スクウェア・エニックスは本日8月11日、東京・銀座にあるヤマハホールにて「ファイナルファンタジー」シリーズ生誕25周年を記念したピアノリサイタル「PIANO OPERA music from FINAL FANTASY」を開催した。
「PIANO OPERA music from FINAL FANTASY」は、「ファイナルファンタジー(FF)」音楽の父とも呼ばれる植松伸夫氏の制作・総指揮のもと、「ファイナルファンタジーI~VI」の楽曲をピアニストの中山博之氏がピアノで演奏するスペシャルコンサート。
イベントが始まると、中山氏がまずは「プレリュード~オープニング・テーマ(FINAL FANTASY)」を披露。その演奏に来場者は静かに聞き入っていたが、曲が終わると盛大な拍手が沸き起こった。
中山氏が一曲目を弾き終えた後には、植松氏とMCを務める林暁代さんが登壇し、さまざまなトークを繰り広げた。そこで植松氏は、今回のようなコンサートを開いた経緯について「これまでにFF楽曲を使ったオーケストラコンサートなどは開催されていますが、ピアノソロはありませんでした。ファミコンの音源をリアレンジしたCD『PIANO OPERA』を制作しようとなったとき、生のピアノを聞いてほしいと思って企画しました」と語った。その「PIANO OPERA」のCDでは、リアレンジと演奏を中山氏が担当していることを改めて紹介していた。
トークの後は、「街メドレー」と「バトルメドレー」を続けて演奏。戦闘時の曲で構成されたバトルメドレーを弾き終えた中山氏は、激しい演奏に若干息切れしつつも「ボスをめちゃくちゃ倒したので、すごいレベルが上がったと思います」と演奏内容に合わせたネタを投下し、演奏に沸く会場で笑いも誘っていた。
この後は、少し長めにトークの時間が設けられ、トークテーマが書かれた紙を中山氏が引くという形で、さまざまな話が展開していった。そこでは中山氏の経歴も語られ、小学生の頃にはゲーム音楽を“耳コピ”して学校のオルガンで弾いていたのでヒーローになれたという、ちょっとしたエピソードも明かされた。
また、今回の東京公演の前には大阪でもコンサートが開かれており、大阪公演でのちょっとしたハプニングの話題も展開。そのハプニングは、リハーサルをしっかりと行っていたものの、本番では何百人と観客がいるため冷房が強くなってしまい、冷房の風のせいで譜面が勝手にめくれてしまったというもの。公演が終わっているからこその笑い話だが、その時は大変だったに違いない。
ほかにも、楽曲のリアレンジに関する話題も飛び出した。植松氏は曲を作る際、コンピュータで音を鳴らすため、実際に弾くときのことを考えていないという。そのため、リアレンジの際は演奏できるように一部をカットして難易度を下げるようなのだが、中山氏は極力それらを再現できるよう、かなり無茶と思える譜面で頑張っているとのこと。
さらに植松氏からは、スクウェアだった時代のエピソードとして、当時は銀座にオフィスがあったものの、銀座の家賃が高くて苦労したという。そのせいで当時は会社も大変だったようだが、坂口博信氏が「最後にもう一本やろう」といって生まれたのが「ファイナルファンタジー」だという。話の締めには「FFが生まれたのは銀座の家賃が高かったからです」と笑い話にして、会場からも笑い声が上がっていた。
なお、本イベントは二部構成となっており、トークも盛り上がりをみせていたが、前半となる一部では「反乱軍のテーマ」「仲間を求めて」「離愁」「幻獣を守れ!」「最後の死闘」も演奏された。
トーク時間が設けられていた前半とは打って変わって、後半の第二部では、一曲でも多く曲を聞いてほしいというスタンスで「魔導士ケフカ」「果てしなき大海原」「妖星乱舞」「ビッグブリッヂの死闘」が披露された。演奏の合間には毎回大きな拍手が沸き起こり、終始盛り上がりを見せていた。
イベントプログラムは以上となり、最後に出演者から挨拶が述べられた。そこで植松氏は、来場者に配られたパンフレットにもあるが「ファイナルファンタジー」シリーズ25周年を記念したコンサート「Distant Worlds THE CELEBRATION」の日本公演が決まったことが明かされた。会期は2012年12月、会場は東京と大阪になるとのこと。詳細については近日正式に発表する予定となっているので、公式サイトなどの更新情報をチェックしよう。
