5月6日に大田区民ホール・アプリコにて開催される「東京ゲームタクト2017」出演者へのインタビューを、計5回にわたって掲載する。第5弾は岩垂徳行氏、なるけみちこ氏、谷岡久美氏、大久保博氏、桑原理一郎氏、川越康弘氏。
「東京ゲームタクト2017」に出演予定のアーティストらに、今回の「ゲームタクト」への意気込みなどを語ってもらう出演者インタビュー。最終回となる第5弾は、大ホールで公演を行う作曲家陣より岩垂徳行氏、なるけみちこ氏、谷岡久美氏、大久保博氏、桑原理一郎氏、川越康弘氏にお話を伺った。
指揮に演奏者に、作曲家陣も自ら登壇するステージに期待!
――このメンバーの中では、大久保さん以外は全員奏者なり指揮なりで参加されるんですよね。
谷岡氏:むしろ大久保さんがなぜ乗られないのかと(笑)。指揮もしないんですよね?
大久保氏:指揮ってどうやるんですか?
なるけ氏:私も谷岡さんも、みんなそこから始まってますよ(笑)。
谷岡氏:大久保さんの曲って四拍子ですよね? ならできますって。
大久保氏:やれるかな?(笑)
――大ホールでの公演について、ご紹介をお願いします。
川越氏:パンフレットをご覧いただければわかるのですが、僕は今は訳あって浪人生です。昨年の6月までノイジークロークに所属しておりまして、「消滅都市」でも作曲をしました。ゲームタクトでは打楽器のチームに入れていただいています。
今回演奏される「消滅都市」の曲は、僕の曲ではなく加藤浩義さんの曲なので、指揮はしません。加藤さんに指揮をしないのか聞いてはみたんですが、加藤さんって元々オーケストラ好きじゃなかったんですよ(笑)。木管楽器の扱いが苦手みたいで。でも先日「NieR:Automata」のコンサートに行ってから考えが変わったみたいで、オーケストラも良いと言い出したので、加藤さんが振るかもしれないですね。
前回のゲームタクトはコーラスで参加させていただいたんですが、今回はパーカッション奏者としてお力添えできればと思いますので、よろしくお願いいたします。
大久保氏:僕はバンダイナムコスタジオでずっとサウンドを担当していましたが、今は管理職なので、サウンド所属ではなくなってしまいました(笑)。
今回演奏するのは、「エースコンバット04 シャッタードスカイ」のED曲である「Blue Skies」です。僕は元々「リッジレーサー」とか「エースコンバット」「鉄拳」の曲を担当していて、あまりオーケストラという感じの曲を作ることがなかったんです。僕が作るのはエレクトリックな音楽が多いので、オーケストラや生演奏でどうするかというのは詳しくないんです。なので、指揮と言われても困っちゃいますね(笑)。
今回の「Blue Skies」もオーケストラ曲ではないのですが、静かな歌ものですし、SAK.さんに歌っていただきながら、オーケストラアレンジされたバージョンを演奏していただきます。
この曲はニューヨークで録音してきて、ジャンル的にもオケ曲という感じではないのですが、今回とてもすばらしいアレンジをしていただいたので、僕自身演奏を聴くのがすごく楽しみです。
桑原氏:僕は前回の沖縄ゲームタクトの時に参加できなかったのが本当に悔しくて、今回絶対に演奏者で参加しようと思っていて、第二ヴァイオリンに入れていただきました。
基本的には最初から最後まで演奏するのですが、最初の練習の時にいとうけいすけさんに「指揮を一緒にやろう」と誘われて、ちょうど僕が作曲を担当した「モンスターストライク」のオーケストラアレンジがあったので指揮もやることになりました。
モンストからは「爆絶」というすごく難しいステージの曲をやって、そこからメインテーマに移るようなアレンジでいきたいなと思います。かなり難しい言語で歌詞を書いてしまったものですから、合唱の方たちには大変申し訳ないのですが、いい感じに仕上げてくださいました。皆さんと一体になって音楽を作って、当日はお客様に精一杯楽しんでいただけたらうれしいです。
谷岡氏:私はスクウェア・エニックスに12年近く在籍していまして、今はフリーランスでお仕事をしています。沖縄ゲームタクトでも演奏していただいた「ファイナルファンタジーXI」の「Awakening」を今回も演奏していただきます。
