日本一ソフトウェアが6月23日に発売したPS Vita用ソフト「ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団」。完全新作のタイトルであり、ダンジョンRPGとして独自の魅力を備えた、本作のプレイインプレッションをお届けしよう。
ディレクターおよびシナリオを泉達也氏、キャラクターデザインを原田たけひと氏、音楽を佐藤天平氏と、「魔女と百騎兵」を生み出した3人のクリエイターが再び集結し、完全新規のタイトルとして発売された本作。すでに累計出荷本数5万本を達成するなど大きな反響を得ているが、プレイしていないユーザーにとっては、どのようなゲームとなっているのか、イメージしづらい部分もあるだろう。
実際に筆者も本作をプレイしてみて、ゲーム進行に応じて面白くなっていく作品の魅力を肌で感じることができた。ここでは、序盤のプレイの流れに沿って、本作ならではのいくつかのポイントを紹介していこう。
どこか歪なキャラクターたちが生み出す世界観
本作の舞台であるルフラン市には前人未到の地下迷宮が存在しているが、その内部を知るものは誰ひとりとしていない。それは迷宮内が強い呪いの瘴気で満ちているためであり、迷宮に入ったが最後、人は半時と生きてはいられないのだ。
その唯一の生還者で、迷宮の秘密を解き明かしたとされる男が残した伝説の書物が「妖路歴程」(以下、レキテイ)だ。この書物がプレイヤーの分身であり、所有者である魔女・ドロニアの命を受けて迷宮の攻略に挑むこととなる。ただし、書物であるプレイヤー自身に戦う力はないため、魔女が作り出した人形兵たちで構成された集団“カヴン”が迷宮内での戦闘を担う。
ゲームの流れをかいつまんで紹介すると以上の通りなのだが、ゲーム中の物語は、ドロニアから提示されたダンジョン内での目的を達成し、「魔女報告」を行うことで進行していく。カヴンを編成してダンジョンの深部へと挑みつつ、その合間ではドロニアやルカたちの会話を読み進めるという、二軸でのプレイが楽しめる。
作中に登場するキャラクターたちはドロニアをはじめ、どれもクセのありそうな面々ばかり。歪な一面を持つキャラクターたちが繰り広げる会話はどこか噛み合わず、そうしたやり取りがルフランという街が持つ独特の世界観を表現しているようにも思う。キャラクターから与えられるのは断片的な情報ばかりではあるが、ついついゲームの先が気になってしまうのはこのタイトルならではの魅力のひとつではないだろうか。
機能拡張で探索するごとに広がっていく面白さ
探索していく迷宮内は、プレイヤーの一人称視点による3Dダンジョンとして表現されている。画面右上のマップを開放していきながら、階層ごとに進んでいくこととなる。ダンジョンRPGとしては比較的オーソドックスな進め方だと感じるのではないかと思うが、本作ではここに独自の要素が加わることで、面白さを生み出している。
ゲームを実際に遊んでみると、冒頭でプレイヤーができる行動はかなり制限されており、プレイヤー側としては放り投げだされるような感覚を覚えるかもしれない。ただ、ゲームを進める中で筆者が面白さを感じていったのは、徐々にゲームを進めることで段階的に機能が拡張していくそのプレイフィールにあった。
その要因として、要所でのチュートリアルが充実していることが大きい。発売までに公開された情報を見てもお分かりかと思うが、本作では編成から探索、戦闘に至るまでプレイヤー側に判断を求められる要素が多い。
それらを一気に吸収するのは難しいことから、まずは人形兵たちで構成されるカヴンの構造や各行動コマンドの理解から始め、そこから徐々に機能を紹介していく流れは非常にプレイしやすかった。逆に自身で理解さえしてしまえれば、いくつかの要素についてはチュートリアル前から活用できるので、プレイヤー自身のペースを作れるのもポイントだ。
とはいえ、本稿を読んでいる読者には伝わりづらいところもあるだろう。まずは探索において序盤で覚える要素を紹介していこう。
探索を進めていくと、途中でこう思うはずだ。「右上のマップには薄く表示されているけど、壁に阻まれて行けないところがある」と。そんな時に役立つのがレキテイスキル「壁壊し」。読んで字のごとく、破壊可能な壁を壊し、その先へと進めるようにする能力だ。最初は単純なダンジョン探索だなと思っていたが、壁壊しが加わったことで一気に探索のバリエーションが広がった。
また、深部にまで潜ると常に問題としてつきまとうのが、拠点までの戻り方。アイテム“魔女の帰還鈴”による帰還(ただしマナ(※詳しくは後述)を大きく失う)、ダンジョンごとのつなぎとして用意されている小部屋からの帰還などがあるが、さらにゲーム進行によって覚えるレキテイスキル「泥の脱出口」を設置すると、マナは失うものの、好きなところから脱出できるようになる。
レキテイスキルはゲーム進行によるものだけでなく、魔女嘆願によって開放され使用可能となる。その習得に必要となるのが、先ほどから触れているマナだ。お願いの内容に応じて消費するマナは異なるが、より効果の大きい物ほどマナの消費量が多くなるため、使えるタイミングも基本的にはゲーム進行とマッチするだろう。
また、冒頭の通り、自己主張というかたちでレキテイとしての判断を委ねられる場面もあるが、迷宮の各所にいる住人たちは言葉が通じなかったりと、コミュニケーションに難儀すること多数。選択を間違うとそのまま戦闘になってしまうような局面もあるので、その状況に応じて適切な判断をしたいところ。
もちろん、このほかにもいくつも探索にまつわる仕組みは用意されているのだが、あくまでもここで言いたいのは、これらが無理なく開放されていくこと。ダンジョンRPGを苦手に感じている人ほど、ぜひ触れてほしい探索の仕組みだった。
戦闘は編成を楽しめるようになってからが本番!
