ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアが開催したPS4版「ギルティギア イグザード サイン(以下、GGXrd)」の大会イベント「闘神激突」決勝大会。本稿では、ギルティギア王者軍とプロゲーマー連合軍による10本勝負の模様をレポートしていく。

目次
  1. 世紀の決戦が、いま幕を開ける!
  2. イベント対戦カード(ギルティギア王者軍 VS プロゲーマー連合軍)
  3. 大会ルール
  4. バトル1:TAKA VS ロイ
  5. バトル2:キーシャ VS あいん
  6. バトル3:コイチ VS 中洲ベッドマン
  7. バトル4:竹原 VS もっちー
  8. バトル5:ハンバーグ VS 中村
  9. バトル6:かりんちゅ VS どぐら
  10. バトル7:ススム VS まちゃぼー
  11. バトル8:ナゲ VS かずのこ
  12. バトル9:FAB VS sako
  13. バトル10:小川 VS ウメハラ
  14. 両軍に尋ねたイベント後の感想

昨日8月22日に開催された「闘神激突」決勝大会は、世界的なゲーム大会「EVO 2015」でも採用された格闘ゲーム「ギルティギア イグザード サイン」のPS4版を用いて行われた格闘ゲーム大会である。

本イベントには、「ギルティギア(以下、GG)」の国内外の大会で受賞経験のある5名を要する「ギルティギア王者軍」、格闘ゲーム界で活躍するプロゲーマーから5名を要する「プロゲーマー連合軍」に加え、両軍に分かれて行われたオンライン予選大会の勝ち抜き10名(5名×2チーム)が参加し、最強軍団を決定するという趣旨のもと行われた。

イベントの見所を挙げると、「GGシリーズをプレイしていないプロゲーマーが、同じ格ゲーでどれほどのプレイを魅せてくれるのか?」「GGシリーズを専門的にプレイしているプレイヤーと、プロゲーマーの差はあるのか?」といった、ゴシップ的ながらも、格ゲーマーであれば誰もが気になる部分にグサッとメスが入れられたところだ。

もちろん、その場の「勝った」「負けた」だけで各々の力量を一口に括ってしまうのはナンセンスだが……それでも気になるものは仕方ない。また、今回は対戦の組み合わせも凝っており、各選手たちの動向を知っている人にはたまらない“いわくつきの対戦カード”が練られていることから、業界を取り巻くイベントとしても、実に分かっている大会なのだ。

ということで本稿では、GGシリーズのプレイヤーであれば誰もが知っていると言っても過言ではない小川選手や、国内外での活躍によりず幅広く知られているプロゲーマーの走り、ウメハラ選手らによる、頂上決戦10本勝負の模様をお伝えしていく。

中央左から、小川選手、ウメハラ選手

世紀の決戦が、いま幕を開ける!

檀上ではメインMCにお笑い芸人・パンサーの菅良太郎さん、向井慧さんをはじめ、ギルティギア軍応援団長にグラビアアイドル・吉田早希さん、プロゲーマー連合軍応援団長にゲーム実況主・最終兵器俺達のこーすけさんが迎えられた。

また、実況にはGGシリーズの有力プレイヤーとしても知られる神園さん、解説には同じくGGシリーズで著名を博し、現在は発売元のアークシステムワークスにてさまざまなタイトル開発に携わっている関根一利氏が起用され、万全の態勢で対戦が見守られることに。

パンサー・菅良太郎さん、向井慧さん 吉田早希さん
左から神園さん、関根一利氏、最終兵器俺達 こーすけさん

大会開始前に行われたニコ生での勝敗予想は、ほぼ5分という結果に。微々たる数字だけ王者軍に勝率が傾く結果となったが、対戦の行く末がどう転ぶのかは、誰もがまったく想像できない。

イベント対戦カード(ギルティギア王者軍 VS プロゲーマー連合軍)

