向けグラフィックミドルウェアを並行してPS Vita向けにも開発してくれて、それがゲームに搭載されています。

――同時進行ということは、ゲームにミドルウェアを載せたのも結構ギリギリだったのでしょうか?

土屋氏:それまでは上手くモデルが表示できなかったりしていまして、今のきちんとした画面になったのは、昨年末ぐらいでした。

「シェルノサージュ」では末期の世界が描かれる

――改めて、「シェルノサージュ」のコンセプトをお聞かせください。

土屋氏:先ほどの話とも重なるのですが、「シェルノサージュ」は元々ファンのみなさんと開発のコミュニティであったり、ユーザーさん同士でのコミュニティを形成しつつ、「サージュ・コンチェルト」という世界にずっといられる機会を作るツールとして、制作しています。

「サージュ・コンチェルト」は今後いろいろな手法で展開していく予定なんですが、その第1弾として「シェルノサージュ」が存在します。「アルトネリコ」とは全然違う今作の世界にスルッと馴染んで入っていただけるような作りを目指してやっています。

――本作の世界観についてお聞かせください。

土屋氏:世界と言ってもいろいろな時代がありまして、「シェルノサージュ」の時代では太陽が寿命を迎え、あと数年から数百年ぐらいで爆発してしまう状態で、惑星自体が危機的な状況にあります。「シェルノサージュ」は、そんな時代に住む人たちの物語となります。

星の磁場など、人が生きていくのが難しい環境の中で、人間が人工的に磁場を創りだして宇宙線を防いだり、それでも防げない時はシェルターに入ったりとたくましく生きていますが、ここでずっとそんなことをやっていてもいつかは太陽と一緒に滅びてしまうので、何か策を考えなくてはいけない。

そんな中、それぞれ別々の手法を用いてみんなで助かろうと打ち立てる2つの派閥ができました。一方が本作でもコンセプトとして登場する詩魔法を使って太陽自体を回復させようという派閥であり、もう一方がこの星を潰してそのエネルギーを使って空間に穴を開け、居住可能な惑星に移動しようという派閥です。

どちらかが優位に立つことでその方針を取ることになるだろうという状態で、方針を決めるのが皇帝となります。一方がイオンの派閥で、もう一方がカノンの派閥であり、どちらかが皇帝になることでそちらの手法が取られるため、皇帝の皇位継承の義のタイミングとなる本作ではものすごく重大な場面になります。そのお話の中でイオンがどのように進んでいくかが語られていくわけです。

――今作では星全体がひとつの国家になっているということなのでしょうか?

土屋氏:もう国とかがあるレベルじゃないんです。磁極ぐらいしか住める場所がなく、生き残った人全てが磁極に集まっているため、いろいろな民族、いろいろな文化が集まっていて街並みがごちゃごちゃしています。

――本作とは別に、もっと前の世界が描かれる可能性もあるということでしょうか?

土屋氏:ありますね。

――最初からクライマックスな展開なので、気になりました(笑)。

土屋氏:本作がラストの何年間ぐらいからスタートするので、ここがこの世界の歴史軸の中でもキーになるお話になります。

メインのストーリーが展開する“夢世界”と
コミュニケーションの可能性が広がる“現実世界”

――そういった世界の中で進行するゲームの大まかな進め方についてお聞かせください。

土屋氏:イオンの過去の記憶を取り戻すためには、“夢世界”と呼ばれる彼女の記憶の世界に入らなければいけないのですが、彼女の記憶の世界に入るためには彼女の心を癒さなければいけません。イオンが記憶を失っているのは、彼女が心に深い傷を負っていて、記憶を自分で閉じ込めてしまっているためで、それが夢世界の中の廃墟として表れています。

その廃墟をシャールと呼ばれる精霊が修復してくれるんですが、シャールを生み出すためには希望が必要で、希望をイオンの中に作るために彼女とコミュニケーションをとって彼女を元気にしたり喜ぶことをしたりします。

