コーエーテクモゲームスより2016年9月29日に発売予定のPS4/PS Vita用ソフト「フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~」。同作にアーティストとして参加する山本美禰子さんとCeuiさんに、歌唱を担当した楽曲の収録エピソードなどを聞いた。
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旅をテーマとして展開する、「フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~」。すでに公開されているBGM音源(http://social.gust.co.jp/firis/music/)などからもその雰囲気は感じ取ることができるが、ゲーム中でさらに印象的なシーンで流れるのが、8組のアーティストによる多彩なテーマ曲の数々だ。
今回はその中から、グランドエンディングテーマ「Into the Journey」を歌うCeuiさん、アバンテーマ「わたしの見たい景色まで」を歌う山本美禰子さんに話を伺った。それぞれの楽曲のエピソードはもちろんのこと、プロデューサーの岡村佳人氏を交えて、楽曲からイメージされるゲームの内容にも言及しているので、ゲームへの期待とともに読んでもらえればと思う。
“旅”をコンセプトとした楽曲を用意
――本日はよろしくお願いいたします。まずは岡村さんより、「フィリスのアトリエ」のコンセプトについてお話いただけますでしょうか。
岡村佳人氏(以下、岡村氏):「フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~」は、「ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~」の続編で、「不思議」シリーズの2作目となります。本作では旅をテーマに、今までのゲームシステムを大きく変えて、主人公フィリスが成長していくストーリーを描いています。
ゲームの要素についても、今まではひとつの街を中心に展開されるものでしたが、今作では大きな世界を旅していくものになりますので、サウンドも旅をコンセプトとした楽曲や歌を用意しています。
――旅をコンセプトに、ということですが、実際に作られている曲のイメージはどういう方向性になっているでしょうか?
岡村氏:今までの「アトリエ」シリーズの音楽は民族音楽調とよく言われていますが、その中でもアイリッシュやケルティックになるべく寄せたかたちで曲を作ることが多かったです。今回はそのトーンを残しつつも、南米風の要素も取り入れて、ちょっと泥臭い旅の匂いを感じていただけるような曲を目指しています。
ミックスなどの方法も「ソフィーのアトリエ」とは少し変わっていて、長時間聴いていても疲れないように、といった点には力を入れています。フィールド自体がかなり大きくなっていて、仮に「ソフィーのアトリエ」で一番大きかったフィールドが200m四方だとすると、今回で一番大きいフィールドはその10倍ぐらいにはなっています。そうした面でも旅情感はあると思いますし、もちろんそれに合わせてサウンドも工夫してもらっています。
――その中で今回、山本さんとCeuiさんをアーティストとして起用された経緯についてもお聞かせください。
岡村氏:最近ではさまざまなジャンルのアーティストさんにご参加いただいて、「アトリエ」シリーズのサウンドを盛り上げていただいているのですが、今回もその一環としてCeuiさんと山本さんにお願いしました。
山本さんは、元々「ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~」からアーランドシリーズのオープニングを担当していただきましたが、その頃から歌声がすごく印象的でした。「トトリのアトリエ ~アーランドの錬金術士2~」は母親を探す旅をテーマにしているのですが、そのオープニングテーマ「Pilgrimage」もすごく旅情感のあるものになっていたので、今回また参加していただこうと思いました。
Ceuiさんは、さまざまな方を候補として検討させていただく中で、サウンドチームから候補としてお名前が挙がってきたんです。実際にCeuiさんの楽曲を聴かせていただいたところ、すごく透明感のある「アトリエ」シリーズのイメージに合った歌曲を作られていたので、ぜひにとお願いしたところ、ご快諾いただきました。
――お二人は、今回のオファーが来た際にどのように感じられましたか?
