“究極の一手”に思考を巡らせる傑作スマートフォン用アプリ「TERRA BATTLE」のレビューを掲載

0 2014年10月20日 18:00

担当：kawasaki

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「TERRA BATTLE」は、その見た目とは裏腹に、コアゲーマーも大満足のスマートフォン用アプリである。業界屈指のクリエイターが放った渾身の一作を、渾身の想いを込めてレビューしよう。

知れば知るほど深まる戦術とキャラクター育成
もう止まらない！24時間フルタイムで脳内テラバトルが勃発！

「TERRA BATTLE」は、「ファイナルファンタジー」シリーズなどの生みの親として知られる、坂口博信氏が率いる開発会社ミストウォーカーが手がけた、新作のスマートフォン用アプリだ。パズル要素を含んだシミュレーションRPGで、マス目のステージ上で敵を挟んで戦うという、少なくとも画面の見た目的にはシンプルなゲームである。ところが、コアゲーマーの筆者は10月10日のリリース以来、自分でも呆れる位このアプリにハマっており、その迸る想いを書き連ねてみたいと思う。

まずは基本的なゲームシステムから見ていくと、プレイヤーは最大6人によるパーティーを編成しバトルへと赴く。バトル中は味方キャラクターを自由にスライドさせ、それにより敵を隙間なく挟み込むと、その両キャラクターにより攻撃が行われる。要するに「はさみ将棋」で、実際のゲーム内の雰囲気は、こちらのムービーを見てもらえば瞭然だろう。

そしてここからが肝心なのだが、挟み込んだキャラクターの直線上（縦/横）に別のキャラクターが並んでいる場合、“連鎖”が発生し、スキルや魔法で支援してくれる。さらに、味方同士をスライドで重ねると位置が入れ替わるため、これを利用して意図的に各キャラクターを動かし、連鎖を発生させることが可能だ。上手に動かせば、あっちこっちで挟んだうえに連鎖も行い、一網打尽にできるのである。より効率の良い連鎖を狙うべく、一筆書きでクルクルとスライドさせていく操作感は、「パズル＆ドラゴンズ」のイメージに比較的近い。

それならば、キャラクターを延々とスライドさせつつ、ベストの配置をじっくり模索すれば良さそうに思えるかもしれない。しかし、ここで強烈に悩ましいのは、1ターンの間にキャラクターを動かせるのは1回限りで、しかも一度動かし始めてからは「4秒」の時間制限があること。一方、キャラクターを動かさない限りは、どれだけ考えても大丈夫だ。そのためプレイ中は熟考を重ね、「これだ！」という道筋が閃いたら、的確かつ迅速にスライドさせて挟み、連鎖を決める。このように緩急の効いたゲームプレイが本作ならではの特徴で、同時に大きな魅力へと繋がっている。

一発勝負で4秒以内にスライドさせることを踏まえると、常にベストの連鎖を狙い続けるのは、あまりにもリスキーである。ときにはある程度の所で妥協して、着実にダメージを与えるのも、一つの立派な戦術といえるだろう。

だが、ボスを始めとするモンスターや各ステージは、多種多用な攻撃パターン/ギミックを持ち合わせている。悠長なことは言ってられず、「このターンで沈めないと、こっちがやられる……！」といった崖っぷちな状況も珍しくない。そんなときに一か八かは覚悟のうえで“究極の一手”に挑戦し、そして狙い通りの連鎖を決めるのは、本作をプレイしていて最も気持ちがいい瞬間だ。逆に、たった1マスを間違えたばかりに連鎖はおろか挟むことすら失敗することもあり、そんなときは思わず声にならない叫び声をあげながら身悶えしてしまう。別に誇張でもなんでもなく、筆者が「TERRA BATTLE」をプレイする時は大体こんな感じである。

知れば知るほど深まる戦術とキャラクター育成

敵味方の全キャラクターは“剣/槍/弓/杖”の4タイプに大別され、それとは別に“炎/氷/稲妻/闇”といった属性もある。連鎖を狙う際、“槍は剣に対して有利”“弓は槍に対して有利”などの相性関係（3すくみ＋α）を考慮するのは基本戦術だ。また、出現する敵のタイプは事前に確認できるので、“弓”タイプの敵が多ければ“剣”を揃えた編成で挑むなど、ステージの開始前から勝負は始まっている。

キャラクターに関してもう一つ重要なのは、各タイプに応じて習得するスキル/魔法の存在だ。例えば魔法使いの攻撃魔法は、直接挟んだ敵に加え、その周囲1マスに対しても同様にダメージを与えられる。また、本作の回復魔法は、攻撃終了後に連鎖した味方キャラクターに対して発動する仕組みである。回復魔法が使えるキャラクターを2人揃えたうえで上手く配置すると、6人全員を毎ターン攻撃/連鎖に参加させ、さらに全員を回復させ続けるといった永久機関も可能だ。これはほんの一例で、タイプ/属性/スキルにまつわるテクニックは非常に多い。

