PS3/PS Vita用ソフト「英雄伝説 閃の軌跡」の発売に向けて、これまでに発売された軌跡シリーズの全タイトルをおさらい! 第3回では、「閃の軌跡」にも関連するエピソードが登場するシリーズ第3作「英雄伝説 空の軌跡the 3rd」を紹介します。
軌跡シリーズは、日本ファルコムが壮大なスケールで贈るRPGの大巨編。シリーズ第1作目となる「英雄伝説 空の軌跡FC(以下、空の軌跡FC)」がWindows用タイトルとして2004年6月24日に発売されて以来、主人公たちが冒険の旅を通してさまざまな人々との出会いと別れを経験し、成長していくストーリーにより、現在に至るまで多くのファンを獲得している人気シリーズです。
軌跡シリーズの最新作となる「英雄伝説 閃の軌跡(以下、閃の軌跡)」が2013年9月26日に発売されるのに併せて、ここでは「閃の軌跡」と同じゼムリア大陸を舞台とした世界観を共有する、これまでの軌跡シリーズのタイトルを5回に渡って振り返ります。
第3回で紹介するのは、「空の軌跡」3部作の最後を飾るシリーズ第3作「英雄伝説 空の軌跡 the 3rd(以下、空の軌跡 the 3rd)」です。ストーリーやキャラクターに関する情報を紹介するとともに、シリーズ全タイトルをプレイしている筆者が、これから本シリーズを遊ぼうと思っている方のために、本作の魅力をお伝えしていきます。
ストーリー
浮遊都市《リベル=アーク》崩壊より半年後──
エレボニア帝国東部、クロイツェン州の中心都市バリアハート。その郊外にある飛行船発着場に、風変わりな一人の青年の姿があった。
彼の名は、ケビン・グラハム。七耀教会の神父であると同時に、古代文明の遺産《アーティファクト》の調査・回収・関連事件の処理を行う《星杯騎士団》に所属する騎士である。
「《ルシタニア号》……ラインフォルト社が満を持して世に送り出した豪華飛行客船か」
「は~、これで任務やなかったら思う存分、大空のバカンスと洒落込むところなんやけど」
各地の貴族や成り上がりの大金持ち。大枚をはたいて二等客室のチケットを買い求めた市民たち。──浮き立ちざわめく乗船客に混じって、長いタラップを渡るケビン。ラインフォルト社製の大型エンジンが重低音を響かせ、全長120アージュの巨船が、ゆっくりと大空に浮かび上がる。
それが──新たなる冒険の始まりだった。
舞台設定
アルテリア法国
空の女神エイドスを奉じる七耀教会の総本山にあたる都市国家。ゼムリア大陸の中心部に位置しており、大陸全土から大勢の信徒や宗教関係者が集まる聖地としても知られている。祭儀全般を監督する「典礼省」、星杯騎士団の上位にある「封聖省」、都市の防衛を担当する「僧兵庁」など、さまざまな組織が存在。
星杯騎士団
危険な力を秘めたアーティファクト(古代文明の遺産)の回収や、それに関わるあらゆる事件を受け持つ七耀教会の騎士団。所属人員は、正騎士・従騎士合わせて1000人ほどしかおらず、それらを《守護騎士》と呼ばれる12名の特別な騎士たちが束ねている。また《メルカバ》と呼ばれる高性能な専用飛行艇を極秘に保有している。
登場キャラクター
ケビン・グラハム(CV:中尾良平)
「もし、この小悪党が《外法》に認定されてたら……あやうく君ら全員を“狩る”ことになってたわ」
七耀教会の巡回神父にして《星杯騎士団》に所属する騎士。半年前の「輝く環」事件では、さまざまな形でエステルたちに協力したが、その真の狙いは他にあり、冷徹とも言える実行力でそれを達成した。騎士団を束ねている12名の《守護騎士(ドミニオン)》の第五位にして、《外法狩り》という渾名で恐れられている実力の持ち主。
リース・アルジェント(CV:桑島法子)
「この5年間で……私もまた変わりました。今の私は星杯の従騎士。あなたを支え、守るためだけの存在です」
七耀教会のシスターにして《星杯騎士団》に所属する従騎士。かつて孤児だったケビンと共に、同じ福音施設(教会の孤児院)で育った。ルフィナという実の姉がいたが、5年ほど前に事故で他界してしまっている。独特なペースの持ち主で、趣味は食べること全般と教会の聖典を読むこと。武術の腕は確かで、伸縮自在の法剣(テンプルソード)を自在に使いこなす。
エステル・ブライト(CV:神田朱未)
「みんなで笑えば一人じゃないって実感できる! また会えるかもしれないってドキドキ、ワクワクもできる!」
遊撃士協会の正遊撃士で、半年前の異変を解決した功労者の一人。新人であった頃の未熟さは消えたが、お人好しは相変わらずらしい。現在では、パートナーであるヨシュアと共にリベールを旅立ち、帝国を始めとする各地の協会支部を回りながら修行の旅を続けている。ここ最近は仕事をこなしながら、ヨシュアと共に人捜しをしている毎日。
