【CEDEC 2013】キャラクターのポージングには意外な秘密が?「身体の動きと原理から知る、闘うインゲームアニメーションの中身」のセッション内容をお届け

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8月21日~23日の3日間にわたってパシフィコ横浜にて開催されたゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2013」。ここでは、「身体の動きと原理から知る、闘うインゲームアニメーションの中身」の講演内容を紹介する。

本講演では、バンダイナムコスタジオ ET開発本部 アニメーション部 アニメーション課 元梅幸司氏によって、身体の動きと原理に基づき、アニメーション制作で役立つポイントなどが語られた。

関節と骨格筋の働き

キャプチャースーツを着て講演を行った元梅幸司氏。<br />講演中はさまざまな動きを自ら披露してくれた。
キャプチャースーツを着て講演を行った元梅幸司氏。
講演中はさまざまな動きを自ら披露してくれた。

元梅氏はまず、今回の講演の趣旨について説明。筋肉や関節、力の伝わり方などを知ることで、「動きを見る観察力がアップ」「動きを組み合わせる力がアップ」「人に言葉で伝える力がアップ」といったメリットが得られ、オマケにスポーツや筋トレ、ダイエットといった普段の生活にも役立たせることができるのではと述べた。

講演内容は大きく5つのテーマに分かれおり、この後は早速ひとつ目のテーマ「関節と骨格筋の働き」についての解説が行われた。そもそも「関節」と「骨格筋」とは何か。関節は“骨と骨が連結する部分”であり、関節の運動を支える筋肉を骨格筋と呼称するのだと元梅氏は言う。

ひとつの関節には2つ以上の骨格筋が対になっており、「関節を動かす」「関節が動かないように固定する」「動いた関節の速度を速めたり遅くする」「運動を停止させる」といった働きをするのだ。骨格筋と呼ばれる筋肉が関節を動かし、関節が動くことで体が動くため、人体キャラクターアニメーションでは「骨や関節を動かしているのではなく、骨格筋を動かしていると意識すること」が大切になるという。

肝心の筋肉の働きは、対になっている筋肉のうち片方が縮むと、もう片方の筋肉が引き伸ばされることで関節が動くようになっている。例えば肘を曲げる場合、腕の内側の筋肉が縮むことで肘の関節が曲がるといった感じ。筋肉は自ら伸びることはなく、対になっている反対側の筋肉が縮んだり、あるいは重力や反対の手で引っ張るといった、外部の力が作用して筋肉が伸びるのだ。

関節を曲げることで筋肉が働いて見えるため、こうした働きをキャラクターのポージングに活用できる。元梅氏によると、連続した関節をまげて“Cの形”を作ると、「いかつい」「力強い」「敵意」といった印象を持たせることができるという。各関節を曲げるほど力強くなるが、その分、スマートさが欠けていくようだ。

一番右のキャラクターは直立しているだけに見えるが、背中側の筋肉を働かせて胸を張ることで力強さを表現している。

Cのほかにも、Sの形では「しなやか」「やわらかい」「惑わす」といった印象を持たせることができるという。このSの形は、特に女性の体の中に描かれることが多いとのこと。力強いはずの動きにどこか違和感がある場合、どこかにSの形が隠れていることも多いのだとか。

こうして説明を受けると、「なるほど」と納得して筋肉の動きを見つけやすくなった気になるが、実際にキャラクターが動いていると、どこの筋肉が働いているのか分からなくなる時が来るという。その理由は、筋肉には下記のスライドにあるような3つの状態変化が存在するからだ。

いきなり知識を吸収してすぐに実践…というのは難しいものだが、このように身体の仕組みを知っていくことで、より筋肉の働きを見極められるようになるという。講演はアニメーションに向けたものだが、先のポージングのように筋肉の働きがもたらす効果を知るだけでも、キャラクターの立ち絵で活用することも可能になるだろう。

作用・反作用の法則

続いてのテーマは「作用・反作用の法則」について。これは簡単に言うと“押せば押し返される対の関係”のこと。普段意識することはないが、地面に立っているだけでも地面を押し、そして地面から押し返されているため、この法則がないと立っていることもできなくなってしまうのだ。

