パシフィコ横浜にて2015年8月26日から3日間に渡って開催されている「CEDEC 2015」。ここでは、8月26日に行われたワークショップ「企画初心者のための『ラピッドプランニング演習』」の模様をお届けする。
「企画初心者のための『ラピッドプランニング演習』」は、ゲームデザインなどの企画を立案するために必要な企画の面白さを評価する「目利き力」、面白い企画を組み立てる「立案力」、企画内容を的確に伝える「伝達力」などのスキルを、実践形式で学ぶというもの。
「ゼビウス」や「ドルアーガの塔」などさまざまな名作を手がけた東京工芸大学の芸術学部ゲーム学科教授である遠藤雅伸氏が講師として登壇した本講演には、参加人数の上限を超えてしまい見学者が出るほど多くの受講者たちが集まった。
大きくイラストを描いてわかりやすい企画書を作成
「ラピッドプランニング演習」は、司会進行役である遠藤氏が出題したテーマに従って制限時間内に15秒程度で内容がわかる企画書を作成するというもの。
本講演で使用したラピットプランニング演習用紙は表面が白紙になっており、そこに思いついた企画を書いていく。裏面には採点欄が36個あり、グループ内で回覧して、その企画が面白いと思ったときにマークを記載する。グループ内での回覧が終わったら、隣のテーブルへと巡回させ、最終的に自分の作品が戻ってきたときに採点欄に書かれているマークの数が点数となる。
遠藤氏が最初に出したお題は「ほる」。“穴を掘る”、“彫刻を彫る”など、自由に解釈して制限時間12分のうちに企画書を作り上げていく。企画の内容は、ゲームだけでなくイベントや番組プログラムなどエンターテイメントであればどんなものでもいい。
今回の受講者はほぼ初心者ということもあり、12分という短い時間で企画書を作成するのに四苦八苦していたが、白紙で提出した人は少なかったようだ。受講者の企画書のなかには、「穴を掘るマインスイーパ」「建物を掘って崩すゲーム」「知識を掘り下げる番組」などさまざまな種類があり、人によって解釈の仕方がかなり違うことに驚かされた。また、1回目の企画書のまとめ方も、箇条書きのみで作成されていたり、文章が長いものなど、見づらいものが多い印象を受けた。
採点は6人のグループ6組で行われ、自身を除く35人が考えた企画を評価していく。さすがに満点の人はいなかったが、なかには25点という高得点を叩き出している受講者もいた。採点終了後、遠藤氏は「どの企画が面白かったかは人それぞれですが、人が面白いと思った企画を面白いと思えない人は、感覚が世間とずれているということです」と説明。この採点の仕方を使えば、どのような作品が世間で好まれているかがわかるそうだ。
また、遠藤氏は企画書の見せ方のポイントとして、「文字で書くよりも下手でもいいので絵で描いたほうがわかりやすい」「企画を立案するうえで最初に思いついたものはありきたりなもので、保険として取っておき、それよりも面白いものを探すのがいい」と企画を作るためのコツを語った。
続いて2回目のお題は「かめ」。制限時間は10分間と先ほどよりも短いが、遠藤氏のアドバイスを聞き、企画書の作り方を理解した受講者たちは1回目とは打って変わり、スラスラとペンを走らせていた。企画書はどれもイラストなどを大きく使ったわかりやすいものが多く、そのなかにはタイトルを濃い文字で描いたり、キャッチコピーなどを入れるという目立たせるための工夫をしている人もいた。
遠藤氏は、「面白い企画を作る『立案力』も大事だが、それを人に伝えるための『伝達力』がさらに重要になる」と語った。また、企画書の内容が15秒程度でわかるものを考えるなら、5分ぐらいで内容が書けるので、もう5分は企画を考える時間に使ったほうがいいとのこと。
プロを目指すならはじめは15分程度で企画書を作成し、12分、10分、8分とどんどん時間を短くしていき、それを繰り返すことで、企画を立案するのに必要な「目利き力」「立案力」「伝達力」を鍛える訓練になるそうだ。
なお、本講演で使用された用紙は、電子資料館「CEDEC Digital Library(CEDiL)」で公開(※現在は一時停止中)するとのことなので興味のある人は見てみてはいかがだろうか。