EpicGearのゲーミングヘッドセット「EpicGear SonorouZ X」の魅力に迫る! オーディオ機器の特徴を誰にでも分かりやすく伝えていく、初心者向けオーディオ講座「付け焼刃の知識でケガをする音響機器レビュー」。

耳の奥に住んでいる妖精さんにヘッドセットで感謝の音を送ろう! そんなわけで今回も、ゲーミングヘッドセットに関する分かっているようで分かっていない用語や、スペック表の意味するところを調べつつ、ときには大胆に無視しつつ、機器の特性を紹介していこうと思います。伸びやかでキレのあるタイトな音場感を一緒に勉強していきましょう!

Xを鳴り響かせるのです

第4回で紹介していくのは、台湾のメモリメーカー・GeILが展開するゲーミングデバイスブランド「EpicGear」より先日7月5日に発売された、「EpicGear SonorouZ X(ソノラス X)」です。前回紹介した「EpicGear ThunderouZ(以下、サンダラス)」に続く、EpicGearから放たれた刺客です。ちなみに今回はサンダラスとの比較が多目ですが、前回記事は別に見てなくとも構いません。ユーザーフレンドリーな作りにしました。

なお、ソノラス Xは前機種「EpicGear SonorouZ SE」のバージョンアップ製品ですが、外見上の変更はハウジング部分のロゴと、マイク外側部分にLEDライトを搭載していることのみ。ただし、オーディオおよび機能性は大幅に向上しているとかです。口ぶりから分かると思いますが、筆者は従来製品を知らないので無視です、無視。ありのままのソノラス Xを語っていきます。

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EpicGear「EpicGear SonorouZ X」|型番:EGASZ1-7UWB-AMSG
小売実売価格:13,800円~

それでは最初はスペック表とにらめっこ。ヘッドホン部分は密閉型ダイナミック 50mm径、周波数は20Hz~20,000Hz、ケーブル長は3m(編み込みケーブル)、重量は416g(ケーブル込み)となります。サンダラスと比べるとスマートな形状ですが、そのほかの表記上のスペックに違いはありません。あくまで数値上はね。

続いてマイクは周波数100Hz~10,000Hzの指向性マイクで、ノイズキャンセリング機能付き。巷でよく聞くノイズキャンセリングですが、これは「周囲の雑音に対して“逆位相の音波”を発生させ、ノイズを低減する機能」です。逆位相という文字にSFを感じる人もいるかと思いますが、白と黒、甘口と辛口、時間と宇宙みたいな関係性だと考えてください。

ノイズキャンセリングの具体的な効果は、「電車の中でも、電車の騒音が聞こえず、音楽を楽しめる」ことです。これはヘッドホンに仕込まれたマイクが周囲の音を収音し、その雑音を打ち消す波長で、騒音を相殺しているのです。よくドームやアリーナで“音が打ち消し合って、何も聞こえない一角”が生まれる現象を、個人レベルに落とし込んだものですね。発祥はSONYです。

これにより、周囲の雑音を気にせず、音量を上げすぎなくとも音楽が楽しめ、結果的に音漏れなどの問題が解消できるわけです。画期的機能です。私はこれまで使ったことないですけどね。それと、ソノラス Xのノイズキャンセリングはあくまでマイク部分なので、音を聴く部分にはついてないです。間違いないように気を付けてください。

東京に襲来した「ソノラス X」

製品の同梱物はヘッドセット+ケーブル+インラインコントローラー、これ一個。サンダラスと同様にすべて一体成形型となっているため、ハイテク機器にありがちな開封時の「この箱と透明なプラスチック、どうやって外すんだよ!?」の心配もない、安心安全な設計といえます。ただし、ソノラス XはUSB接続オンリーとなっているので、その点には注意しましょう。

特徴は多機能インラインコントローラー、そしてバーチャル7.1chサラウンドサウンドに対応していることです。インラインコントローラーでは音量の調整とミュート、マイク音量の調整とミュート、イコライザ(ゲームモード/ミュージックモード)の切替、LEDライトの点灯が操作可能です。特殊な実用例もないので、読んで字のごとく、必要なときに操作しましょう。

なお、前にも紹介しましたが、バーチャル7.1chサラウンドサウンド機能は“四方八方に七個のスピーカーは置けないけれど、そんな感じで聴こえるようにしたよ”というものです。これは見るよりも、知るよりも、実際に使ってみるか、映画館に行くかで体感するのがベストです。

それではまずゲーミング用途として、PS4「レインボーシックス シージ」をプレイしつつ、その使い心地を試していきます。恒例の「エンジン音が鳴り続ける車を正面に360度回る」で定位のバランスを探るのです。

とはいっても、取り立てて特筆できることはありませんでした。何も言うことがないくらいに機能していますし、感動が薄いというものでもありません。そろそろ分かってきましたが、1万円強の価格帯における製品、ひいてはそれ以上のグレードにあるヘッドホンにしても、定位という概念のブレイクスルーには至っていないということなのでしょう。

定位に関しては、基本的に聴こえ方は誤差の範囲内で、聴こえる音が違うだけ。そのため、初めて体験する人はこれを享受し、既に体験したことがある人はこれを甘受する、それでよいでしょう。毎回絶賛するのもアレなのでちょっと捻りました。幼子の手のように。

ただし、聴こえる音の味付けは前回のサンダラスのときに書いた通り、結構違います。改めて書いておくと、「レインボーシックス シージ」における銃声は、サンダラスは高音寄りの「パパパパン」、ソノラス Xは低音寄りの「ドドドドン」となります。もう気付いたかと思いますが、みんなやっぱりサンダラスの記事から見といたほうがいいよ!

