ユービーアイソフトが、本日10月11日に発売したPS3/Xbox 360用ソフト「ロックスミス」。ユービーアイソフト サンフランシスコでプロデューサーとして本作を開発した肥後直巳氏にインタビューを行ったので、その様子をお伝えする。
本日、日本での発売が開始された「ロックスミス」。海外では約1年前に発売されており、本物のギターをコントローラーの代わりに使用するという斬新な発想が受け入れられ、すでにミリオンセールスを達成している。
今回は、ユービーアイソフト サンフランシスコで本作の開発を行なってきたプロデューサー・肥後直巳氏に、「ロックスミス」がなぜ生まれたのかなど、興味深いお話を聞くことができた。
音程解析技術を使っておもしろいことをやってくれ―その一言から「ロックスミス」は生まれました
――まずは、肥後さんご自身について教えてください。いつもはサンフランシスコにあるユービーアイソフトの開発スタジオにいらっしゃるのですよね?
肥後直己氏:はい。いつもはサンフランシスコにいますが、今回は日本での発売に合わせて帰国しました。
以前はユービーアイソフトの大阪・名古屋の開発スタジオにも在籍していたのですが、バイリンガルなプロデューサーが必要になり、日本とサンフランシスコを2週間おきに往復するような形で、1年半くらいゲームのパブリッシングを中心に行なっていました。
ただ、それだとすべての面でキツイぞ、と(苦笑)。ですので、今はサンフランシスコを活動拠点にしています。
――パブリッシング中心とおっしゃいましたが、サンフランシスコでは開発は行なっていなかったのですか?
肥後氏:当初はサードパーティによるタイトルの北米向けパブリッシングが中心だったのですが、サンフランシスコにもゲームが作れるスタッフがいたので、せっかくゲームを世に出すのなら内部でも開発してみようという意見があり、サンフランシスコでも内部開発を始めることになりました。
――では、開発体制の立ち上げメンバーということですね。
肥後氏:はい。自分とディレクターのポールという者が中心となり、まずは1本ゲームを作ることになりました。その時は、2人で真剣に話し合って、かなり自信のあるアクションゲームの企画を作ったんですよ!
ただ、それと同時期にユービーアイソフト サンフランシスコは、ギターの音程をソフトウェアで解析する技術を持った「ゲームタンク」という会社の買収を決定していました。
そんな折、僕とポールが自信作の企画を社長にプレゼンしたところ、「うん、すごいおもしろい企画だね! 素晴らしい! でも、一旦これは横に置いて、まずはこのシステムでゲームを作ってくれ!」と提示されたのが、前述の音程解析の技術でした。
――すごい展開ですね(汗)
肥後氏:そのミーティングの時は、ポールと2人で目が点でしたよ。「はぁ……………え?」みたいな感じで。ミーティング後、「君、ギターの弾き方って知ってる?」と2人で顔を見合わせたのを、今でも鮮明に覚えています。
――肥後さんは、ギター経験者ではないんですね!?
肥後氏:実は「ロックスミス」に関わるまでは、まったくギターに触れたことすらありませんでした。ですので、ギターの知識がまったくない2人がギターに関する技術をゲーム化し、しかもヒットさせる。それはもう、途方に暮れましたよ。弾き方どころかギターの持ち方、構え方も知りませんでしたので。
でも、悩んでもどうにもならないので、完全に開き直って「ギターの経験も知識もまったくない自分たちでも、ギターを使ってプレイできるソフトを作ってやろう!」と思ったことが、「ロックスミス」が生まれたきっかけですね。
――海外ミリオンヒットの「ロックスミス」が生まれた瞬間ですね。では、まったくのギター初心者に対するフォローはかなり手厚いのでしょうか?
