1万本以上のゲームを所持しているゲームコレクターの酒缶さんが、ゲームアーカイブスで配信されているタイトルに携わった方々にインタビューを行う連載企画「ゲームコレクター・酒缶のリコレクションアーカイブス」。第2回目は、フューパックの藤島聡氏へのインタビュー内容後編をお届けします。
昔遊んで今でも遊べるあのゲームの開発者に話を訊きに行く「リコレクションアーカイブス」の第2回は、前回に引き続き「ルプ★さらだ」の開発者、フューパックの藤島さんに話を訊いていきます。
今回のリコレクター:藤島聡氏
フューパック代表取締役。制作に関わったタイトルは「キーパー」(SFC)、「美食戦隊 薔薇野郎」(SFC)、「るぷぷキューブ ルプ☆さらだ」(PS)、「ルームメイト~井上涼子~」(SS)、「となりのプリンセス ロルフィー」(PCFX)、「超神兵器ゼロイガー」(PCFX)、「できる!ゲームセンター」(PS)など多数。
酒缶:「ルプ★さらだ」は、カテゴリー的には原作ゲームになるじゃないですか。竹本さん作品原作の。
「ルプ★さらだ」
1996年8月30日にデータム・ポリスターがプレイステーション向けに発売したパズルゲーム。主人公「サラダ」は、おじさんの不思議な話の世界の人物になりきって、キューブをつなげて消すパズルに挑戦していく。ストーリーごとに別々のBGMが歌入りで流れることでも有名なゲーム。2010年9月22日よりゲームアーカイブスで配信されている。
ゲームアーカイブス版
http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0747npjj00457_000000000000000001.html
藤島氏(以下、敬称略):開発した経緯ですが、データム・ポリスターから竹本泉さんがCDを出したんですよ。で、「彼の絵でゲームを作れないか」という話が来て「でも予算はないよ」みたいな話だったので、「じゃ、低予算でこんなのはどうですか?」という感じで企画書を作りました。最初は普通に漫画版権はなく、男の子と女の子がいて、「メットマグ」的な普通のパズルゲームだったんですよ。それが、「竹本さんのキャラでこのシチュエーションだったらこの漫画にしたい」ということが、話し合いで決まりました。
酒缶:最初の案で男の子と女の子がいたということは、キャラ性能とかあったんですか?
藤島:いや、単純に遊び手の遊びたい側のキャラクターで遊べるくらいのノリで。サンシャインでやったゲームショウにROMを持っていくのに、データムに転がっていたCDの曲がバックに鳴るように入れておいたら、データムの筧さんが見て、「歌いいね、全部に歌を入れよう」と暴走し出して……低予算のパズルだったはずが(笑)。
酒缶:それで全面、シナリオに合わせて歌が入ったんですね。しかも、キャラクターのコスチュームも面のお話に合わせて変わるじゃないですか。
藤島:その辺は、お話は10話で10面ずつ作ることが決まった時に決まっていました。
酒缶:キャラに合わせてゲームを作っていたわけじゃなく、作りながら世界観に寄せていった感じなんですね。
藤島:でも、竹本さんからは世界観がどうとか、さらだはこんなことはしないとか、そういう話は全くありません。竹本さん、いい人だから、内心思っていても言わないので。
酒缶:それはそれで問題があるんですけど(笑)。遊んでいて曲が何度もリピートされると耳に残るのですが、ジャンプした時の「ぴょん」という声も結構耳に残りますよね。あれは「ジャンプをしたらぴょんだろう」みたいなこだわりがあったんですか?
藤島:まぁ、「キーパー」から習っている部分があるんですけどね。飛んだら「ぴょん」だろうと。
酒缶:曲と絵からすると、凄い緩いアクションゲームだと思って遊ぶ人が多いと思うんですけど。
藤島:元々は、ノリ的にはほとんど裏面みたいなことをやりたかったんですけど、この絵でそれはないよなって。
酒缶:(笑)裏面、難しいですよ。表面はどうにかクリアできたんですけど、裏面は途中で諦めちゃいました(笑)。
藤島:ネットに答えをモロに書いている人も多いので……でも、だいぶ優しくしたつもりなんだけど。
酒缶:難易度のあるゲームって、どんなに簡単にしても必ず振り落とされる人がいるからしょうがないんですけど……。「キーパー」と「ルプ★さらだ」には、ブロックが繋がると消えるという共通点がありますね?
藤島:「キーパー」は、ブロックを押したり引いたりしたときのタメとか動きに感心したんですよ。それを「ルプ★さらだ」を作る時にだいぶ参考にさせてもらっています。
酒缶:でも、視点が全然違いますよね。重力的なものもありますし。
藤島:「キーパー」のパズルモードは5×5マスだったので、「ルプ★さらだ」でも、キャラを大きめにして、なるべく小さな枠で面を作りたいと思ったんです。こういうパズルゲームは、もっと難しくしようとしたら、ワープとか梯子とか、ジャンプをするギミックを入れるとかすると、ゲームのバリエーションが出るのかもしれないけど、直感的にわかりにくくなるので、そういう要素は入れないという点にこだわりました。
酒缶:ビジュアル的に簡単に見えるので、ちゃちゃちゃっとゲームを進めてしまうと、いきなり立ち止まる瞬間があって……この手だとダメだったんだって。
藤島:PS版は1手だけ手を戻すことが出来ます。
酒缶:1手じゃ済まなくて(笑)。
藤島:DS版は無制限に戻れますし、いい悪いはさておき、表面はずっとヒント機能を押しっぱなしにしているだけでクリアできちゃいます。
酒缶:時代がどんどん初心者保護の方向になってますね。
藤島:PS版もリトライする回数に応じてヒントが見れるようになっているので、そういう意味でも優しくはしたつもりなんだけど。
酒缶:ちなみに当時のこのゲームの評価はどうだったんですか?
