【CEDEC 2014】現場で働く女性クリエイターが徹底談義!「ゲーム業界における女性の働き方」をレポート

発表会・イベント取材
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2014年9月4日~7日の3日間にわたり、パシフィコ横浜にてゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2014」が開催された。ここでは、マトリックスの髙﨑奈美氏、ゲームドゥの中村心氏、サイバーコネクトツーの渡邉愉香氏、イニスの原田雅子氏によるパネルディスカッション「ゲーム業界における女性の働き方」の内容をお届けする。

本講演は、ゲーム業界で働き続けるために女性としてどんなこと感じ、乗り越えてきたかを、現場で働く女性クリエイター同士が語り合う座談会形式で行われた。

この記事を書いている自身も、働きながら結婚というライフイベントを迎えた女性なので、本講演を非常に興味深く聞くことができた。家庭と仕事の両立は可能なのか?その後の出産・育児を経験した時の自分は、果たして「仕事」を続けられているのだろうか?そういった疑問を4人の女性が自身の経験をもとに答えていく。働く女性はもちろん、男性にもぜひ目を通してみてほしい。

髙﨑奈美氏 中村心氏
渡邉愉香氏 原田雅子氏

【議題1】ゲーム業界は女性にとって働きにくいのか?

髙﨑氏が本講演を開催するきっかけになったのはある1つのデータだった。2011年の調査によると、女性開発者の割合は12%。そのうち、5年以上働き続けている女性の割合はわずか5%だった。

だが、世間一般のデータで見ると、働く女性の割合は42.7%と半数近くいることがわかる。果たして本当にゲーム業界は女性にとって働きにくい業界なのだろうか?

パネリストの答えは一様に「働きにくいということはない」というものだった。なぜなら、「好き」なことを仕事にしているのだから「女性だから」という理由で働きにくいとは感じたことはない。もしあったとしても、「好きなことだから耐えられる」という、至ってシンプルなものだ。

「好き」を仕事にするということは、それだけで「働きにくさ」という大きな問題を解決する力を持っているのかもしれない。

【議題2】苦労したこと、働きにくくなったことはありましたか?また、その解決法は?

しかし、先ほどのデータを見るとゲーム業界における女性の割合が低いのは明らかだ。ここで、パネリストの経験上、苦労したことがあった時、どのように解決したのかという議題に移る。

この質問について中村氏は「自分の夫が退職して会社を立ち上げた時に『奥さんが会社に残っているのはどうなの?』っていう問題になったことがあって…働きづらいなあっていう状況になったことはありましたね」と語った。

【議題3】働き方の変更、続けられる環境の提案

自分に合った働き方を見つける

例えばデザイナーとして入社。だが、クリエイター職は労働時間が長くなりがち。年齢を重ねるにつれて体力も落ちてくるし、「自分の時間」も確保したくなってくる。そんな時、無理をしてその職業を続けるよりは、マネジメントの方向にシフトするなり臨機応変にキャリア変更するのもひとつの手段だと原田氏は語る。

実際に、職業の中には女性の方が向いているものもある。例としてプロジェクトの進捗管理を担当する「プロジェクトマネージャー」などはきめ細やかな対応が求められるため、男性より女性のほうが向いている場合があるとのこと。確かに、年齢に応じて現場から管理に移行することで、仕事の幅も広がり新たに見えてくるものがあるだろう。

もちろん、現場の仕事が好きであれば、ずっと続けるという選択肢もある。現在プログラマーとして活躍している渡邉氏は、ディレクションやその先の仕事は機会があればやってみたいが、やはり現場で長く働きたいので、大きく今のキャリアを変えることは考えていないという。

キャリアの考え方は人それぞれ。自分に合う働き方をしっかりと見極めたいところだ。

続けられる環境づくりや制度

「子連れ出勤」が可能な会社も!

ここで、原田氏が自社で取り入れている「子連れ出勤」が話題にあがる。イニスでは子どもを職場に連れてきて仕事ができるという。

それは、原田氏自身が育児をしながら仕事をしていた時期に、家にこもりきりの状態がとても辛いと感じ、時々子どもを自社に連れてきて仕事をしていたことから始まった。「そういう時期の女性にとって、社会と接するということがとても大切なんだなって身を持って感じました」と原田氏は語る。

もちろん、毎日子どもを連れてくる社員はいないが、風邪ではなく単に子どもに微熱があるだけなのに保育園が受け入れてくれなかったなど、そういう場合に利用しているという。

「賛否両論あるかもしれませんが、今のところ大きな問題は起きていません。女性に限らず男性も、育児をしながら働くすべての社員をなるべくサポートしたいと考えています」と原田氏は語る。