山本美禰子さん(以下、山本さん):アーランドシリーズで3作歌わせていただいてからはしばらく離れていたのですが、その中で作曲の柳川さん(ガストのサウンドを手掛ける、コーエーテクモゲームスの柳川和樹氏)とお会いする機会があり、そこから今回のお話をいただきました。私にとっての「アトリエ」シリーズは、ソロデビューが「ロロナのアトリエ」のオープニングテーマ「Falling, The Star Light」だったこともあり、すごく思い入れのあるシリーズで、また参加させていただけるというのはすごく嬉しく思いました。
Ceuiさん:私は逆に初めてのご縁だったので、お声がけいただいて純粋に嬉しいなと思いました。それと「アトリエ」シリーズが、本当に長いことお客さんから愛され続けてきた歴史ある作品なんだということを知って、とても貴重な機会をいただけてありがたいなと思いました。
――ちなみに、「アトリエ」シリーズの世界観などはご存知でしたか?
Ceuiさん:詳しい内容までは知らなかったけど、有名なシリーズとして、「アトリエ」という名前はよく耳にしていました。
――それでは、実際に参加するにあたって作品の資料などはご覧になったのでしょうか。
Ceuiさん:今回担当させていただいた曲を手がけていらっしゃる矢野さん(Ceuiさんが歌う「Into the Journey」の作編曲を担当する、コーエーテクモゲームスの矢野達也氏)から、作品の内容や曲のイメージに関するメッセージがびっしりと書かれた資料をいただきました。それを自分の中で解釈して、レコーディングに臨みました。
“作曲者のイメージと一致”して収録できた「わたしの見たい景色まで」
――ここからはお二人が担当されている楽曲についてお聞きしたいと思います。まずは山本さんが歌われた「わたしの見たい景色まで」についてはどのようなイメージで制作を進められたのでしょうか?
岡村氏:最初の街から初めて外に出る、印象的なシーンで流れる曲になっています。ゲーム中のこれまでのこととこれからのことをつなぐ、爽やかで「アトリエ」らしい曲にしようと。山本さんの声もずっと聴かせていただいているので、こういう曲だったら合うだろうということで制作しています。
――今回聴かせていただいた感覚ですと、「アーランド」シリーズで歌われている楽曲と比べ、今作では曲調も変わっているように感じました。
岡村氏:「アーランド」シリーズと「不思議」シリーズは、カラーとしては近くないようで遠くない感覚ではあるのですが、同じボーカルの方にお願いすることもあったので、差をつけるところははっきりと差をつけていって、かつ同じ「アトリエ」シリーズだというところは残したいという思いがあったので、アコースティックの楽器を残しつつも、曲調はガラッと変えて作られています。
――そうしてできた楽曲を実際にレコーディングされた際の印象はいかがでしたか?
山本さん:作曲を担当した柳川さんが、ガスト(現:コーエーテクモゲームス)に入社された頃からのお知り合いだったこともあり、ずっと柳川さんの曲を歌ってみたいと思っていたのですが、「アーランド」シリーズでは機会がなかったので、柳川さんの曲を歌うというのがすごく嬉しかったです。
「アーランド」シリーズの時にエンディングを歌っていたmaoちゃんが、「柳川さんはドSだよ。この曲すごく難しいんだよ」と言っていたのを聞いて、確かに難しいなとずっと思っていて、今回の楽譜をいただいた時も「なるほど、これは難しいぞ」と覚悟を決めました(笑)。
ただ、転調などひとつひとつの展開がすごく計算されていて、「ここでガラッと雰囲気を変えてこうなる」という構造がきちんとできていたので、まずは曲をよく聴きこんで、自分の中でこういう歌い方をすれば、柳川さんの表現したいことを一緒に表現できるのではないかと思い、曲を組み立てていきました。
特に資料とかはなかったのですが(笑)、当日も自由に歌ってくださいと言っていただいて、レコーディングも楽しくスムーズに、気持ちよく歌うことができたと思います。
岡村氏:長くやっていただいている方とはそんな感じです(笑)。レコーディング中も、こういう風に歌ってくれたらいいな、というところにストンと落としていただけたので、リテイクもほぼなく、サクッと終わることができました。
山本さん:柳川さんがやりたいと思ってらっしゃることとイメージは一致していたので、そこは上手くいったように思います。
ミュージカル調の、心を自由に音楽にしたような「Into the Journey」
――続いて、Ceuiさんの歌われる「Into the Journey」のコンセプトなどお聞かせいただけますでしょうか?
