海外では8月31日よりリリースされるPS4/Xbox One/Steam用ソフト「Life is Strange: Before the Storm」(日本での発売は未定)。その名の通り、あの竜巻以前の物語を描く本作のポイントを、リードシナリオライターのZak Garriss氏に訊いた。
「Life is Strange: Before the Storm」は、2016年に日本で発売され、そのシナリオが世界で高く評価されたアドベンチャーゲーム「Life is Strange」の前日譚を描く作品だ。
前作では、ふとしたきっかけから時間を戻す力を手に入れた少女、マックス・コールフィールドが、さまざまな出来事に直面する姿が描かれた。今作はその3年前が舞台だ。家でも学校でもトラブル続きの少女、クロエ・プライスと、その友人であるレイチェル・アンバーの二人の友情を描く。
E3 2017でのタイトルコール後、約20分に及ぶプレイ動画が公開された。ものに近づくと選択肢が表れ、その選択によってシーンが展開されたり、後のストーリーが変化するのは前作と変わらない。ただ、今回は時間を巻き戻す能力がないので、より慎重に選択する必要がある。
プレイ動画では、前作の一部シーンの舞台となった、線路脇の廃棄場も登場。この頃からクロエのいたずら好き、そして気持ちをうまく伝えることができない不器用さは変わらないようだ。
さて、今回は本作の開発を担当するDeck Nine Gamesのリードシナリオライター・Zak Garriss氏に、開発会社が変わった経緯や前作との違い、継承したポイントなどを伺った。なお、念のため前作のネタバレにはご注意いただきたい。
――「Life is Strange」はDONTNODが開発していましたが、今回Deck Nine Gamesが開発を担当するに至った経緯を教えてください。
Garriss氏:Deck Nine Gamesは、数年前からずっとストーリードリブンのアドベンチャーゲームの開発を進めていました。その中で、クリエイターが今取り組んでいるゲーム一本に集中できるツールを作り上げることに成功しました。
その折に、スクウェア・エニックスがアルカディア・ベイの中で描かれる、新たな物語を作ることができる新しいパートナーを探していたのです。実際にスクウェア・エニックスのスタッフと会って、「もし私たちが『Life is Strange』のフランチャイズで物語を描くとすればこうなる」という提案をし、パートナーになったのです。
――映像を見ると前作と変わらない雰囲気を醸し出していましたが、DONTNODからサポートを受けたりしたのでしょうか?
Garriss氏:そういったことはありませんでした。最初からスクウェア・エニックスのプロダクションチームとDeck Nine Gamesで独自に開発を進めています。
――3本構成ということですが、全部でどれくらいのボリュームになりますか?
Garriss氏:6~9時間くらいですね。今回は時間を巻き戻す能力はないのですが、例えば一度プレイしたシーンでもう一度ものを探したりするなど、繰り返しプレイすることはできます。
――時間を巻き戻す能力が出てこないということは、いわゆるオーソドックスなアドベンチャーゲームになっているということでしょうか?
Garriss氏:コンセプトの段階で、クロエに特別な能力を持たせるという考えはありました。ただ、クロエがそういった力を持っていると、「Life is Strange」との辻褄が合わなくなってしまいます。そして、「Life is Strange」の一番の魅力は感情移入しやすいキャラクターたちです。そういった面からも、クロエに能力を持たせる必要はないと判断しました。
――時間を巻き戻す能力がない代わりに、奇妙な出来事が起きるなど、特殊なエッセンスは含まれていますか?
Garriss氏:今回はクロエの感情を、奇妙な出来事を通して描写しています。彼女がひどく悲しむ事態になってしまうのですが。
――「Life is Strange」の3年前が舞台ですが、行く末が決まっているストーリーを3本のエピソードで描き上げるというのはかなりのチャレンジだったのではないでしょうか?
Garriss氏:「Before the Storm」のラストと「Life is Strange」までの間には、プレイヤーが想像を巡らせることができる空白期間を設けました。前作でクロエはレイチェルのことを語りたがらず、レイチェルがどんな人物かわからなかったと思います。同じ街が舞台なので既視感のあるものはたくさん出てきますが、結末はわからないように作ることができました。
――マックスは都度カメラでいろんなものを撮影していましたが、クロエは落書きをしていましたよね。あの落書きにはどんな意味があるのでしょうか?
Garriss氏:マックスの写真には、彼女自身の受け身がちな姿勢が表れていました。既に出来上がっているものを自分のコレクションに加えるという行為ですね。クロエは既にあるものを受け取るのではなく、何もないところに自分自身を表現するという行為をしているのです。
――前作のエンディングは2パターンありましたが、本作でもエンディングは変化したりするのでしょうか?
Garriss氏:もちろん、プレイヤー自身が選んだ選択肢がエンディングに影響していきます。
――マドセンやウイリアム、ジョイスたち前作の登場人物は今回も出てきますか?
Garriss氏:たくさんのキャラクターが再登場します。それに加えて、「Before the Storm」で新たに登場するキャラクターもいます。
――マックスは…?
Garriss氏:マックスがいないことがこの物語のポイントで、いないからこそ生まれるクロエの感情が重要なところです。ただ、マックスがクロエに影響を与えていることは間違いないですね。
前作では、マックスは出来事のすべてを日記に記していて、それが徐々に更新されていきました。今作では、そのシステムはクロエがマックス宛に書く手紙に変わっています。ただ、「Before the Storm」のクロエはマックスが自分のことをもう気にしていないと思っているので、その手紙が実際に送られることはありません。
――「Life is Strange」ではドメスティックバイオレンスやドラッグ、孤独や死といったシリアスな要素を描いていましたが、本作でも引き継がれるのでしょうか?
Garriss氏:そういったテーマを描くのは、非常に勇気のいることだったと思います。それを受け継ぐことがDeck Nine Gamesの使命だと思っているので、本作でも引き続き取り扱います。
――デラックス・エディションの特典でマックスの物語がプレイできると聞きましたが、それはいつの時代のマックスなのでしょうか?
Garriss氏:詳細は言うことはできませんが、「Before the Storm」よりも前です。まだ開発中なのでリリース日などもお伝えできないのですが、「Before the Storm」の全エピソードがリリースされた後になります。
――「Life is Strange」ファンに注目してほしいポイントはありますか?
Garriss氏:前作と同じ要素を多く含んではいますが、16歳のクロエが描かれるのが前作と異なる点です。今まで皆さんがクロエに抱いていたイメージとは異なる、よりキャラクターを深く掘り下げるための要素がたくさん出てきますので、そこを前作のファンに愛してもらえたらうれしいです。