先月発売された「閃乱カグラ PEACH BEACH SPLASH」の爆乳プロデューサーであり、マーベラスの100%子会社として設立されるHONEY∞PARADE GAMESの代表取締役に就任する高木謙一郎氏を、15000本以上のゲームソフトを所有するゲームコレクター・酒缶の自宅にお招きして、お互いのゲームに対するこだわりを語り合った。(対談日:2017年4月14日)
目次
この部屋にあるモノで何か気になるモノはありますか?
――2年位前から、この企画を実現できたら面白いと思っていたのですが、高木さんが常にたくさんのタイトルを扱っていてどのタイミングがいいか検討していて、やっと実現できました。
酒缶:実は高木さんとは、以前ボクがニンドリで「酒缶が訪う」というインタビュー連載をしていた時の第1回目に出演していただいて、「閃乱カグラ -少女達の真影-」が発売された2011年の年末にインタビューをさせていただいているのですが、kindleになっている記事を読み返してみたら訪問後記で「高木氏が40歳になった時にどうなってしまうのか気になります」と書いていて、この対談はすごくいいタイミングだと思いました。
高木:今、丁度40歳です。そのインタビューの時に、遊びに行きたいみたいな話をしていたのですが、この部屋は念願の……昭和キッズに戻った気分ですね。久々に友達のうちに遊びに来ました感が凄いですけど(笑)。「ゲーム何、持ってんの?」って、レベルが半端無くてわくわくしてます(笑)。
――というところで始めさせていただきます。
高木・酒缶:よろしくお願いします。
――お二人ともたくさんのモノをコレクションするまでの段階があったと思うのですが、まずはお二人のゲームとの出会いを教えてください。
高木:僕は「ゲーム&ウォッチ」なんですよ。親が買ってくれた「オイルパニック」といとこが同時に買ってもらった「ドンキーコング」を交換しながら遊んでいて、それが出会いでした。
酒缶:「ゲーム&ウォッチ」は1980年から1983年くらいの時期ですよね。
高木:6歳くらい、ですかね。
酒缶:ボクは、実は親が仕事でアーケードのゲーム機を扱っていた関係で、「ブロック崩し」と呼ばれているゲームの頃からプレイをしているので、意識していつゲームに出会ったかはあんまり記憶にないんですよ。
高木:自然にあった感じ?
酒缶:そうです。だから、インベーダーブームの時も普通に……普通じゃないんだけど、プレイはしていました。当時は、父親がアーケードゲームの筐体を喫茶店とかに入れるような仕事をしていたので、休みの日に父親に連れられて出かけて、重い筐体を二人で喫茶店に運び入れて、父親が店の人と仕事の話をしている間に運んだゲーム機のテストプレイをするようなことが結構ありました。ファミコンが発売されるよりも前の時代ですね。
高木:当時はテーブル筐体が喫茶店に置いてありましたもんね。
酒缶:注文したナポリタンやコーヒーがテーブル筐体の上にポンと置かれているようなイメージがあります。で、お金を入れてプレイしているのに、モニタ部分の上に食べ物を置かれちゃったりして、「今遊んでるんだよ!」と言いながら食べ物をどかすような……。
高木:1面をクリアして2面が始まるまでの間に食べるとか。今でも浅草の純喫茶みたいなところには置いてあるんですよね。最近は減ってきてはいますけど。
――わりと本当に、二人とも早い時期から普通にゲームには触れていていたんですね。
酒缶:でも、今の子どもたちも気が付いたころには「ポケモン」で遊んでいますよ。そういう意味では今の子どもの方が小さい頃からゲームで遊ぶ環境は整っていますよね。
高木:2、3歳くらいの子どもがスマホのゲームとかで遊んでいますし。
――お二人は持っているゲームソフトの本数がすごく多いと思うんですけど、たくさん買って遊ぶようになったのはどのくらいの頃ですか?
酒缶:ボクは小学校4年の頃にファミコンが発売されたんですけど、小学校6年生の時に破産するくらいゲームを買っていました。
高木:小6で?
酒缶:85年は「スーパーマリオブラザーズ」が発売され、年末にはファミコン本体がなかなか手に入らない時代だったんですけど、あれも欲しい、これも欲しい、という状態になってしまって、それまでに貯めていた貯金をほぼ全部使うくらいの勢いでゲームソフトを買っていました。85年の10月から12月に発売されたタイトルの半分は買っていました。でも、その後は落ち着いて、今のような状況になっているのは、大学生になってからです。
――明確にゲームを手元に持っていたいと思ったのですか?