岡村氏:「Into the Journey」はグランドエンディングテーマということで、物語の大団円の楽曲として制作されています。物語を振り返るエンドロールで流れるため、タイトル画面の曲やはじまりの町の曲などのメロディーのモチーフが随所に盛り込まれて、エンドロールの間、楽しんでいただけるような曲になっています。
また、「アトリエ」シリーズとしては珍しい、フルオーケストラに近い編成の楽器を使っていて、“物語を紡ぐ旅”というひとつのテーマに合わせた表現として、ミュージカルに寄った楽曲になっています。
――いろいろな楽曲のモチーフを使われているということですが、プレイヤー側が実際に聴いた時に分かるような感じでしょうか?
岡村氏:タイトル画面やはじまりの町でずっと流れ続けている曲なので、プレイが終わった後にふと流れたら「あ、懐かしい」と思ってもらえるような感じになっています。同じようなメロディーが何箇所か使われているので、自然と刷り込まれていたらいいのではないかと思います。
――Ceuiさんとしては、実際にレコーディングに臨まれてみていかがだったでしょうか?
Ceuiさん:まず、初めて曲を聴かせていただいた時に「わー、ミュージカルだ!」と思いました。私はミュージカルをやったことがないですし、歌ったこともなかったので、新しい扉を開ける機会をいただけて嬉しかったです。
曲自体も、4分の7拍子とかこれまで歌ったことのないような拍子で、一見すると難しいのですが、実際に音楽として聴いてみるとどこまでも伸びやかで、心臓が跳ねるような躍動感があり、心そのままを自由に音楽にしたらこういう風になるのかな、という感じの曲でした。
それと、いただいた資料の中に、“これまで旅をしてきた過去の時間を振り返って、その時の感動を思い出す”というテーマだと書いてあり、人って一秒一秒旅をしているようなものかもしれないと思いました。ゲームの中でもそうですし、日常でも旅って始まり続けているのだなと思ったら、聴いていても自分が旅人みたいな気持ちになって……。レコーディングに臨んだ時は自分が旅をしているような気分でした。
――ゲームのエンディング、という点については意識されましたか?
Ceuiさん:これまでの物語とか、プレイヤーのみなさんが感じてきた思いを全て包み込んで、素敵な終わりと始まりに向かうというところなので、本当に大切なところだなと思いました。
――いろいろな歌い手さんが参加されるという点ではいかがでしょうか?
Ceuiさん:交友関係のある、はるかちゃん(霜月はるかさん/今作ではエンディングテーマ「光ノ軌跡」、イベントジャーニーテーマ「嵐を越えて」を歌唱)が参加したりしていたので、「仲間に入れてもらった、ワーイ!」みたいな気持ちでした(笑)。
――曲自体も一曲の中ですごく移り変わりがありますが、歌詞も旅の軌跡を追うような内容で印象的でした。そのイメージはどのように構築されたのでしょうか?
岡村氏:楽曲を書くにあたってシナリオを渡して、どういう物語になっているのかを把握してもらってから書いてもらっています。そこから歌詞のキーワードになりそうなフレーズを選び、それを並べて作り上げています。結果的にゲームのストーリーを総括するような歌詞になっていて、フィリス=プレイヤーの旅を思い出してもらえるような歌詞にしています。
――今回のインタビューにあたって歌詞も見せていただきましたが、どの内容も作中の展開がイメージされるので、正直クリア後にちゃんと聴きたいと思いました(笑)。
岡村氏:山本さんの曲はオープニングからゲームが始まり、これから旅が始まるというフィリスの旅の始まりを彩る楽曲で、逆にCeuiさんの曲はこれまで続いてきた旅の終わりに、旅の最初から思い出しながら余韻にひたってゲームの結末を迎えるという楽曲なので、すごく重要なパートをお二人には担当していただきました。ぜひそこはゲームの中で聞いていただきたいなと思います。
初めて同じ作品に参加する2人の出会いは?