探索だけでも多くの要素を持っている本作だが、面白さの本質は戦闘システムにも随所に盛り込まれている。まずは人形兵の制作について紹介していこう。
人形兵を制作するためには人形素体と、“魂の小瓶”と呼ばれるアイテムが必要。魂の小瓶に設定されたアニマクラリティの数値が高ければ高いほど、より強力な人形兵を作ることができる。
人形兵の能力のベースとなるのが、ゲーム開始時6種類から選択できるファセット。ステータスの補正や得意な武器などがそれぞれで決まっており、前衛の攻撃役であればアステルナイトやシノブシ、支援役であればシアトリカルスターやマージナルメイズといった具合に、まずはおおよその感覚で選択すればいいだろう。
ファセットを選択したあとは、人形兵の名前、そして各項目を選んでいく。性格や成長タイプ、スタンスといった成長の仕方や能力値に直接影響するものから、キャラ育成ならではの醍醐味であるフレーバーテキストの設定まで、シンプルながらも人形兵毎に特徴付けができる。
そうして集めた人形兵たちをカヴンとして編成していく際は、最大5つのカヴンに人形兵を割り当てていくのだが、序盤ではカヴンにつき1人のみしか設定できない。ちなみに、カヴンの編成には“カヴン結魂書”と呼ばれるアイテムも必要で、その種類によってカヴンによって登録できる人形兵の数や配置場所も決まっているので、注意しておきたい。
戦闘は基本的にターン制のコマンドバトル。1ターンにつき敵味方が選択した行動を順番に行っていく。通常攻撃、カヴン単位で発動できる特殊技のドナム、敵からの強力な攻撃を防ぐ防御陣が基本的な選択肢になってくると思うが、カヴン同士で連続攻撃することで発動し、ダメージがアップする“共振”などもあるため、ターン毎の選択肢は戦局にも大きく影響していく。
さらに少しゲームを進めると、レキテイスキルとして「オフェンスフォース」「ディフェンスフォース」を覚える。これにより、リインフォース(※さまざまなものごとを行うためのコストのようなもの。カヴンを迷宮探索に連れていく際や、先述の壁壊しなどでも消費する)を消費し、戦闘時の攻撃や防御を強化したり、迷宮内での回復や蘇生が可能となる。これらは強敵に相対した時などに活用できるので、併せて覚えておこう。
このように、戦闘に関しては序盤からさまざまな要素が絡みあうので十分に楽しめるのだが、さらに面白さが増してくるのがゲーム進行により、旅団の編成ができるようになってからだ。直接戦闘に参加するアタッカー、カヴンの強化・補助を担当するサポーターと1つのカヴンにつき最大8人(アタッカー:3人、サポーター:5人)が配置できるのだが、編成の仕方で能力の補正が大きく変わってくる。このあたりは筆者もまだ十分に味わえてはないのだが、十分にゲームに対する理解を深めた段階で編成可能となるので、すんなりと入ることができた。
実はかなりかいつまんでの紹介となってしまったのだが、いかがだっただろうか。ゲーム内の要素の多さで情報だけではとっつきづらさもあるとは思うのだが、遊んでみるとこちらの想像以上に丁寧に作られていることが感じられた。ダンジョンRPG好きはもちろん、作品の世界観に少しでも惹かれた人は、ぜひプレイしてみてほしい。