フリューから2018年5月17日に発売となるPS4用ソフト「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」のプロデューサーである山中拓也氏へのインタビューをお届けする。

目次
  1. 過剰強化されて遊びやすく、しかし作品の本質は変わらずに
  2. 帰宅部を裏切り、楽士とコミュニケーションを図れる「楽士ルート」
  3. 独自のバトルシステム「イマジナリィチェイン」もより楽しく遊びやすい方法へ
  4. 発売直前の実況プレイに「ベイビーレイズJAPAN」の渡邊璃生さんが出演!より遊びやすくなるアップデートも実施

フリューから2018年5月17日に発売となるPS4用ソフト「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」。2016年6月23日に発売されたPS Vitaソフト「Caligula -カリギュラ-」をOVERDOSE=“過剰強化”し、その名にふさわしいタイトルとして生まれ変わった学園ジュブナイルRPGだ。

本作の舞台は、自我が芽生えたバーチャルアイドル「μ(ミュウ)」が人々の幸福のために創りだした理想の世界「メビウス」。現実で苦悩した人々はこの世界に誘われ、現実を忘れてμが思う「人間の一番輝かしい時期」である高校生を永遠に繰り返す。プレイヤーはメビウスが現実の世界ではないと気づき、現実に帰ろうとする「帰宅部」として行動するか、そんな帰宅部を裏切り「楽士」として暗躍する2つのルートいずれかを選ぶことになる。

ゲームのタイトルにもなっている“カリギュラ”とは、見てはいけないものほど見たくなる心理現象のこと。本作では、そんな“踏み込んではならない”という選択を幾度も突きつけられる。ここで覚悟と責任を持って踏み込むか、代償と後悔を恐れて踏み込まないのか、すべてはプレイヤー自身に委ねられている。

ここでは、そんな「Caligula -カリギュラ-」シリーズの企画/シナリオ原案/ディレクター/プロデューサーである山中拓也氏にインタビューを実施。発売を目前に控えた今、前作から新たに加わったキャラクターやシナリオ、より遊びやすくなったシステムなどを改めて語っていただいた。本作のポイントをまとめてチェックできる内容になっているので、まだ購入を迷っている方もすでに予約済みのファンもぜひ一読いただきたい。

過剰強化されて遊びやすく、しかし作品の本質は変わらずに

――それでは、まず「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」について簡単にご説明いただけますでしょうか。

やり残しのないよう、すべてやりきろうと思った作品です。もともと前作の「Caligula -カリギュラ-」ではあえて語っていない、設定としてあったけれどゲームの中では匂いとして感じ取れるぐらいしか出していない部分があったので、今作ではユーザーの皆さんが望むのならば“その奥まで”見せましょうというコンセプトになっています。

もちろんアニメ化のお話もありましたから、プロジェクトを立ち上げてからアニメ放映やキャストさん経由などで作品を知らない人に知ってもらう機会がより多くなるのは分かっていました。どうしても尖った作品ではあるので、自分にマッチするのかという不安はあると思いますから、決して敷居が高くない作品であると不安を一つずつ解消し、寄り添えるよう作り上げていきました。

――前作と今作で変わった部分、変わらない部分について教えてください。

まず、自分で踏み込むという思想の部分は変わっていません。アニメと比べてゲームは自分で行動を選択すること、インタラクティブであることが特徴だと思います。本作のシナリオはそこに誠実にいようということで、キャラクターに対して踏み込む・踏み込まないという選択をさせることでその奥を見ることができるし、踏み込まないという選択に大きなデメリットは持たせていません。興味のないものはスルーしても進むようにしています。

それは今回追加された楽士ルートという帰宅部への裏切りを体験できるルートも一緒で、踏み込めばユーザーの望むとおりに楽士の秘密を知ることもできます。今作ではそうした部分をより強化し、選択へさらに重みをもたせるようにしています。変わった部分といえばそこでしょうか。楽士ルートでいえば帰宅部を裏切るという行為に対し、すべてが円満に終わるとは期待しないでほしいですね。

例えば楽士ルートでは、前作である結末を迎えたキャラクターの運命が変わるかもしれません。とはいえ決まっていた運命を変えるにはそれなりの代償も覚悟しておかなければ…なんせ僕と里見さんなので(笑)。誰もが救われるハッピーエンドを用意するつもりはなかったので、選択に対する「責任」と「代償」は前作よりも強めています。

――楽士ルートのシナリオも前作と同様、里見直さんが書かれているのでしょうか?山中さんご自身が書かれた部分もあるそうですが、どの辺りなのでしょうか?

