2016年4月16日、東京のEXシアター六本木にて開催された音楽&トークライブ「NieR Music Concert & Talk Live 滅ビノ シロ 再生ノ クロ」の模様をお届けする。

目次
  1. コンサートは「夏ノ雪」から幕開け
  2. MONACAの岡部啓一氏と帆足圭吾氏を中心に秘話が語られる
  3. 第二幕は「NieR:Automata」の話も!
  4. 「NieR:Automata」のエンディングは有料ガチャ!?
  5. アンコールにはまさかのサプライズが…!
  6. セットリスト
  7. 出演者
  8. 公演終了後の出演者へインタビュー!
  9. 会場で展示されていた品の一部を紹介!

コンサートは「夏ノ雪」から幕開け

公演前の諸注意事項をアナウンスしたのは、エミール役でお馴染みの門脇舞以さん。「NieR」の関連イベントなどで毎回ナビゲーションを担当していることもありファンからも愛されている門脇さん。「カイネさんも早く戻ってこないと大変なことになりまーす!」という悲痛なエミールの叫びには、会場からも笑い声が漏れた。

コンサート会場ではスクリーンにこれまでの「NieR」関連のPVや「NieR:Automata」のPVなどが流れていたが、そこから徐々に客席も暗転。ゲームでプロローグ時に流れる「夏ノ雪」と共に、コンサートの幕が上がった。

静かにバイオリンやビオラ、チェロの弦楽器だけで演奏された「夏ノ雪」の演奏が終わると、「NieR」作品の歌姫エミ・エヴァンスさんが登場。「光ノ風吹ク丘」を透き通った歌声で聴かせてくれた。スクリーンでは実際に「光ノ風吹ク丘」が流れる北平原の映像が使われ、会場に集まったファンの心を「NieR」ワールドへと誘った。

続けて歌われた「カイネ / 救済」ではカイネをイメージした白ユリの花やカイネの石化シーンの映像が流れ、ゲームをプレイしていた時の思い出があふれ出したファンもさぞ多いことだろう。

MONACAの岡部啓一氏と帆足圭吾氏を中心に秘話が語られる

3曲を演奏したところで、まず一回目のトークショーが挟まれた。ナビゲーターは門脇さん。門脇さんも当時の気持ちを思い返してうるっとしてしまった、と最初の3曲への感想を述べた。

そしてMONACAの岡部啓一氏と帆足圭吾氏がステージへと登壇。岡部氏は「NieR」の曲の作曲家であり、帆足氏はMONACA所属の作曲家でありつつ、この日はピアニストとしてもステージに参加していた。

岡部氏が会場を見まわして「すごい大きなホールですが、皆さんが近くに感じますね」と感慨深そうに述べると、帆足氏も「ピアノを弾いているときは気づかなかったけれど、こうして改めてステージに立ってみるとお客さんの顔がはっきり見えますね、これから先の演奏で緊張してしまいそうです」と、この大舞台に少し強張ったような笑顔を見せていた。

「NieR」の音楽制作について話が及ぶと、岡部氏は当時を振り返り、「二年間くらい「NieR」の音楽を作っていたので、最後のほうは聞き飽きました」とジョーク交じりに述べた。

なお、たいていゲームの音楽はプロジェクトがある程度進んだところから制作が始まり、既にある程度出来上がっているゲームのイメージに寄せるように音楽を作っていくことが多いそうだが、「NieR」では試作の段階からヨコオ氏から既にオファーを受けていたそう。

実際には「NieR」の楽曲だけを二年間作り続けたわけではなく、その合間に他の仕事も挟んだりしながら、「NieR」のゲームが出来上がっていくと共に音楽も完成形につながっていったとのこと。しかしながら、ヨコオ氏の望むものと、作曲家としての立場から譲れない部分の駆け引きなどもあったようだ。

帆足氏はMONACAに入社してすぐに「NieR」に関わることになり、大層心を折られたという。「明日までにこのような曲を作ってこい」と言われ作ってきたらボツだった、などという、今だからこそ笑って話せるような秘話も明かしてくれた。

「NieR」の楽曲は、帆足氏がある程度まで作った曲を岡部氏がそこから更にブラッシュアップしていくことも多かったそうだが、ファンからも名曲と名高い「魔王」は、ほぼ帆足氏が一人で作ったとのこと。