酒缶:1994年に、ファミ通に掲載されている発売スケジュールのページで、ファミコンの欄がスカスカだったんですよ。それで、ボクの大事なファミコンがなくなってしまうと思って、ファミコンのソフトを集め始めました。ショップを回ってワゴンとかを見ながら買っているうちに、「PCエンジンが安くなってる!」「メガドライブも!」と夢中で集めているうちに、気が付いたら多機種のソフトが揃っていた、という流れです。
高木:僕は小学生の時は本当にゲームを買ってもらえませんでした。「ファミコンはよくない」と言われていたので、こっそりアーケードのゲームを楽しんでいました。外なら文句を言われないし、あんまりお金がなくても100円とか50円とかあれば長くプレイが出来るし。アーケードのゲームをやりながらも、ファミコン、PCエンジンやメガドライブとかいろいろと遊びたいゲームで遊んでいたんですけど、そんなに本数を買えないので、古いゲームソフトを売っては新しいゲームを買うようなことを繰り返していました。
酒缶:そもそもゲーム機自体が高いですからね。新しいゲーム機が出ると子どもにはハードルが高いですよね。
高木:やっぱり、高校時代にはPCエンジンDUOがめちゃくちゃほしくて。当時、定価で59,800円とかするし、高校までは学校自体がバイト禁止だったので……。だから、いろいろと買えるようになったのは、大学に入ってからです。時間に余裕ができて、バイトもし始めて、一人暮らしだったし(笑)。
丁度、94年、95年くらいだったので、プレイステーション(以下、PS)やセガサターン(以下、SS)が出始めた時代。ソフトが丁度安くなったんですね。スーパーファミコンのソフトは1万円くらいしましたけど、PSやSSは5000円くらいから新品を買えるようになったので、バンバン買い始めたのが最初です。それまでに買えない時にはファミ通を見て買った気持ちになったり、攻略本でイメージプレイ、発売予定表をチェックして蛍光ペンで今月買うソフトに印をつけて……1本も買えないんですけど、「これを買いたい」と(笑)。
酒缶:「お金があったら買いたい」と。
高木:やっとこの10年くらいで色々と自由に買えるようになった感じです。所有数が増えてきてコレクターと言われる機会が増えましたけど、僕はコレクターじゃないんだよな、とちょっと思っています。コレクションしようとは思っていないんですよ。当時欲しかったモノ、興味があったけど買えなかったモノを買っている、買い直しているだけなんです。だから、シリーズに抜けがあっても気にならない、というか、とにかく当時自分が欲しかったヤツだけが欲しい、という雑な集め方です(笑)。
酒缶:ボクがコレクターと名乗っているのは、ボクがどういう存在なのか知ってもらうために一番わかりやすいから使っているだけで、あくまでも遊ぶことがメインなんですよね。コレクターという言葉から“集めているだけ”という印象を持たれることがあって、難しいです。
高木:コレクターという言葉にはいい意味がありつつ、悪い意味もありますね。
――お二人は集めるスタンスが異なるんですね。高木さんはこの部屋にあるモノで何か気になるモノはありますか?
高木:「牡丹さん」がすごく気になっていました。「お遍路さん」は3つくらいバリエーションがあるじゃないですか? 僕は小さいサイズのパッケージのは持っているんですけど、あとフットコントローラがあって……。
酒缶:この「牡丹さん」がフットコントローラですよ。
高木:もっとデカいヤツがなかったですか?