バトル1:TAKA(スレイヤー)VS ロイ(ソル)
バトル2:キーシャ(ファウスト)VS あいん(カイ)
バトル3:コイチ(イノ)VS 中洲ベッドマン(ベッドマン)
バトル4:竹原(ラムレザル)VS もっちー(ソル)
バトル5:ハンバーグ(エルフェルト)VS 中村(ミリア)
バトル6:かりんちゅ(ミリア)VS どぐら(シン)
バトル7:ススム(チップ)VS まちゃぼー(カイ)
バトル8:ナゲ(ファウスト)VS かずのこ(ソル)
バトル9:FAB(ポチョムキン)VS sako(ザトー)
バトル10:小川(ザトー)VS ウメハラ(ソル)

※()内は使用キャラクター

大会ルール

  • 両軍10名の選手同士が戦う「星取り合戦」
  • 1ラウンド99秒、2ラウンド選手で一本勝利
  • 先に試合を三本制した方が勝ち星を上げる「三本先取(3先)」
  • 10戦を終えて5対5になった場合はその場で各軍が先取を1人選んで「決着戦」

※以下、対戦内の「選手」表記は略称させていただきます。

バトル1:TAKA VS ロイ

王者軍からは、第2回オンライン予選優勝者のTAKA(スレイヤー)
連合軍からは、第3回オンライン予選優勝者のロイ(ソル)

※両軍のオンライン予選は所属ごとに開催されました。

大会の開幕を飾るのは、普段から同じゲームセンターでプレイしているという身内同士の激突。両者ともにアグレッシブな攻めを得意とする攻撃的プレイヤーであることから、実況・解説・本人たちに至るまで“殴り合いの戦い”になると予想された1戦だ。

※以下、左からギルティギア王者軍、プロゲーマー連合軍

そんな予想に応えるかのように、試合開始と同時に大ダメージコンボが発生しやすくなる「デンジャータイム」に突入。試合の流れはロイのソルがスレイヤーのバックステップを丁寧に狩りつつ、ソルお得意のガンフレイムからの黄色ロマンキャンセル(以下、RC)で、徹底して有利な起き攻めを敢行していくという展開に。試合はかみ合いが良かったのか、まずはロイが一本先取。

しかし、TAKAも肩の力が抜けてきたのか、「リスク?当てればリターンです」とでも言うかのように、ダンディーステップで画面上をグイグイと走り抜け、クロスワイズヒールから大きなダメージを奪っていく。そのまま一本を取り返したTAKAは勢いもそのままに、アンダープレッシャーからの中下段、ヘルタースケルターの表裏攪乱を決め手に、二本目をもぎ取る。

ここが「~本先取」形式の面白いポイントで、ラウンドや一本をまたぐごとに、プレイヤーたちの動きは徐々に変化していく。それぞれがただ漫然と戦っているのではなく、試合状況を通し、相手の行動に分析・対応していくからこそ、試合の展開がガラッと変わっていくのだ。

TAKAのスレイヤーはソルのリバーサルの要、ヴォルカニックヴァイパーに読み勝ち、前ダッシュからの「ぶっきらぼうに投げる」を警戒しての小パン暴れ、バンディットリヴォルバーからの5K固めに対する反撃行動と、いつも一緒に対戦している相手だからこその読みが冴え、TAKAが三本目を制し、王者軍に最初の勝ち星を上げた。

バトル2:キーシャ VS あいん

王者軍からは、第4回オンライン予選優勝者のキーシャ(ファウスト)
連合軍からは、第5回オンライン予選優勝者のあいん(カイ)

こちらは、先に行われた全国大会にて共にチームを組んで参戦した間柄の対戦。その時は成績があまり振るわなかったことから、キーシャ「あいん君にはここで踏み台になってもらいます」、あいん「キーシャ君にはまた置物になってもらいます」と、プロレスさながらのマイクパフォーマンスで会場を盛り上げる。意気込みも十分だ。