そんな帆足氏が普段ピアニストとしてファンの前に立つことはあまりないこともあって、岡部氏も「こうして参加させることが出来て嬉しいですね」と、師の立場らしい笑顔をのぞかせていた。

「NieR」ではピアノアレンジCDなども発売されたが、こういったアレンジCDなどはオリジナルサウンドトラックが売れることで実現する部分も大きいのだそうだ。音楽もビジネスの世界とあって、やりたくても望まれていないだろうことはやれないからこそ、ここ最近のゲーム音楽の流れとしては「NieR」のような作品は本当に稀だという。

ここでステージにエミさんも登場。今回のコンサートを迎えられて、「夢がかなったような気持ちです」と、感慨深そうに述べた。岡部さんとエミさんは共通の知人を介して出会ったそうだが、エミさんの歌声は商業的なアーティストではない、と感じた岡部さんは、エミさんだからこそ描ける世界観でエミさんを起用したいと考えていたそうだ。そこに「NieR」の話がきて、この世界はエミさんしかいないと思ったとという。

エミさんは改めて「NieR」の楽曲を「とても美しい曲」と評し、歌えば歌うほど愛しくなる曲なのでもっと歌いたい、と次のコンサートへの意欲を見せていた。

第二幕は「NieR:Automata」の話も!

一回目のトークショーのあとは再びライブへ。

まずは「イノシエノウタ / デボル」に始まり、「休息」、そしてボーカルに中川奈美さんを加え「愚カシイ機械」と、続けて三曲が歌われた。

「愚カシイ機械」が流れるロボット山では、2周目をプレイすることで初めてわかる事実に衝撃を受けたファンも多いだろう。映像はまさにその2周目のものが使用され、演奏に聞き入りながらもさぞ心を抉られたファンも多かったはずだ。しかしそれこそが、「NieR」がこれほどまでに愛されているひとつの理由とも言える。

そのあとは、「NieR:Automata」で主役の“2B”を演じる石川由依さんが登壇。石川さんがステージ上で“2B”のセリフをびしっと決めて、そして演奏は「NieR:Automata New BGM #1」へ(ヨコオ氏によると、曲名はまだ決まっていないとのこと)。中川さんの唸るような低音のボーカルから始まった新曲は、これまでの「NieR」とは全く違った雰囲気の仕上がりとなっていた。合間には民族音楽を彷彿させるような小節もあり、これが実際にゲーム中でどのように流れるのか楽しみになるような新曲だった。

「NieR:Automata New BGM #2」では、J'Nique Nicole(ジェニーク・ニコール)さんが登場し、迫力のある歌声を聞かせてくれた。エミさんとは対照的とも言えるボーカルは、「NieR」の世界の新たな広がりを感じさせるものとなっていた。

二回目のトークショーは、ヨコオタロウ氏、斎藤陽介氏、石川由依さんが登場。斎藤氏から「石川さんはすごくかっこよく登場しましたが、あれはヨコオさんの無茶ぶりだったんです」と明かされると、ヨコオ氏は「最初に石川さんにこの話を振ったら嫌だと言われたんですが」と、悪びれた様子もなくけろりと流した。

「NieR:Automata」の話をあまりすると怒られるということで、今回は主にメインの設定などについて語られた。「NieR:Automata」はかなり未来の話で、「NieR」のDエンド後になるという。その世界に機械生命体を送り込まれ、人類は月に逃げることとなった。人間の代わりにその機械生命体と戦うのがアンドロイドであり、ヨルハ部隊。そのヨルハ部隊のヨルハ二号B型、通称“2B”が「NieR:Automata」の主人公となる。

石川さんが“2B”について、感情をあまり表に出すタイプではなく、でも戦うことの正義感や他のアンドロイドへの愛情もあるさまざまな感情を秘めた子だと語ると、ヨコオ氏が「殴って殺して殺されたりするゲームなので、それにあったキャラクターを作ろうと思っていますね」としれっと言い放つ場面も。