酒缶:たぶん、「お遍路さん」のフットコントローラはこのサイズだけだと思います。「お遍路さん」の基本セットは「Wii fit U」みたいにソフトと万歩計がセットになっていて、ソフト単体でも売っていました。
酒缶:あとは3点セットということでこの「牡丹さん」というフットコントローラがついていました。3点セットが全部入るパッケージがあったかどうかはわかりませんけど。
高木:デカいヤツがあったような気がして、探しているんですけど。この上をこうやって歩いてお遍路を巡るんです。
酒缶:1つ目の札所から2つ目の札所まで7000歩とか画面に表示されたら、その場でひたすら歩くんですよね。
高木:(笑)当時、テレビで紹介しているのを見たんですけど、「うぁー、すげー、こんな企画が通っちゃうんだ」って。「Wii Fit」を見るたびに「お遍路さん」を思い出す、思い出のソフトです。でも、この話題を話せる相手がいなかったんですよ。
酒缶:「お遍路さん」に関しては、「そこに食いつかれても」というところはありますけど……。
高木:確かに話がこれ以上膨らまないですよね。そういえば、さっき僕はコレクターじゃないと言いましたけど、ナムコのハードケースだけは好きで、これだけは揃えていました。当時、「メトロクロス」とか3900円で安かったので、思い出深いです。
――酒缶さんは何かおすすめのモノとかありますか?
酒缶:ボクはプラモとか作るのが苦手で、そのせいでゲームを買っても組み立てられないモノがあります。
酒缶:これは、PSの初期に出た「ゼクシード」という格闘ゲームなんですけど、プラモを組み合わせてボディに手や足をつけると、それが画面上に反映されて戦えるゲームなんです。組み立てキットなので、こんな感じでプラモが入っています。
高木:完全に手がついてない(笑)。
酒缶:でもちゃんと遊んではいるんですよ。理由は簡単で、プラモを作らなくても、接続用のピンをボディにつなげれば手足をつけているように認識されるんです。もう一セット入手しないと組み立てようという気になれないけど、今更こんな状態のモノはもう一つ手に入らないので。
高木:結構高かったんですよね。
酒缶:ボクは安くなってから買いましたけど、定価は20,000円くらいしたと思います。「ゼクシード」のパッケージは大きいですけど、「閃乱カグラ」の限定版もかなりサイズが大きかったですよね。
高木:そうですね。今回のは自分たちが思っていたよりもデカかったですね。
「シノビリフレ」は電車の中で遊べるんですよね
――お二人ともゲームを作る仕事に関わられるようになって長いと思いますけど、ゲームを作るようになってからプレイして忘れられないタイトルはありますか?
高木:僕がゲーム業界に入ったころはほぼPSが終わり、PS2の時代で、上の人が作らせようとする内容のハードルがめちゃくちゃ高くて、血反吐を吐くような毎日を過ごしていました。その当時に遊んだゲームですと、「ゴッド・オブ・ウォー」が衝撃的でした。アクションがすごくゲームらしくて、映像演出も優れていて、小学生の頃にファミコンのゲームで遊びながら、こういう映像だったらいいのにな、と思っていたモノが初めて目の前に出てきたという感覚がありました。
酒缶:ボクは逆で、1996年にエポック社という会社に新卒で入ったんですけど、「エキサイトステージ」がヒットして開発系のスタッフが大量に入った後の入社でした。2年くらいで開発を諦めて人減らしが始まったころに、いろいろと自分の意見を反映させて仕事ができたゲームボーイのタイトルがあったのですが、それをできたのはボクが会社に入る直前に発売した「ポケットモンスター」がヒットしたおかげだったんですよ。
「ポケットモンスター」がヒットしてゲームボーイの市場が復活したのは当然よかったんですけど、「ポケットモンスター」のポケモンを集めるという行為自体が楽しくて……というか、それは自分の趣味じゃねーかという話もありますけど(笑)。自分がメインで担当した「ドラえもんカート2」でひみつ道具を集めるギミックを入れたんですけど、アイテムを効果ありでうまく活用できなかったことと、集め方が強引すぎたという反省があり、次に担当した「ドラえもんメモリーズ」でドラえもんのメモリアルショットを集める要素はボクの中ではマニア心をうまく刺激する内容で成功したと思っています。いろんな意味で、最初に「ポケットモンスター」に出会えたことは大きかったです。
――お互いの関わられたタイトルで実際に触ったタイトルとかはありますか?
酒缶:高木さんはボクが何に関わっているか知らないと思うのですが……。
高木:アレはわかります。3DSの「星霜のアマゾネス」。確か「閃乱カグラ」と同じようなタイミングだったので、酒缶さんが開発に関わっているんだ、と思ったんですよ。開発のイメージがなかったので。
酒缶:そうですよね。ボクはフリーだけど、ボクがメインの開発ではなくて、開発スタッフとして入っていて、ダンジョンのマップとギミックの仕込みをしただけなので……ということで、話を戻してもらって(笑)。
――高木さんが関わられているタイトルで、酒缶さんが印象的なタイトルは何でしたか?