シナリオは里見さんです。僕は前作同様、展開上必要になったシーンやどうしても強めたい部分、キャラクターに喋らせたいと思う部分などに手を入れています。とくに一番ボリュームの大きい部分は裏切りが発覚した後のキャラクターの独白というか、叫びみたいなもので、楽しく書かせていただきました。せっかく裏切るなら、責められないといけないので。そこは淡白にしたくなかったです。

――発売前に美笛や維弦のシーンが公開されている部分ですね。

僕自身はそこをすごく出したいんですけど…一番オイシイところなので控えています。相当キツイことも言わせていますし、そのキャラクターの心が一番大きく振り切れるところなのですごくピーキーに書いています。人によっては気分がわるくなるかもしれません。また、そこはキャラクターシナリオを完遂するかによって少し変わります。帰宅部の皆の秘密を知って「一緒に現実に帰ろうね」と言った上で裏切っていたら…そんな場合はキャラクターにもっと深く、本質に近づいたことを言わせるようにしています。

――楽士ルートは序盤のカギP戦以降のどこかで分岐するとそうですが、帰宅部ルートと並行していくようなイメージなのでしょうか?

そうです。楽士ルートを選んでも、そのまま楽士として帰宅部を離れるというわけではありません。帰宅部ルートの合間にイントロダクションとしてアディショナルのシナリオが追加されるという感じですね。帰宅部でありながら楽士としても活動する、いわば二重スパイのような状態になります。とりあえずシナリオを全部見たい方であれば、一周目から楽士ルートを選んでいただければ8割は見れると思います。

見た目は変わらないのですが、プレイヤーの心情として「自分は楽士なのに…」と帰宅部とのコミュニケーションに後ろ暗い気持ちを抱えていただけると嬉しいです。感情移入とか没入度が高い人であれば、さらに捉え方が変わってくると思うので、ぜひなりきって遊んでほしいです。

――より“仲間を裏切るぞ!!”というイメージを強めるため、最初は帰宅部ルートで遊ぼうと思っていたのですが…楽士ルートにも強く興味を引かれてしまいますね。

琵琶坂たち新キャラクターが加わっていますから、彼らと帰宅部としてきちんとコミュニケーションを図ってからでも良いと思いますよ。いかにバトルのストレスを減らすかという部分を強めているので、一周にかかるカロリーは前作よりも少ないはずです。

もちろん帰宅部ルートと楽士ルートで展開が大きく変わる部分もありますし、プレイ効率もありますけど、とにかく自分の好きなほうを選んでほしいです。裏切りたいか、裏切りたくないかです。「どうしても楽士ルートができない!」という方がいても、僕は素敵だな、優しい人だなって思います。

――確かに、帰宅部として活動をして、彼らの心の叫びのようなものを受け止めた上で、本当に彼らを裏切るのかと考えると…なかなか心苦しさがありますね。

なんてヒドイ人なんでしょうね…(笑)。

――その展開を用意した張本人が何をおっしゃいますか。でも、今回の主人公はそんなヒドイ行動を取ってもおかしくないような表情になっていますね。新たに加わった女性主人公も含め、新たなビジュアルはどことなく影があるようなイメージで。