私も指揮をするつもりはまったくなくて、桑原さんが指揮の練習をしているのを大変そうだなあと見ていたのですが、坂本(英城)さんから「谷岡さんも振りませんか?」と言われまして。「Awakening」はすごく難しい曲なので絶対無理ですと断ったのですが、昼の部と夜の部で別の曲でもいいということだったので、ならば「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」から「約束のうるおい」という曲をやりたいです、と言ったら「それはつまり指揮をやるということですよね」と(笑)。
「Awakening」はあちこちで演奏していただく機会があったんですけれども、「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」のほうは民族楽器や古楽器などを多用しているので生演奏が難しく、まったく演奏する機会がなかったんですね。
それをオーケストラでやっていただくということで、楽しみにしてくださる方もいらっしゃるので、私の指揮で楽しんでいただけるなら、とチャレンジすることにしました。
なるけ氏:私は「ワイルドアームズ」などの曲を作っています。今回は「ワイルドアームズ」の街曲メドレーということで、「ワイルドアームズ」「ワイルドアームズ2」から3曲チョイスして短いメドレーにしました。
他に演奏される曲との差別化を意識してアレンジしていて、例えばホルンがずっと裏打ちばっかりじゃ飽きちゃうだろうとか、この曲まで盛り上がってドーンという感じだと弾いている方も聴いている方も疲れるだろうとか考えて、全部の楽器にどこかしら一節メロディが回ってくる、コンパクトなアレンジを目指しました。指揮に関しましては、私も楽しく踊れるように、メロディを乗せてあげられるようにがんばりたいです。
自分でアレンジしてスコアを書いて、そして指揮までするのはとても勉強になります。スコアを書くところまではいつもやっていますけど、それを何十人も相手にディレクションするというのはあまりない機会ですね。
プロの奏者さんも入っていますが、基本的にはアマチュアの方が多いので、そういう方にもわかるように伝えるのが難しいですね。なかなか時間が足りないです。分奏の練習にも行きましたが、こちらもすごい勉強になりました。
もう一曲、弦楽五重奏で「ノーラと刻の工房 霧の森の魔女」から「今あたしがつむぐ日々」という曲をやります。こちらは編曲の腕が問われる弦楽五重奏なのでちょっと不安なのですが、岩垂さんにスコアをたくさん見てもらって直したので、大丈夫かなと思います。
こちらの曲は指揮しませんが、賑やかし的な感じでステージにいたほうがゲームタクトらしいかなと思っているので、いろいろと演出を考え中です。私はほかに奏者でシンバルも担当するんですが、シンバルの音を綺麗に鳴らすのがとても難しくて、日々練習をがんばっています。
岩垂氏:今回私はトロンボーンで参加しつつ、指揮もやります。「逆転裁判6」から「法廷組曲 逆転裁判6」ということで、「開廷~尋問~異議あり!~追求」のあたりをまとめたメドレーをやります。
それから20年以上前に作った「LUNAR2 ETERNAL BLUE」というゲームのメドレー集もやらせていただきます。「LUNAR2」は、ゲームを作った時からずっと重馬さん(重馬敬氏)から「ぜひオーケストラコンサートをやりたいです、予算を出すからやりましょう」と言われていたんですけれども、僕のほうに予算がなくて(笑)。やっと二十数年ぶりに夢が叶いました。
重馬さんとは、今回どの曲をメドレーに入れたらいいか相談しました。メインテーマから始まって、できるだけゲームの流れに沿う感じでやりたいと思っていたら、結構な曲数になってしまいましたね。緩急のある構成です。ちょっと大変な曲なので、演奏者さんには申し訳ないのですが、楽しみにしていてほしいです。
「逆転裁判」は、なんと同日に上野で「逆転裁判」の公式オーケストラコンサートがありまして。向こうでもアレンジをしましたが、こっちは自分で指揮をするので、負けてなるものかと(笑)。昼は「逆転裁判」オーケストラ、夜は「東京ゲームタクト」で楽しんでいただくのもありじゃないかと思います。
――桑原さんなどは演奏者でも参加されますが、他の作曲家さんたちの曲を弾いてみていかがですか?