まだ言えないことも多い本作だが、石川さんが「エンディングを見ていただきたいですね!」とエンディングについて触れると、ヨコオ氏の作品をこれまでプレイしてきた会場のファンたちからはどよめきが起こった。ヨコオ氏曰く「僕はハッピーエンドだと思って作っていますから!」と何度も繰り返していたが、ここでヨルハ九号S型、通称“9S”役の花江夏樹さんと、ヨルハA型二号、通称“A2”役の諏訪彩花さんからビデオメッセージが届いた。

花江さんは、小学生の時にヨコオ氏の代表作である「ドラッグオンドラグーン」をとてもプレイしていて、それにつながる作品に出演することが出来てとても光栄だ、とその感動を繰り返し述べた。だが“9S”はアンドロイドということもあり、演じることがとても難しかったそうだ。また、花江さん曰くエンディングについては「ドラッグオンドラグーンのDエンドのような、衝撃のエンディングがくる」と、そのストーリーの一端を明かしていた。

諏訪さんは、「すごい大きなタイトルで自分もでれることになってびっくりしました」と、”A2”役になった喜びを語った。“A2”は、セクシーでダイナマイツなアンドロイドであまり他人と馴れ合わない一匹狼で、クールな感じで演じたという。また“A2”は口数が少ないものの戦闘中はやたらに「クソ」を連呼するという話が諏訪さんから飛び出すと、会場からは「またか!」というような声も聞こえてきた。

花江さんと諏訪さんからのビデオメッセージが終わり、話が「NieR:Automata」の楽曲製作に及ぶと、「岡部さんがさっきのトークショーでいい感じに話していたけれど、「NieR」の時は僕らは誰からも期待されていなかったので好きなようにのびのびやらせてもらえましたが、今回はこれだけ期待されていて逆にもうやりたくないです」といつものヨコオ節で答えていた。

そして「NieR」はゲームより音楽ばっかり褒められるので岡部氏にジェラシーを感じるというヨコオ氏に、「出づらいですね!」と笑いながらも岡部氏もトークショーに合流した。

今回、ボーカルにエミさんと中川さん以外にジェニークさんにも参加してもらった理由は、エミさんの歌声との対比が狙いだという岡部氏。中川さんとジェニークさんもステージに登壇し、ジェニークさんは「普段はR&Bやゴスペルなどを唄っているので、ゲーム音楽に参加するというのは新しい分野にチャレンジできてとても嬉しかったです」と語り、中川さんは「「NieR」の世界はいい意味でファンの皆さんを裏切るので、音楽でも美しく裏切りたいです」とにこやかに語った。

「NieR:Automata」のエンディングは有料ガチャ!?

第三幕では、三回目のトークショーからスタート。ヨコオ氏、斎藤氏、岡部氏に加えて、プラチナゲームズの田浦貴久氏もステージに登壇した。「NieR:Automata」の実際のプレイ画面がこの場で初めて公開されるという話に、会場からは大きな歓声があがった。

なお、開発状況については、死にもの狂いで頑張っている、と田浦氏。ヨコオ氏はプラチナゲームズのアクションゲーム作りについてはかなり信頼をおいているようで、アクション部分についてはかなりプラチナゲームズにまかせてしまっているそうだ。

田浦氏による実際のプレイ画面がスクリーンに映し出されると、会場からは感嘆によるため息が零れた。

「NieR」の世界の魅力のひとつに光の使い方があったが、今回のシーンでもそれは活かされていた。シックな雰囲気で絵作りにはこだわっていて、空中アクションなどがかっこよく動くようにしているという。実際アクションのモーションなども、とてもプラチナゲームズらしい作りだと感じた。

今作でも仲間は後ろからついてきて自動的に敵と戦ってくれるようだが、“9S”のAIが優秀すぎて放っておくとひとりで敵を殲滅してしまい、ストーリー進行のNPCまで殺してしまっていたのでそれはつい一週間くらい前に修正した、という開発中ならではの話も。

華麗に敵を倒していく田浦氏のプレイにヨコオ氏が「田浦さんがうますぎて何やっているのかよくわからない」と茶々をいれる場面もあったが、田浦氏によれば初心者でも簡単にかっこいいアクションが出せるように作っているそうだ。基本の攻撃は□ボタンと△ボタンに割り振られているようだが、同じボタンをずっと押しているだけでも連続コンボは出るとのことで、アクションゲームは苦手だという人も安心してほしい。

