Quantic Dreamは、フランス・パリの同社社屋において、3月19日(現地時間)にスタジオツアーを実施した。ここでは、同社のCEO 兼 創業者のDavid Cage氏とCo-CEO 兼 エグゼクティブプロデューサーのGuillaume de Fondaumiere氏へのインタビューをお届けする。

目次
  1. 人生に関わる全ての感情を表現したい。David Cage氏インタビュー
  2. プレイヤーの人生や世界観に影響する作品を目指したい。Guillaume de Fondaumiere氏インタビュー

PS3「BEYOND: Two Souls」は、不思議な力を持った少女「ジョディ」と彼女だけがコンタクトできる霊体「エイデン」による、数奇な運命を辿るサイコスリラーアドベンチャーだ。

ハリウッド俳優のエレン・ペイジさんやウィレム・デフォーさんを起用。パフォーマンス・キャプチャーと呼ばれる最新技法により顔の表情を再現することで、多彩な感情表現を実現している。

今回、Quantic Dream CEO 兼 創設者であるDavid Cage氏とCo-CEO 兼 エグゼクティブプロデューサー Guillaume de Fondaumiere氏に、本作のコンセプトや開発の現状について伺った。

人生に関わる全ての感情を表現したい。David Cage氏インタビュー

Quantic Dream CEO 兼 創設者であるDavid Cage氏は、1997年にインタラクティブ性を新しい表現として取り入れることを目的にQuantic Dreamを設立。感情、革新的な主砲、没入感の高いストーリーをベースにクリエイティブ性の高いビジョンを開拓している。

また、David氏が「Bending Stories(物語の流れを変え、分岐させる手法)」と呼ぶ新たな脚本手法では、プレイヤーがゲームの中で選択した行動により物語が変化し、プレイヤー自身が主人公でもあり、脚本家でもあるストーリーの提供を可能にしている。

前作「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」(以下、HEAVY RAIN)では、ソニー・コンピュータエンタテインメントとコラボレーションし、プレイヤーが感情移入できるストーリーを展開、インタラクティブストーリーの可能性を追求した。

David Cage氏に本作のコンセプト、そして、本作の主人公であるジョディについてお話しを伺った。

――本作を制作するに至った経緯と、コンセプトを教えて下さい。

私自身に息子ができて父親となったこと、また、最近親戚が亡くなり、はじめて死というものに直面した体験からインスピレーションを受けました。

――今、本作を世界に向かって発信することについて、どのように感じますか?

3年間もこのプロジェクトにかけていたので、まるで我が子を送り出すような感じです。みんなに愛されるプロジェクトになって欲しいのですが、実際にどうなるのかとても緊張しています。

本作にはさまざまなシーンがあるので、その中でプレゼンテーションの時に何を見せるのかを悩みました。今回見ていただいたホームレスのシーンは、見てもらいたい感情的な要素が詰まっていることから選びました。

――画面にアイコンなどがほとんど表示されないUIはどのように生まれたのでしょうか?

1年かけて考案したシステムです。苦労しましたが、シンプルな白いポイントに落ち着きました。

「HEAVY RAIN」では、プレイヤーに押して欲しいボタンを表示していましたが、本作では、シーンを見ただけでどの操作を操作すればよいのか、直感的にわかるようにしたかったのです。

――文字やボタンを排除しシンプルな操作にすることは、Davidさんの中で一貫した考えなのでしょうか?

何も表示されないことが理想的なインターフェイスです。「Fahrenheit」では、画面上にボタンが表示されており、「HEAVY RAIN」では縮小しました。本作では、より縮小しました。将来的には、何もなくても直感的にわかるインターフェイスにしたいです。

――白いポイントによる操作は一定の法則性があるのでしょうか?それともオブジェクトによって変わるのでしょうか?

本作では、シーンによって操作を変えています。例えば、テーブルの上にグラスが置いてあった場合、何もない状態だと「飲む」ぐらいの選択肢しかないものの、バトルシーンではグラスを投げつけるといった、状況に応じたアクションを設定しています。

――主人公を少女にした理由、そして一人の少女に焦点を当てたのはなぜですか?

私はストーリーを作る際にひらめいたものを書いており、その過程で主人公を少女にしました。本作では、ひとりの少女を通した15年間を語ることが大事であり、その中でどのように成長し、どのような困難に立ち向かうことでジョディというキャラクターができあがっていくのかに重点を置きました。

また、少女の方が物語が書きやすい点もあります。女性は男性に比べ感情的でさまざまなことができるからです。

――一生ではなく、15年間と期間を区切った理由は?

ジョディというキャラクターを語る上で、意味のあるポイントを選び、15年間に落とし込みました。また、人生の全てを語るととても長いゲームになってしまうからです。

――ジョディが恋に落ちることもありますか、?

本作は人生を表現しているので、死も生命もありますし、恋に落ちることもあります。

――どのような方にプレイしてもらいたいですか?

できるだけ多くの人にプレイしてもらいたいです。「HEAVY RAIN」のユーザーには女性が多く居ました。女性ユーザーは、一人で遊ぶわけではなく、夫やボーイフレンドが隣で指示したりと一緒に楽しむことが多いので、本作ではそういった点でも進化しました。お見せしたインターフェイスは、ゲーマー向けに作られたものですが、オプションでカジュアルゲーマー向けのインターフェイスを表示することもできます。

――映画でも小説でもなくゲームで感情を表現する理由は?