そうするとヒュムノポイントが溜まるので、それを使ってシャールを生んだり強化して、物語を進めるために廃墟を修復していきます。修復が完了すると、夢世界だけでなく現実世界に戻った時にもイオンの記憶が戻っていて、当時作っていたいろいろなレシピを思い出して、また作れるようになります。レシピを元にして彼女に制作をお願いすると、思い出の品ができて、それを使ってイオンとのデートが発生したり、新しい服を着てくれるようになったりします。その結果、イベントが発生し、盛り上がっていきます。

――廃墟修復がメインになるのかなという認識だったのですが、現実世界側でもいろいろな楽しみがあり、バランスがとれているように感じます。

土屋氏:イオンとのコミュニケーションが夢世界の記憶を解放していくのに大事ということなんですよね。もちろん、目的は廃墟を修復していくことなんですが、どちらかと言うと夢の中の廃墟を修復していくことはRPGで言うところのメインシナリオにあたる、ゲームを進める上で不可欠な部分だと思います。

それに対してイオンとのコミュニケーションパートは、実はやってもいいしやらなくてもいいんです。ただ、やったほうがスムーズに進みますし、最低限やらなければ進まない箇所もありますので、そういったいろいろな可能性を秘めていると思います。

――ユーザーによって遊び方の広がりがあるということですね。

土屋氏:デートイベントについても、起こさなくてもシナリオは進むのですが、起こすことによってイオンとの親密度が上がったりと得られるものがあります。

――プレイされる方はそういった部分も楽しみにしていると思います(笑)。コミュニケーションパートでのイオンの行動についてこだわった点はありますか?

土屋氏:イオンは向こうの世界で暮らしている子ですから、全て自分で考えて行動をします。何かを作ってほしいと言えば作ってくれたりはしますが、そうでない場合は、大体自分の好きなことをやって、ご飯を食べて、お風呂に入って、寝るというサイクルを繰り返していきます。

それは、「必ず7時に起きて、22時に寝る」といった時間割ができているのではなくて、眠くなったら寝るし、汚くなったらお風呂に入るし、お腹がすいたらご飯を食べるといった感じで結構気ままに生きている感じです。

なのでコミュニケーションをとらないでいると、24時間で生活はするものの、普通の人と同様、段々と生活のサイクルがズレていくこともあります。特に向こうの世界は昼も夜もあるのかよくわからない状態ですから。

そんな感じでお腹がすいた、疲れた、眠い、汚いなど「整理値」と呼んでる要素がたくさんあって、彼女が24時間サイクルで生活をするというかたちで作っています。

――完全に放っておいてもずっと生活を続けているというかたちなのですね。逆にユーザーが介入することで変わる部分はあるのでしょうか?

土屋氏:ユーザーが介入することで寝起きの時間も変わります。例えば、ある一定のイベントをこなすと添い寝できるようになるんですよ。

――添い寝ですか!?(笑)

土屋氏:ユーザーが添い寝したいと言うといつでもしてくれるようになります(笑)。普通に添い寝をしていると寝てしまうのですが、そうすると当然眠くなくなってしまい、大分生活のサイクルが変わってしまいます。あとは時間を決めてご飯を食べることもできるのですが、彼女がある程度お腹がすいてても待ってくれるので、ご飯の周期も変わってきます。

あとはユーザーとのコミュニケーションの中で、いくつかの趣向があるんです。例えば、地味好き・派手好きや辛党・甘党とかの趣向があって、それがユーザーの選んだ選択肢によって変わったりして、それが毎日着る服の変化にもつながっていきます。

最初のうちは服が少ないのであまり見られないと思うんですが、段々服が増えていくと派手な服ばかり着るイオンとか、地味な服ばかり着るイオンとかいった傾向が見えていくるようになります。

――本当に現実で接しているのと変わらないような感覚ですね。なんかドキドキしてきました(笑)。

土屋氏:非常に緩やかなので、普通の人がそうであるように昨日地味好きだったのが今日派手好きになるということはないです。なので気長にやっていると、いつの間にか「派手なものしか着なくなったな」とか感じれると思います。

――オンライン専用タイトルであることに対するユーザーさんの反応はいかがですか?