作用・反作用の関係は大きな力を出す際に必要となり、この仕組みを知ることで効率よく大きな力を出したり、作りたい行動を実現するためには事前にどう身体を動かせばいいか分かってくるという。本当に大きな力が出るのか気になるところだが、例えばジャンプをするだけでも、自分の体重を支える何倍もの力を発揮しているとのこと。

こうした作用・反作用は、格闘ゲームでは欠かせない“パンチ”のアニメーションでも活用することができる。仮に右ストレートを放つ場合、体の前で構えていた左手を引いて作用を起こし、その反作用を利用して拳を突きだすことで、理にかなった力強いパンチになる。

現実でもパンチングマシーンを殴れと言われたら、右半身を引いて振りかぶるようにパンチすると思うが、力の働きとしては左手側を引くことで作用が起こり、その反作用を利用しているから勢いのついたパンチになるというわけだ。

作用・反作用はパンチのような直線的な動きだけでなく、回転動作に対しても必ずペアで力が存在する。これは座が回転する椅子を使えば、両足を地面から浮かした状態で両腕を左右同じ方向へブンブン振ったり、両腕を交差したり開くといったことをすれば、簡単に実験できる。

両腕を同じ方向へ振ると椅子が反対側に回るため安定しないが、腕を交差するのであれば時計回りと反時計回りの両方に力が働く。片方の腕の作用に対して逆の腕も反対側に作用を起こすので反作用が相殺され、身体への影響がなくなり椅子が回転せず、安定して腕を振ることが可能になるのだ。

身体を安定させて力強い回転運動をするには、相反する力を発揮させることがポイントとなるが、今回のように逆側でも作用を起こすだけでなく、地面からの反作用を活かすことが重要だという。今の実験では回転する椅子に腰かけ、足を浮かした状態だったが、今度は足を地面に付けて両腕を同じ方向に振ってみれば、身体が安定して腕を強く振れることが体感できるだろう。

ここで分かるのは、地面は体の回転する方向とは逆向きの回転力を体に与えるということ。そのため、回転動作中に膝や胴体が緩んでしまうと地面からの回転力が上手く伝わらず、力強く武器を振ることができなくなってしまう。アクションゲームなどにおいて武器を力強く振る際には、それに合わせて下半身や胴体の筋力がしっかり働いている安定感を見せることが大切になるとのこと。

反動動作

3つ目のテーマには、ジャンプやパンチなどをする直前の動き「反動動作」が挙げられた。このテーマで重要な言葉となるのが、反動動作中に働く「拮抗筋」と「主働筋」、そして主働筋内に生まれる「弾性エネルギー」だ。

まずは反動動作の具体例として、ジャンプをする前にしゃがみ込む動作があると説明された。ジャンプをするため素早くしゃがみ込むと、体重と落下の作用により、体重分の反作用と落下の反作用が生まれ、高く飛ぶことが可能となる。

ジャンプをするまでの一連の動作でさらに詳しい説明がなされた。しゃがみ込むという反動動作をすると、太ももの裏の筋肉が縮み、前の筋肉が引き伸ばされた状態となる。この時にバネのような弾性エネルギーが溜まり、立ち上がる際には、伸びている太ももの前の筋肉が弾性エネルギーの分、強く縮みながら力を発揮できるという。

攻撃を繰り出す際には、先のパンチングマシンを叩くときのように、パンチをする方向とは逆に体を捻ることが反動動作になる。こうした反動動作を行うため、後方に回転させる時に使う筋肉を拮抗筋、前方へ回転させるスイングで使う筋肉を主働筋と呼ぶようだ。

大きな力を発揮する弾性エネルギーだが、これは急激に引き伸ばされた筋肉が自分の意志とは関係なく反射的に縮もうとして起るため、反動動作はパンチなどを行う直前でなければ効果が発揮されない。目に見えない弾性エネルギーではあるが、これを意識したアニメーションを作ると躍動感や力強さが増すとのこと。