桑原氏:とにかくおもしろいですね。好きな曲だと自分でメロディをたどって一人で弾いてみることもありますけれど、今回は第二ヴァイオリンなので、主旋律の担当ではないんですよね。楽曲を影から支えるみたいな感じで、他の作曲家さんたちが作られた楽曲の奥深いところに触れられているなと思います。
僕は花形の第一ヴァイオリンよりも、元々第二ヴァイオリンのほうが好きなんです。性格もあると思うんですけれど、僕はヴィオラかセカンドのような、縁の下の力持ちという立ち位置が好きみたいです。
岩垂氏:僕、作曲するときはヴィオラが気になって、ヴィオラの人に「良い」って言ってもらえる曲を書きたいんですよね。
なるけ氏:私もですよ。弦を書くときはファーストをちょっと書いてから、展開がわかっていると先にヴィオラを書きます。ヴィオラが伴奏をやるかメロディをやるかで、そこの音の厚みが全然変わっちゃうんですよね。だからヴァイオリンの影武者じゃないと思うんですよ。
岩垂氏:それでヴィオラと第二ヴァイオリンの絡みみたいなのがあると、またいいんだよね。
大久保氏:僕は弦楽器を触ったこともないけれど、作曲するときはチェロが動くのが好きですね。あんまりそういう曲を書く機会もないんですけれど。とりあえずオーケストラをたっぷり使えそうなRPGの仕事をしてみたいです。
岩垂氏:まさかの仕事公開受注(笑)。
大久保氏:あとRPGやったほうがモテるんじゃないかなぁと思って(笑)。
――皆さんのさまざまな雄姿を楽しみにしています。ありがとうございました。
大ホール公演内容
昼公演
- Blue Skies(「エースコンバット04 シャッタードスカイ」より)
ヴォーカル:SAK.- MAIN THEME -SPACE HARRIER-(「SPACE HARRIER」より)
- モンスターストライクシンフォニー 第6楽章~爆絶~ゲームタクトバージョン(「モンスターストライク」より)
指揮:桑原理一郎- 猛獣たちとお姫様メドレー(「猛獣たちとお姫様」より)
ヴォーカル:霜月はるか- 閃光(「ファイナルファンタジーXIII」より)
- GATE OF STEINER(「STEINS;GATE」より)
- Awakening(「ファイナルファンタジーXI」より)
- 今あたしがつむぐ日々(弦楽四重奏)(「ノーラと刻の工房 霧の森の魔女」より)
- High Sky(「TERRA BATTLE」より)
ヴォーカル:河野暁子- Theme from THOUSAND MEMORIES(「サウザンドメモリーズ」より)
指揮:いとうけいすけ- 文豪とアルケミスト(「文豪とアルケミスト」より)
指揮:坂本英城- 「LUNAR2 ETERNAL BLUE」メドレー(「LUNAR2 ETERNAL BLUE」より)
指揮:岩垂徳行- Beyond the Sky(「ゼノブレイド」より)
ヴォーカル:サラ・オレイン- 「世界樹の迷宮」メドレー2017~迷宮I 翠緑ノ樹海~迷宮V 遺都シンジュク~(「世界樹の迷宮」より)
指揮:古代祐三- Glory(「予言者育成学園 Fortune Tellers Academy」より)
ヴォーカル:サラ・オレイン/指揮:坂本英城夜公演
- Blue Skies(「エースコンバット04 シャッタードスカイ」より)
ヴォーカル:SAK.- MAIN THEME -SPACE HARRIER-(「SPACE HARRIER」より)
- モンスターストライクシンフォニー 第6楽章~爆絶~ゲームタクトバージョン(「モンスターストライク」より)
指揮:桑原理一郎- 猛獣たちとお姫様メドレー(「猛獣たちとお姫様」より)
ヴォーカル:霜月はるか- 閃光(「ファイナルファンタジーXIII」より)
- 甘い時間 弦楽四重奏(「夢王国と眠れる100人の王子様」より)
- 街曲メドレー(「ワイルドアームズ」シリーズより)
指揮:なるけみちこ- トキワノオロチ -時輪大蛇-(「討鬼伝2」より)
指揮:坂本英城- 約束のうるおい(「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」より)
指揮:谷岡久美- 銃声とダイヤモンド(「銃声とダイヤモンド」より)
指揮:いとうけいすけ- 世界の終わりと最後の言葉(「消滅都市」より)
ヴォーカル:エミ・エヴァンス- 法廷組曲 逆転裁判6(「逆転裁判6」より)
指揮:岩垂徳行- 遠くからあなたを(「アナタヲユルサナイ」より)
ヴォーカル:河野暁子- 蒼き革命のヴァルキュリア(「蒼き革命のヴァルキュリア」より)
ヴォーカル:サラ・オレイン- The Final Time Traveler(「TIME TRAVELERS」より)
ヴォーカル:サラ・オレイン/指揮:坂本英城※掲載順はプログラム順ではありません。
出演者プロフィール
岩垂徳行