ヨシュア・ブライト(CV:斎賀みつき)
「何よりも大切なものを……この手で壊してしまう所だった」
かつて《漆黒の牙》の異名で《身喰らう蛇》に所属していた少年。半年前、哀しい別れを通じて自らの過去を乗り越え、新たな道を歩み始めた。現在は遊撃士として復帰し、エステルと共に各地を回りながら旅をしているが、ここ最近はかつての情報網を駆使して誰かの消息を探ろうとしているらしい。背も少し伸び、体つきも逞しくなって、そろそろ少年とは呼べなくなりつつある。
レン(CV:西原久美子)
「レンに向かってそんな口の利き方……よっぽど殲滅されたいみたいね?」
《殲滅天使》の異名を持つ《身喰らう蛇》の執行者No.XV。あらゆる情報を取り込み、環境そのものを操作してしまう異能の持ち主で、身の丈ほどもある大鎌を振るい、巨大人形兵器《パテル=マテル》を使役する。半年前、《パテル=マテル》と共に何処かに飛び去って以来、いまだ《結社》にも戻らず、出口の見えない孤独な旅を続けているらしい。
アラン・リシャール(CV:三浦祥朗)
「──行くぞ、諸君! 立ち塞がる壁を乗り越え、影祓う光を手に入れるために!」
元・王国軍大佐にして、クーデター事件を引き起こした人物。事件後は国事犯として服役していたが、《結社》による王都急襲の際、かつての部下たちを率いて危機を喰い止め、その功績をもって恩赦を得た。現在は惜しまれながらも軍を退役し、生まれ故郷であるルーアンの街で民間の調査会社「R&Aリサーチ」を立ち上げ、多忙な日々を送っている。
シェラザード・ハーヴェイ(CV:塩山由佳)
「ふふ……大した理由があるわけじゃないわ。ただ、色々と整理するために少し気分を変えたかっただけよ」
《銀閃》の異名を持つ女性遊撃士。エステルとヨシュアが旅立った後も、王都やロレントを中心に活躍し、その判断力から、若手の遊撃士の中ではリーダー的な存在になりつつある。ただし大酒のみで絡み上戸なところは全くといっていいほど変わっていない。一月ほど前、何を思い立ったか髪を切り、新しい仕事着をまとうようになった。
オリビエ・レンハイム(CV:子安武人)
「たとえ見世物でもここから始めるしか道はない。ならばせいぜい華々しく踊らせてもらうだけのことさ」
本名、オリヴァルト・ライゼ・アルノール。エレボニア帝国の皇子だが、庶出のため皇位継承権からは離れた存在。半年前、《アルセイユ》で帰国するというパフォーマンスを行ったことで異変を喰い止めた功労者として華々しく迎えられ、脚光を浴びることになる。現在は、公務や社交界などさまざまな場所に顔を出すことで自らの足場を固め、《鉄血宰相》ギリアス・オズボーンに対抗する力を付けようとしている。
アガット・クロスナー(CV:近藤孝行)
「どうしても捨てられねえものがあんだよ。いくら忘れようとしても絶対に忘れられねえものがな」
身の丈ほどの重剣を振るう赤毛の若手遊撃士。半年前の事件を通じて、己が剣を振るう理由を改めて見出し、現在では王国全土を回りながら後進の育成にも積極的に務めている。なお、ここ数ヶ月ほどは、月末の金曜日にツァイス市に立ち寄って、ラッセル家で夕食をご馳走になるのが半ば習慣化しているらしい。
ティータ・ラッセル(CV:今野宏美)
「こんなところで泣いているわけにはいかない……わたしはわたしに出来ることをやっていくって決めたんだから!」
ツァイス中央工房の見習い技師。2年半ぶりに戻ってきた両親が新たに始めた研究に触発され、自分なりの研究者としての道を模索し始め、答えを出そうとしている。料理上手な父・ダンから料理を教わってアガットに試食してもらっている一方、母・エリカがアガットを目の仇にしている理由が分からずに戸惑っている状況。
クローディア・フォン・アウスレーゼ(CV:皆口裕子)
「ここで何もしなければ王太女などという過ぎた名前を名乗っている意味がありませんから」
リベール王国の次期女王で、愛称はクローゼ。身分を隠してジェニス王立学園に一学生として在籍していたが、半年前の事件で王位を継ぐ決意を固め、自らの立場を明らかにした。現在では女王代理としてさまざまな式典・視察などの公務をこなしながら、重責に押し潰される事もなく、ひたむきに自らを高める日々を送っている。
ユリア・シュバルツ(CV:小松由佳)
「もし貴様が、この状況を引き起こした黒幕ならば……返答次第ではこの場で斬る!」
王室親衛隊の大隊長を任されている女性士官。高速巡洋艦《アルセイユ》の運用を一手に任されており、その多大な功績と実力から、早くも少佐への昇進が噂されている。しかしクローゼの護衛という、本来彼女が引き受けていた仕事からどんどん遠ざかっている状況に、本人は忸怩たる想いを抱いているらしい。