そう取れるように調整しています。女性主人公のビジュアルに関しては芯の強そうなイメージとか女子高でモテるタイプと表現していますが、沢城みゆきさんの声についてはいわゆる姉御肌という感じではなく、透明感よりのディレクションをしています。これは強烈なリーダーシップで引っ張るのではなく、自然と周りに人が集まってくるようなイメージを目指したからです。だからこそ、皆が信頼して寄ってきたところを裏切るのは嫌な感じになりますよ。

――沢城みゆきさんの演技に関しては、かなり意外な感じがありましたね。もっと、よく演じていらっしゃる強い女性という感じになるのかと。

見た目のビジュアルのままいくとそうなると思ったので、沢城さんにそうはしたくないという話をさせていただきました。さすがの実力者なので、一撃で決めてくださいました。

――ほかにも新たに加わったキャラクターのビジュアルについて伺いたいのですが、前作でおぐちさんときちんとすり合わせができていたこともあり(※詳しくは前作のインタビューを参照)、かなりスムーズだったそうですね。

新キャラで多めに直したのは琵琶坂だけですね。表情とか顔つきが与えたい印象と少し異なったのでお願いしましたが、基本的に「Caligula -カリギュラ-」のデザインとしてのルールは前作で固まっていたところもあり、こちらがやりたいこと、見せない内面と見せたい外見との差を説明していったら自然と出来上がっていたので「これで大丈夫です」と(笑)。

仕事仲間を越えた関係を築かせてもらっていて、普段の日常会話から伝えたい部分をしっかり伝えているので、あまり仕事の発注という感じにならずスムーズでした。

――彩声はどうでしょうか? ビジュアルだけを言うならお嬢様っぽい感じの、可愛らしい女の子ですよね。

ネタバレを避けて言うのが難しいんですが…ビジュアルもそうなんですけど、僕の中で意識していたのは、新しい情報というかスクリーンショットが出る度に顔つきが変わっているようなキャラクターにしたかったんです。人間は出会った人とかその人との関係性とか、会った時間によっても印象が変わっていくものだと思います。彩声は男性と会った時、女性と会った時、出会ったばかりの時、しばらく経った時でコロコロと表情の変わる子なんですよ。そうした部分を見せたいんです。

最初にお見せしたビジュアルはおしとやかそうな女の子なんですけど、声とか話し方を聞いて「あれっ?」と思われたんじゃないでしょうか。人間のそういうところを見せたいと思っています。あとは色々と意図はあるんですけど清楚感というか、制服はミッション系っぽくしようかというイメージで進めました。聖なる壁がある感じで。

――琵琶坂は大人っぽいですよね。髪型一つとっても、アクセサリーとっても。

琵琶坂は琵琶坂ですよねー。もうイラっとくるくらいカッコイイ(笑)。

――一言で表すと本当にそんな感じですよね、ちょっと頭にくるタイプのイケメンというか(笑)。

琵琶坂は非常に現代的なビジュアルをしていて、関係者は彼を好きだったり嫌いだったり、どっちかに分かれますね。周りが憧れるビジュアルをさせたいなと思っていて…ちょっとどこまで話せるか難しいですね(苦笑)

まあ、カッコイイじゃないですか。表現できる“格好良さ”には色々あると思うんですけど「こいつモテそうだな」とか「こいつデキるんだろうな」とか「金持ちそうだな」みたいな部分を、誇張したアイテムを持たせずに表現したかったんです。キャラクターごとに挑戦したのは、彩声は見る角度によって変わって、最終的にその視点を集めて彩声という人間が完成するという部分、琵琶坂は見る度に何が本当で何が嘘なのか分からないキャラクターを目指したという部分です。

――もう発売直前ですが、琵琶坂は出ている情報がとくに抑えられている印象ですね。

琵琶坂に関しては隠していることが多いので、その感じで進んでいってほしいです。カリギュラは作品を通して発売前にユーザーさんへ与える情報と、考察とコミュニケーションのゲームだと思っていて、琵琶坂に関しては大きなものを隠しているので、皆さんの予想を覆したり、予想を確信に変えたりと、色んな効果があるんじゃないでしょうか。