土屋氏:もちろん、期待しているユーザーさんもいますし、オンライン専用ということで躊躇されるユーザーさんもいますが、今回のコンセプトとして、オンラインゲームとはいってもほぼ極限までスタンドアローンでできるゲームでもあるんです。

例えばMMOとかの場合、パーティを組んだら必ず会話が発生しますよね。そういうのが嫌でやらない方もいますし、人とコミュニケーションを取るのが自分のゲーム観の中では無くていいと思う人にとっては、オンラインとなると「えっ?」となってしまうところもあると思うんです。

私もどちらかと言うとそちらの人間で、今回オンラインになった時に一番気を使ったところだったので、ユーザー同士でメッセージ交換や礼儀を正さなきゃいけないとかそういったところを無くして、すごく気軽なオンラインゲームというものを作ってみました。

言うなればTwitter的と言えるでしょうか。mixiのようなSNSでは必ず礼儀がありますが、Twitterではフォローするもしないも解除するのも自由ですし、なんかつぶやいたとしても必ずしも返事をする必要がないですよね。それと同じ感覚でコミュニケーションをとって、もう本当に取りたくない人は何も取らなくても遊べるものを提供したかったので、そういったシステムになっています。なので、気が向いたらなにかつぶやいてくださいというぐらいの感じです。

――最初はスタンドアローンでやっていても、少しずつ人と接していくというかたちもとれる点で、間口が広いですね。

土屋氏:ユーザー同士で互いのシャールに手伝ってもらうということもありますが、シャールが手伝うことでお土産をもらって帰ってくるだけだったりするので、「お小遣いもらってきたな」というぐらいの気持ちで、気が向いたら「ありがとう」とメールを出せばいいですし、気が向かなければそのままでもいいしという、ライトな感覚で遊んでもらえばと思います。

キャラクター・世界観を好きでいてくれるキャストを

――キャラクターについて、3Dモデリングを採用した経緯と、意識した点をお聞かせください。

土屋氏:いろいろと理由はあるのですが、イオンに関しては向こうの世界の空間内で生きていることを表現したかったので、3Dは前提でした。そこで、本作のいろいろな面で製作協力していただいているフライトユニットさんに、技術的にもいろいろ協力していただいて、「3Dでものすごくいい雰囲気のものを作ろう」ということで洗練させて、今の形に落ち着いています。

――フライトユニットさんとの協力関係は早い段階から組まれていたのでしょうか?

土屋氏:立ち上げ時期からになります。

――キャラクターデザイン等は、「アルトネリコ」でも携わっていたntnyさんがやっていらっしゃいますよね。

登場キャラクターのひとりであるキャス
登場キャラクターのひとりであるキャス

土屋氏:ntnyさんは「アルトネリコ3」では3Dモデルを一手にやっていらした方で、今回はキャラクターデザインから全てをやってくれています。

――イオンをはじめとしたキャラクターの性格や設定などで意識された点はありますか?

土屋氏:今回描かれている世界が、人と人のつながりであったり人情であったりといった下町のような部分というのを表現したいというところもあって、本当にそこで生きている人というのを想像できるようなキャラクター設定を心がけている感じです。

――ほかのキャラクターは現実世界で出てくることもあるのでしょうか?

土屋氏:ほかのキャラクターはイオンの記憶の中の人たちなので、夢世界でしか出てきません。

――そうなんですか!?…ということは現実世界の外はどうなっているんでしょうか?

土屋氏:それはまだ明かせません。まだ決まっていないとか、どうなんでしょうかと言うのではなくて、お楽しみにということで(笑)。

――今回キャストのオーディションでは最後に面接を挟むというあまり聞かない方法をとられたそうですが、その理由をお聞かせいただけますでしょうか?

土屋氏:ゲームの場合、収録って一発録りで1週間ぐらいかけて録っていくのですが、今回の場合、ずっと続いていくプロジェクトなのでその声優さんと1年とかずっとお付き合いしていくことになります。

そうすると、「仕事だから声を当てます」というかたちで割りきってやっていくと続かないと思うんですよ。せっかくこの世界に触れ合っていただける人ですから、キャラクターも好きでいてほしいし、世界観も好きでいてほしい、そしてやっぱり一緒にやっていて楽しい人で、とにかく一緒に面白いものを作り上げていこうという人がいいなと思っていました。

技術力だけで見たら、みなさん誰もがものすごく上手なのですが、それよりも大事にしたいものがそのキャラクターを好きでいてくれるとか、ものすごくこの世界に対して一生懸命に臨んでくれるということです。それは技量だけでは見れないので「すみません、面接をやらせてください」というかたちでお願いしました。

面接というか少しお話ししたり、世間話をしただけなんですが、そこでいろいろと思いを聞いたりしました。

――その結果として、フレッシュなキャストのみなさんが揃ったということなのですね。収録に立ち会った上での感想はいかがですか?