ちなみに、こちらはあくまで構想段階のようだが、今回のコンサートやCD「PIANO OPERA」シリーズの反応がよければ、同CDの「ファイナルファンタジーVII/VIII/IX」も制作したいと話していた。
そして最後の最後に、アンコールとして「ファイナルファンタジーV」の「はるかなる故郷」が披露され、イベントは締めくくりとなった。
セットリスト
第一部
1.プレリュード~オープニング・テーマ(FINAL FANTASY)
2.街メドレー(下記がメドレー演奏曲)
・街(FINAL FANTASY)
・街(FINAL FANTASY II)
・故郷の街ウル(FINAL FANTASY III)
3.バトルメドレー(下記がメドレー演奏曲)
・戦闘シーン(FINAL FANTASY)
・戦闘シーンI(FINAL FANTASY II)
・戦闘シーンII(FINAL FANTASY II)
・バトル1(FINAL FANTASY III)
・バトル2(FINAL FANTASY III)
4.反乱軍のテーマ(FINAL FANTASY II)
5.仲間を求めて(FINAL FANTASY VI)
6.離愁(FINAL FANTASY V)
7.幻獣を守れ!(FINAL FANTASY VI)
8.最後の死闘(FINAL FANTASY III)
第二部
1.魔導士ケフカ(FINAL FANTASY VI)
2.果てしなき大海原(FINAL FANTASY III)
3.妖星乱舞(FINAL FANTASY VI)
4.ビッグブリッヂの死闘(FINAL FANTASY V)
アンコール
1.はるかなる故郷(FINAL FANTASY V)
「PIANO OPERA music from FINAL FANTASY」イベント概要
会場:銀座ヤマハホール
主催:株式会社スクウェア・エニックス
後援・協賛:株式会社ヤマハミュージックメディア
出演:植松伸夫、中山博之
座席数:333席
出演者
植松伸夫(Nobuo Uematsu)
作曲家・株式会社ドッグイヤー・コレーズ代表取締役。「ファイナルファンタジー」シリーズをはじめ、数多くのゲーム音楽を手掛ける。「ファイナルファンタジーVIII」のテーマ曲「Eyes On Me」は1999年度第14回日本ゴールドディスク大賞でゲーム音楽としては初の快挙となる「ソング・オブ・ザ・イヤー(洋楽部門)」を受賞。
海外での評判も高まりを見せており、2001年5月、アメリカ「Time」誌の“Time 100:The Next Wave Music”にて音楽における「革新者」の一人として紹介され、2007年7月には「Newsweek」誌にて“世界が尊敬する日本人100人”の一人に選出される。
近年では日本国内をはじめ、世界各国でオーケストラコンサートや自身のバンド“EARTHBOUND PAPAS”によるライブイベントを開催し好評を博す。
中山博之(Hiroyuki Nakayama)
東京芸術大学作曲科卒業。TVゲーム「ブルードラゴン」「ロスト・オデッセイ」DS版「ファイナルファンタジーIII オープニング」のオーケストラアレンジのほか「ピアノ・オペラ ファイナルファンタジーI/II/III」「ピアノ・コレクションズ キングダムハーツ フィールド&バトル」などアレンジCD多数。
ピアニストとしても数多くの演奏会に出演。日本フィルとの共演や、映画・TVコマーシャル音楽のピアノ演奏、浅田真央選手がプログラムに使用した「カプリース」の演奏。また、ショパン生誕200周年の2010年には、NHKカルチャー主催のワルシャワ交流祭ツアーに参加。ワルシャワ・パリにてショパンを演奏し喝さいを浴びるなど、活動は多岐に渡る。現在NHK文化講座講師。
MC 林暁代(Akiyo Hayashi)
フリーアナウンサー。愛媛県の民放局を退社後、経済番組キャスターや、各種セミナー・イベントのMCを務める。2012年1月開催「Symphonic Tokyo music from SQUARE ENIX」でもMCを担当。趣味はゲームで、現在「シアトリズムファイナルファンタジー」をプレイ中。