セガを代表するアクションゲーム「ソニックシリーズ」の原点ともいえる2Dクラッシックシリーズに焦点をあてた新作「ソニックマニア」のダウンロード販売が、PS4とNintendo Switch、Xbox One向けに8月16日より開始された。それに先駆けて、8月上旬にセガゲームス品川本社で本作の説明および、プロデューサー飯塚隆氏へのインタビューがメディア向けに開催された。本稿では、その情報をお伝えしていきたいと思う。
目次
「ソニックマニア」は、初期のシリーズ作品である「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3」「ソニック&ナックルズ」「ソニックCD」の中から選りすぐりのステージに、新たな仕掛けなどを追加した作品だ。ただのリメイクとは異なり、新たなオリジナルステージも多数収録。3Dゲーム全盛のこの時代に、ドット絵で再現したクラシック2D横スクロールアクションシリーズの最新作として作られている。
まずは、欧米事業推進部の近藤航平氏より、本作の紹介が行われた。ちなみに本作の開発はセガ・オブ・アメリカで行われているが、近藤氏は日本版のローカライズのサポートを担当している。
「ソニックマニア」のゲームモードは、大きく分けて3つある。「ストーリーモード」は、過去作と同様にステージを順番にクリアしていくモードだ。それ以外に、「タイムアタックモード」と「対戦モード」が用意されている。
「ストーリーモード」のプレイアブルキャラクターは、「ソニック」「テイルス」「ナックルズ」の3キャラクターだ。ソニックとテイルスのタッグでもプレイできるほか、今作では一定の条件を満たすことでソニックとナックルズのタッグでもプレイ可能となっている。
収録されているステージだが、アクト1は比較的にオリジナルのレイアウトやエネミー配置に近いものとなっている。そのため、昔ソニックシリーズで遊んだことのある人ならば、懐かしく感じることだろう。しかし、そのアクト1でも後半につれてレイアウトなどが徐々に変わっていくようになっている。
懐かしさと新たな発見がある「ソニックマニア」のステージ
「ソニックマニア」では、メインのゾーンが12あり、各ゾーンごとにふたつのアクトが用意されている。また、特殊な条件をクリアすることで、さらなるステージも遊べるといった仕様になっている。
ちなみにアクト2だが、同じ「Green Hill」ステージであったとしても、こちらはマニアのために作り直されている。また、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3」で炎のバリアや水のバリア、雷のバリアなどが登場したが、それらの要素も本作に収録されている。例えば炎のバリアを持っているときに木の橋を渡ろうとすると燃えてしまい、そこから新たなルートができるなど、新たなギミックや様々なルートが仕組まれているそうだ。
そのため、何度もプレイしているうちに新たなルートを発見するといった遊び方もできるのだ。
収録されているステージの中に、新規で作られた「MIRAGE SALOON」がある。こちらは荒野の砂漠をモチーフに作られているのだが、アクト1はテイルスの飛行機に乗って遊ぶような、変わったステージとなっている。
また、「METALLIC MADNESS」のアクト2ステージ後半のギミックとして、ソニックがチビキャラクターになるという仕掛けが用意されている。このチビキャラクターでしか移動できないルートなどもあり、こちらもいろいろと探索のしがいがありそうだ。
「タイムアタックモード」はプレイアビリティが向上!「対戦モード」は懐かしの画面分割式!?
「ソニック」シリーズと言えば「タイムアタック」が定番だが、先ほどもふれたように本作でもゲームモードとして用意されている。使用できるキャラクターは、本編と同様に「ソニック」「テイルス」「ナックルズ」だ。オンラインリーダーボードに対応しており、全世界のプレイヤーとランキングを競うことができる。ちなみにこれらのランキングは、各キャラクターごとに分けられている。
この「タイムアタックモード」では、プレイアビリティも向上させている。ステージの初めのポストを通ることで、初めて時間のカウントが開始されるようになっている。そのため、あらかじめスピンダッシュを貯めてから一気にスタートを切るといったことができるのだ。ステージ終わりにゴールプレートがあり、そこを通ることでカウントが決定される。
本作に限ったことではないが、タイムアタックではちょっとした操作ミスなどが、大きなタイムロスを生んでしまうことがある。その場合、ステージ途中でも簡単にゲームのやり直しができるように、特定のボタンを長押しすることでロード無しにステージの初めからやり直すことができるようになっている。「タイムアタックモード」のステージは、本編をクリアしていくことで開放することができる。
最後のゲームモードである「対戦モード」は、なんと昔ながらの画面分割式が採用されている。こちらは残念ながらオンライン対戦には対応していないが、コントローラーがふたつある場合はプレイ可能だ。それぞれがキャラクターを選んだ後に、対戦のルールを設定。上下に分かれた画面でゲームをスタートし対戦が始まる。
本作のルールとしては、最初にゴールした方が勝ちというわけではなく「クリアタイムがどちらが早いか」「ステージ中に獲得した合計リング数」「ゴールした時点で獲得しているリングの数」「壊したアイテムボックスの数」「スコア」の5つの要素によって勝敗が決定される。
「ボーナスステージ」や「スペシャルステージ」などおまけ要素も満載!