――では、ユーザーの間に衝撃が走ったStorkについてもお願いします。

Storkは…もういいでしょ。見たまんまです。

――(一同笑)。

「鳥のコスプレをしている奴」でラフをもらったんですけど、おぐちさんに対して「これでいい!天才!」って。コウノトリのコスチュームを着ているイロモノ楽士であることは決まっていたんですけど、下をタイツにしろと言った覚えはないし、おぐちさんをはじめ現代のイラストレーターさんは普段カッコイイものを描かれてますから、恐らくこういう依頼が来た時に“オーバードーズ”するんだと思います(笑)。

事前にサンプルをプレイされた方からは、男女問わずStorkがめちゃくちゃ評判良いんですよね。味方として一緒に行動するときに彼の良さが出てくると思うんですけど、憎めない子ですよ。とはいえ、皆さん口を開けばStorkの話ばかりなので僕は若干Storkに冷めかけているフシがありますね(笑)。Twitterでもユーザーの皆さんからのStorkへの反応がすごく良くて、本作を象徴するキャラクターになりつつあり少し複雑な気持ちです。

――では続いて梔子ですが、とてもスポーティなビジュアルですね。

おぐちさんがもともと趣味で描かれてきた絵のテイストに近いねとお互いに言っていて、得意分野のイラストだと思います。謎の多い女の子とか、できるだけ情報を与えないという形をとっています。ビジュアルに関してもマスクをしているという外せないポイントはありつつ、自由度は高めにデザインをしてもらいました。おぐちさんのビジュアル的な“好き”が詰まっていると思いますよ。

――発売間近となって発表された一人、田所興起はかなりインパクトの強い見た目ですね。

実際プレイする前にこれ以上の情報を掘り下げることはないでしょうが、とにかく嫌な奴です。キャラクターの紹介文のとおり関わった人間を皆不幸にするような。知り合ってもとくに「こいつ、意外とこういう奴だったのか」みたいなギャップもなく、ただただ嫌な奴で、道で見かけたら距離をとるような人間です。

杉田智和さんに演じていただいてますが、サンプルを聞いてもらえれば分かるとおり非常に楽しそうに演じられていて、皆イケメンに疲れているのかなって思いました。「Caligula -カリギュラ-」という作品は全体的に演者さんというか、クリエイターの遊び場になっているような部分もあるので、たまにはカッコイイを休みたいというのに丁度いいのかもしれません(笑)

――南出日向は故人として発表されていますが、これはどのような意図なのでしょうか?

ゲームに出ないキャラクターの絵を描きたかったんです。絵を擦り込ませておくことで、シナリオで出た時に少し変わった感覚を味わってもらえればなと。これは本当にトラップでも何でもなく、キャラクターのビジュアルがゲームに出ることはありません。すでに出ているとおり、ある事件の鍵を握っているのは事実なんですが、彼女はもう亡くなっています。言うなればビジュアルは「遺影」ですね。

声も隠しているのではなく、ないんです。ゲーム内に存在しませんから。ちょっとトリッキーな発表だったので皆さん疑心暗鬼になっているかもしれませんが、そこは信じてください(笑)

この2人を出したタイミングによって、ユーザーさんには良い意味で混乱を引き起こせたのかなと思います。カリギュラという作品は発売前の考察もゲームのひとつだと思っているんです。その上で前作よりはキャラクターの考察を分かりやすくしているつもりではあったんですよ。前作は少し届きにくかったというか、正答率が低かったので高まるように情報出しを調整しつつ、皆さんの考察が固まったタイミングでもう一回ぐちゃぐちゃにかき乱せたらいいなと。

――ひどい開発陣ですね…(苦笑)。

もう皆さん「Caligula -カリギュラ-」との付き合い方が分かって、キャラクターが出揃った瞬間に「こういう関係性では?」というピースをはめていく作業をされたと思います。その中には確信に近いところへたどり着いた方もいると思いますが、この2つの新たなピースが投入されることで思い描いた設計図を作り直さないといけないはめになったかなと。証明完了だと思いましたか、まだですよ、という感じ。

