5pb.が7月24日に発売したPS Vita用ソフト「コープスパーティー BLOOD DRIVE」。天神小学校を廻る数々の謎が明らかになる本作の、プレイインプレッションを紹介しよう。
天神小シリーズの完結編として、ついに発売された「コープスパーティー BLOOD DRIVE」は、PSP用ソフト「コープスパーティー Book of Shadows」以来、約3年ぶりにホラーへ立ち返った作品だ。天神小学校からの脱出、そして篠崎家を訪れたことによる悲劇が描かれた「Book of Shadows」が、物語が佳境を迎えたところでのエンディングだったことは、シリーズファンの記憶にも強く残っていると思う。
そこから、ラブコメを大胆にフィーチャーした「コープスパーティー 2U」や、1作目「コープスパーティー ブラッドカバー リピーティッドフィアー」をベースにしたアニメ作品「コープスパーティー Tortured Souls ― 暴虐された魂の呪叫 ―」が発売されたりと、さまざまな展開を見せてきた本シリーズ。しかし、天神小学校を取り巻く物語の顛末はなかなか見えてこなかったため、ファンとしては、「BLOOD DRIVE」はまさに待望の新作と言えるだろう。
本稿では、ハードをPS Vitaに移した本作がいかなる真価を遂げたのか、そして一歩先を行くのも躊躇ってしまうほどの恐怖を、プレイインプレッションを通して紹介していきたい。
シリーズ初、3Dで描かれる天神小学校の恐怖
「Book of Shadows」の最終話から続く物語が描かれる本作。一度は天神小学校からの脱出に成功したあゆみや哲志、直美といった面々だが、その裏で崩壊したと思われた天神小は呪いの力を拡大していた。無惨に殺された仲間たちを取り戻すため、残された謎を解明するため、さまざまな思いを持ったキャラクターが、一人、また一人と天神小学校に戻っていく。
本作の大きな特徴は、探索パートが3Dで表現されている点にある。これまでのシリーズ作では、2Dでの表現であったり、テキストを読み進めるタイプのアドベンチャーゲームであったり、あるいは幻覚・幻聴をゲームシステムに落とし込んだ「精神汚染度(Mental pollutionシステム)」を採用したりと、あらゆる手法でプレイヤーを恐怖に陥れてきたが、今回もまた、一味違った恐怖を生み出している。物陰に潜む幽霊や、不気味にうごめく触手は、3Dだからこそできた表現だろう。
それに加えて、もはやおなじみになった3D音響は本作でも健在。全方位、どこから聞こえてくるか分からない緊張感が、恐怖をより高めている。普段の会話はもちろん、耳元で囁かれる声、遠くで聞こえる呻き声、さらには何かを踏んだときの「グチャッ」という効果音、それらすべてが一体となって襲ってくるので、背筋が震えるような体験を序盤から何度もすることになる。
本作のメインとなる探索パートでは、広大な天神小学校を彷徨うことになる。3Dになっても迷いやすい構造や凶悪な罠の数々はそのままで、さらに以前よりも暗くなり周囲を見渡すことも困難になっている。移動する際には、懐中電灯はぜひとも利用したいところだ。
懐中電灯はゲーム開始時からすぐに使えるうえ、ボタンひとつで簡単にオン・オフを切り替えられる。中には懐中電灯で照らさなければ判断の付かない罠もあるので、慣れない場所の探索には必須といえるアイテムだ。
ただし懐中電灯を使用したまま時間が経過すると、電池が切れてしまい、暗闇の中を歩くはめになる。電池は学校内のどこかに落ちているので、予備は常に持っておきたい。恐怖に打ち勝つためにも灯りは非常に重要だが、一度通って罠の位置を把握している場所は、懐中電灯を切って電池を節約するなど、ときには冷静なプレイも心がけたい。
ゲームはチャプターごとに主人公となるキャラクターが変わる仕組みになっており、ときには複数人のキャラクターを切り替えながらプレイすることも。罠を踏んでしまうとヒットポイントが削られるのだが、このヒットポイントはキャラクターごとで別々になっている。終盤になると探索にかかる時間は自然と長くなり、罠も巧妙になるので、回復アイテムも含め、上手くやりくりすることが、生き延びるポイントになってくる。
また、プレイしているとところどころに肉片のような有機物があることに気づくだろう。これも罠の一種で、踏んでしまうと触手に捕まり、黒化が進んでしまう。黒化の治し方は少し特殊で、学校内に配置された木彫りの人形を調べる必要がある。
そして、どんなに注意していても退治しなければいけないのが幽霊の存在だ。幽霊はどれもが神出鬼没で、執拗に追いかけてくる。一度狙われてしまうと、教室に入ったり、階段で別のエリアに逃げたりといった策をとっても、なかなか振りきれない。むしろ、焦ってしまい袋小路入り、退路を断たれることも。
さらにキャラクターのスタミナも追い打ちをかけてくる。本作では走ることも可能なのだが、スタミナが切れると徐々にスピードが落ち、最終的に息が切れて立ち止まってしまう。
幽霊から逃げる手立てのひとつとして、ロッカーに隠れるという方法がある。これは隙を見て近くにあるロッカーに身を潜め、幽霊をやり過ごすという、ゲームに限らず映画などのホラー作品ではよく見る演出だ。そして、よく見る演出だからこそ、もしも見つかってしまったときどうなるかが容易に想像できるため、恐怖感はさらに増していく。
以上が、本作を体験してみてのインプレッションとなる。ストーリーはもちろんだが、システムのひとつひとつが怖さを助長させる要因になっており、ホラーゲームとしての緻密さがよく分かる。過去作で培ってきたものと、本作で新たに手に入れたものが上手く融合している傑作だ。
また、本作がシリーズ最大規模のボリュームとなっていることにも触れておきたい。ボリュームが多ければいい、というわけではないが、あらゆる角度からひとつのストーリーを堪能できるので、これまでのシリーズをプレイしてきた人であれば、確実に楽しめるだろう。