酒缶:やっぱり「閃乱カグラ」の1作目ですよね。それまではあまりわからなかったので。
高木:まぁ、そうですね。その前でオリジナルというと「勇者30」くらいで、あとは「一騎当千」とかアニメモノとかが中心で。
酒缶:だから「閃乱カグラ」を見て「スゲー!」と思って……ボクも高木さんにインタビューをさせていただいたけど、ほかのインタビューとかを見ていても「なんか面白そうな人がいる」と(笑)。「普通、立体視でおっぱいが飛び出るって言うか!」みたいな。
高木:あの時は、それしかないな、と。
酒缶:そこが一番最初のインパクトで、そこからは「閃乱カグラ」のイメージが強くなりました。でも、「勇者30」の続編はないのかな?とも思いますけど。
高木:2本出して……あれは大変なんですよ?
酒缶:知ってます。
高木:すごい大変で、ほんと、1ステージは1分とか30秒とかでクリアできちゃうんですけど、結構、情報量とかクエストの仕込み方とか、普通のレベル上げをさせたら6時間とか7時間遊べる密度のモノが入っているんですよ。1ステージに。それを100とか作ろうとするから、みんなクタクタになっちゃうんですよ。
酒缶:たぶん、任天堂の「メイドインワリオ」というゲームが出た時に、「これ、面白そう!」とは思うんだけど、でもいざ作ろうとすると大変だから誰もやらないのと一緒で。
高木:いろんなバリエーションを作らないといけないですからね。
酒缶:ボクも当時パブリッシャーにいたので、開発の人に「ああいう感じのって何かできないのかな?」とか気軽に言っちゃっていたんですけど、「酒缶さんが毎日ネタを出してくれるならできないこともないけど」と言われて、「ボクなんだ!」と思って(笑)。「メイドインワリオ」みたいなタイプのゲームの究極系が「勇者30」だと思っているので。
高木:「勇者30」は僕が小中高と学生時代に遊んだRPGのエッセンス、というか、記憶を「勇者30 SECOND」までで全部入れ込んだので、やり切った感はあります。3作目は誰かやりたい人がいたら、新しい時代のRPGを辿って作ってほしいな、という感じはありますね。
酒缶:それと、これも少し古くなっちゃうんですけど、PS Vitaの「閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-」で、服が脱げた時の光の当て方とか「バカだなぁ」と思いました(笑)。こっちに行くんだ、と。
高木:アニメや映像作品では多い表現ですけど、ゲームではほかでやっていなかったですからね。
酒缶:あれもインパクトがあって……なんでボクはそういうところばかりしか覚えてないんでしょうか。
高木:まぁ、そういうもんですよ。刺激というのはやっぱり残るので。
酒缶:あそこのインパクトに勝てるモノはなかなかないですよね。でも、「閃乱カグラ」に関しては、毎回やられたときの新しい見せ方は毎回気にして見ていますよ。ただ、全部脱げちゃうインパクトを超えるモノを見ることはなかなか難しいですよね。
高木:まぁ、そうですね。ある意味、全裸は最終手段に近いですから。
酒缶:普通、少しずつ脱ぐのに、いきなり最初に全部脱いじゃうから。
――そういう仕様はご自身でも考えられると思うんですけど、ほかのスタッフの皆さんから意見をもらったりするんですか?
高木:ベースは基本、自分で決めています。全裸になるとか女体盛りにするとかは、企画書の段階で全部入れています。そこから女体盛りをどう表現するかはチームで話し合っています。女体盛りは普通に表現すると汚く見えてしまうので、いかにきれいに、かわいく見せるか、というようなところは話し合います。ちょうど昨日発表された「シノビリフレ -閃乱カグラ-(仮称)」もどうやるかについては今まさにみんなで話し合っています。
酒缶:正直、「白衣着て何やってんだ!」という話なんですけど(笑)。
高木:ツッコミ待ちなので。全部。動画の再生回数は1日で46万再生くらいありました。
酒缶:しかも、久しぶりに任天堂プラットフォームというのもありますね。
高木:スイッチ、いいですよ。ぼく、好きですよ。
酒缶:まだ、1か月ちょっとなので、何かを評価をするのは難しいけど、すごい期待感のあるハードですよね。
高木:ただ、やっぱ、テレビでやって、外にも持ち出せるのは、実際、生活の中に入れてみたときに、思っていたよりもすごく便利だと感じますね。
酒缶:やってます? 外で?