回転スピードのコントロール

次は「回転スピードのコントロール」について。腕や脚、武器などを回転させる際、回転軸と呼ばれる場所に近づけたり、逆に遠ざけることで“慣性モーメント”を変化させ、回転スピードをコントロールすることができる。慣性モーメントについて深く知ろうとすると、複雑な計算式が必要になってくるのだが、ここでは“回転のしやすさ、しづらさを表すもの”という認識で進められた。

回転スピードをどのようにコントロールするのかについてだが、これも簡単な実験方法がある。立った状態で両腕を水平に振る運動をする際、肘を伸ばした状態と曲げた状態で行えばいいのだ。この時、胴体が回転軸となるのだが、回転軸から腕の重心が離れるほど腕が回しにくくなる。また、腕を回転させる半径が長いほど慣性モーメントが大きくなるので、この2点を意識すれば回転への影響力が分かるだろう。

慣性モーメントと動作の関係性については、下記のようにまとめられた。

これらはパンチやキックといった動作でも、らしく見せる際には重要となるが、面白いのが空中でも回転をコントロールすることができるところ。例えば空中で両手持ちの武器を使って横斬り攻撃をするとき、回転軸(胴体)に対して回転半径が長くなるよう足を伸ばすと、下半身が回転しにくくなるため、強く攻撃を出すことが可能になる。攻撃をただカッコいいと思うのではなく、こうして理にかなった動きになっているのかを考えると、ゲームプレイ時にキャラクターの動きを見る目が変わってくるかもしれない。

運動連鎖の原則

最後のテーマ「運動連鎖の原則」は、これまでの要素をまとめた内容になっていた。具体的な内容については、右腕でパンチを放つ動作を基に説明が行われた。

まず、パンチを繰り出すために踏み込んだ足が接地すると、足を付いた作用で地面から反作用が返ってくる。そして足が止まったことで膝のスピードが増し、膝の次は腰のスピードも増大する。さらに胸、肩へと速さが伝わっていき、最後はパンチのインパクトに力が集約される。身体をベースに考えると複雑そうに見えるが、身近なところではデコピンも運動連鎖をイメージしやすい動作となっている。

元梅氏は、運動連鎖を作るコツが2つあると話す。ひとつが“しっかりとした中心部を作る”ことで、土台となる下半身や胴体の力が不十分だと、最終的に生み出せる力が弱くなってしまうとのこと。そしてもうひとつが“関節を筋肉でタイミングよく固定する”ことだ。これは次の部位が加速する際、その反作用を支えるために、手前の部位が減速して止まることが必要になるからだという。

この後はまとめとして、講演で紹介された各項目のおさらいと合わせ、実際にキャラクターのアニメーションを制作する際にチェックするといい項目の例として、下記の8つが挙げられた。

・各フレームのポージングには力が入っているか?
・作用、反作用の力は発揮されているか?
・作用、反作用によってバランスは整えられているか?
・目的に対して無駄な動きはないか?
・反動動作がしっかり見えるか?
・拮抗筋と主働筋の関係は正しいか?
・下半身や胴体の姿勢は安定しているか?
・地面からの反作用をうまく打撃に伝えているか?

元梅氏は最後に「こうした仕組みや原則を理解することで、動きに無駄がない理に叶った合理的動作を知ることができ、同時に非合理的な動作も見えてきます」と述べた。ただ、合理的な動きは実戦よりも型や演習に近いため、より闘う動きにするためには、実戦のテクニックを知りつつ、合理的な動きと混ぜ合わせることが重要とも話していた。

合理的なスタイルを忠実に再現しても、個性の薄いキャラクターになってしまう可能性があるため、カッコよく、派手にするためには型破りな動きも必要になってくるのだ。しかし、“型を習得してこそ型破りができる、型を学ばないのは型無しという”との言葉もあるため、「人並み外れた能力を作るには、まず人並みの能力を学ぶことが大切なのではないでしょうか」と講演を締めくくった。

※画面は開発中のものです。

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