ステアーズがサービス中のiOS/Android向けアプリ「トリックスター~召喚士になりたい~」について、Ntreev Soft 開発プロデューサーのオ・イングン氏にインタビューした。
11月24日に大型アップデートが行われ、ギルドシステムが実装された「トリックスター~召喚士になりたい~」。本作は、2014年までPC向けにサービスされていたオンラインゲーム「トリックスター」(以下、PC版)の世界観をベースにしており、PC版からのファンも多いタイトルだ。
今回、韓国のゲーム展示会「G-STAR 2016」の会期中に、本作を開発するNtreev Softの開発プロデューサー オ・イングン氏にギルドや今後のアップデート機能について聞くことができたので、その模様をお届けしよう。
――今までどんな作品に携わってきたのでしょうか?
オ氏:最初はパッケージゲームの開発を行っており、2009年頃にPC版のディレクターとして参加、2014年にサービスが終了するまで開発チームに在籍していました。ですので、PC版の頃からたくさんの日本の方が遊んでくれていたのも知っていますよ(笑)
その後、スマートフォンアプリ向けの開発プロジェクトが立ち上がったので、それを機に本作の開発を担当するようになりました。スマートフォンアプリの開発は本作が初めてです。
――本作の現状はいかがでしょうか?
オ氏:今年5月に正式サービスが開始され、半年ほどが経過しましたが、定期的なイベント開催、アップデートやコラボの実施など、あっという間の半年でしたね。
リリース当初はPC版のプレイヤーが多かったのですが、プロモーションを続けることで新規のプレイヤーにも手に取っていただいています。本作ではじめて「トリックスター」に触れたという人には、今までのスマートフォンアプリではあまりなかった2Dのドット絵がとても好評です。
――プレイヤーからはどんな意見が寄せられていますか?
オ氏:PC版のプレイヤーからは、PC版で登場したキャラクターをもっと実装してほしいという意見を多く頂いています。全体的には、もっとコンテンツを増やしてほしいという要望や、コミュニティ要素を強化してほしいという意見が多いです。
――韓国では競争要素の強いゲームが多くありますが、その対極にある「トリックスター」の魅力はどんな点なのでしょうか?
オ氏:可愛らしいキャラクターや世界観はもちろんですが、ゲーム自体に競争要素があまりない点が、韓国のプレイヤーには新鮮に見えたのかもしれません。韓国にも、みんなで一緒にワイワイ楽しめるゲームを求めているユーザーがおりますので、そのような方々に満足していただけたのだと思います。
本作では、そんなPC版の良い点を活かして開発したタイトルで、引き続き取り組めることはたくさんあると思うので、「トリックスター」ならではのアプリにしていきたいです。
――他にもPC版に携わっていたスタッフはいるのでしょうか?
オ氏:はい、PC版のコアメンバーの多くが本作の開発に参加しており、新たなプラットフォームで「トリックスター」ならではのコンテンツを作りたいと集まりました。特にグラフィックの担当者はドット絵を描く独自の技術を持っているので非常に貴重です。
――「トリックスター」のドット絵のクオリティは高いですよね。
オ氏:10~15年ほど携わってますからね(笑)
――グラフィックなどPC版から移す際に大変だったのではないでしょうか?
オ氏:PC版でも2Dのドット絵だったので、大きな問題は無く移行することができました。
しかし、PC版がMMORPGがベースになっていたのに対して、本作ではゲーム性も異なっています。カードに描かれたイラストの2Dキャラクターがゲームに登場し、活躍するようなタイトルにしたいと企画し、開発を進めました。その中でも、RPGのようにフィールドを移動する雰囲気を味わってもらうためにボード形式を採用しました。結果的に、ボード形式は新鮮で受け入れられたのですが、本来の目的であるRPGの雰囲気を感じ取ってもらう要素としては少し弱かったかもしれません。
いよいよ実装されるギルドシステム
――11月24日にギルドシステムが実装されますね。
オ氏:ギルドシステムは、コミュニティを活性化させるコンテンツになります。プレイヤー同士をつなぐギルドにはさまざまな機能があり、今後も順次バージョンアップしていく予定です。
11月24日の実装時には、ギルドを作ってレベルアップしてギルドハウスを拡張していくことが可能で、ギルドの規模が大きくなるにつれて、ギルドショップに特別なアイテムが登場するようになります。
さらに、ギルドのメンバーは、ギルドにゲーム内のマネー、ギルド専用アイテム、召喚獣を寄付することができ、その報酬としてさまざまなギルドマスコットを手に入れることもできます。
――ギルドレベルは何レベルまであるのでしょうか?
オ氏:実装時は30レベルです。1レベルごとに機能が変化するわけではありませんが、みんなで協力してギルドレベルを上げていくには、このくらいのレベルがあったほうが良いと考えました。加入できる人数は最初は5人ですが、レベルとともに徐々に増えていきます。
――ギルドの定員は?
オ氏:今後、拡張することも考えていますが、実装時はMaxレベルまで達すると最大34人になります。
――34人にした理由は何かあるのでしょうか?
オ氏:ギルドハウスでは加入している人の全キャラクターが表示されるのですが、画面に表示できるキャラクターが34人で限界なんです。人数をもっと増やしたら、新しい部屋を作らなければいけませんね(笑)
ギルドハウスにはオフライン中のメンバーは表示されないので、ログインの有無がわかるようになっています。また、ギルド専用のチャットが追加され、チャットでギルドメンバーにメッセージを残すこともできます。
――ギルドマスコットとはどのようなものでしょうか?