高木:やってますよ。電車で「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」、ずっとやってますよ。今日は持ってきてないですけど。ほかの人がやっているのもたまに見かけますけど、「外でこんなゲームができるようになったんだ」とゲームボーイから考えると感動しましたよ。
酒缶:PS VitaとPS4の連携みたいなことを1台でやっていて、しかも1本のリソースでいい。
高木:そうなんですよ。2本買わなくてもいいですし、セーブデータ連携もしなくていいのが楽。ちょっと思ったのが、飲み屋とかでテーブルに置いて、みんなで「1-2-Switch!」をやれる! 乳しぼりとか(笑)。……まだやれてないですけど。
――今回の「シノビリフレ」はHD振動の話がトピックスとしてありましたけど、今いえる範囲でどのようなイメージのゲームを考えているのでしょうか?
高木:まぁ、みんなが想像していることをなるべく実現しようと思っています。そこはシンプルにモノづくりのスタンスとして昔から思っていることですね。
酒缶:やっぱり、「シノビリフレ」は電車の中で遊べるんですよね(笑)。でも、まじめな話、PS Vitaの「閃乱カグラ」の1作目は電車の中でやっていて、脱げるシーンの演出になると「どうしようどうしよう」と思いながらプレイしていましたよ。3DSの時も電車で遊んでいましたけど、演出をカットして先に進むか、そのまま演出を見続ける方がいいのか、葛藤に悩みながらプレイしていました。
高木:その辺も含めて遊びだと思っています。どういうシチュエーションでどう遊ぼうかと。
酒缶:今回は一瞬の演出ではなくて、ずっと見ているわけじゃないですか? どうなるんでしょう?
高木:どうなるかは、ボクらも楽しみにしています(笑)。
若い時代は買ったモノの評価が自分とイコールになりがち
――3月に発売になった「閃乱カグラ PEACH BEACH SPLASH」の話をお聞きしたいんですけど。
酒缶:まだガッツリはプレイできていないんですけど、2チーム分のシナリオをプレイしているくらいです。遊んだ感じだと、TPSというイメージじゃないですよね?
高木:はい。
酒缶:そこが触ってみて、「あっ、緩い」と思って、よかったです。
高木:そうですね。(普段触ってない人には)ちょっと難しいかな、と。僕はFPSとかTPSとかがすごい好きなんですけど、なかなか難しいだろうなと思って。ただ、ロックオンゲームにはしたくなかったので、そのあたりはバランスを取りました。「新しいこういうジャンルのゲームがあるので、『閃乱カグラ』をきっかけに遊んでほしいな」という思いを込めつつ色々緩くしています。
酒缶:殺伐としていないところがいいですね。
高木:はい。それはもう、昔から、勝っても負けてもうれしい。
酒缶:FPS、TPSというと戦争のイメージのモノばかりじゃないですか。「スプラトゥーン」が出たことで、戦争のイメージが少し緩和されましたけど、そこに続く形になっているのがいいな、と思いました。
――プラットフォーム的にもPS4で出てくれたのがいいですね。
高木:そうですね。だから、目立つかな、と(笑)。
酒缶:あとはPS4だけだから遊びやすくなっているんですよ。前作はマルチだったこともあり、背景とか見ているとグラフィックの精度的にはPS Vita版をプレイした方がいいのかな、という印象があったんですけど、今作はPS4じゃないとこのグラフィックは出ないのではないかと思いました。
高木:そうですね。マルチだとどうしてもPS Vitaを重視しないといけないので。
酒缶:解き放たれた感じがありますよね。
高木:デザイナーもその辺を気にせずにやっています。前回はマルチプレイがPS Vitaは4人まで、PS4は10人までの同時プレイでしたので、人数が変わるとゲーム性も変わってしまいますし、どうやってバランスをとるかで苦労したので。
酒缶:別々のバランス取りをしていたら、2本別のモノを作っているような感じですもんね。
高木:そういう感じになってくるので、なかなか大変でしたね。ユーザーベースで考えると、僕もよくFPSをプレイしながら「なんで32人、64人対戦にしないんだ!」とか簡単に言っていましたけど、大変だとわかりました(笑)。
――先日、新スタジオの「HONEY∞PARADE GAMES」が発表されましたけど、酒缶さんからはどういうゲームを期待したいですか? 高木さんはどういうゲームを出していきたいですか?
