8月28日に「FINAL FANTASY XV powered by 電撃PlayStation プレミアムイベント」が開催された。ここでは「ファイナルファンタジーXV(以下:FF XV)」」スペシャルトークステージの模様をお伝えする。
目次
本イベントでは「FF XV」本編やPS VR用コンテンツ「FF XV VR EXPERIENCE」の試遊台を設置。ユーザーは試遊をはじめAR体験や設定資料などを楽しめたほか、開発スタッフが登壇するステージイベントも行われた。
第3部のスペシャルトークステージには、司会の声優・広橋涼さん、電撃PlayStation編集長・西岡美道氏、「FF XV」ディレクターの田畑端氏、ソニー・インタラクティブエンターテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏が登場。今回のステージではこれまで、いわゆる「AAA(トリプルエー)タイトル」を制作してきた吉田氏、「FF XV」で世界に挑戦する田畑氏による対談を行っていく。
世界市場に向けて展開していく“AAA”タイトル
田畑氏は「クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-」「ファイナルファンタジー零式」などに携わっているが、ナンバリングは「FF XV」が初。それゆえに思い切った挑戦ができたのではないかと語り、吉田氏もMMORPGのタイトルを除けば「FF XV」は従来と比べ突然変異だとコメントしつつ、世界的に見れば「こっちにきたか」と歓迎する様子をみせる。
時代の最先端をゆくAAAタイトルと呼ばれるものは、非常に巨大で扱いが大変だと語る田畑氏。その様子をカーナビに例え「示されたルートを通って目的地に着いてみて、もっと目的地は先がいい」という判断を要することもあり、その結果、発売時期が2ヶ月延期してしまうようなシビアなタイトルであるという。
ここで、改めて「世界基準のゲーム“AAA”タイトルとは」というテーマについてトークが展開。AAAタイトルは昔からあったが規模が大きくなり、どのパブリッシャーもかかる人・時間が膨大に。完成したタイトルは素晴らしいものの、従来のようなペースで並行しにくくなったため、AAAタイトルかインディーのような発想で勝負するタイトルかという二極化が進んでいると吉田氏は語り、こうした意味でも「FF XV」はAAAタイトルであると加える。
田畑氏は、そのゲームでしか味わえない体験などがある「一点モノ」というイメージが強く、AAAタイトルの出る時代にあっても何らかの分野で規格外であるタイトルを思い描くという。
再び規模の話に触れ、AAAタイトルともなれば日本で作っていても世界市場を意識せざるを得ない、「FF XV」も最初から世界に受け入れられるタイトルとして動いていたのではないかと質問を投げかける吉田氏に、田畑氏もその通りだと答える。
これまでの「ファイナルファンタジー」は日本語で開発し、日本でローンチ後に英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語の字幕に対応するのがローカライズの流れだった。これを「FF XV」の場合は同時に世界で販売し、ボイスも日本語だけでなく各言語も入れ、字幕対応の言語も倍に増加。この時点で作り方は従来と全く異なり、プロダクションも海外と複合的に取り組んでいくことにしたそうだ。
あらゆる言語体系の企業に協力してもらうための体制づくりはもちろん、AAAタイトルは作り方、売り方、情報の出し方においてもやり方が変わる。例えば日本で作っているゲームを、真っ先に海外で発表することに疑問を抱くユーザーも少なくないだろう。しかし今の時代にコンソールのビックタイトルを作ろうと考えた場合、全世界で売っていかないと成り立たないと語る吉田氏。ユーザーに対し、ビックタイトルの最新作を遊びたいと思うならばグローバルイベントでの情報発信など海外展開を応援してほしいと訴える。
「ファイナルファンタジー零式」は国内で発売した後、欧米でも発売したかったが、すでにマーケットはPSPタイトルに適した状況ではなかったという田畑氏。プレイしたいというユーザーは非常に多かったが売り時期を逃してしまったため、企業としてはコストを割いて販売することに踏み切れなかった。田畑氏としても非常に悔しく、提供できないのが歯がゆかったため、次は世界で売れている据え置き機、そしてグローバルに展開していくと決めたそうだ。
技術を一新し、ユーザーコミュニケーションもオープンにしてきた「FF XV」
田畑氏は、日本ではPS3の頃はビックタイトルの開発に苦労していたと感じ、それはハードの性能に合わせて技術などをアップデートしていたためと考えていた。日本のRPGは家庭用ゲーム機のスペックが低い頃に確立された様式があり、昔ながらの積み重ねを洗練させていったのが「JRPG」と呼ばれる日本のRPGではないかという。
一方、欧米のタイトルはPCをベースとした開発力をそのままコンソールに落としてきており、PS3では欧米のデベロッパーが作る新しいアクションRPGが伸びていった。冒険を存分に楽しませるという発想のもと、その世界を自由に冒険でき、自分の思い付きにゲームが応えてくれるような構造を高い技術で作り上げ、ゲームデザインそのものやバックボーンの違いでRPGという中でも大きく異なるゲーム体験を提供している。
「FF XV」はハイブリッドにしたつもりだと田畑氏は語り、これまでの「ファイナルファンタジー」としての良さは理解した上で、これまでの延長ではなくベースとなる技術を一新。新たな技術の上でこれまでファンに愛されてきた要素を取り入れ、再構築するという発想で作ったとコメントする。