そして前作の「NieR」でもあったサイドビューのマップは今回も採用されているとのこと。サイドビューのマップになったときは、サイドビューでも快適に戦えるように調整しているようだ。「NieR:Automata」では直線ダッシュだけではなく弧を描くようなダッシュも可能で、実際のプレイシーンでも“2B”が円を描きながらダッシュをしているのが見れた。

また、今作では“2B”だけではなく“9S”も操作できるということに話が及ぶと、「“9S”は吉田さん(キャラクターデザインの吉田明彦氏)の半ズボンの変態性がよく出ているキャラクターですよね」と、ヨコオ氏がまたしれっと言い放つシーンも。“9S”にはスキャナモードという“2B”には使えない特殊なモードがあるとのことで、“2B”を操作しているときとはまた違うことができるらしい。

「NieR:Automata」のエンディングについては、「ハッピーエンドのはずだけど、何人かのひとにはすごくいやがられている」とヨコオ氏。斎藤氏は「ぼくは『NieR』をハッピーエンドだと思っているけれど、今回はちょっとハッピーエンドに見える、くらいの感じで」と評し、そして田浦氏は「いい感じで終わっている…ように見せているような感じ。一部では評価が割れる」と述べた。

一体今回はどんなエンディングが待ち受けているのか…と誰もが期待と不安を胸に抱いていたところで、ヨコオ氏からの「エンディングを有料ガチャにしよう、とプラチナゲームズさんに提案したら本気で怒られました」とこの日何度目になるかわからない爆弾発言に、斎藤氏が「この人冗談じゃなくて本気で言っているからね」とあきれたように肩を落とす場面もあった。

アンコールにはまさかのサプライズが…!

三回目のトークショーが終わったあとは、再びコンサートへ。中川さんが「エミール / 犠牲」を歌い上げたあとは、帆足氏の切ないピアノから始まった「魔王」、そしていよいよ最後の曲となる「Ashes of Dreams」が演奏された。

「Ashes of Dreams」では真っ白なカーテンの映像が流れ、魔王の部屋でのヨナを彷彿させられた。そこに「NieR」のエンディングのシーンのカットなどが重なり、「これでラストなのだ」という思いに、会場からはすすり泣くような声も聞こえていた。

鳴り止まない拍手に応えて、岡部氏が登壇。岡部氏は会場のファンに、六年も経ってこうしたコンサートが開催できたこと、このコンサートの開催に向けてたくさんのスタッフががんばってくれたこと、そして応援してくれたファンたちに、深い感謝を述べた。

岡部氏に導かれて中川さんとエミさんがそろって登場し、アンコールの一曲目には「オバアチャン」を熱唱。そしていよいよ本当に最後の最後に選ばれた曲は、「イニシエノウタ / 運命」だった。「イニシエノウタ」はさまざまなバージョンがあるが、既に「イニシエノウタ / デボル」が歌われていただけに、まさかの選曲に大きな歓声が上がった。

大きな拍手に包まれ、登壇者全員がこの六年間への感謝の言葉を述べると共に「次回もまたやります」という、力強い言葉も聞くことができた。なお、やはりコンサートの開催にはファンの声が大きいという。TwitterなどのSNSで感想や次回の公演を望む声を届ければ、今回はチケットが取れなかったという多くのファンが報われる日が訪れるかもしれない。

本公演は、ニコニコ生放送でもまだ視聴が可能となっている。ネットチケット販売期間は4月19日(火)23:59まで、視聴期限は4月26日(火)23:59まで(1回のみ視聴可能)なので、興味があるファンはニコ生をチェックしてみよう。

ニコニコ生放送「NieR Music Concert & Talk Live 滅ビノ シロ 再生ノ クロ」
http://live.nicovideo.jp/watch/lv255523395
※有料チャンネル。2000ニコニコポイント(税込 2,000円)

「NieR Replicant」のPlayStation Nowでの配信情報も。4月22日より配信予定、6周年記念のセールも。

セットリスト

1. 夏ノ雪
2. 光ノ風吹ク丘
3. カイネ / 救済
4. イニシエノウタ / デボル
5. 休息
6. 愚カシイ機械
7.NieR:Automata New BGM #1
8.NieR:Automata New BGM #2
9.エミール / 犠牲
10.魔王
11.Ashes of Dreams