作曲・編曲家。長野県松本市出身在住。大学在学中にほぼ独学で作曲の基礎を築く。4年間のバンド活動のあと、数々のゲーム音楽の作曲、アーティストへの楽曲提供、東京ディズニーリゾートなどのショー・イベント、舞台、放送関係など多方面での音楽制作を行っている。
また「Japan Expo」をはじめ世界各国でのライブやレコーディングの他、オーケストラへの造詣も深く、「逆転裁判」など多くのゲームタイトルのスコアを制作。指揮者としても活動歴が長く、特に若手の演奏家たちへの指導には定評がある。
代表作に「グランディア」シリーズ、「逆転裁判」シリーズ(3、5、6)、「逆転検事」シリーズ(1、2)、「フォトカノ」「アマガミ」など。
谷岡久美
1998年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社、以来ゲーム音楽作曲家として「ファイナル・ファンタジーXI」や「ファイナルファンタジー・クリスタル・クロニクル」シリーズ等数々の作品を担当。
同社を退社後、2010年からはフリーランスとして活動をスタート。ゲーム音楽制作にも意欲的に取り組みながら、知育アプリのBGMや舞台音楽、アーティストへの楽曲提供など、幅広い分野で活動している。
また近年はピアノ演奏にも力を入れ、アーティストとのライブ活動やピアノアレンジ等も精力的に行っている。昨年にはオリジナルピアノアルバム「Sky's The Limit」を初リリース。
なるけみちこ
楽器店勤務を経て1990年に(株)日本テレネットに入社、ゲーム音楽制作をはじめる。その後独立しフリーの作曲家として「ワイルドアームズ」「ノーラと刻の工房」「大乱闘スマッシュブラザースX」をはじめ多数のゲーム音楽、サウンドトラックCDを制作。
2013年より自主制作CD「Feedback」シリーズを定期的にリリースするほか、オーケストラ公演、さまざまな編成によるバンドライブ、TVドラマやニュース番組、声優やアーチストへの楽曲提供、テーマパークの音楽制作、小学校の校歌作曲など多方面で活動中。
大久保博
バンダイナムコスタジオ所属、エグゼクティブサウンドデザイナー。1994年にゲームサウンドデザイナー、コンポーザーとしてナムコに入社後、サウンドディレクター、コンポーザーとして数多くのゲームサウンド制作に携わる。
90年代よりN.Y.のハウスレーベル「BPM King Street Sound」とコラボするなど、これまで国内ゲーム音楽とクラブサウンドを積極的に結び付けてきた。
「Red Bull Music Academy presents 1UP:Cart Diggers Live(womb)」をはじめ、多くのイベントにDJ出演。他、講演活動やTV出演、アニメや施設のサウンドプロデュースなどゲームサウンドを軸に活動の幅を広げ続けている。
主な担当作品:リッジレーサーシリーズ、ファミリースキーシリーズ、エースコンバットシリーズ、アイドルマスターシリーズ、塊魂シリーズ、鉄拳シリーズ他。
桑原 理一郎
作曲家。スタジオ月歌代表。東京大学、同大学院にてインド哲学仏教学を研究後、音楽の道を志し、2002年にテクモ(現コーエーテクモゲームス)入社。「アルゴスの戦士(PS2/Wii)」「モンスターファーム5」「Quantum Theory」「零・眞紅の蝶」「真・三國無双VS」等の音楽を担当。
2012年に独立後、「モンスターストライク」「モンストスタジアム」「サムライディフェンダー」「SNOW WORLD」「ミッフィースマイル」等ゲームの他、アニメ、TVCF等にも制作の場を広げる。またオペラ公演における合唱出演、映像・音響・字幕制作など年間20公演ほどに関わる他、オーケストラやオペラ、室内楽でのヴァイオリン、ヴィオラ演奏、プログラミングやシステム系の仕事など、活動は多岐に渡る。
川越康弘
高校卒業後、音楽専門学校にてジャズ理論、ドラム演奏などを学ぶ。フリーの活動を経て、2007年よりノイジークロークに所属。サウンドプロデュース、ディレクション、作曲などを行う。
作曲家としての代表作は「ポケモン不思議のダンジョン~マグナゲートと∞迷宮~」「消滅都市」など。オーケストラをはじめとするアコースティックなサウンドを得意としつつ、シンセサイザーなどのデジタル楽器も積極的に取り入れている。
公演概要
公演タイトル
東京ゲームタクト2017
開催日
2017年5月6日(土)
大ホール・オーケストラ昼公演
開場:12時15分
開演:13時00分大ホール・オーケストラ夜公演
開場:16時45分
開演:17時30分※そのほか、小ホール/展示室でも公演多数
会場
大田区民ホール・アプリコ
チケット
大ホールS席:6,500円
大ホールA席:5,500円
小ホール:2,000円(各公演)※未就学児の入場はご遠慮願います。
公式サイト
http://gametakt.com/主催
ノイジークローク/公益財団法人大田区文化振興協会