3つのゲームモードだけでも十分だが、本作では「ソニック」シリーズではおなじみの、「ボーナスステージ」や「スペシャルステージ」といったおまけステージにも力が入れられている。
まずは「スペシャルステージ」。こちらは2Dというよりも3D風の奥行き感のあるステージになっている。内容としては、UFOを追いかけてつかまえることができるとステージクリアといった感じだ。
ステージ中にある青いボールを集めることでゲージが貯まっていき、マックスになるとスピードが1段階アップする。スピードは最大2回上げることが可能だ。ステージには時間制限があるが、こちらは落ちているリングを集めることで増やすことができる。これらの要素を上手く利用しながら、UFOに追いつくようにしていくのだ。
この「スペシャルステージ」をクリアすると、「カオスエメラルド」というアイテムをゲットすることができる。「カオスエメラルド」は7つあるのだが、これをすべて集めると、ソニックが「スーパーソニック」に変身できるようになる。それ以外の要素も用意されているが、こちらはぜひ自分の手で見つけてみて欲しい。
「ボーナスステージ」は、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3」や「ソニック&ナックルズ」の「スペシャルステージ」として登場した「ブルースフィア」と呼ばれている自動スクロール型のミニゲームとなっている。
「ボーナスステージ」に行くには、リングを25個持った状態で、「ポイントマーカー」を通るとその上に光の輪ができる。その中に入ればOKだ。
こちらは青いボールに触れていき、すべて赤いボールに変化させることができるとクリアとなる。途中で赤いボールに触れてしまうと、強制終了だ。また、外枠のボールを赤くすると、リングに変えることができる。
変更可能な青いボールをすべてリングに変え、そのリングをすべて集めてクリアすると「パーフェクトクリア」となる。「ボーナスステージ」ではクリアすると「メダル」を獲得することができるが、通常のクリア時は「シルバーメダル」が、「パーフェクトクリア」のときは「ゴールドメダル」がもらえるのだ。
メダルは集めていくことにより、ゲーム内の隠し要素をどんどんアンロックしていくことができる。アンロックできる要素には、「サウンドテスト」や「ブルースフィア」を単独のモードとしてエキストラメニューからプレイ可能になるなどがある。
ちなみに「Chemical Planet」のアクト2のボス戦で「ぷよぷよ」が遊べるようになっているが、こちらもメダルを集めていくことで単独モードとして遊べるようになる。
「ストーリーモード」はセーブ可能となっているが、それとは別に「NO SAVEモード」が用意されている。こちらは過去のシリーズ同様、セーブができないようになっている。また、このモードに限ってメダルの数によって、隠し要素が開放できるようになっている。
たとえば、ステージ内にエネミーやオブジェクトを自由に配置できるようになるデバッグモードやソニックのアクションを過去作で登場したアクションに切り替えることができる機能が開放される。
「ソニックマニア」プロデューサー飯塚隆氏にテレビ電話インタビュー!