「在宅勤務」や「時短出勤」制度を利用

中村氏が自社で取り入れている制度は「在宅勤務」や「時短出勤」。出産してまもなくは自宅で作業をし、育児中はパートナーと育児を分担して時短で出勤する社員がいるという。「うちは人数が少ないので、個人の状況に応じて適切な制度を利用したり、制度を自由に変えたりしています」と中村氏は語る。

サイバーエージェントで導入された新制度「macalon(マカロン)パッケージ」

続いて、今年5月にサイバーエージェントで導入された新制度「macalon(マカロン)パッケージ」が取り上げられた。「macalon(マカロン)パッケージ」とは、出産・育児を経ても女性が長く継続して働くことができる職場環境をめざして導入された制度だ。

サイバーエージェントはもともと女性社員が多く、割合としては32%となっている。そのうち「ママ比率」は14%、育休後の復帰率はなんと96%だという。最初に見たゲーム業界における女性の割合と比べるとその差は歴然だ。

「macalon(マカロン)パッケージ」の大きな特徴のひとつに「エフ休」がある。これは世間一般では「生理休暇」として知られている制度である。「生理休暇」を導入している会社は多いかもしれないが、その名称ゆえの「取得しづらさ」を排除したのが「エフ休」だ。利用用途がわからないよう、ぼやかすことにより、女性の心理的負担を軽減している。この命名の気配りひとつを取っても、「女性社員の割合」に大きく反映されるゆえんかもしれない。

以下に「macalon(マカロン)パッケージ」の概要を記載しておく。

「macalon(マカロン)パッケージ」

1.エフ休

女性特有の体調不良の際に、月1回取得できる特別休暇。今後、通常の有給休暇も含め、女性社員が取得する休暇の呼び方を「エフ休」とすることで、利用用途がわからないようにし、取得理由の言いづらさ、取得しづらさを排除します。(エフ=FemaleのFを指します)

2.妊活休暇

不妊治療中の女性社員が、治療のための通院等を目的に、月1回まで取得可能な特別休暇。急な通院や体調等に考慮し、当日取得が可。本休暇取得の際には「エフ休」という言葉を使用することで、周囲に知られず取得が可能。

3.妊活コンシェル

妊活に興味がある社員や、将来の妊娠に不安がある社員が、専門家に月1回30分の個別カウンセリングで相談できる制度。このほかにも、専門医による社内セミナーの開催およびクリニックの紹介を実施。

4.キッズ在宅

子どもの急な発病や登園禁止期間など、子どもの看護時に在宅勤務できる制度。契約した労働時間を上限に利用が可能。

5.キッズデイ休暇

子どもの入園・入学式や親子遠足、参観日といった学校行事や記念日に取得できる特別休暇。年に半日休暇2回の取得が可能。

「サイバーエージェント」プレスリリースより引用

仕事での女性に関する悩みにパネリストが答える「ズバっと解決TIME!?」

ここで、髙﨑氏が事前にFacebookやTwitterで募集していた質問にパネリストが答える時間が設けられた。

――「生理痛が毎月ひどくて、上司は男性ばかりなので言いにくいです。遅刻が多いので気が引けます」

この回答には皆一様に「まずは病院に行くこと」だった。「生理痛に限った話ではないと思うんですが、体調の悪い時に最初にすることって会社に相談することじゃなくて病院に行くことだと思うんですよね」と渡邉氏。

「もし、あまりにも痛みがひどい場合は何らかの原因がある可能性があるので、なおさらだと思うんです。病院に行く時間がないというのであれば、会社に相談する必要がありますが…」と続けた。まさに「ズバッと」な解決だ。

また、「生理休暇」を利用するという手もある。実際に中村氏の会社では制度として導入されているが、取得する女性社員はいないという。この回答には、髙﨑氏も「誰も取らないですよね」と同意。その後、中村氏は「macalon(マカロン)パッケージ」の「エフ休」のような呼び方にしたら取ってくれるかもしれないと続けた。

――「女性向けのゲームの仕事を受託しましたがスタッフは男性ばかりです。女性の雇用を増やす、または長く続けて貰うための秘訣があれば教えて下さい。」

この質問には中村氏が「男性ばかりなのに女性向けゲームを…?なんで受けたんでしょうね?理由はわからないんですが、女性を雇用するのがこの仕事のためなのか、それとも会社の方向性として女性向けに力を入れていくからなのか、そこはしっかりとしたほうがいいかもしれないですね」とコメント。

また、原田氏は「新たに女性を雇用すると、考えなければならないことは本当にいっぱいあります。女性特有の…いさかいなどもありますし、男性だけの環境にはないことが出てきます。なので、ある程度の覚悟は必要かと思いますね(笑)」とコメント。さらに「でも、女性社員が入ることによって、男性社員が身なりを気をつけるようになった、とかそういう事例もあるみたいですよ」とも語った。