――本当にひどい開発陣ですね!(苦笑)

帰宅部を裏切り、楽士とコミュニケーションを図れる「楽士ルート」

――楽士ルートの見どころをお聞かせください。意外にもスイートPとStorkは絡みが多いという話もありましたが。

楽士ルートで初めて向かうダンジョンのメンバーがStorkとスイートPなんです。なので行動を共にする機会も多くて、スイートPが意外と常識人なのが良い方向に働いてなかなか良いコンビになっています。

楽士はある意味、公人というか、芸能人なんですよ。帰宅部として、言うならオーディエンスとして会う時の顔と、芸能人仲間として一緒にいる時とは顔が違います。ここが楽士ルートの見どころというか、お茶目な部分とか、彼らについて「意外とこういうところあるんだ」と感じてもらえると思います。楽士版のWIREもありますし、帰宅部との差はないと思ってください。

それと、キャラクターシナリオの発生場所が変わっていて、帰宅部は部室になります。部室はワールドマップから出入りできるようになりました。それと同じように楽士の部屋みたいなものも存在します。各々の好きなものを1つの部屋に集めたという雑多な部屋なんですけど、そこでコミュニケーションが図れるようになっています。

――楽士の個別エピソードだけでなく、楽士同士でのコミュニケーションからも人間性が掘り下げられていくようなイメージなんですね。

例えば、梔子は帰宅部として出会うと冷たい感じになります。でも楽士ルートでは相応の態度をしていて、仲間内には優しい言葉もかけているんです。普段キャラクターというのは平面でしか見ることができませんが、本作では主人公、プレイヤーが立場を変えて色んな角度からキャラクターを立体的に見れると思います。

――帰宅部ルートも同様に、Lucidや新キャラクターの加入で以前とは違った人間関係が見えてきそうですね。

琵琶坂も彩声も素直に良い子ではなく、どちらかというと和を乱す方なんですよね。2人は今までの帰宅部にない部分を担っているキャラクターなので、そういう所が気に入っています。「なんでコイツこんなこと言うんだ?まとまりかけてたじゃん!」とか、そういう。

前作で雰囲気の良かった帰宅部がこんな空気になっちゃうんだとか、逆にこの2人がいることで手詰まりだった場所でこういう解決を図るんだとか。前作をやった方は、新しい人間が混ざることでの変化みたいなものは感じられるのではないでしょうか。

――なかなかリアルですよね。人間関係が変われば表に出てくる性格も変わるでしょうし、新しい一面が見えてきそうですね。

琵琶坂はとにかく頭が良いので、ここまで合理的な判断をするタイプは帰宅部にいませんでした。彩声は逆に自分の欲求というか、自分の感覚にすごく正直なので、言い難いこともはっきりと言います。女性陣の中では表立って怒りを表すので、味も変わってくると思います。

前作を好きだった方が「この新規のキャラクターが出てきて空気が悪くなった!」と思うとか、どうしてもそうした反応もあると思うんですよ。でもそういうのも含めて人間関係で、嫌なこともあるよねと思っています。リアリティという部分で「Caligula -カリギュラ-」ならやってもいいかなと

独自のバトルシステム「イマジナリィチェイン」もより楽しく遊びやすい方法へ

――バトルやシステム面についてもお伺いしたいのですが、開発のヒストリアさんは遊びやすさをとくに重視されたそうですね。とくにこだわられた部分はどこになるのでしょうか?