続いては装着感ですが、ソノラス Xはこの辺りがちょっと変わっています。まず、最大の特徴となるのが“イヤーカップ部分がクリンクリンと回転”すること。これはスイング&スイーベルという可搬性に優れた折り畳み機構らしく、バッグなどに収納する際に利便性を発揮します。

「テトリス」で例えると、普通のヘッドホンは四角ブロックとか、T-スピンするアレみたいにカバンの中でお邪魔になりますが、ソノラス Xには縦棒になる可能性が秘められているのです。まあ、回転時にマイクがヘッドバンドに干渉してしまい、そのうえ何かに引っかけてしまいそうなスタイルになってしまうので、正直怖いですけど。

なお、一見してそれぞれの箇所の耐久性をトレードオフにしているようにも思えますが、可動部位はガッチリとパーツで固められていて、防御力が高いです。それでいてイヤーカップはフワフワな低反発素材、ヘッドバンドは少し固めな低反発素材となり、内側から優しく包みこむ器量も兼ね備えています。

イヤーカップ内のホールは広く取られているため、耳回りは開放的。もちろん、当然の権利とでもいうように、遮音性はボーダーラインを下回る劣悪さです。USB接続という性質上、外で使うことは少ないかと思いますが、外出時は周囲に目を配り、ヘッドセットを素早く取り外し、どれだけ周囲に音が漏れてしまっているかを確認する、反復アクションは必須となるでしょう。人間は社会的動物ですから。

マイクに関しては前述したとおり、ノイズキャンリング機能によってそれほど雑音は入ってこない……気がしないでもないです。「隣の席の人に、隣の席で話してもらう」という雑なテストしかやっていなかったので、察してください。ただ、サンダラスとはボイスの聴こえ方が多少違いました。波長まではチェックしていないので所感ですけれど。

それと、マイクブーム(グースネック)がガチガチな仕様なので、あまり曲げられません。人によっては上手いこと口元に持ってこれないこともあるでしょう。なので、マイクを重要視している人は必ず試用してからの購入をオススメします。

スタンダードな優等生スタイルでハジける!

「EpicGear SonorouZ X」は全体色がブラックですが、イヤーカップのクッション外枠の近くに、リング状の赤色プラスチックが取り付けられています。見る人にクールでいて、ポップな印象で、スタイリッシュな雰囲気をも想起させる。みんなご存じ、三式機龍(メカゴジラ)の目元の血涙を思い起こさせるかのようデザインですね。

ソノラス Xは各パーツが大きめに作られていますが、全体的な印象はスマートです。凝った装飾ではなく、全体の輪郭とワンポイントで印象付ける、スポーツウェアのような装いです。サンダラスと同様、編み込みケーブルが赤+黒に彩られているので、地味さを感じることもありません。しかし、ゲーミングヘッドセットって赤黒カラーが多いね。

ということで今回も、Gamer編集部の女性陣に「いい仕事あるよぉ……編モ(編集部モデル)の仕事だよぉ……」と働きかけ、ヘッドセットガールになってもらいました。シンプルな色合いとデザインなのでバランスを保ちやすそうですが、ちょっとだけゲーム感が推しでている感じ。今回はモデルの服装とマッチしているのでグッドですが。ちなみに前日に伝えていたりはしてません。ぶっつけでお願いしています。

さて、お気づきの人がいるかは存じませんが、モデル役で出演可否をいただけたのは前回を含めて計3名です。今後はこの3名の女性陣がループ形式でモデルになってくれる運びです。せっかくだし、モデルガールの人気投票とかやりましょうか? 顔出しNGなので、ヘッドセットガール(雰囲気)とかで。おそらく、ぶん殴られるけどね。

低音に寄せたエネルギッシュさがフェイバリット

ここからは“音楽鑑賞で使うEpicGear SonorouZ X”と題し、本製品のリスニング性能についてレビューしていきます。取り扱う機器の構成は、楽曲が無圧縮WAV(~96kHz/24bit)、参考用にモニターヘッドホン(SHURE SRH1540)です。今回はUSB接続オンリーですので、PCを使用しています。PC環境は言うも恥ずかしいレベルなので、言いません。

それと実は今回、※印の注釈がまだありません。そろそろ記事で注釈するべきネタが尽きてきたのです。つまり、本連載はこれまでの3回分を読めば、口だけプロになれる可能性を秘めているということです。逆説的に。まあ、ないのも寂しいですし、とりあえず有効活用しづらい知識その1「ストレインリリーフ」だけでも紹介しておきましょうか。

※ストレインリリーフとは:本製品のとある部分です。分かるでしょうか? 絶対わからないと思います。これはケーブルとヘッドセットの接続箇所、ケーブルとインラインコントローラーの接続箇所などに使用されている、ケーブルを覆う保護パーツのことを指しています。これがあることで、ケーブルの損傷などを防いでいるわけです。ストレインリリーフ、何日間くらいこの言葉を記憶していられるでしょうね。2日くらい?

