日本一ソフトウェアが2016年4月26日に発売したPS Vita用ソフト「ロゼと黄昏の古城」。異色の作風とギミックの数々が印象的な、本作のプレイインプレッションをお届けする。
古谷優幸氏がディレクターおよびキャラクターデザインを担当し、その可愛らしいイラストとは裏腹な残酷な描写により、独特の世界観を構築し注目を集めた「htoL#NiQ(ホタルノニッキ)」。同氏が新たに送り出すのが、今回発売を迎える古城探索アクション「ロゼと黄昏の古城」だ。
本作の舞台となるのは、時を失った古城。崩れた地下牢で目を覚ました少女・ロゼと、渦巻き模様が印象的な巨人の2人が助け合いながら先へと進んでいく。先へ進めば進むほどに古城、そしてロゼに隠された秘密が解き明かされていくが、その過程では2人にとって過酷ともいえる展開が待ち受ける。
プレイヤーを惹きこむ独特の作品世界はもちろんのこと、“血”の存在が重要となるギミックの数々が特徴的な探索アクションとしての魅力も兼ね備えた、本作のプレイインプレッションをお届けしていこう。
作品への没入感を深める、ニュートラルな進行
まず最初に触れておきたいのが、本作のゲーム進行について。本作では特定の地点まで到達するとそこまでの道程が保存される、オートセーブ形式をとっているのだが、ゲームを起動する際はタイトル画面からそのままロスなくゲームがスタートする仕様になっている。この演出が淡く照らす光の加減と相まって、プレイヤーを作品の世界観へと招き入れる。
同様に、筆者が嬉しく感じたのは説明を限りなく圧縮していることだ。一般的にゲームにおけるチュートリアルは、複雑な操作になるケースも多いことから、必然的に細かく仕様を説明するテキストが入ることが少なくない。だが、本作に関しては操作そのものがシンプルに構成されていることもあってか、テキストで説明する機会が限りなく少ない。もちろん、後述する血を用いたギミックについてはその限りではないが、特定の地点で自動で表示される仕様になっており、ゲームの進行を止める要素にはなり得ない。
こうした要素に触れると説明不足になるのでは、という懸念もあるかもしれないが、本作では限られた情報の中から先へ進むための正解を導き出す、といった楽しみがあるのも確か。実際、筆者が序盤をプレイする中でも引っかかる部分はいくつかあったが、さまざまなアイデアを自分で導き出していきつつ、詰まったらSELECTボタンの長押しでセーブ地点に戻って再開することもできる。厳密にゲームオーバーになることはないので、さまざまな組み合わせを試していくのが、本作における楽しみ方だ。
血のギミックは時のON/OFFの使い分けが重要
さて、本作のゲームシステムについて改めて触れていこう。本作は色と時間を失い、廃墟となってしまった世界を舞台としているが、唯一時間が流れているのが“赤いもの”、すなわち血だ。ロゼは背中に生えた大きな茨により、この血を奪い、他のものに移し替える力を持っており、この力を活用して古城の先へと進んでいく。
例えば、上から落ちてくる赤色の岩から血を奪い、道を塞ぐ時の止まった岩に血を移すことで通れるようにする。このように、血を奪う、もしくは血を移すことで何が起きるのかを考えているのが、基本的なゲームの考え方だ。
こうして先へと進むロゼだが、地下牢をある程度進むと、巨人との出会いを果たすこととなる。当初は微妙に距離をとっている感のあるロゼではあるが、共に行動をする中で大きな支えになっていく。
ゲーム進行においても巨人が果たす役割は大きい。ゲーム中はL・Rボタンによってロゼと巨人の操作を切り替えることが可能。基本的に血を移し替えることしかできないロゼに対して、巨人は岩を投げたり、ロゼを持ち上げて運んだりと、さまざまなアクションが可能だ。逆に図体が大きくて行動範囲が限られてしまう局面も少なくないので、常に互いを入れ替えながらより良い進め方を考えていくのがいいだろう。
実際のゲームで楽しんでもらいたいという点から、今回は直接的なギミックの紹介は伏せておくが、ロゼは常に死と隣りあわせの状況下にいる。ギミックに対するちょっとした判断ミスはもちろんのこと、場合によっては巨人の行動に影響するかたちで死んでしまうこともある。先ほどと矛盾してしまう部分もあるが、やはり自身でロゼに手を出してしまった時の罪悪感はなんとも言えない。
血を捧げる描写は鮮烈
最後に、ストーリー上の鍵をにぎる“血の記憶”、そして衝撃的なシーンを描く“血の封印”についても紹介していこう。
“血の記憶”は読んで字のごとく、時折遭遇する死人が流す血を吸収することで見ることのできる、血に秘められた記憶を指す。その記憶から紐解かれるのは、この古城で一体何が起きたのかということ。お芝居風に描かれつつ、死の描写を描くその過程に、本作ならではの世界観が垣間見える。
同じく、血の記憶を一定数集めることで解くことのできる“血の封印”は、新たなマップへ進むために必要な儀式。巨大な茨によって封印された扉の上に置いてある拷問器具のロゼはその身を捧げ、その結果として扉が開かれる。スクリーンショットだと雰囲気がなかなか伝わりづらいところではあるが、ぜひ一連の流れを追ってみてほしい。
ちなみに、血の記憶を十分に集めていないと血の封印を解くことはできないが、一度クリアしたマップへはメニュー画面のマップから戻ることができるので、活用していこう。
そしてもうひとつ、道中で手に入れることとなるのが「いばらの研究日誌」。ここではとある人物の茨に関する研究のことが触れられており、本作の謎を解く上では非常に重要なポイントのひとつとなっている。取りこぼすことなく、手に入れていきたいところだ。
「htoL#NiQ」をプレイした人であればお分かりの通り、今作でもストーリーが明確に語られることはなく、プレイヤーが想像しながらひとつひとつのマップをクリアしていくこととなる。神秘的かつ退廃的な雰囲気も感じさせる音楽も含めて作品に浸り、プレイヤー自身でこの世界の謎を紐解いてほしいと思う。