僕がヒストリアさんと初めてお会いして企画を説明した際、ヒストリアさんに求めたのは「遊びやすさ」です。前作の一番の弱点は「イマジナリィチェイン」という面白さにたどり着くまで時間がかかることだと認識しています。自分でも革新的なシステムだと思っているんですけど、そこの面白さを説明するのが、静止画で伝えるのが非常に難しい。アニメなどで色々な方の目に触れるのが分かっていたので、そこはとくにお願いしました。

バトルでの情報量も、すべてきっちり対応していると数値の多いゲームになってしまうので、まずゲームとして扱う数値を少なくしました。前作で言うと威力とダメージ値が別々だったのをすべて攻撃という値にするとか、どこを伸ばせばどう強くなるのかとか、何をすればどう有利になるのか、選択に対する結果をきちんと分かりやすくしましょうと。

かつ、成功のパターンを辿っていたとしても成否が分かれる要素も多くて。正解の行動をしているのに攻撃が当たらない、ダメージ値が思ったよりも伸びないというような部分がより複雑なものにしていたと思います。なので、そこはシンプルに“こうすれば有利”というようにしています。

例えば主人公の射撃スキルに「クアッドトリガー」というものがあったんですけど、一撃ずつ命中率がありました。そのため、一発目が当たっても二発目が外れてイマジナリーチェインで思ったよりも浮かないなんてことがありました。今回はスキルごとに命中率の判定になって、一発目が当たれば全部当たる、外れれば全部外れるようになっています。そうした細かな調整でイマジナリィチェインどおりにいきやすくなりました。偶然の要素が減って、戦略を組んだとおりに行動が反映されるようになったため、戦略を高めていく価値が高まったというか、色々と考える余地は生まれたのではないかなと思います。

そうした方向に舵を切った理由は、嬉しい悲鳴なんですが、前作は想定していた購入層よりもライトな、普段それほどゲームを遊ばないような方も興味を持っていただけて。今度はそうした方にもストレスを与えないように提供できる形を意識しています。

――バトルでの敵の乱入数に上限がかかるとか、高レベルの敵との意図しない遭遇がなくなるとか、配置が見直されるとか、かなりユーザーフレンドリーな方向に改善された印象ですね。前作のユーザーの意見も反映されているのでしょうか?

前作を遊んだ方の印象として、発売後に鬼のようなアップデートを行ったというのがあるかと思います。ユーザーさんからの意見というのは真摯に捉えていまして、ヒストリアさんとも開発期間の中でユーザーさんから意見を反映させるようにはしています。とはいえ、ゲームとしての歯ごたえをなくしていくような方向の調整についてはかなり慎重にやっています。

――レベルアップもスムーズになったそうですね。前作は30くらいでクリアできましたが、その後トロフィーを取得するためにレベルを上げるのがかなり苦労しました。

レベルも上がりやすくなっていますね。楽士ルートをクリアしたら50~60くらいになるかと思います。鳴子や琵琶坂が加入するあたりでレベル30くらいにはなっているんじゃないですかね。

前作はゲームのクリアとやり込み要素の距離が遠いという弱点があったので、レベルは上がりやすいです。トロフィー取得も今回は簡単ですよ。苦労させようとは思っていないので…前作は本当に反省しています。

――メビウス内にいる500人以上の生徒と関わる「因果系譜」のトロフィーもなかなか苦労しましたので…少しほっとしました(笑)。

因果系譜については大きな変更はありませんが、好感度が上がりやすくなったり、解決が複雑なトラウマクエストはオミットしたり、こちらは遊びやすくする方向の調整しかしていません。因果系譜で手に入るスキルも変わらずありますが、今回はスキルが貰えるパターンと、主人公の素質が上がるパターンと2つあります。そうした部分を目当てに遊ぶのもいいんですが、前作同様、一切触らなくてもクリアができます。なかなかニュアンスとして伝わりづらいのですが……スタンスとしては「やらなくていいこと」として設定しています。500人以上と仲良くなりたいという少し常軌を逸した方は挑戦していただけると良いかと思いますが。

――でも、やるなとか言われるとむしろやりたくなるじゃないですか。

そうかもしれませんね。何がきっかけでもいいんですが、生徒に興味を持ったときに話しかければそれに返ってるという形を提供したかったので、500人以上をすべて埋めるのがゲームとしての正解ではありません。興味のない人には触れなくていい、はこのゲームの大事なところだと思います。「この生徒に興味があるけど、仲良くするためにはどうしよう?」という部分に楽しさを見出していただけるのであれば、手を伸ばしてもらえると楽しいのかなと思います。

――前作で、背景にうっすらと見える物語に興味をもった方も多かったようですね。

「何か変なことが起きているんだな」という空気づくりには役立っていると思うので、肌に合うなら遊んでください。

――初心者向けのアドバイスやおすすめパーティ構成を伺いたいのですが、そもそも楽士ルートは固定パーティなのでしょうか?

