「のーふぇいと! -only the power of will-」から「ぎゃる☆がん BEST」まで、2010年からのアルケミストのギャルゲータイトルを振り返る座談会を全2回にわたってお届け!第1回は2010年、2011年のタイトルを振り返ります。

目次
  1. 2010年
  2. 2011年

せっかくのギャルゲー特集ということで、まだ記憶にあたらしい2010年からのアルケミストさんのギャルゲータイトルの思い出や当時のエピソードを、広報担当として全てのタイトルを宣伝しつつ、「ぎゃる☆がん」などのプロデューサーも務める中川滋氏と振り返ってみました!

前編では、「のーふぇいと!-only the power of will-」から「さかあがりハリケーン Portable」までのタイトルを振り返ります! 最初は面白おかしくお話できればと思っていたのですが、意外にも(?)PS2からPSPへのハードの移行や、プロモーションに対する思いなど深イイ話をたくさん聞くことができました。それでは早速どうぞ!

2010年

Xbox 360/PSP「のーふぇいと! -only the power of will-」(2月25日発売)

――2010年からのタイトルを振り返るということで、まずは2月25日に発売された「のーふぇいと! -only the power of will-(以下、のーふぇいと!)」ですが、こちらはアルケミストとしては数少ないオリジナルタイトルでしたね。

中川氏:普段はPCメーカーさんのお力を借りての移植が多かった中で、「のーふぇいと!」はサクセスさんという素晴らしい会社さんと組めたこともありますし、アルケミストとしても外部の会社さんに開発を一切合切お願いして、売るほうに注力できたというのは初めてのことだったと思います。

「のーふぇいと!」は本当に初めてづくしの作品で、オリジナルタイトルというのもありますし、据え置き機(Xbox 360)と携帯ゲーム機(PSP)を一緒のタイミングで発売するというのも初めてでした。このスタイルが今後何年かは続いていくかと思いましたが、結局これだけでした(笑)。

――この頃はまだ新規タイトルを出すときにはPSPではなくPS2という選択肢をとるゲームメーカーもあったと思うのですが。

中川氏:そろそろ閉じかけているかなという時期でしたが、ギャルゲーだとこの頃はまだPS2の市場が確かにありましたね。

――それと同時に、この時期はラインナップ的にも通なギャルゲーのタイトルがXbox 360でたくさん出ていた時期でしたね。

中川氏:シューティングゲームしかりアクションゲームしかり、今でもいわゆるゲーム好きな人が遊んでいるハードという印象が強いですよね。そこでギャルゲーも何本か集まっていたので「のーふぇいと!」でチャレンジしました。

――そもそもなんですが、こちらの企画自体はサクセスさん側からいただいたのでしょうか。

中川氏:そうですね。「アカイイト」「アオイシロ」のスタッフさんが新しいタイトルを作ろうとしていたところが根幹にあったはずです。なのでそのシリーズなのかなと思いきや全く違うものが出てきたのですが、これはこれで非常にキャラも立っていて面白かったので「(企画に)のった!」という話になりました。

――発売された当時は、家庭用のオリジナルタイトルも落ち着いてた時期だったので、すごく気になっていたタイトルでした。

中川氏:売るほうとしても、やはりオリジナルタイトルということでいろいろな方に知っていただきたいという焦りもあったので、結構プロモーションもやんちゃしている気がしますね。

――その中で特に記憶に残っているものってありますか?

中川氏:葉山の兄貴(「超兄貴」の楽曲などを手がけた葉山宏治氏)が出ていたPVがあるのですが、「なんで?」と言われても全くおかしくない内容で。何をやったかというと、「バリバリ軒」というゲーム内に登場するラーメン屋のテーマ曲を作ったんですよ。

単純にゲームにそういう設定があるだけなんですが、そこを切り取って「歌つけちゃおうよ」という話になって。「のーふぇいと!」に関しては私は責任者という立場ではなかったのですが、広報としては関わっていたので横から口を出しまくりでしたね(笑)。

なにかやらないとお客さんに知ってもらえないということで、キャラクターとか世界観とか推せばいいのにラーメン屋の歌を作っちゃったと(笑)。音泉さんでラジオもやっていたので、真面目なプロモションはもう十分かなとも思っていましたし、イロモノは社内からアイデアが出てこないので俺やっちゃおうかなと。

事前にラーメン屋さんに貸切交渉をして、バンドのみなさんをラーメン屋に連れて行ったり。演奏のシーンはアングルを色々変えたり……と、少ない予算内で結構まじめに作ってます(笑)。