今回の取材では、現在アメリカに在住している「ソニック」シリーズおよび「ソニックマニア」プロデューサーの飯塚隆氏と、テレビ電話を利用したインタビューも実施された。
――まず自己紹介と最近の職務について教えてください。
飯塚氏:「ソニック」シリーズのプロデューサーをやっています飯塚隆です。昨年からセガ・オブ・アメリカ(以下SOA)に勤務地を移しまして、「ソニックピラー」という全世界のソニック商品を取り扱っている部門でクリエイティブ面を見ています。今回の「ソニックマニア」もSOAのプロジェクトとして発足しています。「ソニック フォース」やテレビアニメ、ライセンス商品などのコントロールをしています。
――「ソニックマニア」の企画経緯を教えてください。
飯塚氏:私がアメリカに赴任した直後の話ですが、昨年ソニック25周年があって、その機会に既存のソニックファンではなく、メガドライブは遊んでいたけど最近のゲームはやっていないという休眠ファンの方たちに何か商品を届けられないか? というお題を受けました。その時に、2Dドット絵の「ソニック1」「ソニック2」「ソニックCD」をモバイル向けに移植した、オーストラリアのクリスチャン・ホワイトヘッドというプログラマーと会いまして、彼と一緒に2Dのプロジェクトが起ち上げられないかということで、今回のプロジェクトが発足しました。
最初は単なるシリーズの移植という話も上がりました。しかし、本当にファンの方たちが求めているものは、単に昔のソフトがもう1度遊べるというだけではないのではないか? 昔の記憶にあるあのステージで、もう1度新しい驚きが欲しいというのが本当の望みではないか? と個人的に考えました。そこで今回は単なる移植ではなく、すべてのステージをアレンジし、全く新しいソフトとして、この「ソニックマニア」というプロジェクトを起ち上げたわけです。
――「ソニックマニア」の制作を終えた感想をお聞かせください。
飯塚氏:日本にいるときには、日本のソニックチームであったり大手の開発会社と一緒に仕事をしてきましたが、今回の「ソニックマニア」に関しては、プログラマーからゲームデザイナー、グラフィック、サウンドまで、すべてひとりひとりがインディペンデントな“ソニックのマニア”な人たちなんですね。
クリスチャン・ホワイトヘッドはオーストラリア在住ですし、ロサンゼルスだったりイギリスだったりと、いろんな地域のいろんなソニックマニアの人たちで構成された、このソフトの先鋭部隊になっています。これは私にとっても初めての経験でした。
通常の大手の開発会社やセガゲームスもそうですが、決められたスケジュールの中で決められたものを作るのが、これまでの制作パターンでした。しかし、この「ソニックマニア」のスタッフは、本当に作るのが好きでとにかくいろんなものを作りたがるんです。
スケジュールも当初定められたものより、大幅にオーバーしてしまい、遅れているからこのコンテンツを削ろうという検討もときにはありましたが、βロムが出ているのに、まだ追加でどんどん新要素を入れてきちゃうといった、本当に手の焼ける人たちでした(笑)。その代わり、ゲーム内容としてはこだわりのあるマニアの人たちやゲームを遊ぶ人たちにも、熱意が伝わってくるような仕上がりになっています。
――開発は米国で行われているそうですが、日本でも発売されるということでローカライズで気を配られたところはございますか?
飯塚氏:今回の「ソニックマニア」に関しては、3Dのソニックと違ってキャラクターはしゃべりませんし、事細かくヒントメッセージなども無い、昔ながらのメガドライブライクなゲーム内容になっています。ローカライズ対応箇所も少なくして全世界に届けられるように、なるべく多くの国で販売できるよう対応しました。
――具体的にはどれぐらいの言語に対応されていますか?
飯塚氏:現状は日本語、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語です。
――開発スタッフがソニックマニアだらけだそうですが、当然皆さんあれをやりたいこれをやりたいという話になると思います。その中で一番多かった要望を教えてください。
飯塚氏:彼らは、ソニックの新作ゲームを作ることができることが、すごく嬉しいと感じている人たちです。「STUDIOPOLIS」など完全新規のステージを、多く入れたいといった要望はありました。
またキャラクターが好きな人たちなので、ソニック、テイルス、ナックルズのキャラクターアニメーションも、すべて描き起こしています。「ここ、別にいいよ」というようなところまで、アニメーションをどんどん勝手に増やしていったりして(笑)。ソニックが泡を吸うアニメーションなども、オリジナルでも十分なのにさらにコマ数を増やして空気を吸う表現を加えたりしています。そうした細かいところを、どんどん追加していきましたね。
――もしかしたら、ステージはもっと増えた可能性もありましたか?
飯塚氏:逆に、ステージ数は本当は減るはずだったんです。スケジュールが押していたので、途中を削る検討もしていましたが、結局当初の予定通りコンテンツを入れたいということで、減らさずにフルボリュームで収録しています。
――飯塚さんオススメのステージを、リバイバルと新規でひとつずつ教えてください。
飯塚氏:リバイバルという面では、これまで「Green Hill」とか「Chemical Planet」は取り上げられることが多かったですが、今回の「ソニックマニア」では、そんなにメジャーではないけど隠れた名作ステージも収録しています。たとえば「FLYING BATTERY」は、私も当時から音楽が好きでしたし、戦艦の中と外を行き来するステージ構成も好きでした。そうしたところを今回リニューアルして、オリジナルよりも遙かに面白い形で収録できたのが良かったなと思っています。
新規のステージでは、「MIRAGE SALOON」のアクト1がオススメです。ソニックでやったときとナックルズでやったときのステージ構成が違いますし、ソニックで始めると「あ、これ知ってる」というような、新規のステージではありますが過去のステージからいろんなエッセンスを取り入れているところが面白いです。
――今回は「ファントムルビー」を中心にしたストーリーになっていますが、どうしてこういうお話になったのかというコンセプトの経緯がございましたら、教えてください。
飯塚氏:「ハード ボイルド ヘビーズ」というエッグマンロボットたちが、自我に目覚めて、自分たちの意思で動き出すというベーシックなストーリーを今回の開発チームから提案がありました。それに加えて、(リバイバルや新規など)いろんな時代のステージが連続で繋がる必要性があり、そのギャップを埋めるために「ファントムルビー」の不思議な力をキーとして取り上げています。
――開発中に削られた要素もあるかと思いますが、それらを今後ダウンロードコンテンツ等で追加する予定などはございますか?
