スクウェア・エニックスより発売中の「ファイナルファンタジーXV(FFXV)」でディレクターを務める田畑端氏にインタビューを敢行。前編となる今回は、gamescom 2017で発表されたPC版、スマートフォン版について伺った。
昨年11月に発売され、すでに約9ヶ月が経過した「FFXV」。発売直後にプレイして、もうクリアしたという人も多いと思うが、ゲームとしての展開はまだまだ終わっていない。アップデートやダウンロードコンテンツの配信が積極的に行われ、さらにはドイツで開催されたgamescom 2017では、新たにPC版とスマートフォン用の「ポケットエディション」まで発表されたのだ。
この発表に合わせる形で、「FFXV」でディレクターを務める田畑端氏に、インタビューの時間をいただいた。前編となる本稿では、PCとスマートフォン版について話を聞いてみた。また後日公開される後編では、今後のアップデートやさらなる展開について伺ったので、そちらも期待してほしい。
PC版は技術を1世代進めた、よりリッチな「FFXV」に
――発売から9月が経ったゲームとしては、異例のボリュームの発表ですね。
田畑氏:そうですね。今まではコンソール版に焦点を絞っての開発でしたが、それが一段落して、準備も整った段階になったので、あらためて発表させてもらいました。その中でもPC板と、スマートフォンの「ポケットエディション」は普段コンソールを遊ばない人へ向けた展開です。現在はゲームの遊び方も多様化していて、PCでしか遊ばない人、スマートフォンでしか遊ばない人もたくさんいますからね。
――ハイエンドなゲームだとPC版があって当たり前の時代になってきましたし、そんな時代を反映しての展開だと。
田畑氏:確かにそうですよね。PC版に関しては単なる移植を出すというより、PCであることの必然性を持たせたいと考えていました。開発チームは「PCにしか『FFXV』が存在しなかったら」という考えで作っており、その結果としてよりリッチなタイトルに仕上がりました。
――コンソール版とPC版の違いについて、あらためて教えてもらえますか?
田畑氏:コンソール版と比べると、遊び方に関してはマウスとキーボードに対応し、さらに主観視点でも遊べるようになっています。またMOD機能に対応する予定も立てています。グラフィックスは技術を1世代進めていて、エンジンはNVIDIAさんとの協力でアップグレードしています。
――映像を見るだけでも、目に見えて違うことが分かります。
田畑氏:炎の燃え広がり方とか、草の自然な生え方とか、「FFXV」の世界をさらに良いものにできたのかなと思います。このあたりはNVIDIAさんが持つ「GameWorks」というライブラリをエンジンに組み込んだから実現したものです。コンソール版をプレイした人でも、「もう1回見てみたい」と思わせる力を持っていますし、ハイエンドゲームのファンにはさらに一歩進んでものを見せられると思います。
――コンソール版では今後もアップデートやダウンロードコンテンツの配信が続いていくと思いますが、PC版でも同じタイミングで行われるのですか?
田畑氏:年内に予定しているものはPC版にも収録されています。その後の予定はコンソール版でも正式に決まっていないのが現状です。
――なるほど。コンソール版をプレイした人にとっても見逃せないバージョンになりそうですね。
田畑氏:そうなってくれると嬉しいですね。それはスマートフォンの「ポケットエディション」にも同じことが言えて、「これまでとは違うプラットフォームで『FFXV』を遊んでもらう」という考えは同じです。ファンの方々が、こちらにも興味を持ってくれるのであれば、それもとても嬉しいことです。
ストーリーを手軽に追体験できる「ポケットエディション」
――その「ポケットエディション」ですが、これを制作することになった背景について教えてもらえますか?
