いよいよ発売を迎えた「バイオハザード7 レジデント イービル」のプレイインプレッションをお届け。恐怖だけではない、「バイオハザード7」のおもしろさとは?
CAUTION!!
本稿ではCERO Zの「グロテスクバージョン」をプレイして記事を執筆しています。スクリーンショットも同バージョンで撮影しておりますので、閲覧には十分ご注意ください。
これまでいくつか「バイオハザード7」の取材をこなしてきた筆者は、体験会などで本作を実際に幾度かプレイさせてもらった。このプレイレポートを書くにあたり、初プレイ時の新鮮さを思い出すべく、まず他の社員にPS VRモードでプレイしてもらった。
プレイしてくれたのは、普段は丁寧な言葉を話す女性スタッフだ。しかしジャック・ベイカーに襲われるや否や、彼女の口調はオフィスではなかなか聞かないものに様変わり。決してゲームが不得意な人ではないのだが、Lスティックを押し込んで走ることができず、何度も捕まる羽目に。彼女がジャックに“追い込まれてしまった”のが伺えた。
新たなゲームエンジン「RE ENGINE」と、これまでの「バイオハザード」とは一線を画する「アイソレートビュー」によって表現された恐怖は底知れない。それは先ほどの女性スタッフのプレイから伺えたし、筆者自身が改めてプレイした際にも感じられたことだ。
本作の舞台は、アメリカ南部にある朽ちた邸だ。プレイヤーが操作するイーサン・ウィンターズは、この邸からの脱出を試みる。
薄暗い部屋、何とも言えぬ汚さのシンク、人間を食したのではないかと思わされるメモ、そして狂気を隠さない住人たち。この恐ろしいシチュエーションもさることながら、光と影のコントラスト、そして時間的・空間的な音の配置が、さらに恐怖を増幅させる。「すべては“恐怖”のために」とは本作のキャッチコピーだが、その言葉の通り、あらゆるものが“恐怖のために”作り込まれている。
それでいて、テイストこそ変われど1作目からずっと変わらない“サバイバルホラー”というジャンルを成立させる「戦闘」「探索」「アイテム管理」といった要素にも注目しなければならないだろう。本作は恐怖だけにあらず。「恐怖と戦闘」「恐怖と探索」「戦闘とアイテム管理」などと組み合わさることで、「バイオハザード7」のおもしろさはグッと深みを増すのだ。
例えば、本作のPV「TAPE-2 “ベイカー”」で登場したあのディナーシーンの後、イーサンはこの邸を脱出するべく、ジャックから逃げることになる。
怒気と殺意をもって追いかけてくるジャックだが、そこには享楽的な感情も孕んでいるように見える。狂気を感じるには十分だ。
逃げるためにジャックに背を向けなければならないが、しかし背を向けることそのものが怖い。視界に入れておきたい、でも後ろを向いたままでは速く走れない。あたふたしているうちに、あっという間に追いつかれてしまう。
ジャックに捕まると、彼は手にしたシャベルで殴りかかってくる。しかしここでR1を押して防御すればダメージが軽減され、さらにジャックに隙が生まれる。防御は非常に有効な行動なのだ。が、追い込まれると「R1を押す」という命令がなかなか脳から降りてこなくなってしまう。恐怖心と戦うのはイーサンだけではない。プレイヤーも、克服しなければならない。
しかし逃げ回るだけでは、やはりおもしろくないのだ。プレイヤーは、恐怖を感じながら逃げるなかで、アイテムを探し、それを使う場所やタイミングを見極めていく。この行為が「バイオハザード」らしさを醸し出している。
例えば先のシーンなら、ジャックから逃げつつ、あるアイテムを見つけて脱出ルートを探さなければならない。まさに「恐怖と探索」の合わせ技。そしてそこを乗り越えた際の大きな安堵感と達成感こそが、サバイバルホラーのカタルシスなのである。
筆者は決してホラーが得意ではない。むしろ苦手な部類だ。しかし不思議なことに、プレイしていくうちにジャックの放つ狂気にだんだんと慣れてくる。それは冒頭で紹介した女性スタッフも同じだった。こうなると、恐怖よりも謎解きや戦闘に頭のリソースを割けるようになる。恐怖だけではなく、「探索と戦闘」の組み合わせも楽しめるのだ。
探索や戦闘にスパイスを加えているのが「アイテム管理」だ。イーサンが持てるアイテムには限りがあり、持ち切れないものは部屋にあるアイテムボックスに預ける必要がある。回復薬をいくつ持っていくのか、ハンドガンの弾とショットガンの弾のどちらを携行するのか。こんな尽きない悩みも、「バイオハザード」の醍醐味だ。
こうして「探索と戦闘」を切り抜けた先には、また新たな恐怖、あるいは「恐怖と何か」が待っている。このバランスを終始取り続けているのが、「バイオハザード7」なのである。
個人的な印象ではあるが、このバランスは初代作「バイオハザード」に近い。シリーズ20周年ロゴにもなっているあの“振り向きゾンビ”のシーンは衝撃的だったが、それに加えて洋館の謎を解き、進むべき道を見つける楽しさは当時から一級品であった。
先ほども述べたが、本作の恐怖の演出には「音」がかなり貢献している。環境音しか流れないシーンから、ストリングスをかき鳴らす音がフェードインしてくると、否が応でも心拍数が上がっていく。
また、アイソレートビューゆえに見えないところの物音――それが、自分が踏んだ破片の音であっても――にドキリとし、思わずPS VRを装着した頭を振る。緻密に描かれた薄暗い邸の中では物音ひとつにやたらと過敏になってしまうのだ。PS VRでプレイする人はもちろん、モニターでプレイする人もヘッドホンでプレイしてみよう。音の位置がいかに細かく計算されているかわかるはずだ。
本作から「バイオハザード」の世界に入る人も、少なからずいることだろう。また、プレイしようか迷っているシリーズ未経験者もいるかもしれない。が、そういう人にこそ、ぜひプレイしてほしい。
確かに、恐怖を感じる瞬間は度々訪れる。それに、シーンによっては何度も「YOU ARE DEAD」してしまうかもしれない。しかし、そこには絶対に突破口がある。「バイオハザード」には恐怖こそあれ、絶望はないのだ。どこかに必ず存在する希望を探し当てる、それが“サバイバルホラー”なのである。