飯塚氏:実は削られた要素がぜんぜんないので、ダウンロードコンテンツでの追加は無い予定です。今回はデジタル配信という事で、生産の時間が必要ないため、ギリギリまで作りこんでしまい、削った要素がないフルボリュームの収録となっています。なので今は、開発スタッフもやりきった感でいっぱいですね。
――ゲーム中に「ぷよぷよ」が遊べるようになっていますが、それを収録した経緯を教えていただけますか?
飯塚氏:先ほどのスタッフがマニアというところに通ずるのですが、海外で「Dr. Robotnik's Mean Bean Machine」(邦題はドクターエッグマンのミーンビーンマシーン)という名前で、ソニックシリーズのひとつとして「ぷよぷよ」がジェネシスで発売されていました。その要素を、「Chemical Planet」のボス戦に入れたいというのが最初のきっかけです。
ボス戦で突然「ミーンビーンマシーン」のステージになり、「ぷよぷよ」が始まるというのは面白いフィーチャーだったので、そこは予定通り実装したのですが、さらにせっかく作ったので、これだけ遊べてもいいよね? ということで、予定になかった「ミーンビーンマシーン」だけを取り出しておまけ要素に入れました。
――ボーナスステージが「ソニック3」と同じ「ブルースフィア」になっていますが、これを「ソニック1」や「2」のスペシャルステージにしたり、新規で作るというアイデアはなかったのですか?
飯塚氏:実は、当初は「ブルースフィア」をゲームに入れるという案はありませんでした。スペシャルステージを新規で作るというのは最初から計画にありましたが、ボーナスステージに関しては特に入れる予定はなかったのです。スペシャルステージをどうするかという話になったときに、実験をかねて、「ソニック3」の「ブルースフィア」をいったん移植して遊べるような状態まで持っていったのが始まりで、動いたからこれを使いたいよねとなって、ボーナスステージとして採用することにしました。
なので、さっきからお話をしているとおり、当初予定になかったものが増えていくことが多くて(笑)。減っていくどころか、当初よりもどんどん増えていくんですよね。
――スペシャルステージはドット絵ではないソニックの感じになっていますが、そちらが採用された経緯を教えてください。
飯塚氏:「ソニックマニア」のプロジェクトに関しては、メガドライブよりは上の性能でサターンよりは下の「ソニックCD」をマシンスペックの上限にしようと取り組んでいました。その決めた上限の中で、メガCDクラスのスペシャルステージを導入したいという意向があり、あえてスクロール面をポリゴンではなく回転させて地形を作っています。今であれば、「ソニック フォース」で使っているようなハイポリゴンのソニックモデルもありますが、あえてメガCDクラスのカクカクしたソニックモデルのポリゴンを使っています。
――最後に読者にメッセージをお願いします!
飯塚氏:2017年という時代にドット絵の新作ゲームを出すという、かなり自分の中でもチャレンジングな企画でしたが、制作を行っていくなかで、懐かしさと楽しさを感じ、2Dのソニックをもっと遊びたいと思いました。昔ソニックを遊んだことのある方でしたら、必ずどこかに「あ、この仕掛け知ってる」「うわ、この先こんなことになってる」といった、今までのゲーム人生の中でない体験ができるソフトだと思います。今まで知らなかったソニックに出会える機会になると思いますので、ぜひダウンロードして遊んでいただければと思います。
――ありがとうございました!
このように、開発陣も含めてかなり気合いの入った作品に仕上がっている。当時を思い出しながらプレイするもよし。これまでのシリーズを遊んだことのない人でも、「ソニック」シリーズの新たな魅力の虜になること間違いなしの作品である。価格もお手頃となっているので、手持ちのハードに1本追加したいと思っているならば、オススメの1本だ。