肥後氏:もちろん! ギターの持ち方からフレットの押さえ方、ピッキングの仕方(音の出し方)など、基礎の基礎からチュートリアルで覚えられます。ネットで調べないといけない内容があった時点で、失敗だと思って作りました。
さらに、基礎から教えるのだったら、教え方自体を一から構築し直そうとも考えました。ギターは歴史のある楽器ですし、教え方もすでに体系だったものがあります。非常に有名なのが、タブ譜です。タブ譜というのは、一般的な音階を記した五線譜ではなくて、ギター弦に見立てた6本のラインの上に、押さえるフレットの数字を記した、世界でもっとも使われているギター用の譜面です。
開発当初、ゲームタンクが最初に持ってきた技術デモは、このタブ譜が画面の横からダーーっと流れてくるものでした。そのデモに触れた時には、正直「これじゃ一生ギターなんて弾けないな」と感じました。スピードは早いし音数は多いし…初心者には絶対に無理ですよね。
そこで、初心者にもわかりやすいインターフェースを作ろうと思って構築したのが、「ロックスミス」で取り入れた「指板を画面に映しながら、該当する弦とフレットに向かって流れてくるマーカーに合わせてタイミングよく弦を弾く」という形です。
ただ、この形にするまでには、開発に携わったギタリストたちから相当な反対意見があったのも事実です。やはりギタリストはタブ譜に慣れ親しんでいて、それが一番わかりやすいと感じるものらしいです。
でも、タブ譜はあくまで紙に書き記す場合に最適な表現です。「ロックスミス」は紙ではなくインタラクティブなゲームなので、必ずしも既存の表現にとらわれる必要はないですし、いわゆる音ゲーに慣れている人であれば、おそらくインターフェースを見ただけで直感的に理解できると思っています。
――ここまでお話を伺っていて、1つ疑問があります。肥後さんは「ロックスミス」をゲームだと思っていますか? それとも、ギター練習用ソフトウェアだと考えていますか?
肥後氏:実は、開発にあたってポールや開発スタッフと決め事をしました。それは、本作に対して「チュートリアルソフト」や「ラーニングソフト(学習ソフト)」という言葉を使わない、ということです。
学習用ソフトは何かを覚えるためのもので、一概には言えませんが、ゲームとしての面白さは念頭に入れて作られていません。なので、そういったイメージを払拭したくて、プロモーションにおいても「学ぶ」という言葉は使わないことにしていました。
――でも、実際にはかなり「学ぶ」ためのソフトという印象を受けます。
肥後氏:正確には、学ぶのではなくて「自然に身につく」ですね。その点は開発において一番意識した部分でもありますし、本作にとって重要なポイントだと考えています。学ぶためではなく、遊んでいたら自然にギターの基礎が身につく。教えられるのではなくて、ゲーム感覚で遊んで、気付いたらギターが弾けるようになっている。それが開発におけるコンセプトでした。
――たしかに、インタビューに先立ちギターケードというミニゲーム集をプレイしましたが、遊んでいるだけで手がギターに慣れていく感覚でした。
肥後氏:そこです。ギターケードには、対応する弦とフレットを弾いてアヒル型の敵を打ち落とすゲームや、指板の上に指を滑らせるスライドというテクニックを使ってプレイする落ち物パズルなどがあります。
それを楽しんで遊んでいるだけで、自然に手や指がギターの大きさやネック、フレットの感覚を覚えられるようなデザインになっているんです。ミニゲームには難易度が設定されていて、実用的なコードを使ったミニゲームなども登場します。
それらの多くをプレイできるようになった頃には、おそらくギターに触れたことすらなかった人でも、なんとなく曲が弾けるようになっていると思いますよ!
――ギターに対する初期段階の抵抗を、ミニゲームによって和らげるという感じですね。
肥後氏:自分もそうだったのですが、ギターに触れたことがない人は、おそらく最初にギターを弾いた時、とにかくイメージ通りに音が出ないという経験をするはずなんです。
なんとなく、見よう見まねで音は出しているけれども、曲に音は合ってないし、すごく下手だと感じてしまうんです。それで一気にモチベーションも下がり、投げ出してしまう人もいます。
――最初から何かの曲を弾こうとすると、そうなりますね。
肥後氏:それならば、まずはギターを楽器として使うのではなくコントローラーとして使って、フレットを抑える、弦を弾く、というギターの基本動作をゲーム感覚で遊んだほうが楽しいだろうという発想ですね。
おそらく、この発想は自分自身がギターに触れたことがなかったからこそ、生まれたのだと思いますし、そういった発想が北米のギター初心者にも受け入れらているのだと実感しています。
――では、収録曲についてお聞かせください。どのような基準で収録曲を決められたのでしょう?
肥後氏:まずは、チューニングがもっとも基本的なスタンダードEで弾ける曲を優先的に選別しました。ギターにはさまざまなチューニングがあるのですが、その変更を初心者にさせるのは、無用にハードルを上げることになるのでカットしてあります。
次に、さまざまなチューニングの中でも一番変更が簡単なドロップDの楽曲です。これは、6弦だけを一音下げるチューニングです。これくらいであれば、本作に搭載されているチューナーを使えばすぐにチューニングを変更することができます。
あとは、基本的な奏法以外にアクセサリーを使う楽曲は除外してあります。例えば、スライドバーやギター全体を移調するカポタストを使用するものなど、アクセサリーがないと弾けない楽曲はプレイヤーのみなさんに出費をさせてしまうことにもなるため、今回は収録していません。
――とはいえ、それでも世の中の楽曲は相当数ありますよね?