土屋氏:やっぱりよかったなというところですね。みなさん自分のキャラクターを好きでいてくれて、キャラクターについていろいろ話をしながら収録したりと、ただ単にこちらから言ったことに合わせるのではなくて、一緒にキャラクターを作っていくことができたのではないかなと思います。

――まだこれから収録されると思いますので、これからの収録ではより作品に馴染んでいいかたちでやれそうですね。

土屋氏:声優さんもキャラクターと一緒に成長していくというイメージでやっている感じです。

――Twitterなどでもキャストの方々とファンが一緒になって盛り上がっている印象があります。

土屋氏:キャストの方にもこの世界のコミュニティの中で、一緒に盛り上げる仲間として、活動してほしいと思いますし、ゲームの本編以外でもコンテンツとして出していくつもりもありますので、そういった意味でゲームの外も含めて「サージュ・コンチェルト」という世界があり、それも一緒に楽しんでもらいたいと思います。

「シェルノサージュ」、そして「サージュ・コンチェルト」の今後とは?

――WEB上に突如現れた「Mr.紅月」さんの登場やiPhoneアプリ「genomirai7」の配信などが水面下で展開されていて、それにファンが食いついてコミュニティで盛り上がっているように感じたのですが、その狙いをお聞かせください。

土屋氏:ゲームとよく言われるんですが、今回のコンセプトとして、「これはゲームではなく、7次元向こうに本当に存在する世界とつながるためのツールです」というところが前提として作られています。本当にゲームとして開発したのではなく、通信するツールとして開発したというところを、設定として現実世界に入れていきたかったんです。

だから最初の頃にやっていた7次元向こうの世界から送られてきた書類であったり、向こうの世界が見れるライブカメラであったり、つながるためのツールを作った人として「Mr.紅月」という男が存在していたりと、こちらの世界側にもあちらの世界の要素やキャストがいるというかたちで、ゲームの外側にもゲーム内アイテムがあるというところを見せていきたかったんです。

それはまだ継続していまして、今後ゲーム内で行われたことがゲームの外に反映されることをこの作品で積極的にやっていきたいと思いますし、逆にゲームの外で起こったこともゲームの中に反映されていくといった、ネットワークがあるからこその遊びをやっていきたいなと思っています。

――iPhoneアプリの夜の時間帯で出てくるURLにアクセスすることで謎のコードが出てきますが、あれは発売後に明かされるということなのでしょうか?

土屋氏:あれも設定に基づいたものなので、今後もいろいろとあるかもしれないです。

――すごく気になっていたので聞いてしまいました(笑)。

土屋氏:あれは気になっていてください(笑)。実は「genomirai」というのは、すごくこの物語の根幹の部分を担っているキーワードなので。

――発売後はダウンロードコンテンツ(以下、DLC)として、シナリオがどんどん足されていくかたちになっていますが、そのようにした理由がありましたらお聞かせください。

土屋氏:先ほどの話ともかぶるのですが、今回の作品は、ユーザーのみなさんと開発のコミュニケーションをものすごく重視しています。例えば「アルポータル」でやっていた「トウコウスフィア」(※ユーザー参加型の投稿コーナー)では、ファンの方々がいろいろと投稿してくれることによって流れが変わって、新しいコーナーができたり、キャラクターに何かをやらせたりしていました。そういったことをゲームでやっていきたいと思っています。

DLCには2種類ありまして、ひとつがシナリオパートで、有料でPS Storeで購入してダウンロードしていただくものです。そしてもうひとつが、イオンとのつぶやきのダウンロードパッチです。これはアップデートで毎月配信されていって、イオンのセリフがどんどん追加されていくものです。