酒缶:でも、高木さんは「閃乱カグラ」以外もここ数年でいろいろと出しているわけですし。
高木:ずっとチャレンジはしてます(笑)。
酒缶:たぶん、社内的には高木さんが関わっているけど、外からは関連性がわからなかったタイトルが、高木さんのブランドが付くようになって外から見えるようになるようなイメージなのではないかと思っています。
高木:そうですね。新しいソフトを手に取ってもらう一つのきっかけになってもらえればいいかな、というのがあります。
酒缶:弟子といえばいいのか、アシスタントといえばいいのかわかりませんけど、今まで内部的には高木さんが見ていたとしても弟子が担当して、外からは弟子が単体で動いているように見えているタイトルが、高木さんプラットフォームのタイトルとしてはっきり見えるようになるような感じですよね。
高木:会社の中にはもう少し小さなグループを作っていて、丁度、弟子という意味では2015年に「ネットハイ」がリリースされました。ちょっと言いにくいけど「すごく面白いと思うので、今セールスにつながらなかったとしても、ボクらは面白いモノを作り続けていこうぜ!」ということを言い続けています。
酒缶:「ネットハイ」は、高木さん的にはどういうポジションで関わっていたんですか?
高木:最初の企画のつくり方とか、オリジナルとしてどういう要素が必要か、とか、あとはキャッチコピーのつくり方とか、人にどうやったら響くか、というところをサポートしているような感じですかね。なかなか難しいのですが、やはり世の中に伝わらないことや気づかれないことが我々として一番怖いですから、まず興味を持ってもらうということを重要視しています。
――高木さんは「閃乱カグラ」ではいろんなことをしていますよね?
高木:実際問題、世の中に出ているゲームってほとんどが面白いと思うんですよ。本当、そこは気付かれたか気付かれなかったかの差で、タイミングとかいろんな事情の差が凄く大きくて、面白さをどのように推すか? いつ出すかのタイミング、ユーザーさんが気になる要素は準備されているか? などなど自問自答しながらプロジェクト全体を調整しています。
――我々もメディアの側として、触ると面白いけど響いてないと感じることも多いので、そこは関わる方全体で押し上げていかないとな、と思います。
酒缶:ボクはレビューとか紹介記事とかを書くことがありますけど、みんなも面白くても面白くなくてもいいから、自分の意見を書けばいいじゃん、発信すればいいじゃん、って思うんですよ。もちろん、それが本当の話なら、という前提がありますけど。遊んでいない人がネガティブな情報を発信することが多いせいで、本来自由だったはずが、発信すること自体が悪いことのようなイメージが作られてしまって、発信しにくくなってしまっているように思います。あまり情報を発信されていないゲームをプレイして面白いと思ったら、どんどん情報発信すればいいのに、こんなに情報をいっぱい出せる環境があるのに、そうはなっていないんですよね。
――発信元はいっぱいあるのに若い世代の方とかは思っていても思っているだけみたいな人が多くなっていて難しいですよね。
高木:例えばの話になるのですが、僕はファミコンの「クライシスフォース」がめちゃくちゃ好きで、めちゃくちゃ面白いけど誰も知らないし、当時ネットもないから誰とも話ができないのがフラストレーションでしたね。今だったらたくさん言えるのに。
酒缶:たぶん、若い人は否定されるのが嫌なんでしょうけど、今からファミコンを遊んで、「これ面白いよ!」と言い始めてもいいと思いますし。
高木:若い時代は買ったモノの評価が自分とイコールになりがちなんですよ。昔、スーパーファミコンのソフトとかうっかりパッケージにつられて買ってしまって、プレイして「これはまずいぞ」と思っても自分の負けを認めたくないし、「これは俺の遊び方が悪い!」と思いながら3日くらい遊んで、「やっぱりダメでした」と(笑)。それで、「俺はダメなヤツだ!」「ダメなモノを選んでしまった俺はダメだ!」ってなっていたことを思い出します。
酒缶:ボクは何でも手を出しているので、そのネガティブな感覚はないですよ。
高木:今はないですよね。中高生の頃の月5000円とか1万円とかの小遣いの中で1万円の新品ソフトを買ったときの絶望感(笑)。
酒缶:確かに絶望感はありましたね。このゲームだけで2か月くらいを過ごさないといけないのか、と。
やっぱ、いろんなモノを集めたいし、遊びたいですね
高木:最近PSXを買おうかな、と思っていました。ハードディスクレコーダーが流行り始めたころのハードですけど、あそこにありますよね。
酒缶:PSXは……ゲームのセーブデータをハードディスクに保存できて便利ですけど……。