吉田氏は高い知性をもつAIに触れ、オープンワールド内の異なるシチュエーションを成り立たたせ、人間らしく見せていく部分に期待を寄せる。田畑氏はコマンドRPGの技術体系ではなく、キャラクターが自分らしく動ける技術、そのAIに合わせて人間らしく流れるような動きを可能とするアニメーションのシステムを同時に作ることを重視したという。
吉田氏はそんな田畑氏のトークに対し、「FF XV」のチームは開発環境をオープンにし、さまざまな場所で発表している点に着目。プレイヤーとしても触った感触と技術が両方分かると、さらにゲームを深く味わえるのではないかと称賛する。
こうして技術をはじめ、ユーザーのコミュニケーションもオープンにするのは、もともと「FF XV」は「ファイナルファンタジー ヴェルサス XIII」というプロジェクトから再度立ち上げたという経緯を語る田畑氏。長く待たせている分できるだけユーザーに行っていることを見せたいという思い、そしてインハウスではなく色々な協力企業あってこそ作れるという規模なので柔軟性を伴えるという利点も挙げる。
日本が誇るRPGというジャンルでも、世界的な人気を獲得してもベストの1本になかなか入れないという現状がある。吉田氏は開発側として「E3」や「gamescom」でアワードを取るのは非常に嬉しいと語り、両方で「ベストRPG」を受賞したのはチームの自信に繋がったと田畑氏もコメント。「FF XV」はメイドインジャパンの良さを全て入れたまま世界スケールのAAAタイトルになっていると強調。日本のゲームの丁寧さ、緻密さを活かしたAAAタイトルになっていると自信を持って伝える。
その中で延期を決めた点について、田畑氏は現状のままリリースしてもグローバルで見れば全く問題はないであろうが、やはりユーザーが「ファイナルファンタジー」というタイトルに求めるのは最高の状態であり、これまで積み重ねてきたIPのブランドや伝統、支えてくれたファンの思いこそ最も重要であると考えたからだとコメント。完璧は不可能でも、しっかりと作りたいという強い思いを語る。
「世界基準」のゲーム作りに必要な意識
日本で発売し、後日ローカライズするという流れを前提としなくなったと吉田氏。例えば日本で作ったタイトルであっても、全世界のマーケティングプランは欧米のチームにリードを任せることもあるという。時にはゲーム内容にまで踏むこむこともあるニーズやアピールポイントについて話し合いながら、最大限の結果をもたらすように動く流れが生まれてきているのだ。「FF XV」も全地域同時進行でマーケティングを行っているが、フィードバックも地域によって異なり、一つの答えにまとまることはほぼないという。
田畑氏は先の見えない中でもゴールを決めた上で、それを信じ切るというやり方を取っている。日々変化していく中、判断を積み重ね、強いリーダーシップを実行する以外にはないという。しかし徐々にチームが強くなっていくにつれ、舵取りを任せられるスタッフが現れる。このチームの強さが最終的な結果を左右するだろうと考え、自身は未来のゴールを見た時に今やるべきことがぶれないよう努めるのが役割だという。
吉田氏はメディアで「FF病」について語った内容にも触れ、田畑氏は客観的に「ファイナルファンタジー」がどう見られているかをしっかり知ることが、グローバルタイトルとする「FF XV」には絶対に必要だと思って実施したと話す。最初は覚悟を決めて世界基準で作る・売ると考えたはずが、どうしても自分たちが思い込んでいる方に引きずられてしまうため意識改革を行ったのだ。
ユーザーとダイレクトにコミュニケーションを図る「アクティブ・タイム・レポート」でも、とくにヨーロッパのメディアからシビアな意見をぶつけられたが、何故そう思われるのかをきちんと知るために動いたそうだ。
PS4タイトル、VRへ寄せる期待
ここでだいぶ趣向を変え、最近スゴいと思ったPS4タイトルについてトークがスタート。田畑氏は発売前に期待しているタイトルとして「ゴッド・オブ・ウォー」、すでに発売したタイトルからは「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」を挙げ、ゲームの間口の広げ方を学んだという。インディーゲームとVRが大好物の50代男性・吉田氏は発想に感嘆した「No Man's Sky」と、「LIMBO」のチームが6年かけて作ったという「INSIDE」を挙げる。
田畑氏はVRへの期待を聞かれるとE3でデモを制作した際、その可能性について実感。「FF XV」ではゲームの世界をライブ体験できるものをまず作り、今後は「ここまでは作れる」という手応えの、さらに先を見据えたものを作らなければいけないと感じたという。
吉田氏は、家庭用ゲーム機の技術が進化してもモニターからゲームの外を覗くという距離感は変わっていなかった中で、VRではゲームの世界そのものに入り込める感覚を実現できると期待。また、バンダイナムコエンターテインメントの「サマーレッスン」に驚愕し、今後もよりすごい作品が登場してくるとクリエイターを信じているとコメントした。
最後に田畑氏は「FF XV」が延期した分もユーザーを満足させるので、映像作品やアプリを楽しみながら11月29日を待っていてほしいと挨拶し、吉田氏も「FF XV」は新作という枠を超えて新たなゲームとして期待し、映像作品を見たあとはよりキャラクターやストーリーも惹かれたので発売を楽しみにしていると締めくくった。
ファイナルファンタジーXV ULTIMATE COLLECTOR’S EDITION
スクウェア・エニックス- 発売日:2016年11月29日
- 15歳以上対象
- 同梱:ゲームソフト、映像作品、OST、フィギュア、アートブック
ファイナルファンタジーXV ULTIMATE COLLECTOR’S EDITION
スクウェア・エニックス- 発売日:2016年11月29日
- 15歳以上対象
- 同梱:ゲームソフト、映像作品、OST、フィギュア、アートブック