PSP「乙女はお姉さまに恋してる Portable」(4月29日発売)

中川氏:「乙女はお姉さまに恋してる Portable(以下、おとボク)」は私が担当していたタイトルで、キャラメルBOXさんには本当によくしていただいた記憶があります。

PSPへの移植タイトルとしては「ひぐらしデイブレイク Portable」がすでにありましたが、あちらはアクションゲームでしたので、ギャルゲー移植としてはこのタイトルが初めてで、すごくドキドキしていました。

しかも、もともとPS2で出していたタイトルのPSP移植ということで、追加要素はあるものの果たしてどうなのだろうか、お客様にちゃんと評価いただけるのかという不安はありましたが、販売本数だけでいうとお客様にすごく評価いただけました。社内的にもPSPへの移植もいけるんじゃないかと、確証を得られたと思います。

――この頃だとギャルゲーのPSPタイトルが徐々に増えつつあった時期でしたよね。

中川氏:昔の資料を漁ったら、この頃は「画面サイズが16:9!」とかって言うのが売り文句として出ているんですよね。今見たら「当たり前だろ!」と思うようなことをわざわざ書いている時期です(笑)。

――特に当時のPCゲームはまだほとんどのタイトルが4:3でしたからね。

中川氏:PSPに移植するときには4:3を16:9にするときに削られてしまう部分が出てきます。逆に、表示がほしい部分のデータがない……といって勝手に描き足すわけにもいかない、というところが難しかったです。その切り方・絵の残し方が移植の巧さの目安としてはあったと思いますね。ただこれはキャラメルBOXさんのバックアップのおかげで、すごく上手に対応できました。

――2010年は「おとボク」の後にも“男の娘”向けのタイトルが控えていましたが、こちらはほぼ同じ時期に動いていたのですか?

中川氏:順番の入れ替わりは多少あったと思うのですが、「おとボク」の発売が4月だったので、残りの2タイトルについても5月から7月ぐらいを目指して動こうとは思っていました。“男の娘”にフィーチャーしたタイトルがひとつのメーカーから連続して出るということは奇跡的な確率だったと思います。

実はアルケミストに男の娘が大好きな人がいてすべてを統括している、と言われた時期もありました。残念ながらそれは違います、たまたまです(笑)。

各々の世界観や雰囲気はぜんぜん違うけれども、“主人公が男の娘”というのは分かりやすい惹きでした。3タイトル合同キャンペーンなどの仕掛けもできて、すごく売りやすかったですし、結果もすごくよかったですね。

PS2「スズノネセブン!~Rebirth knot~」(5月27日発売)

中川氏:「スズノネセブン!~Rebirth knot~(以下、スズノネ)」は、男の娘タイトルにちょうど挟まるかたちで発売されました。実はスズノネがスケジュール通りで、他タイトルに遅延が出た結果……というのは今だから言えることかもしれません(笑)。

こちらは、クロシェットさんの作品で絵の魅力が素晴らしいです。これも自分の担当ではなかったので横から見ていたのですが、店舗特典の描きおろしイラストに全てすみれちゃん(ヒロインの代官山すみれ)が登場して、「ああそうか、こういうゲームなんだな」と独りで納得してました。

ほかのお店さんとのバランス取りやユーザーさんへのアプローチを考えれば、店舗特典イラストが特定のキャラクターに集中することは少ないです。バラつきが出て当たり前だと思っていた当時の私にとっては衝撃的なことでした(笑)。

これはPS2タイトル……こうして振り返ると、2010年は本当にハードがバラバラですね。アルケミストとしては次の「花と乙女に祝福を~春風の贈り物~(以下、花乙女)」が最後のPS2タイトルになります。

――RPGやアクションゲームなどはもうPS3やXbox 360に移行していたとは思いますが、確かにこの当時は「スズノネ」もそうですし、個人的にもPS2のタイトルをまだ遊んでいましたね。その中で「スズノネ」はすごく正統派なタイトルだったと思いますね。

中川氏:新規ヒロインなどの追加要素もあって、やってることはすごく丁寧にやっているのですが、売り方がすごく難しかったタイトルですね。「胸か!」と(笑)。

当時は“張り胸”のイラストはあまりなかったと思うので非常に斬新でした。しかしながら、原作(PC版)と違い、コンシューマ版は胸のすべてが見えるわけではありません。ゆえに、それ以外の作品の魅力をうまく伝えきれなかったと反省しております。