開幕、あいんのカイが3HSで相手の機先を制し、試合序盤のペースを握る。続く立ち回りでも地上・空中のスタンエッジで相手の動きを制限しつつ、嫌がって動いたところを冷静に対処していく寸法だ。しかし、キーシャもそれに黙ってはおらず、ファウストの生命線「何が出るかな?」のヒット状況をシッカリと確認しながらのアドリブコンボでダメージを取っていく。

初戦はどちらも“残り一撃”という場面で均衡したが、あいんが粘り勝って一本を取り、またもや同じような状況にもつれ込んでから、あいんが二本目も制するという結果に。本大会は純粋は力勝負であると同時に、イベントとしても会場でもニコ生でもショー的な意味合いが強く出されているため、色々な歓声も相まって“勢い”を握った方がペースを取りやすい状況であった。

3試合目、1ラウンド目をあいんが取り、2ラウンド目をキーシャが取り、熾烈な3ラウンド目に突入。身内関係の濃さを感じさせてくれるその試合展開は、見ているだけでついつい白熱してしまうほど、エンターテイメント性に優れていた。が、ここでキーシャが身内読みのずれを調整したか、一本、二本と連取し、最終戦までなだれ込む。

全く譲らぬ両者。ラウンドごとに立ち回りに修正がかかっているのがハッキリわかる中、カイの強力な2HS対空を通させなくしたキーシャが欠点を消し去り、逆3タテによる逆転勝利。王者軍にさらなる華を持たせた。

バトル3:コイチ VS 中洲ベッドマン

王者軍からは、第3回オンライン予選優勝者のコイチ(イノ)
連合軍からは、第2回オンライン予選優勝者の中洲ベッドマン(ベッドマン)

王者軍に有利な展開で進んできたが、バトル3はGG界きってのテクニシャンプレイヤーであるコイチと中洲ベッドマンが登場。2人とも知識を豊富に蓄えつつ、相手の癖を読む、いわゆる“人読み”に長けていることから、より流動的な試合展開になることが予想された。

キャラ的には、どちらも“自分のしたい攻めで勝つ”という性質が強いことから、画面は大波乱の攻め合いで進んでいく。イノのホバーダッシュからの中下段による2択は分かっていても崩されてしまうものであり、同様にベッドマンもデジャブ体制を構築してからのセットプレイが非常に強力だ。

この対戦も終始激戦で、共にギリギリの体力状況の中で選択を強いられる。しかし、インファイトでの切り返しに難があるベッドマンの苦手部分を突いていき、絶体絶命の撫でられただけで負ける状況をコイチが制して、まずは一本を先取。

だが、中洲ベッドマンもそう簡単には落とされない。タスクCとそのデジャブによる凶悪な攻めを見せつつ、カス当たりの難しい状況すらも的確に拾い上げ、トレーニングモードでしかやりたくもないような高難易度コンボでコイチを押し返していく。表裏中下段の怒涛の攻撃で、中洲ベッドマンが一本を取り返す熱い展開に。

コンボと状況への判断が光る、両者の試合。残り一撃で倒されてしまう場面からのブリッツシールドでコイチが一本を、中洲ベッドマンも負けじと一本を取ってからの最終戦では、コイチが対戦の流れを掴みきったかその攻勢を崩さず、王者軍に圧倒的有利な3連勝を計上した。

バトル4:竹原 VS もっちー

王者軍からは、第1回オンライン予選優勝者の竹原(ラムレザル)
連合軍からは、第4回オンライン予選優勝者のもっちー(ソル)

まさかの3連敗スタートで苦しい連合軍。ここで行われるのはPS4版最強とうたわれる竹原と、アーケード最強とうたわれるもっちーという対戦カード。竹原はアーケードスティック最強主義を打ち壊すパッド使いでもあり、古くからさまざまな格ゲー環境で言われている「アーケード勢>家庭用勢」という図式を覆す、家庭用勢にとっての期待の星としても注目される。

両者の特長は、その空中投げの妙。壇上に上がる前からそれぞれ「おまえ、誰の前で飛んでるんだ?」とでも言わんばかりのコメントを挙げていたとか。試合序盤は竹原のラムレザルがきっちり高度を呼んでのコンボで攻めつつも、もっちーが一つ一つを的確に対処していくという構図で進み、もっちーが一本、二本と連取していく。