イオンのほうは、ユーザーさんとの交流・コミュニケーションによっていろいろな要望が上がったりすると思います。そういうものを反映して開発のほうが「こういう意見が多かったからこういうのを入れてみようかな」「実装したものがこの日に配信決定しました」というかたちでブログで出してみたりして、ユーザーさんと一緒に作り上げていくものを開発としてやってみたいと思いまして、今回DLCという形式をとりました。

――そうすると、スケジュールも大変になってきそうですね。

土屋氏:そうですね。どれぐらいできるかというのもありますが、可能な限りやりたいと思います。

――それに前例もないかと思うのですが。

土屋氏:多分、全くないと思います。同じく分割シナリオみたいなものがあったとしても、どちらかと言うと月間で進行する物語というイメージだと思います。もちろんシナリオパートはそういったイメージになるんですが、そこに少なからずユーザーさんの声を混ぜた感じで成長していくかたちにしていきたいです。

――今のところは1年ぐらいの展開を考えている感じでしょうか。

土屋氏:まだ厳密には言えないですが、そのぐらいのスパンで考えています。

――「サージュ・コンチェルト」そのものが今後どういったかたちで展開していくのか、話せる範囲でお聞かせください。

土屋氏:「サージュ・コンチェルト」については、現在すでに「シェルノサージュ」から組み込みに入っているのですが、サーバーとクライアントを使ったクラウド的なシステムを使って、いろいろなハードやコンテンツでゲーム情報を共有することをやろうと思っています。

それで何ができるのかというと、仮にほかのハードで同じ世界を共有する違う作品が出た時に、アイテムの受け渡しができたり、シナリオや時間軸で整合性をとったりと、本当に向こうに存在している世界に対してどのハードからでも、またはWEB上からでも同じところにアプローチしているというのを作り出せるなと。

異なるメディアであったり、コンテンツで違う遊び方をしているゲームが、同じ世界につながっているからアイテムは共有しているとか、あとはこっちの世界でイオンはこの服を着ているから、こっちでも着ているといったように、本当に向こうに一個の世界があるということを表現していきたいです。そして、それこそが「サージュ・コンチェルト」という世界になっています。

クラウドという言葉が浸透してきた今だからこそできることだと思いますし、ネットワークを取り扱った時にやりたかったことのひとつではあります。

――今回の作品がその入り口になるというかたちでしょうか?

土屋氏:はい。ただ、先ほども少しお話ししたとおり、普通ゲームに登場するアイテムはゲームの中にしか存在しませんが、ゲームの外側にもアイテムが存在していたり、ゲームの外側にもアプローチがあったり、逆にゲームの外側から内側にアプローチをしたりということをやっていきたいです。

これはクラウド的な構想のひとつなんですよ。要はWEB上のサーバーとクライアントでデータを共有しているからできることなので。色々とアイデアを出しつつやっていきますので、今後の展開を楽しみにしていてください。

――最後に、ユーザーの方にメッセージをお願いします。

土屋氏:今回の作品はかなり冒険している作品で、今までのコンシューマゲームともネットワークゲームとも違ったゲームとコミュニケーションツールが合わさったものとなっています。そして、長くみなさんと一緒に現実とゲームを融合して楽しんでいけることをコンセプトに作っています。もし興味がある方は末永く一緒に遊んでいただけると嬉しいので、どうぞよろしくお願いいたします。

――ありがとうございました。

発売を迎える今でも、まだその全容の一部しか見えてこない「シェルノサージュ」。土屋氏は、その今後について、さまざまな考えを巡らしていることが今回の話からもうかがい知ることができた。ユーザー同士だけでなく、ゲーム開発者側も大きく関わることで進化していくであろう本作。発売を迎え、どんな驚きの展開が待っているか、その動きに注目したい。

シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~

ガスト

PSVitaパッケージ

  • 発売日:2012年4月26日
  • 15歳以上対象
  • オンライン専用
シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~

シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~ AGENT PACK

ガスト

PSVitaパッケージ

  • 発売日:2012年4月26日
  • 15歳以上対象
  • オンライン専用
シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~ AGENT PACK

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(C)GUST CO.,LTD. 2012

※画面は開発中のものです。

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