高木:デカいですよね。
酒缶:ちょっとデカいですね。でも、あの箱ほどデカくはないですよ。梱包がしっかりしているだけで。実は一時期、ファミコンをつないでプレイ動画を録画していたんですけど、頻繁にDVD-Rに焼いていたら壊れてしまって、修理に出してからは怖くてあまり使っていません。あと、RF端子を使うゲーム機をプレイするときには役立ちました。普通にPS2のゲームで遊ぶだけだったら、普通のPS2の本体を使った方がいいですよ。
高木:そうなんですけど、PSXというハードが欲しいだけで……名前がかっこいいんですよね。
酒缶:でも、型番があるので、新しいPSXを買わないともったいないですよ。ボクはPSXを購入した直後にPSPとの連携ができるモデルが発表されてガッカリしましたから。当時は7万円とかしたので……。
高木:高かったですよね。
酒缶:今だったらハードオフとか探すしかないんじゃないですか?
高木:ヤフオクとか。
酒缶:新品未開封は無理だと思います。デッドストックがあるかどうかもわからないし。
高木:あと、「鉄騎」もやりたいなと。家買って、最初に鉄騎を欲しいなと思いました。
酒缶:「鉄騎」は今開けると面倒くさいですよね。
高木:この部屋にはブラウン管モニターは無いんですか?
酒缶:今はないです。だから、光線銃やロボット、バズーカなんかが遊べません。
高木:最近、「スペースバズーカ」で遊びたいと思って買い直したんですけど、今の環境だと使えないので……ブラウン管のテレビを欲しいんです。
酒缶:バズーカはブラウン管がないと無理ですよね。うちのバズーカは電池を入れっぱなしにしていたら、電池が液漏れして大変なことになっていました。昔の携帯ゲーム機に入っていたお試し用の電池も使わず放置していると腐ってカサカサになっていたりするので、新品で買ったゲーム機でも電池は処分しちゃった方がいいですよ。絶対に悪くしかならないから。
高木:純正の乾電池だとなかなか捨てられないですよ。
酒缶:純正といっても、ハードメーカーとは関係ないし、普通の市販の電池ですよ。
高木:普通の電池であっても、最初に入っている電池は捨てられないですよ。
酒缶:でも、この10年くらいは電池で何回も苦労してますよ。この前も、ポケットプリンターのパッケージを久々に開けたら、入れっぱなしにしていた電池が液漏れしてましたし。
高木:うちもチェックしないとな。乾電池もそうだけど、「ゲーム&ウォッチ」のボタン電池も入れっぱなしにしているので、危ないかも。ネジをあけるのが面倒で放置しているけど、たぶん、カピカピになっていたりするんだろうな。
酒缶:あと、ビニール系の周辺機器も保管するときは気を付けた方がいいですよ。いい加減な状態でしまっていると、気が付いた時には溶けてベタベタになって張り付いていたりしますから。
高木:そうなんだよな。僕はコスモスが好きなんですけど、安いガチャガチャとかで中のゴムと外のカプセルが溶けて一緒になってしまっていて、「何の化学融合が起きているんだ!」って。
酒缶:きれいにしまってあればそのままきれいに保存されていると思うけど、実際は残念なことになっていることが多いんですよ。衣服だって虫に食われるじゃないですか。だから、この部屋にあるゲームももしかしたらいくつか動かないゲームがあると思うんですよ。ロムが壊れているかもしれないし、ディスクの磁気がダメになっているかもしれないし。でも、パッケージの絵柄とかは楽しめる。
高木:そうですね。
――そろそろいい時間になってきたので、最後に、お二人の考えるゲームを集めて遊ぶことに対するポリシー的なことがあれば、教えてください。
酒缶:ボクはやっぱり、ゲームというのはダウンロードも普通にあるんですけど、パッケージが面白いと思っています。最近休刊が発表されたゲームラボで連載しているコーナーでは、パッケージなどにおかしなことをトリビアとして紹介しているんですけど、誤植を含めて笑えたのがパッケージなので、「集めました」「持っています」で終わりではなく、遊ぶのは当然として、パッケージや取説を見て「こんなことが書いてある!」というところまで楽しむとコレクターとして厚みが出るのかな、という感じがしています。まだ部屋にはいっぱい発見できていないモノがあるので、それをもっとたくさんアウトプットできればいいな、と思っています。
高木:僕は自分が昔欲しかったモノを集め直しているのがすべてで、今も楽しいんですけど、子どものころとか学生の頃も楽しかったような気がするので、遊んで楽しかったり、「将来こうなりたい」とか「ゲームを作りたかったな」という思いをなるべく忘れないように、僕の仕事部屋は80年台くらいでロックしてあるんですよ。
酒缶:以前、ゾイドにハマっていましたよね?
