マーベラスAQLよりいよいよ8月30日に発売されるニンテンドー3DS用ソフト『閃乱カグラ Burst -紅蓮の少女達-』。ここでは、発売を間近に控え、本作のプロデューサーを務める高木謙一郎氏にお話を伺った。
今回は、前作から今作にかけての開発の経緯やエピソード、『Burst』の由来や一番好きな“乳”といった小話や、さらに今後の情報が気になるTVアニメに関することなど、“爆乳プロデューサー”の高木氏に大いに語っていただいた。
――まず、『閃乱カグラ』というゲームを開発しようとした経緯をお聞かせください。
高木氏:元々、ずっと『一騎当千』という漫画のゲーム化タイトルをやってきて、個人的にも好きなタイトルだったのですが、3作目の『一騎当千 XROSS IMPACT(クロスインパクト)』が終わった段階で、次はどうしようかなと考えていました。
もちろん『一騎当千』を続けてもいい状況だったのですが、元々僕はゲーム業界に企画プランナーとして入ったので、当然オリジナルをやりたいんですよ。
『一騎当千』をやっていく中で、自分なりに「どうしたらみんなに好きになってもらうコンテンツになるか」という作り方を勉強させてもらいましたし、ニンテンドー3DSが発表された際にで「これ、こうしたらいけるんじゃないか?」というアイデアが生まれたのもあって、「ここはオリジナルで一度勝負してみよう!」と思って立ち上げました。
――3DSというとやはり「立体視」がポイントになっていると思いますが、ゲームを作る上で大きく意識されたのでしょうか?
高木氏:遊びに直接関わってはいませんが、今、世に広まらない、定着しないという新しいゲームが多い中で、ニンテンドー3DSにはずっと存在した技術ではありながらもそうそう触れたことのない人が多かった立体視に割と手軽に触れられるというキャッチーさがありました。そこがうまく“爆乳ハイパーバトル”の売りが合わさったなと。
――『一騎当千』に続いて、“爆乳ハイパーバトル”として展開することもその段階で決めていたのですか。
高木氏:“爆乳ハイパーバトル”というジャンルを定着させたいなと思い、『閃乱カグラ』も「これでいこう」と決めました。
――そして昨年9月に前作『閃乱カグラ -少女達の真影-』が発売されましたが、発売後のユーザーの反応はいかがでしたか?
高木氏:反響は予想以上でしたね(笑)。自分としては割と限られた予算と期間の中でいいものができたと思っていたのですが、この手のタイトルの販売本数が5万本、10万本といきなりいくことはそうそうないと思っていました。でも蓋を開けてみれば、5万本強の状態からスタートして、最終的には出荷9万本超えとなり、本当に予想以上でした。
――ゲームの魅力が伝わったのはもちろんですが、発表会やイベントの効果もあったのでしょうか?
高木氏:ゲームの中身も当然重要なのですが、『閃乱カグラ』というコンテンツを包む雰囲気、ノリを中心に作って、面白おかしくやりたいと思っていたので、そこが「いいぞ、もっとやれ!」な感じに受け取ってもらえたのかなと思います。
――前作での「あかひげ薬局」とのコラボドリンクも度肝を抜かれました(笑)。
高木氏:本当にシンプルに「面白いことをやろう!」と考えてやっています。ゲーム作りとはいえ、ビジネスでやっている以上、やはり金銭的な話になったりしがちなのですが、『閃乱カグラ』についてはそういうものをすっ飛ばして「面白ければやろう!」ということで進めていったので、作っていく人、売っていく人たちがその点を面白がってくれて、みんながいろんなアイデアを出してくれて、ひとつずつ実現していくというかたちですごく楽しいです(笑)。
――グッズ化やアニメ化などの展開は開発の段階ですでに考えていたものだったのでしょうか。
高木氏:そうですね。そもそも単純にゲームだけ出してもビジネス的には厳しそうだなというのは、なんとなく思っていました。当時はまだニンテンドー3DSも発売されたばかりでまだあまり普及していない状況だったので、漫画、アニメ、グッズなどを含めての『閃乱カグラ』というのを最初に作っていきたいなと思っていて、いきなりオリジナルで始めてアニメ化とか、割とハードルの高いことを本気で信じてやっていました(笑)。
――結果として、その流れにしっかりと乗っていったということですね。
高木氏:流れにも乗れましたし、アニメ化では『一騎当千』の時に一緒に仕事をしていた、同じような方向性が好きな仲間にたくさん集まっていただいたので、割とスムーズに決まっていきましたね。
――そうして大きな反響を得た中で、次回作への構想を持ち始めたのはいつ頃だったのでしょうか?