帰宅部ルートとは違い、シナリオ上で連れていく設定のキャラクターはいます。しかし、実際にプレイする時は自由にパーティを変更できるようにしています。アドベンチャーシーンで連れてきたキャラクターがいないみたいなことは発生してしまうんですが、攻略上は変えられます。

楽士ルートでは、主人公がとても便利です。帰宅部の主人公と性能は同じなんですが、楽士は「強いけど使いにくい」みたいな感じを意識してデザインしているので、主人公が面倒を見てあげている感覚は帰宅部より強いかもしれません。

おすすめは…イケPは命中率を上げれば強いと思います。技も多いですし。ただ命中率は最低なので、どちらかといえばロマンのあるタイプですね。この能力設定はイケPをよく表していて、「顔は格好いいんだけど、いまいちターゲットに刺さってない」感じが彼らしくて素敵だと思います。

――システムとしての性能からも、キャラクター性が見える部分がありそうですね。イケPの設定はすごく納得できます。

とくに何も得することはありませんけど、「なんでこのキャラクターはこれが低いんだろう?」というような所から制作側の意図を感じてもらえたら、ニヤっとできると思います。

――楽士側に回復役とかはいるのでしょうか?

スイートPとか、梔子はサポートタイプですね。あと、帰宅部の皆で集まっている時とは色合いというか、彩度が違います。ミレイとかも連れて歩くと派手でいいですよ。

――StorkとスイートPとか、普通は隣に並ばないような配色ですよね。帰宅部側も新キャラクターが加わりましたが、こちらのオススメは?

初心者にオススメで言えば、琵琶坂ですかね。とにかく強いです。前作から1人3回行動まで設定できますが、前作で言えば打ち上げた後は主人公に任せようとかではなく、琵琶坂だけでコンボが組めてしまうので「他のキャラはどこに入れればいいんだ?」って変な感じになると思いますよ。維弦みたいな条件付きでもないですし、強いんですけど「琵琶坂に頼っていて楽しいのか?」というキャラクターになるかと思います。

彩声の行動キャンセルも強いですね。テクニカルなキャラクターなんですが、頭を捻って動かすと完封できる可能性も高いので楽しいと思います。耐性は多少ありますけど、ボスにもちゃんと効きます。

序盤で組むことになる主人公・笙悟・琴乃・鼓太郎というパーティも役割が完成しているので、それでもいいですね。維弦は今回追加されたバックアタックを駆使してRisk4からスタートすれば維弦の派生がほぼ入るので、より強く感じると思います。

鳴子も操作がシンプルになっていて強いです。オプションの操作をスキルに依存させたので、前作でいうビャッコとハクタクを動かして…というのが完全になくなりました。ゲーム誌さんのプレイでも、最強候補じゃないかと評判はいいですね。

――本作にはRPGが苦手な人の向けたイージーモードが搭載されているそうですが、どのような感じになるのでしょうか?

イージーモードはエンカウントはするもののほぼ○ボタンの連打で勝ててしまうので、バトルはないに等しいのではと思うくらいです。バトル部分の楽しさを見出すのは難しいかもしれませんが、ストーリーだけを楽しみたい方はストレスなく遊べると思います。

難易度はゲーム中にいつでも変更できるので、とりあえず触ってみてください。イージーを遊んでいて何となくバトルが分かる気がしてきたらノーマルに上げてもらうこともできますから。「イージーを選んだら負け」みたいな要素もないので、自分に合ったものを選んでください。