藤島:厳しいですね。好きな人は好きって感じですね。あと、洗脳ソング的にも。
酒缶:確かにそっちで有名になってます(笑)。今後のゲームとの付き合い方というのをお訊きしたいんですけど。
藤島:ま、今のような感じですよね。その時代に沿ったモノ。その時代に媚びたモノという意味じゃなくて、その時に面白いと思うものを遊びたいし作りたい。それがどういうものか、というのはわからないけど。
酒缶:今は特に表に出せる状態のモノはない?
藤島:こういうのをやりたくて燃えているんだというのは正直なくて、個人的にはパズルが作りたい、シューティングが作りたい、というのはあります。それでごく一部の人が喜ぶかもしれないけど、もっと喜ぶ人が多いモノを作れればいいですよね。
酒缶:じゃ、いろいろと露出できる機会がいっぱいあって、人がいっぱい見てくれる機会があれば、パズルやシューティングを作る風になる?
藤島:なんか上手いことが出来ればな、と思いますね。
酒缶:やっぱり、パズルとかシューティングが好き?
藤島:好きですよ。
酒缶:他のジャンルは?
藤島:RPGもやったし、シミュレーションもやったし音ゲーもやるし、わりとなんでもやるんですけどね。
酒缶:一番やりたいところはシューティングやパズル?
藤島:作りたいのはそうですね。遊ぶのもパズルは好きですね。たまに「倉庫番」とか売ってないか探しています。
酒缶:「倉庫番」って、最近はあんまり聞かないですね。そういえば、「キーパー」は「倉庫番」ライクなところはありますよね。
藤島:パズルモードにはそういうところがありますけど、「倉庫番」も単に広いマップではダメなんですよ。狭くてトリッキーな面が好きだったので。
酒缶:かなりロジックを積み重ねて。
藤島:そういうのが解けた瞬間に脳内物質が出る、あの瞬間が。
酒缶:なかなか今は難しいタイプのゲームですよね。
藤島:いや、やりようだと思うんですよね。「ぷよぷよ」でも、大連鎖した時に、自分が考えて組んだモノじゃなくても、気持ちよさがあるし、パチンコでもスリーセブンが揃わなくてずっと回していてやっと揃った時の気持ちよさとか、あるじゃないですか。
酒缶:はい。
藤島:そういうのが、なんか。パズルとはちょっと違うんですけど、考えて、考えて、考えて、解けた時の気持ちよさとか、「ルプ★さらだ」でも、2chの書き込みを見ながらプレイしてでも、一度スポッとはまるプレイをすると、続けてやってくれるんですよ。音ゲーとかもそうだし。そういう気持ちよさみたいなモノを作らないといけない、と最近感じています。
酒缶:では、最後の質問なんですけど、あなたにとってゲームとは何ですか?
藤島:今のところは本当に人生ですよ。
酒缶:もう、日常全部ゲームですか?
藤島:そうですね。ゲームじゃないことが考えられないくらいゲームですよ。でも、ゲームを作っている人ってみんなそんなもんじゃないですか?
酒缶:どうなんですかね。最近は、だいぶビジネスライクな人もいるじゃないですか。
藤島:そうなんですよね。逆にビジネスライクにできれば、もうちょっとうまくいっているかもしれないです。自分も。
酒缶:(笑)。でも、ボクはビジネスライクじゃない人の方が好きですけど。それで上手くいくといいんですよね。
藤島:本当はね。ただ、ゲームというものが90年代の不景気の時に不況知らずだったのは、作り手が楽しんで作っていた人が多かったし、コンパイル時代なんかもそうですけど、昔はちょっと考えて、「こういうのが作りたい」というところからゲームを作れていたのが、今では、他の会社の方の話を訊いていると、仕様書通りにプログラムを作るだけ、という仕事になっていて、それは自分には無理かな、と思っています。
酒缶:色々と制約がありますからね。でも、藤島さんは今後もゲームを楽しんで、作って、ゲームの世界にどっぷりと浸かって……。
藤島:作っていること自体がゲームをやっているようなもんなんですよね。
酒缶:いいクリアの仕方があるといいんですけど。
藤島:いま、ハードモードなんで(笑)。難易度の高い面なんです。
酒缶:難易度を落とせないんですか?
藤島:先に進むと更に難易度が上がるのかもしれないです。
酒缶:そして、ここでクリアすると気持ちがいい。
藤島:そうそう。そろそろボーナスステージですよ。
酒缶:それは楽しみです。わかりました。ありがとうございます。
訪問後記
今回は1回目ということで、Twitterでやり取りをしている藤島さんに登場していただいたのですが、取材時間を2時間でお願いしていたのに、積もり積もった話を約4時間もしてしまったので、いずれ改めて取材内容を電子書籍でまとめてみようと思っています。世代が違ってもゲームが好きな人との会話は本当に好きなんですよ。次回は計画的に……次回もよろしくお願いします。
●プロフィール
酒缶(さけかん)/ゲームコレクター
1万本以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。ニンテンドードリームにて「酒缶が訪う」連載中。最新作は3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」。
■公式サイト「酒缶のゲーム通信」
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http://twitter.com/sakekangame■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション1」
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