中距離でのプレッシャーのかけ方が素晴らしいもっちーであったが、竹原もエンジンが温まってきたのか、大剣射出からのセットプレイで徐々にもっちーを捉えていく。この間に行われた空中投げ合戦は、確かに「ギルティギア」らしい空中戦を華麗に体現。むしろ、竹原が行う超最低空の空中投げは、誰もが歓声を上げてしまうほどのスーパープレイである。

設置した大剣とラムレザル本体による危険すぎる中段、中段、中段の択を通し、竹原が二本連取。またもやな展開で試合をイーブンにし、最終戦へと乗り出す。これまでの試合と同様、最初から最後までギリギリ感が伝わってくるバトル状況は、息をする暇もないほどだ。

しかし、最後の最後はもっちーのソルがラムレザルの中段の隙をつき、ヘルファイア状態のタイランレイブver.βをねじ込んで勝利を果たした。これは、前ラウンドで勝負をかけにきた竹原の補正切り中段を受けていたことが活かされたもので、学習能力の高さを魅せつけてくれる一場面であった。歓声もすごい。そして同時に、連合軍が待望の1勝目を上げたのだ。

バトル5:ハンバーグ VS 中村

王者軍からは、第5回オンライン予選優勝者のハンバーグ(エルフェルト)
連合軍からは、第1回オンライン予選優勝者の中村(ミリア)

檀上では、控え席に座っていた王者軍・かりんちゅより「中村君は対策がぬるいところがあるので、そこををついて」とアドバイスが飛ぶや否や、連合軍も負けじとウメハラを引っ張り出し「あの、頑張ってください」とコメントを引き出していくスタイル。戦う選手そっちのけ盤外戦ではあったものの、そのパフォーマンスには会場も沸き立っていく。

ハンバーグはGGXrdからの復帰プレイヤーで、中村はGGシリーズをやり続けているプレイヤー。さらに、ホームとしているゲームセンターは一緒なのに、時期がかぶっていなかったことで、両者が「噂に聞いているあのプレイヤー」という絶妙な関係にあったとか。しかし、家庭用で戦った際にはハンバーグにボコボコにされてしまったという中村だが、リベンジなるだろうか?

キャラ的には火力のエルフェルト、スピードのミリアといえるが、どちらも相手の動きを制限することには一物をもっている。しかし、立ち回りの距離を制したハンバーグが凶悪なショットガン戦法で中村のミリアへと詰め寄り、一撃必殺フィニッシュも搦めて一本、二本と連取。

勢いづいたハンバーグはその動きを留まらせることなく、試合展開を有利に進めきり、ストレートで三本先取。中村にまたもや苦汁を味わわせる結果となった。しかし、こういった場所から生まれるプレイヤー同士の勝敗と想いが、後の覇者への足掛かりとなることは想像に難くない。

ここまでのオンライン予選者同士の戦いは、ギルティギア王者軍が4勝、プロゲーマー連合軍が1勝と、早くも天秤が傾く結果をみせた。なお、試合展開については本当に腕前や技術というものの差を一切感じさせず、ただただ心の臓の強さを魅せつけたほうが勝利をもぎとっているという印象だ。

また、関根氏による試合の流れの解説が真に迫っており、格闘ゲーム初心者にはわかりやすく、格ゲーマーには鋭く刺さる、素晴らしい分析を行いつつ、選手たちからのコメントを引き出してくれていた。モニターから流れてくるニコ生視聴者のコメントも絶賛の嵐であった。

さて、厳しい折り返しで迎えることとなったプロゲーマー連合軍の本陣。だが、ここからが本イベントのもう一つの本番となるため、一層目が離せないのは確かだ。

バトル6:かりんちゅ VS どぐら

王者軍からは、「ARC REVOLUTION CUP 2015」代表枠のかりんちゅ(ミリア)
連合軍からは、「EVO Championship Series 2015」代表枠のどぐら(シン)