高木:その辺もそうですね。小学校の頃の気持ちで集めていて、結構無節操に集めているんですけど、方針といってもそのくらいで(笑)。楽しみ方としては最近、というか、昔からそうなんですけど、ボクもパッケージを見返したときに意外と当時気付かなかったキャラや絵がたくさんあって、「こんなヤツいたの?」「こんな背景だったの?」みたいな驚きがたくさんあって、見返すのが楽しいです。「カラテカ」とか、よく見たらつのだじろうのパクリじゃないかと気付いて(笑)。大らかなところとか、いろんな妄想をしているのが楽しい。よくよく見たら、みたいなことが結構あるんですよ。
酒缶:「閃乱カグラ」もよくよく見たら、というのは?
高木:「閃乱カグラ」もいろいろと余計なことをたくさんしているので、ちょっと気付いたらクスッとするようなことはやってますね。
酒缶:パッケージゲームに対するこだわりはありますよね。
高木:それはそうですよ。パッケージゲームが作りたくてゲーム業界に入ったので。ダウンロードも便利で、実際に僕も漫画や音楽はダウンロードになっちゃっていますけど、ゲームはやっぱりパッケージがいいな。作るのは大変だけど、ゲームを作ったらみんな両親とか、家族に見せたいじゃないですか。店頭で「これ、俺がやったヤツなんだよね」とか、パッケージじゃないといえないので。そういうのも含めて、できるだけモノとして残したいな、と。作っているモノ自体がデジタルなので、世の中に出てこないから、物質としてやっぱり残したいという思いがすごくありますね。いずれは仏像とかリアルにモノを作りたいと思ってます。
酒缶:「閃乱カグラ」の場合、フィギュアがあったり、グッズ関連はいろいろとありますよね?
高木:自分、物欲の塊だと思っているので(笑)。やっぱ、いろんなモノを集めたいし、遊びたいですね。そのモノをどこに買いに行った、とか、どういうタイミングで買った、とかいうのも含めてエンタメです。「閃乱カグラ」は今回水着ですけど、これまでのパッケージのデザインはかっこいい系にしているので、「俺、アクションとかやりたいし、話題になっているらしいんだよね。これ、なんだかよくわからないけど」と言い訳をしながら買えたりとか。通販で注文して手に入れるとかじゃなくて、お母さんにバレたらまずいな、とかいろいろ考えながら戦術を練って買うのも遊びです。
酒缶:今だと、奥さんとの兼ね合いとかはあるんですか?
高木:うちは大丈夫ですけど、娘が生まれたので、「ちょっとこういうのは隠してもらえませんか」、と(笑)。「To LOVEる」とか、「閃乱カグラ」もそうなんですけど、フィギュアを部屋にポンと置いていたりするので。
酒缶:可愛い女の子の人形、じゃあ、済まないんですか?
高木:済まないですね。バストがデカいし、脱げちゃったりするし(笑)。「私はいいけど、私の友達のみんなはいいと思わない」と言われて、ケンカにはならないですけど、「お前は旦那が作ったものを否定するのか」「そうじゃない、否定されないためによ」というようなやりとりはありますね。まぁ、セクシー系は難しいですね(笑)。
――これで締めちゃっていいのかわかりませんけど(笑)。ありがとうございました。