アニメ評論家・藤津亮太氏が話題のアニメを紹介する「ゲームとアニメの≒(ニアリーイコール)」。第22回はNetflixオリジナルアニメシリーズとして、4月8日から全世界独占配信されている「極主夫道」を取り上げます。

ゲームとアニメは本来異なる媒体ですが(≠)、その中での共通項(≒)となる部分にフォーカスしたいという思いから立ち上げた本連載。毎回話題のアニメをアニメ評論家の藤津亮太氏の切り口で紹介しつつ、Gamer編集部からはそのアニメがどういったゲームファンにオススメできるかをピックアップしていきます。
今回は、津田健次郎さんが主役を務め、監督:今千秋氏×原作:おおのこうすけ氏によって手がけられている、元極道の龍が専業主夫として過ごす日常を描くアットホームなギャグコメディ「極主夫道」を取り上げます。
こんなゲームファンにオススメ!
- 「龍が如く」シリーズに代表される、極道を題材としたゲーム
第22回「極主夫道」
「アニメーション」の定義は難しい問題だ。中でも「コマ撮りによる動きの創出」というのは、アニメーションという概念をを考える時に、とても重要な要素のひとつといえる。
そこで「極主夫道」である。
本作は、不死身の龍と呼ばれたヤクザが、結婚後に専業主夫になった、という設定のギャグ漫画が原作。この作品の特徴は、キャラクターがほとんど動かないところにある。口パク、目パチ(瞬き)はあるものの、演技に関してはほとんど止め絵。見ているうちに「これは“アニメ”と呼びうるのか?」という疑問も浮かぶ人もいるかもしれない。
しかし、では、本作で多用されている「止め絵をカメラワークで見せる」という手法は「アニメーション」ではないのか。「コマ撮りによる動きの創出」はないけれど、カメラワークもまた広い意味で“動き”である。
振り返ってみれば、過去には漫画原稿をカメラワークをつけて撮影した映画「忍者武芸帳」(1967年、大島渚監督)という作品も存在する(この作品もアニメーションかどうかは、その人の定義によって変わってくる)。また、出崎統監督の作品が「止め絵+カメラワーク」を非常に効果的に使っていたこともいうまでもない。「極主夫道」を見ていると、そういう過去のさまざまな事例が思い出されて、改めて「アニメーションとはなんだろう」と考えてしまうことになる。もちろんそこには「コレ!」といった正解はないのだけれど、こういう境界線上の作品と出会うと、視聴者が感じる「おもしろさ」とはなんだろう、ということを考えさせられることになる。
確かに「極主夫道」はおもしろい。それは、カメラワークを駆使した映像と、キャスト陣のノリノリの演技が、“よい間”で繋がれている部分は大きい。編集で生み出される緩急が視聴者の感情を巧みに誘導しているのである。
本作の今千秋監督は2018年に「Back Street Girls -ゴクドルズ-」をアニメ化している。奇しくもこちらも、ヤクザネタのギャグ漫画。こちらはヤクザが全身整形してアイドルになる、というもので、ヤクザとギャップのある存在の対比で笑わせるという点では、「極主夫道」と同じ構造だ。今監督は、こちらも「止め絵で見せるスタイル」でアニメ化している。「Back Street Girls -ゴクドルズ-」の経験が「極主夫道」に生きている部分もあるのではないだろうか。
なお「Back Street Girls -ゴクドルズ-」のほうが、キャラクターにはっきり影がついており、撮影効果も様々に加えられていて、普通のテレビアニメのルックに近い。一方「極主夫道」は影も撮影効果も抑えめのフラットな画作り。その分だけ「動く漫画」といった印象のほうが強くて、その分、親しみやすさは増している。こうして比較してみると「止めで見せるスタイル」に徹するという点では、「極主夫道」のほうがより洗練されているともいえる。
「Back Street Girls -ゴクドルズ-」から「極主夫道」に繋がる「止め絵で見せるスタイル」路線には、コストパフォーマンスのよさだけではなく様々なプラットフォームでの展開など、まだ様々な可能性があるのではないだろうか。
藤津亮太(ふじつ・りょうた)
アニメ評論家。1968年、静岡県生まれ。雑誌・WEB・BDブックレットなど各種媒体で執筆するほか、朝日カルチャーセンター、SBS学苑で講座を担当する。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ―セロ年代アニメ時評―』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~』(一迅社)、『プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道』(河出書房新社)などがある。毎月第一金曜日には「アニメの門チャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/animenomon)でアニメの話題を配信中。
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(C)おおのこうすけ/新潮社
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