発売直前の実況プレイに「ベイビーレイズJAPAN」の渡邊璃生さんが出演!より遊びやすくなるアップデートも実施

――アイドルユニット「ベイビーレイズJAPAN」の渡邊璃生さんによる実況プレイ動画の配信も発表されましたね。前作の頃からラジオなどでもファンだと公言されていた渡邊さんですが、見どころについてお伺いできればと思います。

唐突だなと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、前作からプレイしていただいて、僕の知る限り芸能界で一番「Caligula -カリギュラ-」を知っている方だと思います。実況プレイは前作からの変化に気付いていただける方にお願いしたくて、お声がけしました。ご本人はとても緊張されていたんですけど(笑)。

もう発売直前ですから、新規の情報を出すような場ではありません。自分の初プレイを大事にする方は気にせずゲームを待っていただければと思います。いまいちゲームの全貌が分からないという方へ向けた特番というイメージです。すでに情報を追っていただいている方に向けたものではなく、それこそ渡邊さんの存在で「Caligula -カリギュラ-」を知ったような方向けの番組と思ってください。

序盤からプレイしていくので、彼女の好きなキャラクターを組んでのバトルとか、そういうことをやっていきます。キャラクターシナリオについても触れていきますので、ネタバレが嫌というかたは避けてください。

それと、発表のタイミング的に誤解を生んでしまったかもしれないんですが、日向と渡邊さんはまったく関係ありません。声優としてのご出演についても、あくまでもさりげない形で本作に華を添えていただいてます。

――発売日当日のアップデートについても発表となりましたが、こちらはどのような内容なのでしょうか?

発売日当日にアップデートver1.01を行います。バトルにオートモードが加わり、主人公以外の行動が自動設定されます。とはいえ厳密なAIではなく、キャラクターの好みで好きなように行動していくので、その面倒を見るようなプレイになると思います。バトル中にオプションボタンを押すだけでオートモードに切り替わり、他のキャラクターが自動入力になるので非常にテンポが良くなりますよ。

また、帰宅部と楽士の混合編成が可能となる「歌姫の見る夢」というシステムも解放されます。専用の掛け合いもあるので、維弦とイケPとか、シャドウナイフと鼓太郎とかで組み合わせるとどんな会話をするのか…ある種お遊び的というか、本編では言わないようなことも言っているので、単純に楽しいと思います。

ワールドリワードも追加されます。前作とは遊び方の違うワールドリワードになっているので、そこも楽しんでいただければ。クリア後のやり込みとしてワールドリワードという高レベル帯でのバトルを遊ぶ際、帰宅部と楽士という縛りなく編成していただければと思います。やり込みのモチベーションの1つとしてお楽しみください。

――最後に、発売を楽しみに待つファンの方へメッセージをお願いします。

ありがたいことに皆さんの応援のおかげでアニメ化や雑誌の展開とかを非常に大きくやらせていただいて、初めて「Caligula -カリギュラ-」に触れたり、気になったりする方も増えてくださっています。「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」では前作のファンの皆さまのおかげで足りない部分を埋めることができたと思うので、安心して入っていただければと思います。

前作からのファンの方に向けては、今作のシナリオは前作を乗り越えた方に向けてという部分が強いので、新たな問いというか、問題提起だと思ってチャレンジしていただけるとありがたいですね。でも帰宅部を裏切る楽士ルートは、絶対に選ばないでくださいね!!(笑)

――今ここでそれを言いますか?!(笑)

前作からバトルやシステムはもちろん、キャラクター性やストーリーまでより深く、過剰なほど強化された「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」。PS Vitaソフト「Caligula -カリギュラ-」を遊んだプレイヤーはもちろん、これまで触れていないプレイヤーも十分に楽しめるということが伺えた。

Gamerでは発売後も引き続き本作の魅力へ切り込んでいくので、今後の展開にも注目してほしい。

Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ

フリュー

PS4ダウンロード

  • 発売日:2018年5月17日
  • 15歳以上対象

Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ デジタルデラックス

フリュー

PS4ダウンロード

  • 発売日:2018年5月17日
  • 15歳以上対象

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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