高木氏:発売して反響が出るまでは、発売本数的にもそこそこで、「一発ネタだよね」みたいな感じで言われちゃうのかなと、正直2本目は作れないかなと思っていました。結果、予想以上にたくさんの方に喜んでもらえたので、どんどんパワーアップさせていきたいと思い、発売後すぐに次回作の制作を進めていきました。
僕も開発現場のスタッフたちも、やりたかったもののやれなかったことがたくさんありましたし、発売後に寄せられたお客さんからの要望が、僕らの考えていたことと一緒でした。
――そうして生まれたのが『閃乱カグラ Burst -紅蓮の少女達-(以下、Burst)』ということになりますが、そもそも『Burst』というタイトルはどういう意味としてつけたものなのでしょうか?
高木氏:バストですよね(笑)。そこは何のひねりもなくやっています。
――なるほど(笑)。今作では前作で主人公たちのライバルとして登場した蛇女メンバーが主役ですが、蛇女側を掘り下げようと思った理由についてお聞かせください。
高木氏:蛇女メンバーを操作したいというファンからの要望に応えたいと思ったのと、脚本の北島行徳さんも僕自身も前作では描かれなかった彼女達の日常や出会いの物語をぜひ書きたいと思ったからですね。
――ゲームシステム面も大幅に改良を重ねていますが、そちらも開発の際にはかなり意識されたのでしょうか?
高木氏:やはり我々はゲームを作っているので、そこに手をつけずエロ一本釣りみたいなものづくりはしたくないなという気持ちはすごく強く持っています。
――その中でも特にユーザーが楽しめるように改良した点はどのあたりになるのでしょうか?
高木氏:前作の時からシンプルなアクションの気持ちよさというのは『閃乱カグラ』の特徴としてありましたが、よりそれを持続させることを意識しました。
前作だと敵を打ち上げて、空中で敵をふっ飛ばした後は、地上に降りるまではふわっとしか降りることができなくて、その間は時間が空いてテンポが途切れていました。今回は、攻撃しながら降下できるようになったことで、ぐるぐる回りながらコンボが途切れないというシンプルな気持ちよさをより強化していきたいなと。
あと敵がどうガードするか、どう反撃されるかというのがなるべくプレイヤーの思ったとおりに攻撃が当たり、理不尽に防御されたり、反撃されないといったことはなるべくやってみたいと思って、地味に調整を入れています。
――その他、本作を発売する上での課題はありましたか?
高木氏:一番苦労したのは、ニンテンドー3DSの初期の段階で作り始めたので、どうやったらそのスペックを引き出せるのかというところを研究しきれていなくて、前作を作った時にはもうメモリがぱんぱんです、これ以上なにか入れるとガタガタになります、という状態でした。
『Burst』を作るにあたって、当然技やエフェクトをより派手にしていくためには、ちゃんと一回ハードを掘り下げた上で積んでいかないと入らないという状況でした。前作部分も一回作り直していて、少し敵が増えていたり、エフェクトが増えていたりと調整しています。そんなにお客さんには大きく見えないところですが。
――ブログ上で拝見した前作部分の調整項目の一覧は凄まじかったです(笑)。ああいったところにも本作に対する熱い気持ちが伺えました。
高木氏:期間も長くはなかったので、最初はあまり調整するつもりはなかったんです。ですが、やはりやり始めたらやり始めたで欲が出ちゃって、「やっぱりあれやるべきだよね」というところは一通り調整しました。
――話は変わるのですが、個人的に一番お気に入りのキャラクターについてお聞かせください。
高木氏:一応僕は雲雀なんですが、10人全員が主人公みたいな感じに思っているので、あまり雲雀、雲雀言っていると「特定キャラをひいきするな」みたいな話になりかねないなと思いつつも、見た目だけで言えば雲雀です。僕、ピンクの髪の毛が好きなので(笑)。
――あと、個人的に一番好きな乳についてもお聞かせいただければと(笑)。
高木氏:乳はやっぱり…、(しばらく考えて)葛城じゃないですかね。
――どういった点がお好きなんでしょうか?
高木氏:八重樫さん(シリーズのキャラクターデザイナー・八重樫南氏)にキャラクターデザインをしていただいた時に一番最初に上がったのが葛城なんですよ。葛城の、シャツをはだけさせて前を開こうというのが出来上がった段階で、なんとなく『閃乱カグラ』を最終的にどういう方向に持っていくかというのが固まったんですね。そういう意味でもこの乳は最初から見ているので、とても気に入っています。
――思った以上にちゃんとした理由で驚きました(笑)。
高木氏:こういうバカっぽいことをやりながら裏で真面目に考えているというのが『閃乱カグラ』の魅力だと思います。
――そういう一見するとバカっぽい要素を入れることも、本作ならではのこだわりということなのでしょうか?
