ガストより2012年6月28日に発売されたPS3用ソフト「アーシャのアトリエ~黄昏の大地の錬金術士~」。世界観の一新やゲームシステムの変更などにより、新たな可能性を見せた本作のプレイレポートをお届けする。

目次
  1. 新たな世界観の落としどころの難しさ
  2. よりわかりやすく舵取りしたゲームシステム
  3. 開発側の試行錯誤が垣間見える作品に

今回は、すでにゲームが発売済みであることも踏まえ、ある程度プレイしてみた現在、筆者が感じた部分を紹介していきたいと思う。ボリュームはやや控えめになっているが、参考にしていただければ幸いだ。

新たな世界観の落としどころの難しさ

本作を見ていく上で、まず注目すべきは、アーランドシリーズのどこか華やいだイメージから一変した、荒廃とした世界観だろう。それを体現した左氏によるイラストと、徐々に衰退を迎えつつある世界の中で、たくましく生きていく人々の物語が、シリーズのキーワードである“錬金術”をベースに語られていく。

物語は、薬を作って生計を立てている女の子・アーシャが、行方不明になった妹・ニオの手がかりを見つけるところからスタート。日常的なところでは、キャラクターの特徴を活かしつつ、コミカルな掛け合いを楽しむという、アーランドシリーズと同様の流れとなっている。

そして、ストーリーの進行部分については、限られた期間の中で妹を助けるという目的のため、時にはシビアな場面にも直面するが、助けだすまでにはコミカルなイベントも多数存在する。これを、従来続いてきたアトリエシリーズの魅力ととることもできるだろうが、本作の舞台を“黄昏の世界”と銘打ったこともあり、もう少し重苦しさを見せてほしいと感じる部分もあった。

ただ、シリーズが一新したことで、キャラクター数が肥大化せず、キャラクター間のやり取りがより密に感じられたのはプレイしていて楽しかった。アトリエシリーズの魅力を残しつつ、新たにプレイする人にとっては馴染みやすかったのではないだろうか。

よりわかりやすく舵取りしたゲームシステム

発売前から取り上げられていたゲームシステム面での変更要素は、調合と戦闘のマイナーチェンジだろう。

調合については、難易度が格段に下がったとは言いづらいが、調合のプロセスが見えるようになったこと、アイテムの使用回数の概念が消えたかわりに1回の調合に対する生成量が増え、調合用のアイテムをストックしやすくなったことなど、細かいところでの変更が光る。

加えて、一覧をアイコン表記にしたことなど、より視覚的な見やすさが増したことも好印象で、調合システムの大きな枠組みを変えるには至らなかったものの、より間口を広げるかたちでプレイヤーに楽しんでもらうことには成功しているのではないだろうか。

戦闘については、敵との距離や位置関係の概念を加えたことで、状況に合わせた戦闘のバリエーションが楽しめるようになった。これにより、キャラクターよりレベルの高い相手であっても、戦略次第では十分に立ち向かうことができる。

また、アイテム使用、サポートともに仕組みがよりシンプルとなっているなど、戦闘の難易度そのものは少し下がっている印象を持った。こちらも、従来のファンというよりは新規のプレイヤーを意識したものになっており、筆者の私感ではあるが、実際に前作までよりは、戦闘がスムーズに進むようになった。

開発側の試行錯誤が垣間見える作品に

全体的なところを言えば、開発側にアトリエシリーズファンと新しくプレイを始める人、双方への意識が大きく感じられ、その試行錯誤がゲームにも現れているという印象だ。特にアトリエシリーズファンは、過去作も遊んでいることから、より感じられる部分が多いかもしれない。

逆に、新規に遊ぶプレイヤーは、従来のアトリエシリーズの雰囲気を残しつつ、より遊びやすいかたちになっていることから、新鮮な気持ちでプレイできたのではないかと思うし、その点は、開発側の苦労が垣間見えた部分だ。

すでにインタビューでも伺った通り、ディレクターの岡村佳人氏には、この世界観を活かした新シリーズを今後も展開していきたいというビジョンを持っている。その新作が出るとき、どんなかたちでより双方が満足できるものを作り上げてくれるのか、引き続き本作のプレイを楽しみつつ、期待したいと思う。

想い出システムや採取の効率化など細かなところにも遊びやすさを意識したことが伺えた。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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