肥後氏:上記を選別した段階で、2000曲くらいの候補が残りました。そこからは、遊びやすい曲だったり、弾きやすい曲、ギターの基礎を覚えるのに最適な曲、という基準で選別していきました。
楽曲ごとにカテゴライズして「この曲が弾ける=この技術が身に付いている、ならこっちの曲ならもう少し難易度が上げられるだろう」など、試行錯誤しましたね。
その結果、選ばれたのが200曲くらいで、そこからはひたすらライセンシング作業に突入です。
――200曲とはいえ、昔の名曲や大物スターの曲もありますので、ライセンシングはかなり難しかったのではないでしょうか?
肥後氏:それはもう! これまで自分が関わってきたタイトルの中で、一番と言えるくらいハードな仕事でした(苦笑)。というのも、1曲に対して著作権を保有している人物が必ずしも1人ではないことが多いんです。多い場合ですと、20人以上が著作権を保持していて、しかも19人まで許可を得たのにレコード会社から「最後の1人が誰かわからない」と言われたこともあり…。音楽関連は契約がかなり複雑で、そういったことも発生するらしいんです。
ほかにも、著作権者が亡くなられていて、権利を他人に譲渡している場合などですね。そうなると、もうお手上げなので残念ながら収録できなかった曲もかなりあります。ただ、収録されている楽曲についてはしっかりと「ロックスミス」のために厳選していますので、そこはご安心ください!
――「ロックスミスのために厳選」とおっしゃいましたが、楽曲を厳選するにあたりターゲットユーザー層はどのように設定しましたか?お話を伺う限りでは、ギター初心者になりそうですよね。
肥後氏:ギター初心者がメインターゲットになるのは間違いありません。海外版の発売後の市場調査では、ユーザーの7割がギター初心者で、3割は中~上級者でした。しかも、意外なことに上級者の中から「ロックスミス」を10時間くらいプレイしていたら、前よりもギターが上達した、という意見が聞こえてきたんです。
――それは興味深い意見ですね。
肥後氏:最初は理由がわからなかったのですが、話を聞いてみると「これまで手癖で弾いていたソロの確実性が上がった」ですとか「ピッキングのタイミングがしっかり取れるようになった」ということなんです。
「ロックスミス」はゲームではありますが、そういったタイミングや音程に関しては確実性が求められますので、高得点を狙っているうちに、より確実な演奏が自然とできるようになっていたということですね。開発コンセプトそのままの意見をいただけたのは、非常に嬉しいことです。
――では、肥後さんは「ロックスミス」でギターが弾けるようになった初心者ユーザーには、今後どうなってほしいと考えていますか?
肥後氏:初心者が本作でギターを覚えて、ゆくゆくは本物のギタリストとして成長していくのもいいでしょうし、個人的に音楽に接していくためにギターを覚えるのもいいと思っています。
ただ「ロックスミス」の狙いは、まずはギターが弾けるようになってもらうことです。海外版ではYouTubeなどに自分の成長度合いを動画でアップするユーザーもいるのですが、彼らの上達を見るのがすごくおもしろいんです!
その後彼らがどういった道を歩むのかはわかりませんが、一番最初に「ロックスミス」があったというのが、自分にとって重要ですね。
――ユーザーさんの上達が感じられるのは、開発者としては嬉しいでしょう。
肥後氏:もちろん! 中でも「ロックスミスレコメンド」というシステムで、「今アナタはこのレベルなので、次はこの曲を弾いてください」「この曲でこのテクニックができていなかったので、いったんこのチャレンジに戻って挑戦してください」というゲームからの提案をしっかりとフォローして上達してくれるユーザーさんは、すごい早さで上達していくので、本当にこの作品を作ってよかったと思います。
――少々気が早いですが、日本でのDLC展開などは予定していますか?
肥後氏:ぜひ日本の楽曲を、DLCとして追加していきたいですね! そのためには、日本のユーザーの皆さんのご協力が必要となりますので、ぜひ「ロックスミス」に触れてみてほしいですね。
――では、最後に日本のユーザーにコメントをお願いします。
肥後氏:まずは、海外版の発売から約1年も待たせてしまい、大変申し訳ございません。ただ、この1年間で海外版からさまざまな面でパワーアップして、いわゆるディレクターズカット版のような仕上がりになっています。
開発チームも日本で発売できることを非常に嬉しく思っていますので、ぜひ「ロックスミス」でギターを始めてみてください!
――ありがとうございました。
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※画面は開発中のものです。
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