その後は、「男性のニオイ問題」など女性が職場にいると出てくる独特の問題に話が移った。

――「仕事を長く続けるために、行ってきた事や、気をつけた事があれば教えて下さい」

無理をしない

「無理をしないことでしょうか」と渡邉氏。「明日できることは今日やらない。例えば、終電まで無理して次の日遅刻する、じゃ…全然意味がないですよね。自分1人で抱えている仕事であれば、今日はある程度のところで切り上げてリセットして、次の日に朝から全力で取り組んだほうが効率的だと思います。プログラマーだけど、徹夜とかもほとんどしないです」

さらに、「遊ぶときは思いっきり遊んで、それを使っていい作品を創ります」と語った。

常に創造力を持ち、モチベーションを保つ

中村氏は「自分がこれまで仕事を続けてこれたのは『ゲームを創りたい』って気持ちが常にあったからですね」と語った。「常に創造力を持って、仕事するようにしています」

また、原田氏も同意見で「自分の仕事にモチベーションを常に見いだせているかという所が大きいと思います」とコメント。また、原田氏はいつもオフィスのトイレを清潔にしたり、相談しやすい環境を作ったりと、社員が仕事をしやすい環境を作っているとも語った。

仕事と家庭は必ずしも両立しなくてもいいのでは?

髙﨑氏は「両立って、しなきゃだめですかね?」と疑問を投げかけた。

「仕事したければすればいいし、手を抜く術はあるじゃないですか、最近。お金を払えば解決するところもあるし。無理に両立しなくてもいいんじゃないのかなと。男性も最近は育休をとるようになったとも聞くし、それもアリじゃないかと思います。もちろん、ご主人に『ちょっと今忙しいんだけど…』って話しやすい関係を作るのは大事だと思いますけどね」

この件については、中村氏も「『両立』って意味では、私は全く出来てないです」とコメントしている。現場で働く女性は無理に「両立」を目指そうとはしていないようだ。女性ひとりで家事や育児を背負うより、代行サービスの利用やパートナーの協力を得てうまく仕事を続けていこうとしている。これは、多くの働く女性を安心させてくれる言葉かもしれない。

労働時間が短くなっても「時間の質」を上げることでカバー

「人間って不思議なもので、時間がない時のほうが色々なことを考えるんですよね。」という原田氏の意見に、髙﨑氏は同意。さらに「私は子どもを持った状態でゲーム業界に入ったので、逆に時間が短い状態でスタートしたんですよね。だから、そのためには『時間の質』を上げるしかないと思って。長時間ではなく『1時間』の価値を上げるために、より効率化と技術力の向上を学んできました」と続けた。

仕事における「時間の質」というのは男女問わず関係してくる。「女性として」長く働くということは、「会社に必要な人間として」長く働くことにもつながるのかもしれない。

さいごに

最後には、パネリストがすべての働く女性に向けて、それぞれ思い思いのメッセージを送った。

原田氏

「色々なカルチャーを背負った人たちがひとつの場所に集うということ。多様性を認めつつ、いい仕事をお互いしていけること。そういったことに対して皆が積極的に話をできる環境を作ることが大事なのかなと思います」

中村氏

「最近は『女性だから』という理由でピックアップするような風潮がありますよね。でも、『女性だから』というよりは、個人的な能力とか魅力を認められるように、女性の立場がなっていったらいいなと思います。そうなれるよう、女性の皆さんに頑張っていって欲しいなと思います」

渡邉氏

「私は小さい頃からゲームが好きだったので、ゲームを作る人になるんだと思って、ずっとこれまでやりたいことだけやってきたんですね。なので、『男性』とか『女性』とかってほとんど考えたことなかったんです。だけど、結局は『好きなことを続けたいかどうか』とか『自分が何をしたいか』っていうのが、最終的に何をするかにつながっていくと思います。だから、長く続けたいのであれば、『続けるために何をすればいいか』考えたり、若い方々にはそういうことをしてほしいなと思います。

『困っているけど、どうしよう』で思考停止してしまう方がいますが、困ったら、『自分が何をしたくて、そのためにはどうしたらいいか』をよく考えてみてほしいなと思います。」

髙﨑氏

「私もあまり『男』とか『女』とか言いたくないんですね。あんまりこだわりたくないんです。でも、こういうことを調べ始めていくと、悩んだまま終わっている人が結構多い。もったいないなと思いました。

せっかく好きなことを仕事にできたのに、女性だから辞めるって、すごくもったいないじゃないですか。女性だから活かせることもあると思うので。自分の能力で食べていくって、本当の意味での女性の自立につながるとも思っています。離婚したとか、死別したとか。そういう時、自分の能力があるだけで自分を見失わないで済むと思うので。

環境づくりとか、提案だとかで解決する方法はいくらでもありますので、女性だからしょうがないと諦めるのはやめて欲しいなっていうのが、私の伝えたいことです。」


※画面は開発中のものです。

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