先週行われたアークシステムワークス主催の全国大会「あーくれぼ2015」の決勝戦でぶつかりあった両名を含むチーム。その時はバトル7で連合軍より出てくるまちゃぼーの圧倒的な快進撃により、直接戦うことがなかったという複雑な関係性。共にさまざまな心残りがあるだろう、本イベント注目のカードの一つだ。まあ、注目じゃない試合は一つもないのだが。

今季はさまざまな場所で、さまざまな話題を作ってくれたどぐら。定評のあるマイクパフォーマンスで観客をヒートアップさせ、試合の口火を切る。試合の方は関東最強のミリア使いといわれるかりんちゅが、その名に恥じぬ攻勢でどぐらを圧倒。ダウン後の起き上がりフレームが若干遅いシンというキャラにあわせて、起き攻めにはシークレットガーデンを多用にしてきた。

かりんちゅのミリアは、シンのリバーサルであるホークベイカーをダストで避けつつダメージを加速、シンの生命線であるカロリーゲージを回復させる暇を与えずに追撃し、ラウンドの最後はクローミングローズから攻めきってと、かりんちゅが圧倒的な一本を勝ち取る。

続く試合もかりんちゅがどぐらに攻め寄り、最後はウィンガー締めから一撃必殺に繋げ、パフォーマンスとしても、残ゲージ状況からの確定倒しきりとしても、その行動に余念がない。かりんちゅが連取したことで、最近財布を落としてしまったことから、バッグを肌身離さず持つことにしたというどぐらは後がなくなる。

傍目で見ていても、どぐらの攻めはしっかりと機能しているのだが、かりんちゅのガードが残酷なまでに固く、崩し切るまでに至らない。完全にペースを握ったか、起き攻めシークレットローズからの中段バッドムーン、下段足払いを巧みに使い分けて崩し切り、キャラ対も万全を喫していたかりんちゅがストレートで勝利。ギルティギア王者軍が星取りの王手をかけた。

バトル7:ススム VS まちゃぼー

王者軍からは、“驚天動地のトリックスター”ススム(チップ)
連合軍からは、“ギルティの申し子”まちゃぼー(カイ)

まちゃぼーは前述したとおり、「あーくれぼ2015」にて圧倒的な仕上がりを魅せつけた。3on3形式の準決勝・決勝をどちらも先鋒で立ち、一度の敗北も見せずに6タテを決め、今期のGGXrdの頂点に立ったという、現時点で最も旬な選手である。本イベントの特集番組「ウメハラチャンネル」では、ウメハラの練習に付き合う先生役としても活躍し、連合軍を下から支えてきた要衝ともいえる。

しかし、GGXrdになってからは自分の手の内をあまり見せてきていないススムは、ネタの宝庫から湧き出る“わからん殺し”の数々で、まちゃぼーに対応を迫っていく。ワープ技「毅式転移」を巧みに操り、画面の上下左右を手品のように瞬間移動して、その的を絞らせない。

だが、まちゃぼーはHS版の背面転移をとにかく空中投げで潰していき、圧倒的な対応力をみせて一本を先取。とはいうものの“スーパーチップ使い”の名は伊達ではなく、ススムは動きを制限されて固くなるどころか、徐々に違うパターンへとシフトしていき、より目まぐるしいハイスピードでまちゃぼーを制し、一本を取り返す。

相手の隙をみて後ろに転移してから投げ、スタンエッジを撃ったカイの後ろに転移してフルコンボ、その場転移を織り交ぜて、転移につぐ転移で攪乱しつつ、そこから派生行動を決めていく。ブリッツシールドの返し合いと試合展開もド派手だ。だが、ススムのハイテンポにもすぐさま対応・修正をかけていくまちゃぼー。両者譲らず最終戦へともつれ込む。