ゲームに自分が関わることで、物語の流れを変えることができたり、キャラクターに感情移入して物語を見ることができる点が素晴らしいと思います。

通常のゲームでは、ストレスや恐怖など特定の感情しか表現しないのですが、笑ったり、泣いたり、同情したり、すべての感情が人生に関わってくるので、それを見せたかったのです。

――日本のゲームファンやクリエイターにメッセージを下さい。

私は日本のゲームクリエイターをすごく尊敬していて、子供の頃から日本で作られたゲームを遊んで成長しました。ゲームクリエイターだけではなく、漫画などいろんなものを見て育ってきたので、そういった方に本作を遊んでいただけるのは非常に光栄なことですし、反応が楽しみです。日本語にローカライズもされるので、より多くの日本の方に楽しんでもらいたいです。最後に、もし日本に行く機会があれば、ぜひ、皆さんにお会いしたいです。

――ありがとうございました。

プレイヤーの人生や世界観に影響する作品を目指したい。Guillaume de Fondaumiere氏インタビュー

Guillaume氏は、1993年に21歳で、ハイエンド3Dグラフィックスタジオ「ARXEL TRIBE」を設立。ヨーロッパ広告業界有数のスタジオとなり、1996年にはビデオゲーム制作にも着手する。2000年には、ゲームパブリッシャーとなり、Guillaume氏はCEOとして、マネジメントを行いながら、すべてのタイトルにエグゼクティブプロデューサーとして関わっている。

2001年にARXEL TRIBEを売却。2003年からQuantic Dreamに参加、すべてのビジネス案件を管理するほか、「Fahrenheit」や「Heavy Rain」「Beyond: Two Souls」のエグゼクティブプロデューサーとしても活躍している。

Guillaume de Fondaumiere氏に本作への期待や同社が目指す方向性について伺った。

――3年半制作し、今回メディアに対して披露できた心境を教えて下さい。

非常に興奮しています。今回のイベントは、世界中のメディアとコミュニケーションを開始するキックオフのようなものです。今回発表したことによって、インターネットなどに情報が掲載されますし、どんな反応があるのかチームとともに期待しています。

――これから発売までの期間、チームは何をしますか?

すでにゲーム全体としては出来上がっていて、ストーリーも完成しています。現在は、顔の表情や細かい動作などをブラッシュアップしています。

また、発売に向けてゲームプレイ部分のテストを行ない、細かい調整をしています。操作方法も進化させ、直感的で楽しい操作方法に磨きをかけるべく制作しています。音楽については、盛り上げる要素なので、これから導入します。

――上映されたトレーラーはGuillaumeさんが制作されたのですか?

最初はビジネスの勉強をしていましたが、それから3Dグラフィックスのスタジオをたちあげ、3Dアニメーションの分野に移りました。そこでは監督としての仕事もあったので、トレーラーは唯一自分のクリエイティブな面を見せることのできる仕事です。

クリエイティブな箇所に関われないことがとても悲しいです。マネジメントの仕事があるなかで、唯一、トレーラー制作がクリエイティブな作業です。制作チームと関わることも多いので、そのようなプロセスが重要です。

――Guillaumeさんが考えるQuantic Dreamのゲームの魅力はなんですか?

Quantic Dreamには、グラフィックスやパフォーマンス・キャプチャーもあるのですが、一番大切なのは、Quantic Dreamとして作る作品に意味があるということです。物語に意味をもたせることによって、プレイヤーが人生に何らかの意味を見出したり、世界観に影響を与える作品を目指しています。

――マーケットと切り離して考えるDavidさんと、意見の食い違いなどはないのでしょうか?

ビジョンに対して信じることができるかということです。私はDavidのビジョンを全て信じています。

今も順調ですが、将来的にDavidのビジョンがもっと成功すると信じています。そのビジョンをどうやって、PRやパブリッシャーの方に信じてもらうかが挑戦になります。「Fahrenheit」や「HEAVY RAIN」を制作した時も、信じさせるということがチャレンジでした。

アイデアが衝突することはなく、むしろDavidと協調して、長い時間をかけてひとつの形にしていきました。挑戦とは、旅のようなもので、ビジョンに向かって旅をしています。

――「HEAVY RAIN」のときは大変だったのではないですか?

アメリカでパブリッシャーとのミーティングで、「Fahrenheit」のプレゼンをしたときのことです。マスター3週間前段階で、自分がした行動が影響をあたえるとゲームの内容を説明しました。しかし、相手はたったの5分で、「そんなゲームはありえない」と言い、返されてしまいました。14時間かけてアメリカに飛んだのに5分で追い返されてしまいましたね。ゲームとしては出来上がっているにもかかわらず、信じてもらえなかった。そういった経験や挑戦はたくさんしました。

逆に、Phil HarrisonさんとMichael Dennyさんとのミーティングでは、コンセプトについて「物語を主体にしたゲームは成功すると信じている」と言っただけで、彼らは、「あなたのビジョンを信じている。そのうえで、長い時間がかかるかもしれないが、今からはじめよう」と言ってくれました。そして、今もソニー・コンピュータエンタテインメントと仕事をしています。

いろんな声を聞いてしまいビジョンを実現するためには、たくさんのドアを叩いて売り込まなければいけません。大事なのは、ビジョンを変えずに、一貫したビジョンを保ちながら長い時間を変えて良いパートナーを探すことです。

――スタッフの人数が倍の200人に増えたそうですが、これからのQuantic Dreamはどこに向かうのですか?

Davidと2010年に計画した6ヶ年計画があり、そこには、PS3からPS4の時代も含まれています。今回200人に増強したことも、「BEYOND: Two Souls」のための増強ですべて計画通りの拡張です。Quantic Dreamはリサーチもしており、人材を集めて、次のプロジェクトに向けた戦略的な増強を行なっていきます。

――ありがとうございました。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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