リクルートテクノロジーズは、同社のR&D機関アドバンスドテクノロジーラボによる“自然対話に近い検索システム開発”に向けた人工無脳研究の一環として、会話BOTを取り入れた謎解きゲーム「脳内カレシ」を公開した。
「脳内カレシ」とは
人工無脳(※1)と会話しながら解き進める、謎解きゲーム
本取り組みは、自然言語処理(※2)技術の研究を行うATLが、ゲームのデザインやシナリオ制作・海外ゲームのローカライズを行う株式会社グループSNE(以下、グループSNE)からの協力をうけ、実現しました。
プレイヤーは、3月にATLがリリースした「脳内カレシ具現化計画」のキャラクター「脳内カレシ(脳カレ)」とチャットのような感覚で会話しながら、謎解きゲームを楽しむことが可能です。
本活動を通じて、例えば「“ユーザーからの入力に対して答えを用意していなかった割合”を一定以下に抑えるためには、どれくらいの返答パターン(検索結果)を用意すれば良いか?」等、“自然対話に近い形で情報検索を行えるシステム”の開発に向けたノウハウの収集(※3)を目指しています。
※1:人工無脳…chatterbot,chatbotと同義。人と対話をするプログラムであり、入力された文書を解析して返答する。人工知能が人間と同様の知能の実現を目指す一方、人工無脳は実用性を重視し、自然な会話を実現することを目的としている。
※2:自然言語処理…人間が日常的に使っている言語をコンピュータで処理、解析する技術。
ルール
与えられた一枚の絵について、プレイヤーが出題者 兼 進行役である「脳カレ」に対してさまざまな質問を投げかけ、隠されたストーリーの解明を目指します。プレイヤーは何度でも質問することができますが、内容はYesかNoで回答できるものに限ります。
すべての会話を一つの表で管理
本ゲームの最大の特徴は、プレイヤーからの自由なテキスト入力です。
従来型の選択肢を選ばさせるゲームやキーワード単位での検索と違い、あたかも実際の人に話しかけるかのような形での入力を大前提としている点です。そのため、会話を擬似的に成立させるため、プレイヤーからの質問の履歴を利用し、会話の流れをコントロールできる仕組みを作りました。
具体的な管理スキームとしては、すべての会話を一つの表で管理できる技術を独自に開発。ゲーム提供者が、以下に記載したデータを入稿するだけでゲームを管理可能になりました。
また、プレイヤーがゲーム中に「おかしい」と感じた会話内容についても随時、意見を募集。プレイヤーからの声を上記の管理表に反映することにより、簡単に会話を改善していく取り組みも行っています。
keyword:プレイヤーが入力するキーワード。
response:inputに対して、返答するセンテンス。
image:返答時に表示する画像。
flag_on/off:過去の会話内容を、その後の会話に反映させる機能。例えば同じキーワー
ドを2回入力した場合に、1回目とは異なる返答をすることなどが可能。
管理表の画面
管理表を通じて会話が成り立つ仕組み
ゲームはこちらから楽しめます。
http://atl.recruit-tech.co.jp/noukare_game/
研究開発機関ATLにおける、人工無脳の取り組み
ATLはこれまで、自然言語処理や人工無脳の分野において、事業会社とのサービス連携や、オープンイノベーションによるBOT開発(※3)など、さまざまな取り組みを行ってきました。今回の取り組みでは、(1)自然対話調での情報検索システムを開発するための、ノウハウ収集、(2)手軽に開発・管理可能な仕組みをサービス開発に取り入れることによる、「Web開発に馴染みが薄くても、簡単に人工無脳や関連サービスをつくれる」ことの実証の2点を目指しています。
※3:人工無脳のオリジナルキャラクター開発を目的として2015年3月、「脳内カレシ具現化計画」を実施。“公募した一般生活者から、会話アイディアの提供を受ける”という方法を通じて、簡易に会話BOTを作成する実証実験を行った。(体験用URL:http://atl.recruit-tech.co.jp/noukare_atl/)
自然言語処理でパン田一郎と会話
LINEビジネスコネクトAPI(※4)を利用し、世界初のバイト探し会話型BOT「パン田一郎」のサービスを提供しています。会話中の文章や質問をコンピュータで解析できる自然言語処理技術により、“まるで中の人がいるかのような”コミュニケーションを実現しました。ユーザーは「パン田一郎」との会話を楽しみながら、「fromA navi」のバイト情報、バイトの際に役立つ情報を取得することが可能です。
※4:LINEの公式アカウントで受けたユーザーのメッセージ等を、APIで受け取れるサービス。自社システムと連携させ、ユーザー個別にさまざまな情報を提供できる。
独自の会話BOT搭載のPepperが接客デビュー
ATLが独自に会話BOTを開発し、「Pepper」※5へ搭載。リクルート住まいカンパニーが運営するスーモカウンター店頭に接客担当として設置しました(一部店舗、期間限定で実施)。家族連れのお客様を対象に、サービス案内・未就学児向けゲームの提供・会話による接客等を通じて、家族全員が楽しめるサービスの実現を目指しています。
※5:ソフトバンクロボティクス株式会社とALDEBARAN Robotics SASが共同で開発する世界初の感情認識パーソナルロボット。「Pepper」はソフトバンクグループの商標および登録商標。