カイの6C起き攻めにブリッツシールドするススム、かと思いきや非常に読みずらい移動投げ「幻朧斬」を空中投げするまちゃぼー。最後はまちゃぼーが攻めの最適解を見出したか、連合軍の士気を盛り返す、値千金の2勝目をその手に掴みとった。

バトル8:ナゲ VS かずのこ

王者軍からは、“世界最強のお・も・て・な・し”ナゲ(ファウスト)
連合軍からは、“あらゆる格ゲーを操るオールラウンダー”かずのこ(ソル)

歴戦のGGプレイヤー・かずのこを目標にプレイし続け、5年前の大会の壇上で喫した敗北を胸にリベンジを掲げるナゲ。先日行われたEVO 2015では、2位の座を射止めた強豪ファウスト使いだ。一方、かずのこは現在プロゲーマーとして違うタイトルで輝かしい戦績を刻んでいるプレイヤーだが、こちらもどぐら&まちゃぼーとともにあーくれぼ2015でチーム優勝を果たしている。

試合では、近寄らせたくないファウストと、近寄りたいソルの動きが均衡。基本的な流れは、ナゲのファウストが遠距離戦でけん制しつつ、かずのこのソルが前ガンダッシュで詰め寄り、そこからダメージレースが展開していく。一回一回の攻防で白黒をつけ、距離を仕切り直し、改めて攻防するという流れだ。

ブラックホールからの近距離戦、ガンフレイムに低空ダッシュからの確反コンボ、バンデッドブリンガーをしゃがみで避けて反撃と、キャラ対をバッチリ見せたナゲがまずは一本。しかし、壁コンからわざと受け身を取らせ、そこに空中投げを決めて赤RC、気絶確定からのフルコンボと、完璧なダブルアップを見せたかずのこが一本を取り返す。

今回の試合では、ファウストのアイテムの多くが爆弾となったことで、それによる仕切り直しが多々生まれてしまった。仕切り直しになること自体、かずのこのソルにはマイナスとなってしまう展開だ。そういった直接的なダメージとは違う面で有利を見たか、ナゲが二本目を先取する。

落ちているチョコレートを目指し、空中から「砕けろ」で振ってくるソルに2HSで迎撃するという反射神経の極みを見せるナゲ。これまで培ってきた全ての力を、かずのこに魅せつけたいと言わんばかりの攻めを見せ、憧れを乗り越えて勝ち星を上げたナゲ。ギルティギア王者軍はこれで6勝目となり、あわせてチームの勝利を決めた。

バトル9:FAB VS sako

王者軍からは、“GG公式全国大会最多出場”FAB(ポチョムキン)
連合軍からは、“唯一無二のsakoスペシャル”sako(ザトー)

チームの勝敗は決したといっても、選手のプレイとプライドはまた別の話だ。この日のために、わずか一ヶ月という期間の中、さまざまな強豪のポチョムキン使いたちと2,000試合を重ね、それを全て勝ち越してきたという急造の強者・sako。しかし、その中にFABはいなかったのだから、勝敗についてはこれまた別の話だ。

序盤はFABが恐ろしい詰め寄りから、飛んで逃げようとするsakoのザトーをヒートナックルで掴み、赤RCからダメージを上乗せする高火力コンボで、試合の趨勢をつけていく。デンジャータイム開始直後のポチョムキンバスターなど、一体誰が返せるのだろう? sakoもエディを絡めたセットプレイで押し返していくが、攻勢止まらずのFABがまずは一本。

試合展開自体は甲乙が付けられるものではなく、両者はほぼ一進一退でダメージを取りあっていく。直前ガードで真っ白に光り過ぎるポチョムキンの姿もすごいが、sakoもそれを上回る攻めを見せる。一本を取り返したsakoの動きは、動画だけを見せられて、強豪ザトー使い or sakoを見分けろと言われたら、筆者には絶対分からないレベルだ。