――そこは別のアプローチもできたのではないかということですね。

中川氏:そうです。そして、惹きの要素を取り違えると、売上的には大変なことになってしまいます。その辺りは原作メーカーさんとの刷り合わせだったり、PC版を遊んだユーザーさんのお声を拾って決めますが、これからファンになってくれそうな人、コンシューマ版を買ってくれそうな人にも届く要素であることを強く意識しています。営業的に一番怖いのは、原作ファンと新規ファンの両方にソッポを向かれてしまうことですね。

PS2「花と乙女に祝福を~春風の贈り物~」(7月8日発売)
PSP「恋する乙女と守護の楯 Portable」(7月29日発売)

――すごくいいお話が聞けたところで、「花乙女」と「恋する乙女と守護の楯 Portable(以下、恋楯)」の話をさせていただければと思います。

中川氏:「花乙女」は作品としてもよかったですし、男の娘キャンペーンに合わせてチラシもすごく豪華で絵も百合百合していて素晴らしいです。

――結局PS2としては最後のタイトルとなりましたが、実際に売る中で変化を感じたりもしていましたか?

中川氏:ファミコンから入り、テレビの前でゲームをするというのが当たり前だった私としては、PS2の次はPS3やXbox 360に行くのが当然と思ってました(笑)。

しかしながら、世の中の流れは違いました。日本だけ違った、という方が正しいかもしれませんが。また、弊社の得意とするギャルゲー移植にとっては非常に厳しいハードであることも分かりました。グラフィックの解像度が全然違うんですよ!

――当時のPC原作タイトルの解像度を考えるとより難しい話になりますね。

中川氏:そうなんです。当時はPS2で丁度良いくらいの解像度が一般的だったので、Xbox360やPS3でその数倍を求められてしまうと移植としてはコスト面で難しいものがありました。だったらPSPに移植するという流れは少なからずあったと思います。

今日の話には出てこないPS3版の「うみねこのなく頃に ~魔女と推理の輪舞曲~(以下、うみねこ)」で高解像度の2Dグラフィックがどれほど大変かも勉強できました。「うみねこ」は移植作ではありますが、グラフィック素材はすべて0から作る必要があったので、「どうせやるならフルHDでやってみよう!」と進行したら、グラフィックチームが死んでましたね(汗)。

また、この頃からギャルゲーは携帯機でコッソリ遊びたいというユーザーさんの隠れたニーズが表面化してきたようなが気がします。今振り返れば、ユーザーさんの意向とメーカーの意向が結果的にマッチングして、PSPに傾いた時代だったのかと思います。

――ちょうど同じ月にPS2最後の新作タイトルとPSPの移植タイトルが発売されるということで象徴的なタイミングだったと思うのですが。

中川氏:「恋楯」も、もともとPS2でやらせてもらったものを改めてPSPに移植しました。追加要素は特になかったのですが、携帯機への需要と男の娘キャンペーンの効果もあってすごく売れたタイトルでした。そういった意味では色々と考え、テストケースを重ねていた年でしたね。

2011年

Xbox 360「ぎゃる☆がん」(1月27日発売)

中川氏:2010年の7月29日に「恋楯」を発売してからの間は、完全に「うみねこ」と「ぎゃる☆がん」のプロモーション期間でした。力を入れて頑張った結果、お金も使いすぎて会社に怒られました(笑)。

「ぎゃる☆がん」を最初に見た時、「インティ・クリエイツさんはなんでこんなわけのわからないものを作ってしまったのか?」と突っ込みたくなるぐらいの衝撃を受けました。とにかく刺激的だったので、プロモーションにもその辺を活かさないとまずいと思っていました。

これはどこかで話したかもしれないのですが、ぎゃる☆がんの初期は私が担当ではありませんでした。今でこそ当たり前のように「『ぎゃる☆がん』いぇーい!」とかやっていますけど(笑)。初期の担当スタッフがすごく真面目な人で、ごく普通に売る展開を進めようとしていました。

それはそれはで、余計な経費もかからないし利点もありますが、このゲームに関しては違う気がしてました。そんな折に、その担当スタッフが諸事情で退社することになったので、「だったら俺やる!」みたいな(笑)。そこから担当してます。

実は最初の頃はインティ・クリエイツさんがどんな会社かもよくわかっていなかったので、用事もないのに毎週のようにインティ・クリエイツさんに行っていました(笑)。オリジナルタイトルなのでそういったところから始めないといけないと思っていたのと、自分の担当するタイトルになった手前、「絶対失敗できない!」という気持ちを持っていましたし、何より制作のみなさんのバカげた情熱を理解しない人間が売ることはできないと思っていました。

――担当される前からもうあの内容だったのでしょうか?