ジン・ヴァセック(CV:稲田徹)
「だがな……その強さがお前自身をも縛っているように俺には見える」
東方武術《泰斗流》の達人にしてA級遊撃士。半年前、同門の兄弟子であるヴァルターとの決着を付けた彼は事件後にカルバード共和国の遊撃士協会からの要請を受けて帰国した。なお、彼の昔馴染みであるキリカもまた、とある事情によってツァイス支部の受付を辞してカルバードに帰国してしまったようだが……。
ミュラー・ヴァンダール(CV:磯辺弘)
「破邪顕正……ヴァンダールの剣の前にまとめて砕け散るがいい!」
エレボニア帝国における武の名門・ヴァンダール家の出身。幼い頃からオリビエ(オリヴァルト皇子)と親交があり、共に少年時代を過ごすうちに、彼の剣として生きることを決意する。現在は所属する機甲師団から出向する形でオリビエの護衛を務めながら、《鉄血宰相》の動向に目を光らせる日々を送っている。
ジョゼット・カプア(CV:庄司宇芽香)
「一緒にいるからにはせいぜい協力してあげるから遠慮はしないでよね!」
かつて2人の兄と共に「カプア空賊団」を率いていた娘。元々はエレボニアの貴族だったが、莫大な借財によって領地を奪われ、それを取り戻すために空賊団を結成し、リベールで荒稼ぎをしていた。半年前の事件の功績によって恩赦を受け、現在は飛行艇《山猫号》を活かした「カプア特急便」という運送会社の経理・営業担当として、多忙な日々を送っている。
アネラス・エルフィード(CV:大河内雅子)
「わ、私にだって守りたいものはあります! それは……それは剣だと守れないって仰るんですか!?」
可愛いものにはとにかく目がない若手女性遊撃士。趣味もぬいぐるみ集めだったりするが、基本的には体育会系のノリで、事件後も自らの剣の道を見出そうと、ひたむきに修行する毎日を送っている。そんな彼女の元に、かつてリベールで暮らしていた祖父からの手紙が届き、実は彼女の祖父が《剣聖》カシウス・ブライトの師だったことが判るが……。
「空の軌跡 the 3rd」の魅力を紹介!
「空の軌跡FC」と「英雄伝説 空の軌跡SC(以下、空の軌跡SC)」では、エステルを主人公として物語が展開していきましたが、「空の軌跡 the 3rd」では、「空の軌跡SC」の新キャラクターとして登場し、物語の終盤にはプレイヤーを大きく驚かせたケビンを主人公として物語が展開していきます。
各地を旅しながら進んだ過去2作とは物語の進行も大きく変わり、今作ではこれまでに登場したキャラクターたちが謎の空間《影の国》に飛ばされてしまい、そこから抜け出すことが目下の目的となります。
迷宮のような空間を進んでいくうちに仲間と出会ったり、さまざまなサブエピソード、ミニゲームを楽しむことができたりする中で、メインストーリーには直結しないものの、軌跡シリーズの世界観を理解する上では欠かせないキーワードが登場します。中には、最新作「閃の軌跡」に大きく関わるものもあるので、過去2作同様に予習にはピッタリのタイトルです。
もちろんケビンに隠された過去が大きく関わってくるメインストーリーも注目で、特にケビンが終盤で自身のトラウマから解放されるシーンは本当に胸が熱くなりました。これはぜひ実際に遊んでもらって感じてほしいと思います。
戦闘システムには大きな変更はないものの、やはり総勢16名ものパーティキャラクターが登場するということで、過去2作でそれぞれに成長したキャラクターたちが紡ぎだすドラマや、キャラクターごとに特徴的なクラフトやSクラフトといった、軌跡シリーズの魅力がより楽しめます。特に、今作で初登場となるリースを除くと、レン、リシャールの2人が初めてパーティとして参加していますので、多彩な編成で楽しめると思います。
一方で、それだけ魅力的な16人のキャラクターの中から4人のパーティを選ぶというのは少々悩んでしまうところです。そこで今作では、「リモートアビリティ」というシステムが新たに搭載されています。
これはパーティに参加していない待機キャラの中から1名を「支援メンバー」に設定することで、パーティキャラクターにステータスのボーナスが付加されるというものです。もちろん誰が支援メンバーになるかによってその効果も大きく変わってきますので、戦略的な面で考えるもよし、パーティには入れられないものの、一緒に戦いたいというキャラを入れるもよしと楽しさがより広がっています。
シリーズを通してみても一味違った独特の楽しみ方ができるだけでなく、最新作「閃の軌跡」との関連性もある「空の軌跡 the 3rd」。過去2作と同様、Windows版、PSP版、そしてHDリマスターとなるPS3版が出揃っていますので、ぜひ遊んでみてください!