オ氏:ギルドで使用できるエンブレムのようなものです。ゲームに登場する召喚獣はすべてエンブレムとして使うことができます。それぞれのプレイヤーが召喚獣を寄付することで、そのエンブレムを使うことができます。
――ギルドダンジョンなどの要素はあるのでしょうか?
オ氏:11月24日時点では含まれていませんが、ギルドメンバーと挑むレイドコンテンツを開発中です。ギルドレベルが上がるとダンジョンを作ることが可能になり、ボスに挑むことができます。
また、宝物発掘というPC版プレイヤーにはお馴染みの人気コンテンツがありますが、それをギルドメンバーと一緒に共有しながら楽しめるコンテンツを検討中です。
――ギルドは今後どのように拡張されていくのでしょうか?
オ氏:ギルド同士が直接戦うようなコンテンツは考えていませんが、その代わり、ギルドコンテストやギルドミッションなどを導入し、間接的に競争できるようにしていきたいです。
ゲームに張り付いて遊んでいたPC版とスマートフォンのコミュニティは違うと考えていて、ギルドシステムでは、プレイヤーのプレイスタイルを変えたり、制限するのではなく、今のスタイルで楽しめるようにしていきたいと思っています。
ただ、リリースしてみると想定外の事も起きました。リリース前は、「スマートフォンアプリでチャット機能は重視しなくてよいのではないか」と考えていたのですが、いざリリースしてみるとチャットが非常に活用されており、PC版の思い出話なども多く交わされていました。
チャットが盛り上がっていることも意外だったのですが、PC版の話が盛り上がると、PC版を知らない人にとっては会話に入りづらくなってしまいます。そのようなことを解消するために、ギルドチャットを導入し、思い思いの会話を楽しめるようにしました。
コラボや今後の展開
――「ハッカドール」や「SHOW BY ROCK!!」とコラボしていましたが、苦労した点などはありますか?
オ氏:最初に「ハッカドール」とのコラボを行いましたが、コラボイベントに登場するキャラクターの数もそれほど多くなく、相性も良かったため、それほど苦労しませんでした。
一方「SHOW BY ROCK!!」はイベントの登場させるキャラクターがハッカドールと比べて非常に多く、制作作業がとにかく大変でしたね(笑)。ロックバンドをテーマにしているので、各キャラクターの楽器を使った、戦闘モーションの表現に苦労しました。
――「ハッカドール」や「SHOW BY ROCK!!」は韓国のプレイヤーも知っているのですか?
オ氏:もちろん知っていますよ。「SHOW BY ROCK!!」は韓国でもアニメ放送されていますしファンも多いです。韓国では、日本のアニメがリアルタイムで見れたりもします。
――コラボしてみたい作品はありますか?
オ氏:開発チーム内のコラボ担当は日本のコンテンツが大好きでいつか「ラブライブ!」とコラボしたいと、いつも言ってます(笑)
――今後のコラボ計画は?
オ氏:詳細はお伝えできませんが、いくつか進行しています。
――今後どのようなアップデートが行われるのでしょうか?
オ氏:先ほどお話したギルドで挑めるレイドバトルといった機能のほかに、高レベルプレイヤーを対象とした“次元の扉”SEASON3がスタートします。以前と比べると攻略が難しくなっていますが、クリアできれば強力な召喚獣を手に入れることができます。そして、新たなストーリーが展開予定の第2ワールドをお見せできるように準備しています。
リリース当初は、PC版からは独立したコンテンツとしてオリジナルキャラクターをたくさん登場させていますが、コアなプレイヤーからはPC版で人気だったキャラクターに会いたいという意見を多く頂きます。これからは、PC版で人気だった懐かしいキャラクターをどんどん登場させていく予定です。
――ステアーズさんとの関係は良好みたいですね。
オ氏:実はステアーズにはPC版を担当していたスタッフが所属しているので、コミュニケーションに関しては、他のパブリッシャーとの関係に比べても、とてもスムーズにやり取りできているんです。
――Ntreev Softでは、PCオンラインゲームを開発していましたが、現在はスマートフォンアプリにシフトしたのでしょうか?
オ氏:はい、今は完全にスマートフォンアプリにシフトしています。PC向けに提供してきた「スカッとゴルフ パンヤ」や「トリックスター」といったコンテンツをスマートフォンのプラットフォームでも活かしていきたいです。
――現在開発中の新作タイトルはあるのでしょうか?
オ氏:日本市場に向けて、新規タイトルを開発中です。
――開発をPCからスマートフォンに移して気づいた点は?
オ氏:技術的なこと以外では、プレイヤーの属性が違っていた点です。PC版を開発していたときには、オープンな世界で、さまざまなコンテンツを楽しめるということが求められていました。それに対し、スマートフォンでは、ちょっとした時間で日々のミッションをクリアしながら楽しむといった日課のような遊び方が望まれています。
そのため、遊びごたえのある難しいコンテンツを作ると、逆に混乱してしまうと思うので、スマートフォンでは、混乱しないようにしっかりとしたガイドが重要です。
――今後のスマートフォンゲーム市場はどのようになると思いますか?
オ氏:スマートフォンの中でもコアユーザーがもっと増加し、PCオンラインゲームと同じような、ニーズが生まれてくると考えています。スマートフォンゲームをPCで楽しめるような環境ができつつあるので、コアユーザーの望んでいるコンテンツが増えていくのではないでしょうか。
――最後にプレイヤーにメッセージをお願いします。
オ氏:本作を遊んでいただいてとても感謝しています。引き続き楽しく面白いゲームにすることで恩返ししたいと思います。まだまだ足りない点もありますが、今後もよりよい作品にしていきますので、見守っていただければと思います。よろしくお願いします。
――ありがとうございました。