田畑氏:きっかけとしては、僕が「FFXV」のディレクターに就いたときから始まっていたんです。当時は「HDのゲームはもうダメだろ」と言われていた時代で、社内のラインもスマートフォンが。僕自身もスマートフォンがコンソール以上に大きな、新しいプラットフォームにすでになっている認識は当時から持っていて、「ここで遊んでいる人たちはコンソールの「FFXV」が魅力的でも、遊ぶことはないだろうな」と感じていました。だったら、スマートフォンに最適化したゲームを別に作って、1人でも多くの人に「FFXV」のストーリーを知ってもらおうと考えたのです。
――確かに、コンソールとスマートフォンだと文化のレベルでまったく違いますからね。
田畑氏:当時のユーザーリサーチでは、「スマートフォンで初めて『FF』シリーズに触れた」という人が、若い人にすごく多かったんです。10代から20代の若い世代ですね。反面、せっかく「FF」シリーズを知ってもらったのに、そこからコンソールへ移った人はほとんどいませんでした。「FF」のファンも時代が進むに連れて細分化しており、ニーズに応えるために作ったのが「ポケットエディション」です。
――スマートフォンで「FF」を知った人に、コンソールを買わせる無理強いはしないと。
田畑氏:もちろんコンソールに興味を持ってくれるのであれば、それに越したことはないですけどね。音楽の聴き方と同じで、ライフスタイルになってる部分もあるので無理なものは無理だと思います。
――コンソール版とはかなり変化した印象を受けますが、田端さんの手応えはいかがですか?
田畑氏:モニタープレイも好評で、良い出来になっているのではと感じています。女性からも「遊びやすい」という意見をいただきましたし、見た目も含めてこれまでとは違う層にアプローチできると期待しています。
――「ポケットエディション」の内容についても教えてください。まず、コンソールのようなオープンワールドではないんですよね。
田畑氏:あくまでも手軽に、ある意味ラクして旅を体験するのが目的なので、マップは小さめです。また、エピソードごとに購入してもらう形になります。全部で10個のエピソードに分かれていて、1つのエピソードずつ購入するか、セットで購入するかを選ぶこともできます。ただし、第1話だけは無料での配信となるので、体験版感覚で触れます。
――コンソール版だとリアルなキャラクターの表情の変化で感情を描く場面もありましたが、スマートフォンだとキャラクターはデフォルメされています。これによる演出に変化はありますか?
田畑氏:コンソールはPCほどではありませんが、当時の段階でできる限りの技術を詰め込みました。そのおかげで、仮に音声がなくても表情や仕草で心情を読み取ることが可能でした。「ポケットエディション」に関しては手軽さが大事だと考えていて、仲間との旅をコンパクトに楽しんでもらうことに重きを置いています。演出には確かに違いがありますが、そもそもの楽しみ方が違うと考えてください。
――デフォルメのグラフィックを採用したのには、なにか理由があるのですか?
田畑氏:ほかにも候補はあって、例えば「FFVII」のようなポリゴンを基調にしたアート・デザインもありましたね。とはいえターゲットになってくるのが若い世代である以上、過去の良さではなく新しい良さに挑戦しようと考え、現在のデザインに落ち着きました。
――田畑さんとしても、デフォルメグラフィックは納得の採用だったと。
田畑氏:モニタープレイで若い世代の方に「遊びたい」と思っていただいた以上、正解なのだと思います。「遊びたい」と思わせるのは、シンプルだけど本当に難しいことですからね。次は、昔は遊んでいたけど、最近の「FF」は知らない、という少し上の世代にどうアプローチしていくかですね。
――ちなみに、価格はどのくらいに設定するのでしょうか。
田畑氏:まだ全世界での価格調整前なので、ストア掲載時に変更になる可能性もありますが、現在のところ1エピソード360円、全エピソードのパックが2,800円を予定しています。
ファイナルファンタジーXV ポケットエディション
スクウェア・エニックス- 配信日:2018年2月9日
- 価格:CHAPTER 1:無料、CHAPTER 2-3:各120円、CHAPTER 4-10:各480円、全CHAPTERパック:2,400円
ファイナルファンタジーXV ポケットエディション
スクウェア・エニックス- 配信日:2018年2月9日
- 価格:CHAPTER 1:無料、CHAPTER 2-3:各120円、CHAPTER 4-10:各480円、全CHAPTERパック:2,400円