だが、ザトーの攻めをひたすら防御するという、普通なら絶望的なポチョムキン使いの構図を打ち壊すFAB。セットプレイの合間にスライドヘッド、F.D.B.、奇襲用途のI.C.P.M.を差し込み、sakoの行動に無理矢理隙を生ませていく。一つ一つの行動の選択に、積み重ねの裏付けがあることを感じさせてくれる。

来ると分かっている場面でも、まさかこんな場面で?というところでもポチョムキンバスターが炸裂し、FABが二本目、三本目を勝ち取る。王者軍ならではの維持とプライドとやり込みと儀式を余すところなく魅せつけ、最後のバトル10への勢いをつけた。

バトル10:小川 VS ウメハラ

王者軍からは、“ギルティギア界のラスボス”小川(ザトー)
連合軍からは、“世界最強にして最高のプロゲーマー”ウメハラ(ソル)

本日の大一番は、「闘神激突」を開催するにあたり、一番最初に設定されたという対戦カード。GG最強選手と名高い小川と、まちゃぼーの家庭教師のもと、強力なソル使いたちの後押しで真面目に一ヶ月やり込み、この日を迎えたウメハラの試合だ。約10年振りともなるGGプレイヤーとしての復帰には、世間でも大きく関心が寄せられている。正に本イベントを代表する試合である。

ウメハラの動きは堅実でいてファンタスティック。その緩急から生み出される攻め手は、本当にウメハラらしく動く、ウメハラのソルといっていいだろう。試合展開もエンターテイメント性に長け、小川が1ラウンドを取ると、ウメハラが1ラウンドを取り返す。そして小川をウメハラが破り、一本目を先取。この展開には、会場も今日一番のヒートアップ状態だ。

分身の壊し方、分身がない時の攻め方はまちゃぼーにしっかりと叩きこまれたというウメハラ。試合は双方がギリギリの中でせめぎ合う展開だが、ウメハラの図々しい走りぶっきらが冴えわたり、リバーサルを警戒している小川にウメ昇竜ことヴォルカニックヴァイパーを見せつけていく。そして、ウメハラがまさかの二本目を先取するという驚きの結果に。

冒頭でも述べたとおり、今回のイベントは「そうなるかもしれない」「そうならないかもしれない」という、格ゲーマーなら誰もが思う疑問が大きく存在している。試合結果とは別に、タイトルのベテランプレイヤーとプロゲーマーの闘いがどうなるのかに期待されている面も大きいので、ここに来て観客も、選手も、視聴者も、皆がその期待を爆発させ、大きな歓声で決戦を盛り上げた。

ウメハラは今回のためにザトー相手のトレーニングを積み重ね、「既に色々なプレイヤーがやっているだろうけど…」という心境がありつつも、自分なりに研究を練り上げ、分身を出したザトーに対して黄色RC確認からグランドヴァイパーを刺すという独自の対処法を編み出してきた。この対応は関根氏も初見だったようで、真面目なやり込みの成果を大いに称えていた。

しかし、「オガノートにはもう書いた」とでもいうのか、続く三本目は小川が冷静にストレート勝ちを決め、次の試合もサラッと勝ち切り、静かな逆襲から、舞台は泣いても笑ってもの最終試合へと突入。だが、ここからも小川のザトーはノリにノリきり、ウメハラに防戦を強いる。小川は終始圧倒しきり、ラスボスの形容に相応しいプレイ内容をもって逆転勝利を果たし、王者の貫録を見せつけた。

これにより、最終結果はギルティギア王者軍が8勝、プロゲーマー連合軍が2勝と、王者軍がその強さを見せる結果が表れた。しかし、いずれの試合も内容の充実っぷりが半端ではないので、単なる戦績上の数字では決して語れない。誰もが格ゲーマーとしての実力と仕上がりを見せてくれた。

この内容自体が本イベントで最も期待された趣旨の一つであることは明白なので、素晴らしい展開の数々を見せてくれた参加選手、それを支えた運営陣、そして期待して見守っていたユーザーたちにとっては、今回のイベントは大成功といって差し支えないだろう。