新たなキャラクターの入手手段に関しては、ゲーム内通貨や“エナジー”（リアルマネーで購入）と引き換えに行うガチャが用意されている。キャラクターは“D/C/B/A/S/SS”にランク分けされ、この辺りは近年流行のカードゲームに近い雰囲気だ。ただ、それらのカードゲームと決定的に異なるのは、ランクの高いキャラクターを集めれば単純に強いといった、安直なゲームバランスではないことである。

というのも、ランクが高いキャラクターは大器晩成型で、レベリングのスピードが結構遅いのだ。また、中盤以降になると“ジョブ追加”を行い、新たに習得したスキルを組み合わせてカスタマイズするシステムが登場する。さらには同じキャラクターを使い込むと、レベルとは別にスキルの発動率が少しずつ上昇していくので、ランクB～Aのキャラクターでも、プレイスタイル次第で十分にスタメン入りできる。ランクが高いに越したことはないのだろうが、（個人的には）追加ジョブを含めた習得スキルのラインナップと、キャラクターに対する思い入れの方が大事だと感じている。

とりあえずエナジーに関しては、5～10ステージで構成される“章”のクリア時や、ログインボーナスなどを通じて頻繁に得られる。これを集めてエナジーガチャを行えば必要な戦力は揃えられるし、少なくともリアルマネーを注ぎ込まずとも、メインコンテンツを満喫するうえでの支障はまったく無い。

ついでに個人的な考えを述べさせてもらうと、ランクやスキルなどといったスペックより、各キャラクターのストーリー背景に興味津々である。というのも一部のキャラクター同士は関係があり、さらにストーリーを進めていくことでプロフィールの変化を楽しむことができるのだ。この辺りは「タクティクスオウガ」や「ファイアーエムブレム」シリーズなどの、良質なシミュレーションRPGを彷彿とさせる醍醐味がある。もっと言えば、グラフィックスやBGM、さらには文字フォント等の細かい部分を含め、ゲーム内でコンセプト/世界観が見事に統一されており、この世界に浸って想像をあれこれ巡らせること自体が心地よいのだ。

もう止まらない！24時間フルタイムで脳内テラバトルが勃発！

本作のゲームプレイで最も大切なのは、あらゆる状況から連鎖を生み出す発想力と、それを4秒以内に決めるテクニックである。画面を見る限り、シンプルなゲーム内容をイメージする人が多いかもしれないが、実際にプレイしてチュートリアルの次の“第2章“を終える頃には、良い意味で予想を大きく裏切られているはずだ。

難易度も簡単すぎず、かといって難しすぎるわけでもなく、攻略サイトなどに頼らずともトライ＆エラーで楽しく進められるバランスである。各章のラストで待ち受けるボスのギミックには毎回驚かされ、ときには「こんなのありかよ～！」と言いたくなるような初見殺しにも遭遇するが、じっくり考えると攻略の糸口が次第に見えてくる。プレイ中は適度なハードルと、それを乗り越えたときの快感が断続的に訪れ、この辺りの匙加減は絶妙といってよい。

近年はスマートフォンでお手軽に遊べるゲームアプリが隆盛を極めており、それらに対して「スマートフォンでゲームなんてやってられるか」、「強いカードやキャラクターを集めれば誰でも勝てるんでしょ」と嘆く、昔気質なゲーマーもいるかもしれない。仮にそういった人が本作をプレイすれば、その印象（偏見）は確実に覆されるだろうし、むしろゲームに対し強い想いを持っている人の方が、このゲームに向いているのではと感じている。

逆に本作からは、プレイヤーに媚びないどころか“商売っ気”のようなものがあまり感じられず、少し心配にもなる。例えば現在、新規プレイヤー向けのキャンペーンとして、回復魔法が使えるキャラクター“クスカ”のプレゼントが行われているが、「プロモーション目的なら同じ回復役でも“アミ・ナ”の方が良いのでは……」という気がしないでもない。でも自分は、きっとそういった心意気（？）も含めて、本作に惚れ込んでいるのだと思う。


「いまならアミ・ナもらえる！」って感じ？	別の意味で親近感が沸くキャラクターではあるが…

自分は熱心なゲーマーで、スマートフォン用アプリも別け隔てなく遊ぶが、過去を振り返ってもダウンロードしたアプリに対して課金を行ったことは数えるほどしか無い。1年以上毎日楽しく遊び続けている「クラッシュオブクラン」すら、無課金で大工小屋を5軒まで増やした位だ（分かりにくい例えですみません）。それが今回の「TERRA BATTLE」では、自ら進んで、しかもストレスを感じずに課金を行っており、そのことに自分自身が驚いている。現在は、街を歩いていて四角いタイルを見かけたり編集部内の座席を眺めたりすると、脳内テラバトルが勃発するなど深刻な症状が表れており、いてもたってもいられずレビュー記事を企画し、一気に書き上げてしまった次第だ。

他にも書きたいことが山ほどあるのだが、レビュー記事の範疇から外れてしまうので、そろそろまとめよう。ミストウォーカーの「TERRA BATTLE」は、奇跡の完成度を持ったスマートフォン用アプリである。そして、業界屈指のクリエイターが、現在過渡期にあるスマートフォンのプラットフォームでこのようなタイトルを発表したことにも、大きな意義があると思っている。これからも一人のゲーマーとして、心の底から応援したい。