パシフィコ横浜で開催されている「CEDEC 2015」の2日目となる2015年8月27日、サイバーコネクトツー業務部 戦略企画課 編成室のチーフを務める山岡 寛典氏のセッション「制作進行」でゲーム開発“見える化”のススメが行われた。
制作進行をゲーム開発に取り入れたことよって、どのような変化が起こったのか。ここでは、導入のメリットが具体的な事例や数字と共に紹介された。本稿では、セッションの内容をまとめてみたい。
まずは、編成室の役割や導入のきっかけが語られた。編成室とは、ざっくり言うと「制作進行」を行っている部署のことだ。導入された理由は、とあるプロジェクトが炎上してしまったことに端を発する。炎上によって予算無視のデスマーチが発生し、生産力や利益の低下が起こってしまった。その予防や対処を行うため、制作進行を管理する部署、編成室が導入された、というのがそもそものきっかけ。
氏によると、サイバーコネクトツー(CC2)の制作進行は現在6名体制で行われている。発足時点は2名だった。現在プロジェクトが8つほど進行しており、氏いわく、1プロジェクト1名の割り当てが理想であるとのこと。では、制作進行を導入するメリットとはどんなものなのか。氏によると、赤字プロジェクトの減少、制作ラインの増加、スタッフの稼働率の向上といったメリットが得られるのが大きいという。セッションでは、赤字プロジェクトの改善率、制作ラインの増加による開発効率、稼働率などを数値化、グラフ化して説明していた。
では、編成室の導入によってこれらの恩恵を得られた背景はどこにあるのか。山岡氏は、下の写真で、コストに関する事例と人員リソースについて説明。
まず、中国にモデルや背景を大量に発注することでコストダウンに成功した例をあげる。また、クライアントへの早期根回しについては、予算の減少や開発の遅れなどを早めに議題として取り上げることで、早期解決へと繋がるとしていた。人員については、忙しい人とそうでない人のバランスを取ることが重要だ。さらに、プロジェクトは単体でものを見がちだが、いかにプロジェクトの全体を見るか、ということが大切なのだとも話していた。
続いては、「制作進行において、業務内容の押さえておくべきポイント」というトピック。ここで山岡氏は、下のスライドで内容を紹介。「スケジュール、タスク、リソース、コストを数字で捉える」、「現場をコントロールするファシリテーション」、「制作進行と人員編成」などがこれらに当たる。
また「制作進行業務」と「編成業務」にも注目しなければならない。まずは、スケジュールとタスクの管理。これは、氏いわく一番大切なことなのだという。CC2では、タスク表、スケジュール表、制作工程表をつねに最新の状態にしている。それらを追うことで、リアルタイムでの状況把握が可能になるというメリットがある。ちなみに制作工程表とは、誰がどのくらい稼働しているのか、未アサイン工数はいかほどか、外部への発注状況はどうなっているのか、などをひと目で分かるリストのこと。氏いわく、タスク表、スケジュール表、制作工程表は三種の神器とのことだ。
また、制作進行業務として、主要なミーティングには必ず参加することも大切とのこと。その場で、最新の進捗状況を共有したり、今後の課題や方針を、ディレクターや各部署のリーダーという責任ある立場のスタッフに決めてもらうという形を取っている。
「編成業務」では、各プロジェクトにおいてスタッフの不足、逆にスタッフが余っている状況などを見て、人員のバランス調整を行うといった役割を担う。とはいえ、スタッフ不足はどこの部署も同じようなものなので、まずはマスターが近いプロジェクトから人員を確保していくことがルールになっているそうだ。また、外部発注もプロジェクトによってはかなり多い。ゆえに、Wikiページを作って外部発注を管理を行うことも良くあるとのこと。
予算管理も重要なファクターだ。プロジェクトの制作工程、外部発注コスト、総開発コストといった部分は、週一回の定例ミーティングでマネージャーと共有する。赤字のプロジェクトも存在するが、それはしかたないと山岡氏。むしろ、その赤をどうカバーしていくのかが大切なのだそうだ。
しかし、これらのことは他企業も行っていること。気になるのは、CC2ならではの取り組みだろう。ここで氏は、同社の特出した部分として、「営業力」と「折衝力」をアピール。仕様変更やトラブルで予算がショートしたり、外部会社とのトラブルなどもあるが、CC2はこれらを営業力でカバーしてきた。また、クライアントへのネゴシエーションやお金の計算および交渉、スタッフへのフォローアップといったヘルプ要素も欠かしていない。バグが多すぎてプロジェクトが発売延期の危機に貧したこともあるが、会社あげてのデバッグやバグ対応を敢行、さらにバグ収拾曲線でスケジュールを予測するなど、持ち前の対応力でこれらを突破してきた。
最後にまとめとして山岡氏は、マネジメントには「突破する力」が必要だと力説。ゲーム開発の成功は会社やクライアントにとっても目指すべきゴールなので、会社やクライアントを巻き込み、幅広いマネジメントでさまざまな問題をクリアしていこうと、来場者を激励してセッションを締めくくった。