~アンコール~

12.オバアチャン
13.イニシエノウタ / 運命

出演者

ヨコオタロウ
齊藤陽介(スクウェア・エニックス)
岡部啓一(MONACA)
石川由依
門脇舞以
田浦貴久(プラチナゲームズ)

歌:エミ・エヴァンス/中川奈美/J'Nique Nicole
ピアノ:帆足圭吾(MONACA)
ギター:後藤貴徳
ストリングス:土屋玲子カルテット

公演終了後の出演者へインタビュー!

公演が終わったあとに本日の出演者に短い時間だがインタビューができたので、その模様をお届けしよう。

左から田浦貴久氏(プラチナゲームズ)、ヨコオタロウ氏、門脇舞以さん、石川由依さん、
齊藤陽介氏(スクウェア・エニックス)、岡部啓一氏(MONACA)

――まずはコンサートを終えての感想をお願いします。

岡部氏:本当に無事に終わって良かったです。今まで「NieR」単独でお客さんからお金を頂いてこういうステージをやることがなかったので、満足していただけるかなというプレッシャーがすごかったです。とりあえず今は満足してもらえたのかな、という気持ちです。

斎藤氏:客観的に、もし僕がお客さんとして来ていたら絶対泣くだろうな、というものが作れたと思うので、今日来たお客さんがどれくらい泣いたのかなというのが興味深いです(笑)。

石川さん:私は次回作からの参加になるので、「NieR」のファンの方とは今日初めてお会いしましたが、本当に「NieR」のことを大切に思っている方、愛している方がこんなにたくさんいるんだな、とすごい感じたイベントでした。一人のお客さんとして、音楽もとても楽しませてもらいました。まだ収録は残っているんですが、私も負けないように頑張ろうと思いました。

門脇さん:「NieR」という作品は私にとってずっと忘れられない大切な作品だったので、同じような気持ちでずっと待っていてくださったファンの方たちと同じような気持ちで大好きな曲を聞くことができて、幸せでした。「NieR」さんといつか会えるまでずっとずっと一生懸命エミールを務めさせていただきたいと思います。

ヨコオ氏:このしんみりした空気の中すごいコメントしづらいんですが(笑)、石川さんがこれから収録がんばりますって言っていましたが、僕まだ台本書けていないですし、門脇さんのセリフに至っては八割方できていないので、がんばります。今日のコンサートは本当に素晴らしいものになったと思っていますし、僕は今年46歳なので、いい冥途の土産になったと思っています。今日はもう、晩年を迎える気持ちでいっぱいでした。ありがとうございました。

田浦氏:純粋に「いいな」という気持ちでした。新作の「NieR:Automata」のほうでもこういうイベントができればいいなと思ったので、また一段とがんばろうという気持ちになりました。

――前作の「NieR」から6年経ちましたが、リリースする際に当時5年10年語り継がれるような作品になるような手ごたえはありましたか?

一同:まったくないですね(笑)

斎藤氏:開発が長かったのもあって、ずっと「青イ鳥」聴き続けていまして、もういいよってなっていましたね(笑)。

ヨコオ氏:もう聴き飽きた感ね(笑)。

斎藤氏:いいのか悪いのかもわからなくなってましたね(笑)。

ヨコオ氏:「NieR」って終盤まで割とバラバラで、話も音楽もよくわからなくてぐしゃぐしゃとデータだけつまっている状態だったんですね。とりあえずそれらを繋げて発売したら、もう見たくない!ってなって、どんなゲームになったのか正直よくわからなかったんですよね。3年ぐらい経ってからファンの方が「たのしかったね」っていうのを聞いて、「あ、よかったんだな」と再確認しました。

斎藤氏:去年のE3でもすごい評価されていて、ドッキリなんじゃないかと思ったくらいで。今日コンサートでこうして皆さんの反応を見て、改めて確信に変わったくらいです。

ヨコオ氏:でも岡部さんは当時海外のメディアさんに「ゲーム史に残る名曲だ」って書かれていて、「それはないな」って思いましたよね(笑)。

岡部氏:ヨコオさんの評価が一番低いんだよ(笑)。

ヨコオ氏:僕の評価は、まぁちょい上、くらいのところですからね(笑)。

――実際ゲーム史に残る曲になったかと思うんですが、偉大な前作があっての「NieR:Automata」の楽曲製作についてプレッシャーはありますか?

