アニメ評論家・藤津亮太氏が話題のアニメを紹介する「ゲームとアニメの≒(ニアリーイコール)」。第9回はポリゴン・ピクチュアズ制作のTVアニメ「空挺ドラゴンズ」を取り上げます。

ゲームとアニメは本来異なる媒体ですが(≠)、その中での共通項(≒)となる部分にフォーカスしたいという思いから立ち上げた本連載。毎回話題のアニメをアニメ評論家の藤津亮太氏の切り口で紹介しつつ、Gamer編集部からはそのアニメがどういったゲームファンにオススメできるかをピックアップしていきます。
第9回はポリゴン・ピクチュアズ制作のアニメ「空挺ドラゴンズ」を取り上げます。フジテレビ「+Ultra」での放送は最終回を迎えましたが、Netflixにて全話一挙配信中です。まだ見ていないという人もここから追いつけますのでよろしければぜひ。
こんなゲームファンにオススメ!
- 「The Elder Scrolls V: Skyrim」などのハイファンタジー作品好き
- 「モンスターハンター:ワールド」「ドラゴンズクラウン・プロ」など食べ物の表現にこだわりのあるゲーム好き
第9回「空挺ドラゴンズ」
衣・食・住。人が生活するために必要なもの。「空挺ドラゴンズ」のそこに注目してみると面白い。それが3DCGで表現されているところにいっそうのおもしろさがある。
まず本作を見て、ちょっとアニメを見慣れた人なら「おや?」と思うであろうポイントが、主人公たちの服が風に揺れる様子。本作は、空を行く捕龍船クィン・ザザ号の乗組員であるミカ、タキタ、ジローといったメンバーを描く内容。当然、物語の多くは空の上が舞台で、登場人物たちの制服は風にゆらめくことになる。「空挺ドラゴンズ」では、そのゆらめきが“いい感じ”なのだ。柔らかいキャラクターデザインに合うよういに、手描き風の影つけで、ゆらめきもほどよい枚数で自然に動いている。このゆらめきから「この作品はこれまでのポリゴン・ピクチュアズ作品と比べて、相当に手描き風を念頭においているな」ということが感じ取れる。それがこの作品のキャラクターの生っぽい感触につながっている。
「衣」の話題の次は「食」。本作の一番の特徴は、捕まえた龍を食べるシーンが多々登場すること。料理のシーンや食べるシーンは手描きアニメでも丁寧に見せようとすると難しい要素が多いが、3DCGで描くにも難しい。特に3DCGは、「一口ごとにお肉が減る」といった描写が苦手(減るたびごとに新たな3DCGモデルが必要となり、コストがかかってしまうのだ)という部分もある。
またさらに、料理は写実的に描けばおいしそうに見えるわけではない。いろんな要素を駆使して、観客の頭の中にある「おいしそうという記憶」を呼び起こす必要があるのだ。そういう意味では、要素が絞り込まれているシンプルな料理のほうがおいしそうに見えやすい(よく参照される「アルプスの少女ハイジ」の溶けかけたチーズを思い出してほしい)。
本作はそんな料理のシーンに真正面から挑んで、食べてみたくなるような料理がいろいろ登場した。どうして本作でおいしそうな料理が実現できたかといえば、料理そのものをおいしそうに見せる(例えば龍の肉の脂の入り具合だけでとてもおいしそうだ)だけでなく、「焼く」料理が多くて、脂のはねる音やビジュアルによるシズル感(もともとこの言葉は「ジュージューと焼ける音」が語源)の効果も無視できない。とかく“硬い”と思われがちな3DCGで、料理がこれぐらい美味しそうに表現できたのは、さまざまな企画の幅を広げることにも繋がりそうだ。
そして「住」。登場人物たちの生活の場は、飛行船のクィン・ザザ号。全部3DCGでつくられたというこの生活の場は、大地と空の龍の間で生きることを選んだ(選ばざるを得なかった)彼らにとっての“聖域”だ。TVシリーズのクライマックスが、タキタがクィン・ザザ号へ戻ろうとする物語でもあるのは、ここが乗組員皆にとって“帰ってくる場所”だからでもある。
本作はこのような衣食住を通じて、原作の中に宿る「生きることをめぐる物語」を、柔らかく暖かく描き出したのだ。
「空挺ドラゴンズ」公式サイト
https://drifting-dragons.jp/
藤津亮太(ふじつ・りょうた)
アニメ評論家。1968年、静岡県生まれ。雑誌・WEB・BDブックレットなど各種媒体で執筆するほか、朝日カルチャーセンター、SBS学苑で講座を担当する。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ―セロ年代アニメ時評―』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~』(一迅社)、『プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道』(河出書房新社)などがある。毎月第一金曜日には「アニメの門チャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/animenomon)でアニメの話題を配信中。
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(C)桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会
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