5pb.が2015年6月25日に発売を予定しているPS4/PS3/PS Vita用ソフト「CHAOS;CHILD」。その発売を間近に控え、ゲーム序盤をプレイしてみてのインプレッションをお届けします。
※本作はCERO:Z(18歳以上のみ対象)のタイトルとなります。18歳未満の方は購入できない点、作中に残酷な表現が含まれている点をご理解の上、お読みください。
本作は、志倉千代丸氏が企画・原作を担当している、5pb.の代表作とも言える科学アドベンチャーシリーズの第4弾タイトルです。第1弾となる「CHAOS;HEAD NOAH」の6年後、復興が進んだ渋谷を舞台としていて、シリーズとしては初めて過去作との直接的な繋がりを持った作品となっています。
ここまでを聞くと、前作を知っていないとプレイできないんじゃないか、と思う人も多いのではないでしょうか。実際、筆者も「CHAOS;HEAD NOAH」はプレイできていない、と言いますかそもそも猟奇的な描写のある作品をどうにも敬遠しがちなところがありまして、今作についてもXbox One版が発売されたタイミングでは一歩引いた立ち位置で見ていました。
ただXbox One版が発売されてから本作の評判を聞くと、あちらこちらから面白いという声が聴こえてくるではありませんか(筆者個人の感想です)。そんな感じでチラチラと作品のほうを向き始めたそんな矢先、PS4/PS3/PS Vitaでの発売が決定したという知らせを受けて、怖いけどこれはやらないわけにはいかないでしょ、と今回遊んでみることになった次第です。
とまあ前置きは長くなりましたが、今回プレイを進めてみたところ、恐怖心はもちろんあるものの、それを胸に抱きながらゲームを進めてしまう魅力が本作にはあると強く感じました。なぜそう感じたのかというポイントを中心に、インプレッションとしてお届けしたいと思います。
なお、今回はPS4版でのプレイとなりますので、操作などに関してはそこに準拠します。また、体験版でプレイできる第1章に関する部分については多少内容に言及するものの、基本的にはネタバレには踏み込まない内容にしていますので、安心して読んでもらえると思います。
小説を思わせる安定した筆致で見せるテキスト
まずは文章の構成にかなり力が入っていて、読みごたえがあるなというのが筆者個人としては印象的でした。例えば、冒頭の事件発生の場面では、事実を淡々と伝えることで恐怖心を増幅させ、起こっていることの異常性を示していて、正直読んでいて胃がねじ切れるかのような思いでした。
その後、主人公の拓留たちが登場してからについては、キャラクターとしての特徴を時に面白おかしく、時に裏を感じさせるように表現しつつ、何かが起こった時のキャラクターの心情と、実際に起こっている出来事との言葉の掛け合わせが見事で、それが本作のテキストとしての魅力になっていると思います。
アドベンチャーゲームを遊ぶ際、先が読めず、惹き込まれる物語であったり、魅力的なキャラクターといった要素は目に留まりやすいですが、個人的にはまず先に求められるべきはテキストそのものの面白さではないかと考えています。本作ではそれが丁寧で、読み進めるだけでもストレスを感じさせません。
そしてもう一点、キャンピングカーに住んでいて、自身を情報強者と称する主人公の拓留をはじめ、記号的に見えるようなキャラクターたちも、実はかなり地に足の着いた思考を持っている点も本作の魅力かなと思いました。思考自体は至って正常でも、非現実的な出来事に直面していくにつれ、そこから乖離していく様が文章からも捉えられるという点で、まさに一冊の小説を読んでいるかのような没入感を味わわせてくれました。このあたりは今回メインシナリオライターとして参加されている、梅原英司氏の書き口なのかもしれませんね。
丁寧な演出とシステムによってもたらされる主人公への没入感
ただ、小説のようなと言ってしまっては、そもそもアドベンチャーゲームとして遊ぶ意味がありません。本作をアドベンチャーゲームとして成立させていると筆者が思うのが、ここまでやっていいのかというほどに丁寧な演出と、プレイヤーを主人公の視点に近づけてくれるシステムの数々です。
まず、近年のアドベンチャーゲームにあるような立ち絵のバリエーションと、それを使っての演出手法はかなり突っ込んできているなという印象です。筆者はPS4版をプレイしたのでモニターでゲームを見ているわけですが、キャラクターが寄ってきた時の距離感が近い、とにかく近い。実際のところ、人間の顔が目の前に来たらこのぐらい顔の細かいところが見えると思いますし、すごくすんなり入ってくると思います。
このあたりは先ほど触れた主人公の視点とのマッチにもつながってくるかもしれませんが、全体的にキャラクターの配置や音の使い方など、すごく空間を意識しているように感じました。このあたりはもしかしたらアニメーションに携わってきた、演出の若林漢二氏によるところも大きいのかなと思いつつ、ボリュームのあるテキストに対して演出側に無駄がないので、これも長く感じさせない一つのポイントではないでしょうか。
そして、体験版でもプレイ可能な第1章で大きな山場となる、第3の事件「回転DEAD」との遭遇のシーンでは、まさに一瞬一瞬が気の抜けない、緊迫感のあるやり取りが展開されます。テキストとしての妙もありつつ、それを見事なかたちで昇華させている演出が、まさにキャラクターとしてその場に立っているかのような臨場感へと繋がっているように思いました。
プレイヤーを主人公の視点にという点で面白いなと思ったのが、新聞部として“ニュージェネレーションの狂気の再来”を追う際に情報整理を行うシステム「マッピングトリガー」です。当然ながらこれはゲームとしての進行にも関わってくる要素ではあるのですが、主人公の視点で情報を統合しやすく、かつ思考も主人公に寄ってくるので、より物語へと没入するためのトリガーになっていました。
妄想トリガーなどお楽しみはまだまだこの前に
今回は特にゲームに対する知識を持たない中でプレイしたので、「CHAOS;HEAD NOAH」から続いて登場する「妄想トリガー」の扱いが難しかったのですが、今回は1周目ということで割りきって要所で使っていたら、良いアクセントになっていました。遊び方としてもL3でポジティブ、R3でネガティブに切り替わって、あとはそのまま読み進めるだけで分岐するという非常にシンプルなものとなっていて、このキャラのちょっと違う一面を見てみたいなという時なんかにトリガーをオンにする、なんて楽しみ方をしていました。
まだ体験版の少し先に行ったぐらいしかプレイ出来ていないので、ゲームの面白さとしては入り口に手をかけただけではあるのですが、まずこれだけは言っておきたいのは食わず嫌いはもったいないということです。
「CHAOS;HEAD NOAH」を遊んでいなくても拓留の視点に立てば知識は自ずと補填されていきますし、それさえあれば読み進める上で困ることはありません。そして、ジャパニーズホラーさながらの恐怖感は確かに内包していますが、それ以上に恐怖を感じながらも行動する拓留を通して、謎を解き明かしていく過程が面白いなと思いました。
そしてもう一つ、拓留の視点がベースになりつつも、時折さまざまなキャラクターの視点が混ざり合い、物語を解き明かすキーワードが多数登場する点も見逃せません。というわけで(?)筆者自身も早く先に進みたいので、みなさんも間もなく迎える発売日を楽しみにしてもらえればと思います!