岡部氏:前回と同じようなことをやっても意味はないというか、ヨコオさん自身も前の作品が評価されたからじゃあまた同じようなことをしようという人ではないので、新しい音をどんどんいれていきたいですね。

受け手側の方たちにとっては6年も経っているわけですから「『NieR』の音はこうなんだ」というのが出来ていると思うんですが、僕も今回のコンサートをやるにあたって昔の映像や曲を見直すと、記憶の中と若干違う部分があったんですよね。

多分「NieR:Automata」で変わった要素については、色んな受け取り方をされるだろうなとは思っています。プレッシャーはめちゃくちゃありますが、否定的なことも言われるかなという覚悟の上で、ゲームを実際にやってみれば新しい要素も気に入ってもらえるように、今楽曲の製作を頑張っています。

今日のコンサートをやって、プレッシャーは一層強くなりましたが(笑)。「NieR:Automata」の曲を作るときに「「NieR」っぽさってなんだっけ」というところから始まりましたが、前からある要素と新しい要素を上手く取り入れてバランスをとっている感じです。

――次のイベントをやりたい、ということでしたが、どのような趣向のものをやってみたいですか?

岡部氏:「NieR:Automata」のジェニークさんの歌とかも今までの「NieR」とはまったく違う流れで作ったので、新しい「NieR」ってこうなんだ、でもやっぱり「NieR」だね、っていうものをやりたいので、イベントもそういう新旧の「NieR」でまとまった感じのものをやりたいですね。

斎藤氏:赤字にならないイベントですね(笑)。今回はプロモーションも込みだったので、持ち出しもしょうがなし、というところなんですが。やはり赤字続きじゃどうにもなりませんので、トントンでもいいので皆さんに楽しんでもらえるものをつくりたいです。

石川さん:今回は「NieR:Automata」からのキャストは私ひとりだったので、他のキャストさんとかともお会いできるようなイベントをやりたいですね。公開アテレコとかちょっとやってみたいですね。

門脇さん:今回参加できただけで充分ですが、でも新しいチームの皆さんとも掛け合ってみたりできたらとっても楽しいですね。また新しいエミールの音楽に期待しています。

ヨコオ氏:僕は舞台がやりたいです。よろしくおねがいします!

斎藤氏:それここで言うんだ(笑)。

ヨコオ氏:舞台がやりたくてしょうがないんですけど、舞台は赤字で儲からないのでなかなかやらせてもらえないんですよね。ここでこうやって言っておけばなんとかなるかなと思って言いました! 皆さん、ぜひ舞台やってほしいオーラをスクエニさんに向けて予算を引き出してください。

斎藤氏:スケジュール通りにゲームができれば考えます。

ヨコオ氏:…………(田浦氏を見る)。

田浦氏:僕ですか(笑)。今回ゲームの中はあまり多く見せられなかったので、もっといろいろなバリエーションのあるものをお客さんに見せたいと思います。

――今回900人ほどの規模の会場でしたが、次回のコンサートをもし開催するなら、またこれくらいの規模の会場がいいですか? もっと大きな会場でという選択肢もあると思いますが、どうでしょうか。

斎藤氏:これは僕がプロデューサーという立場で答えますと、大きさとしてはこれくらいがいいんじゃないかと思いました。なんとなくしゃべっている側や演奏しているひとたちがお客さんの表情が見えるサイズがこれくらいなのかなと。これ以上大きくなるとわからなくなっちゃうでしょうし。

本当は今回も、二回、三回の公演でという話もあったのですが、初めてのことだったのできっちりリハーサルをやりたかったですし、これくらいの規模の会場で回せるのが一番いいんじゃないかと思います。

ヨコオ氏:こういう「NieR」のイベントが久々だからお客さんがたくさんきてくださったので、これで調子にのってもう一回やるとガラガラになるんですよ! 次は30人くらいのライブハウスでやって、またいつかここに戻ってこれるといいなっていうくらいが多分ちょうどいいはずです(笑)。

――セットリストはどなたが考えられたんですか?