中川氏:作りこみの度合いは違えど、本質的にはあの内容でした(笑)。私が担当になってからは見るたびに完成度がガンガン上がっていく状況だったので、売る側のテンションも上がりますよね。そして、インティ・クリエイツさんがあえてアルケミストと手を組んでくれたことに対する結果を出さないと申し訳ないという気持ちもありましたので、このタイトルに限って言うと、本当にわけのわからないことをたくさんしたと思います。

――やっぱり東京ゲームショウですよね(笑)。

中川氏:2010年の東京ゲームショウでアルケミストとして初めて一般ブースで出展して、マイクロソフトさんのブースにも試遊台を置かせてもらったのですが、あの時の外国人の方を含めたお客さんの熱量は一生忘れないと思います。人間ってこんなにテンション上がるんだなと(笑)。

Xbox 360のユーザーさんは、ゲームに慣れているコアなゲーマーの方が多いと思うのですが、スタッフとして横について、その方たちのキラキラした、初めておもちゃを触った子供みたいな顔を見て、「これは大変なタイトルを担当しちゃったな」と思いました。

――コンシューマ向けのガンシューティングもかなり少なかった時期ですが、「ぎゃる☆がん」はガンシューティングとしてのベースがあった上でネタが詰め込まれたゲームになっていた印象があります。

中川氏:インティ・クリエイツさんがゲームとして面白いものを作ってくれたという土台は大きかったです。もし、インティ・クリエイツさんの開発でなければこうはならず、「アルケミストがネタで作った」で終わってしまうところだったと思います。この手のゲームは一歩間違えると「コンセプトはいいけどクソゲー」みたいな話になりかねません。ですが、実際の評価は全くの逆で「ネタだと思って買ったのにまじめにやりこんじゃった」という人が圧倒的に多くて(笑)。こういう評価をいただけるタイトルはそうそうないですよね。

――細かいところのコレクション要素も含めて、本当にやりこませる作りになっていましたよね。

中川氏:シューティングゲームとしてちゃんとできているのは素晴らしいですし、そこはインティ・クリエイツさんの凄さだと思います。

――プロモーションというところで言うと、東京ゲームショウもそうですが、発表会もやられましたよね。

中川氏:アルケミストとして「うみねこ」と「ぎゃる☆がん」という大きなタイトルが続くので仕掛けましたが、この2つは普通絶対に混ぜちゃいけないと思いますね(笑)。

特に「うみねこ」ファンは驚愕したと思います。なんとなく「ひぐらしのなく頃に」の流れがあったので、アルケミストが「うみねこ」をやるんだろうなという期待はあったと思うのですが、発表前の段階で出した絵が「ぎゃる☆がん」のキャラクターを「うみねこ」の肖像画っぽく描いたものでしたから(笑)。「は?何この新キャラ?」という反応は当然で、新しい魔女や悪魔ではないか!?と憶測が飛び交って、個人的にはすごくドキドキしましたね(笑)。こんな感じで過去最高にどうやって売ろうかと考えたタイトルでしたし、お金もかけたタイトルでもありましたね。

――ユニットもありましたしね(笑)。

中川氏:ZQN(寺本來可さん(野々宮かなめ役)、内村史子さん(火吹晶役)、内田真礼さん(桜咲薫子役)、山本希望さん(兎野葵役)によるユニット)ですね! この頃はニコニコ動画やYouTubeでゲームのプロモーション映像を見せるというやり方が流行っていた時期だったので、「ぎゃる☆がん」はまさにそこを突き詰めてやろうと考えたタイトルでした。

ヒロインの4人による「ぎゃる☆がんTV」というのが全10回、純粋にゲーム紹介のPVもありつつ、ヒロイン4人による小芝居の入った紹介PVとか、とにかく動画をいっぱい作りました。

特に小芝居の入るPVは何かフックがほしくて、人気TV番組の「水曜どうでしょう」をパクらせていただきました(笑)。あの番組の冒頭と最後のシーンを知っていたら、「こういうシーンあるある!」と反応してもらえると思います。わざわざ傾斜のある丘でロケしましたし(笑)。

――本当にほかにはない、吹っ飛び加減が面白いタイトルでしたね(笑)。

中川氏:なんかみんなおかしかったんです(笑)。逆に言うとインティ・クリエイツさんもプロモーションのためとはいえ、自分たちが大切に作ったタイトルをこんな風にされてよく許してくれたと思います。そういう意味では私のやりたいことをほぼできたタイトルでした。

PSP「Princess Frontier Portable」(4月7日発売)
PSP「乙女はお姉さまに恋してるPortable~2人のエルダー~」(4月28日発売)