根元の部分がストレインリリーフです。
一度は口に出してみたい使用例「あの人をストレインリリーフのように支えてあげてください」

さてと、まずはUSB接続といえば、前回のサンダラスで私が蛇蝎のごとく毛嫌いしてしまった独自機能「EG-AMP」がありますが、ソノラス Xにはその機能は搭載されていません。そのためか、インラインコントローラーのイコライザ(ゲームモード/ミュージックモード)が分かりやすく違いのあるエフェクトに仕上げられていて、一転して好感です。

とはいうものの、ゲームモードはめんつゆを浴びせかけるかのように過剰な低音への肩入れモードであり、もう一方のミュージックモードは指向性があるというわけではなく、ただただクリアでノーマルなモードとなっています。つまり、ゲームモードはゲーム以外で使用することはありえませんね。素直に「M(MはミュージックのM)」に入れておきましょ。

あらかじめ言っておくと、ソノラス Xは音楽鑑賞用途においては非常に優等生です。若干籠もりがちではあるものの、ファーストインプレッションで変な違和感や、奇妙なエフェクトを感じたり、突飛な印象を受けることがないので、実にプレーンな製品として扱えます。同価格帯のゲーミングヘッドセットなら“プレーンであることのほうが貴重”でしょうし。

ゲーミングヘッドセットの宿命たる低音寄りの星に生まれ落ちているものの、7.1chの立体的な音場感が形成されており、鳴らすことに関しても再現性が高いです。また、さまざまな音が低音寄りの空気感に寄せられており、音源に生々しさとでもいうか、ある種のエネルギッシュさが生まれています。味付けとしてはそれなりに濃いものですけど。

しかし、私としては2つ欠点があります。最初のジャブは“籠もりがちなのが耳につきやすい”こと。音場や定位を体感させる演奏はサンダラスよりも優秀ですが、音源次第では籠もり具合により、ライブハウスどころかラジオ放送にまで感じてしまうケースも。じっくり浸る観賞には向いていますが、サラッと気分よくの観賞には向きません(※あくまで好みの問題です)。

サンダラスには結束バンド+クリップが付いていたのに、ソノラス Xにはなし。左右表記も変わらず裏側です。

そして、もう一つがとても辛い。それはイヤーカップの構造です。クッション内部のホール部分が広めなソノラス Xですが、そこには深さが全然取られていません。そのため、頭と耳にしっかりフィットしないと、クッションと側頭部の間に微細な隙間ができてしまい、音が抜けてスカスカしてしまうのです。私の場合は10点満点中、7点のフィット感でした。

実際、ハウジング部分を手で押して、耳に押し付けてみると、2段階上のグレードに化けます。密閉感が生まれて初めて“ソノラス Xの完成形”を体感できました。同様の効果を生むヘッドホンはそれなりにありますが、ソノラス Xはそれがより顕著。しかし、ホールの深さはそもそもこれが想定であり、グローバルなマジョリティのためのサイズということなのでしょう。

みなさんはこんな風に愚痴らない、立派なサイレントマジョリティになれるよう、しっかり試用してみることをオススメします。ソノラス Xはちゃんと装着できるかどうかで、性能差がグンと変わるっていうお話ですので。

潰されてもめげない、そんな耳になりたい

見た目はパワフルなのに本領は繊細でキリっとしたサンダラス、見た目なスマートなのにドンドコとエナジーを湧き出すソノラス X。この両製品は相反したデザインと属性を持っていて、実に面白いです。購入側からしてみれば認識の齟齬に繋がってしまうので困りものですけれど。

今回のソノラス Xに関しては若干ネガティブな表現が多目になりましたが、同価格帯における満足度でいえば上位の出来です。ゲーミング面においての施策に「低音でドンドコさせればいいんでしょ?」という気概が感じられるものの、表現方法として間違っていることはなく、十分な迫力がもたらされます。アピール不足は、単なる私の怠慢です。

そもそも、今回試用した「EpicGear ThunderouZ」および「EpicGear SonorouZ X」は、ついでに音楽を鳴らすためでなく、それぞれの味付けとアプローチで、音楽鑑賞が楽しめるように作られているのが素晴らしい。専門機でありながら、自身の多様性を豊かにしていくその姿勢には、「私もがんばろう……」と感じさせてくれます。このご時世、意識高く生きましょう。

そんなわけで今回はおしまい。次なる機会まで、世にゲーミングヘッドセットがあらんことを。

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