斎藤氏:順番はもうみんなであーじゃないこーじゃないと。ただ、「NieR:Automata」の曲に関しては、パンフレットにキャストの方を載せることが決まっていたので、あまり後ろにもっていけなかったんですね。細かい選曲自体は岡部さんが中心ですね。バランスを見るということで。

岡部氏:最後の「イニシエノウタ / 運命」とかはテープ同期をしてリズムをいれたりしたんですね。それをやること自体どうなんだろう、っていうところもありました。でも「イニシエノウタ / 運命」はそれをやらない限りは無理だなと思っていたんで、それをやるなら、という決断をするかどうかが一つの関門でした。

そして「NieR:Automata」は初めて皆さんの前に出すので、できるだけ原曲に近い形で出したいと思いまして、じゃあテープと同期しましょう、ということになり、そこでそれならば「イニシエノウタ / 運命」もやりましょう、と皆さんに音楽的な視点で提案させていただきました。

斎藤氏:これがないの?っていうのは色々とあると思うんですが、でもほしいと思っていただいていたものはできたんじゃないのかなと思っています。

ヨコオ氏:6年ぶりにやったコンサートで岡部さんが同じ曲を使いまわしで出すとはすごいなって思いました。

岡部氏:色々アレンジしているんで!(笑)

ヨコオ氏:でも味付け変えただけじゃないですか(笑)。まぁその辺りも「NieR」らしいんですが。

岡部氏:帆足が頑張ってくれたんですから!(笑)

――ジェニークさんを起用した経緯を教えてください。

岡部氏:前作の「NieR」はエミさんの歌のカラーが凄い強かったので、真逆のカラーのひとをいれたいね、とヨコオさんと話していて。

ヨコオ氏:エミさんが儚げな雰囲気なので、パワー感のある人をね、って。

岡部氏:力強さを表現できる人ということで、ジェニークさんにお願いしました。

――ヨコオさんがトークでエンディングを有料ガチャにしようと言ってた件はかなり衝撃的でしたが、他にこんなことを言い出したとかいう秘話はありますか?

斎藤氏:今のエンディングも、仕様としてフィックスしているものがあまりにひどいんで、あれをなるべく早くリリースして、これはありなのかなしなのかを世の中に問いたいです。

――(笑)。ありがとうございました!

会場で展示されていた品の一部を紹介!

会場内では「NieR RepliCant/Gastalt」や「NieR:Automata」の展示もあり、その前ではファンが長蛇の列を作っていた。中には会場にいながらにしても、時間がなく見れなかったというファンもいるだろう。ここではその一部を紹介するので、会場に行けなかったファンはもちろんのこと、行列に諦めてしまった方もぜひご覧いただきたい。

「NieR:Automata」の巨大ポップが展示コーナーでファンをお出迎えしてくれていた。
ヨコオ氏がいつも被っているエミールヘッドが出来上がるまでの製作工程。これまでもヨコオ氏は必ず公の場では
エミールヘッドを被って登場していたが、現在被っているエミールヘッドはプラチナゲームズ製。
アフレコ台本の現物。今回のコンサートにあたって複製版の台本が販売されたが、齊藤氏曰く
「カイネの放送禁止用語がはいったセリフは複製版では全て修正をいれたはずですが、もしも入れ忘れがあっても
見なかったことにしてください」とのこと。
北米版「NieR」とその攻略本。北米版では「NIER」と書くのが正式名称となっている。
「NieR RepliCant」初期企画書。「NieR」はどことなく面影を残しているが、
カイネやエミールは大分決定稿との違いが見られる。
「NieR:Automata」のアートギャラリー。プラチナゲームズの幸田氏によるコメントもつけられている。
このイメージボードは「水没都市」が実際に出来上がるまでの製作工程になっている。
「NieR:Automata」のイメージボードたち。今回のコンサートで発表された
「9S」らしきキャラクターが描かれているものもある。
「NieR:Automata」の主人公となる「2B」。またこのイメージボードにつけられていた
プラチナゲームズの松平氏のコメント。深くは問わないが、黙って期待したい。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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