中川氏:「Princess Frontier Portable(以下、プリフロ)」と「乙女はお姉さまに恋してるPortable~2人のエルダー~(以下、おとボク2)」を発売した時期は3月の震災の影響が大きく、プロモーションがどうこうじゃないところで迷いました。「俺、ゲーム作ってていいのかな。ゲーム制作のために足りないと言われている貴重な電気を使ってしまっていいのかな」、と柄にもなく考えた時期でした。今だからこそこうして普通にゲーム制作していますが、当時からすれば1年後なんて考えられませんでしたね。

――あの頃は明るくしようとしてもなかなかできない時期でしたね。

中川氏:エイプリルフールも挟みましたが、各企業で対応が真っ二つに分かれましたよね。そういった意味でも社内的にもそうですし、個人的にもプロモではっちゃけるのはないと思ってました。

ただ、色々なニュースを拝見していた時に子供が携帯ゲーム機で楽しく遊んでいるシーンもいくつかあって、こういう時だからこそゲームが心の支えになる部分もあるのかもしれないなと少し思い始めました。だったら売上本数のことは一旦忘れて、スケジュール通りに2つとも出してしまおうと。原作メーカーさんのファンやギャルゲーで心安らぐ人がいればこんなに嬉しい話はないので。

この2作品はちゃんと追加要素もあって、特に私が担当だった「おとボク2」はUMD2枚組という豪華仕様です。お客さんのためにプレイしやすい環境を提供できるよう、あえてコストをかけたタイトルだったので、4月に出せてよかったですね。

――このあたりから完全にハードがPSPへと移行していますが、ゲームを売る中でPS2からPSPにお客さんが移っていると感じた時はありましたか?

中川氏:2010年、2011年は「モンスターハンターポータブル 3rd」が発売した頃で、“モンハン特需”と言ってもいいと思うのですが、とにかく店舗さまはPSPだったんです。

――もともと普及はしていましたが、そこを契機としてPSPを持っている人が急増しましたよね。

中川氏:「モンハン」という素晴らしいタイトルに引っ張られて、日本ではPSPが業界の中心にいたので、それに乗らない手はないでしょうと(笑)。2010年に開発したものを2011年にバシバシ出していくという時期だったと思いますね。

しかも「モンハン」は若い世代の方を大量にPSPへ導いてくれたのが大きいです。ギャルゲーを購入してくれるお客さんの年齢層は若干高めなので、若い世代の方にも興味を持ってもらうことが必要でした。原作メーカーさんのPC業界でも同じような現象が起こっているようなので、弊社のような移植ギャルゲーメーカーが若い世代の方と原作メーカーさんを繋ぐ架け橋のような存在になれればと思います。

PSP「さかあがりハリケーン Portable」(7月28日発売)

中川氏:震災から時間が経つにつれて明るく頑張ろうという気運も高まっていく中で、7月に発売した「さかあがりハリケーン Portable(以下、さかハリ)」はまさに天真爛漫、明るくていい作品だと思いますね。

このタイトルはオープニングも良かったですし、プロモーションとしてもキャラクターに掛け合いをさせてゲームを紹介する「グリグラ情報局」の出来が良かったと思います。この形式は今年発売した「恋愛0キロメートル Portable」や「鬼ごっこ!Portable」にも引き継がれています。

――私としてもギャルゲー連載(不定期更新で「ギャルゲー一本釣り!!」という新作のギャルゲータイトルを紹介する連載をやっています(宣伝))の第1回で取り上げさせてもらったので、思い入れが強いですね。当時は明るくやりたいという気持ちがあったので、まさにピッタリなタイトルでした。

中川氏:ギャルゲーとしては珍しいぐらいにすごくさわやかな作品です。ねこにゃんさんによるキャラクターの魅力があってこそだと思いますね。

――それもありますし、テキストもすごく読みやすかったので楽しいタイトルでした。プロモーションでも先ほどのムービー以外にも、キャストやクリエイターの方のコメントなどひと通りのことをやられていた印象がありますね。

中川氏:それ以外のことを無理してやる必要がないというくらいすごく安定したタイトルでした。

――「さかハリ」に対する記事の反応はうちでも良かった印象がありますね。

中川氏:一本釣りがあってこそです(笑)。

――いえいえ、とんでもないです(笑)。

とまあ最後はなぜかヨイショされて終わりましたが(笑)、もちろん2012年以降のタイトルについてもガッツリとお話しています! そちらの模様も後編として後日お届けしますのでお楽しみに!

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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