高木氏:今回、更衣室に新しく入れた機能も含めて、アイデア自体は誰でも思いつくことなんですよ。そういうのを恥ずかしがらずにストレートにきちっとやり切るということはすごく意識しています(笑)。
途中で恥ずかしがってやめちゃうとか、技術者根性が出て「こんなことに技術を使うべきじゃない」というスタッフはいないので、本当にまっすぐ直球を投げ続けることを『閃乱カグラ』ではすごく意識しています。
――実際に開発スタッフからのアイデアが多くゲーム内に採用されているのでしょうか?
高木氏:僕がなんとなく「マイクでスカートがめくれるべきだよね~」とか言うと、それにまたもっとこうしたほうがいいんじゃないかとみんなが意見を被せてくれるので、すごくやりやすいです。
言った通りにしか作らないスタッフとかもよくいるんですが、自分たちが『閃乱カグラ』を作っているんだという意識で作ってくれていると思います。
――本作では先着購入特典としてビジュアルブックやサントラの他、ドラマCDもつくということなんですが、そちらの内容についても簡単にお聞かせいただけますでしょうか。
高木氏:ゲームではやはりアクションゲームということもあって、シリアスな要素も多いです。
だからといって、ドラマCDを聴くときにシリアスな話をずっと聴きたいかといえばそうではない、漫画を読むときにシリアスな話ばかりだとつまらない、というところでメディアによって打ち出し方を変えていくという方法をとっています。そして、今回のドラマCDでは、とにかくバカな話をドタバタでやろうという感じになっています。
修学旅行などに行ったら、消灯後にヒソヒソ話をするじゃないですか。僕は女子たちがヒソヒソ話をしている真ん中で、寝ていたいなと思ってあの話にしてもらいました(笑)。そういうきっかけから始めつつ、終始バカバカしい内容になっています。
ゲームも3Dの立体視ということで、「ドラマCDでも立体的な要素を入れないといけないでしょ」というので、バイノーラル録音を前回から取り入れていまして、すごく好評です。
――2013年のアニメ化も発表されましたが、どういった内容にしていきたいかというビジョンはあるのでしょうか?
高木氏:まだあまり大きくは言えないのですが、ゲームをやっている人が「なんだ、また同じ話か」という風にはしないようにはしています。
――アニメ制作の方々と内容についてのお話もされているのでしょうか?
高木氏:ずっと毎週やっていまして、しっかりと進行しています。
――初見の人に対しても見やすい内容を意識しているのでしょうか?
高木氏:もちろんそれは意識しています。気軽に見てもらえると思います。
――ゲーム内のオープニングアニメで動くイメージはあるのですが、アクションだけでなく、日常的なところも多く描かれるのでしょうか?
高木氏:日常系が流行っているからというわけではないですが、そういうところを見たいという声は出てくると思いますので、そこは重視していきます。
――ゲームが発売されて、アニメが放送されるまでにいろいろなことをやってくれるのかなと期待しています(笑)。
高木氏:いろいろあると思いますよ(笑)。大なり小なりいろいろと面白いことを準備していますので、期待してもらえればと思います。
――『閃乱カグラ』への思い、そして今後に向けて、ファンの方々にメッセージをお願いします。
高木氏:自分自身がオリジナルで始めたタイトルなので思い入れは強いですし、好きなことなのでいろいろとアイデアが湧いちゃって、いろいろとやれて、それをみんなが喜んでくれているという状況がそれだけで素晴らしいことじゃないですか。
作り手も遊び手も、それを伝えてくれる人たちもみんなが面白がって楽しく生きていきましょうという感じで、『閃乱カグラ』に限らず、こういう方向性の作品をこの先も続けていけたらいいなとすごく思います。
遠慮せずにバカバカしい企画をみんなが持ってきてくれて、「これ面白いじゃん、ぜひやりましょう!」というのが理想だと思います。
みなさんも、ぜひ一緒に遊びましょう!
――ありがとうございました。
今回、話を伺ってみて、高木氏をはじめとした開発スタッフの「おバカなことを真面目にやる」というゲーム作りへの気概を感じるとともに、「みんなで一緒に楽しんでほしい」というゲームそのものにとらわれない柔軟な姿勢が垣間見えた。
いよいよ発売を迎える『閃乱カグラ Burst』はもちろん、おもしろい企画やTVアニメをはじめとしたメディアミックスなど、『閃乱カグラ』の今後の展開にますます注目したい。