最後に執り行われた表彰式では、プレゼンターとしてソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア プレジデント・盛田厚氏が登壇し、勝利を飾ったギルティギア王者軍の代表・小川選手にトロフィーを手ずから授与。続く選手たちからのコメントでは、充実の内容であったこと、機会があれば挑戦したいということ、などなどが語られた。

小川選手に至っては感極まって涙を浮かべた後、「ここで泣かせてもらいます」と宣言してからの熱い男泣き。その感動の深さは観客席にも伝わって来るかのようであった。

左:盛田厚氏

さまざまな期待、挑戦、思惑によって取り巻かれた今回のイベント「闘神激突」。格闘ゲームの大会形式としては異例も異例で、だからこそエンターテイメント性が色濃く出たために、さまざまなユーザーから注目を浴びる結果となった。

今後、イベント自体の動向がどうなるのかは語られていないが、もはや静かに黙って各々の記憶から消えていくイベントでは終えられない空気なので、これからの「闘神激突」の展開にも多大な期待をしていきたいところだ。なお、下記では最後に両軍からもらった試合後のコメントを掲載しているので、記事の締めとして目を通して頂ければ幸いだ。

両軍に尋ねたイベント後の感想

ギルティギア王者軍

――今回の対戦カードの中で、最も印象的だった試合を教えてください。

小川選手:みんな共通して竹原 VS もっちーがベストバウトだといってます。その理由は、至るところで発生した空中投げ合戦で、このゲームにおける対空のシステムを象徴しているかのような、お手本のような試合だったからです。後は、所々の行動がすごかったので、ぜひDVD化してほしいです(一同笑)

――今回は8対2で勝利となりましたが、今の心境はいかがでしょうか?

ナゲ選手:結果として8対2という数字にはなりましたが、いずれもいい試合でした。王者軍が勝ったのは偶然というか、本当に全力を出し切ったことの結果なので、どの試合も内容が素晴らしいものだったと思っています。

プロゲーマー連合軍

――今回のベストバウトは「コレだ!」というのはありますか?

一同:(ウメハラ選手を指しつつ)「やっぱウメハラさんでしょ」「本当に感動しました」「素晴らしかったです」「勝敗が決まった後でもあれだけの内容を見せてくれたすごさ」

――プロゲーマーに憧れている人たちに、一言お願いします。

ウメハラ選手:最初GGXrdをプレイした時は「こんなに動かないのものなのか」と思ったのですが、一つ一つを徐々に吸収していくことで、上達を感じることができました。最初から全部やろうとすると嫌になってしまうこともあるので、ちょっとずつの積み重ねが大事です。そうすれば、いずれはトッププレイヤーになることもできます。

――ウメハラ選手、sako選手、かずのこ選手にお聞きしたいのですが、今後の「ギルティギア」との付き合い方を教えてください。

sako選手:僕は元々「ギルティギア」が好きで、発売当初から家でちょこちょこプレイをしていました。ただ、ここ一ヶ月で本格的に取り組んでみたらめちゃめちゃ面白かったので、次回作「ギルティギア イグザード レベレーター」でも続けていきたいなと思っています。

かずのこ選手:自分は元々ギルティ勢で、先週のあーくれぼ2015という大会にもチームで出場しています。なので、このままのペースでゲームを続けていって、次回作も同じくゲームセンターでプレイし、ギルティを続けていきたいと思っています。

ウメハラ選手:今季はこのイベントをキリに、別のゲームの大会に向けて本格的に乗り出すことを決めていました。ただ、それがもったいないくらいに今回は自分なりに練習を重ねたので、「ギルティの大会がある」「新バージョンが出る」といったタイミングで時間が作れれば、今後もプレイすることも考えています。

ギルティギア イグザード サイン

アークシステムワークス

PS4ダウンロード

  • 発売日:2014年12月4日
  • 12歳以上対象
  • PS Storeダウンロード版

ギルティギア イグザード サイン

アークシステムワークス

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  • 発売日:2014年12月4日
  • 12歳以上対象
  • PS Storeダウンロード版

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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