――「フィリスのアトリエ」のゲームに対する期待などがあればお聞かせください。
山本さん:フィールドの景色や奥行きのある音楽など、全体の雰囲気を楽しみにされているユーザーさんも多いと思いますし、私も「アトリエ」の世界観がとても好きなので、それが一番楽しみなところです。あとは旅がテーマになっているので、主人公と一緒に成長できるストーリーが展開されると思いますので、じっくりと遊んでいただけたらいいのでは楽しいのではないかと思います。
Ceuiさん:歌うときは旅をしているみんなの気持ちで歌ったのですが、ゲームを楽しんだ後に、現実という日常の世界に目覚めた時に、新鮮な気持ちでまた一日旅を始めようと思えるような楽曲だったり、作品になってくれたらすごく嬉しいなと思います。
――ちなみに、山本さんとCeuiさんは以前から面識があったのでしょうか?
Ceuiさん:別作品で、私が作った曲に歌詞をつけてくださったことがありました。
山本さん:一緒にライブに出させていただいたこともありますね。
Ceuiさん:その時は楽屋で向かい合ってお喋りしていましたよね(笑)。
山本さん:こうしてインタビューでご一緒というのは初めてですね。
――お会いした時からの、お互いの印象についてはいかがですか?
山本さん:Ceuiさんはルックスも歌声もすごく透明感があって、妖精さんみたいなイメージでした。歌詞を手がけた時もすごく爽やかな曲だったので、爽やかさや可愛らしさ、可憐さをどうやったら引き立てられるかなという気持ちで書かせてもらいました。今初めて言いますけど(笑)。実際にお話しても、すごく優しくて素敵な方なので、こうしてまたご縁があったことを嬉しく思っています。
Ceuiさん:嬉しいですね~(笑)。初めて出会ったのはとあるライブの楽屋だったんですけど、第一印象で「わー、優しそう!」とすごく思いました。その後で自分が作った曲に素敵な歌詞を書いていただいて、さらに今回、作品でご一緒できるということで、曲も聴かせていただいたのですが、すごく清らかな歌声で、かつパワフルだなと思いました。
――お二人の出会いはライブということですが、「アトリエ」シリーズとしてのライブイベントの実施についてはいかがでしょうか?
岡村氏:ユーザーさんからの要望があれば、検討していきたいですね。「アトリエ」シリーズも来年20周年を迎えるので、そういった節目で何かできたらと思っていますし、いろいろな方に協力していただきつつ、サウンドにもすごく力を入れているので、何らかのかたちにできればいいなとは思います。
――ぜひ期待しています。それでは最後に、発売を待つユーザーの方々にメッセージをお願いします。
山本さん:まずはゲーム中の広いフィールドを思う存分楽しんでいただいた後で、サウンドトラックを買っていただいて自分の生活の中で聴いていただき、そして感動した思い出を再現するためにボーカルアルバムを買っていただくと、「アトリエ」の魅力を余すところなく楽しめると思います。どっぷりと「フィリスのアトリエ」の世界に浸っていただきたいですし、私も楽しみにしています。
Ceuiさん:本当に私自身、初めて関わらせていただいて、メッセージをいただいてからレコーディングまでずっとワクワクワクワクしっぱなしでした。本当に旅という素敵なテーマで、自分自身の時間にもリンクするような楽曲や世界観だと思いますし、こだわりを持って作ってらっしゃるのが音を通じてもひしひしと伝わってくるので、全部感じて、想像して、思う存分ゲームの世界を楽しんでいただきたいなと思います。
岡村氏:前作の「ソフィーのアトリエ」がおかげさまでユーザーの方から非常に高い評価をいただきました。今回はそういった結果を受けて、「フィリスのアトリエ」ではさらに力を入れて、みなさんに良いものをお届けしようと頑張って開発しております。
もちろんゲームの内容もパワーアップしていますが、これまでの「アトリエ」シリーズで力を入れていたサウンドもCeuiさんをはじめとする新たなアーティストの方、山本さんをはじめ「アトリエ」シリーズを遊んでいる方にはおなじみの方にもご参加いただき、さらに良いものにしようと頑張っておりますので、ぜひサウンドにも期待していただければと思います。
――ありがとうございました。
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2016年7月27日~8月7日