2023年4月8日、コーエーテクモゲームスは「シブサワ・コウ40周年記念コンサート」を神奈川県横浜市のKT Zepp Yokohamaにて開催した。
この公演は「シブサワ・コウ」の活動40周年を記念し、「信長の野望」や「三國志」シリーズをはじめとする歴代のシブサワ・コウ作品の楽曲をオーケストラで演奏するというものだ。
演奏は「シブサワ・コウ40周年記念管弦楽団」が担当。ゲーム音楽に特化したコンサートシリーズとして知られる「GAME SYMPHONY JAPAN」を核とした管弦楽団で、邦楽楽器、民族楽器、二胡、バンドセクションなどの最大編成でシブサワ・コウ氏の作品世界を再現。指揮はゲーム音楽のオーケストラ演奏の第一人者である志村健一氏が務めた。
会場ロビーには織田信長の鎧をイメージしてデザインされた西洋風の甲冑、シブサワ・コウ氏がゲームを制作するきっかけになったことで知られるシャープのパソコン「MZ-80C」、シブサワ・コウ氏のデビュー作である「川中島の合戦」と初代「信長の野望」のソフトなどが展示。さらに、本公演で楽曲が演奏された歴代のシブサワ・コウ作品のポスターがズラリと並び、来場者の注目を集めていた。
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| 信長の西洋風鎧をイメージした甲冑。 デザインを手掛けたのはコーエーテクモホールディングス代表取締役会長の襟川恵子氏。 |
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| 誕生日に襟川恵子会長から贈られたという逸話で知られる「MZ-80C」(画像左)、 「川中島の合戦」と初代「信長の野望」のパッケージ(画像右)。 |
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| ずらりと並んだ懐かしのポスターは壮観(画像左)、豪華なグッズの数々も展示されていた(画像右)。 | |
オープニングを飾ったのは初代「三國志」の楽曲である「桃園の誓い」と「黄河~揚子江」。「カウボーイビバップ」、「マクロスF」、「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」などで知られる名作曲家・菅野よう子さんが手掛けた曲で、「三國志」シリーズといえばこの2曲をイメージする人も多いことだろう。
さらに演奏時には、当時のゲーム映像やムービーなどをステージのスクリーンに投影。ドット絵で描かれた武将たちから最新ゲーム機での映像まで。ときに懐かしく、ときに豪華な映像の数々で、シブサワ・コウ氏のゲームクリエイターとしての40年の歩みをドラマチックに演出していた。
オープニングのあと、シブサワ・コウ氏の妻でコーエーテクモホールディングス代表取締役会長である襟川恵子氏が挨拶。新型コロナウイルスの影響で一度は延期を余儀なくされただけに、ようやく開催にこぎつけられたことを「夢のよう」と喜んだ。さらに、菅野よう子さんとの出会いについて語り、当時からゲームには音楽が必要で、しかも新しい音楽を求めていたと述懐。そんな恵子氏の理想を体現してくれたのが、知人から紹介された当時まだ早稲田の学生だった菅野さんであったと振り返った。
続いて登壇したシブサワ・コウ氏も「菅野よう子さんは天才です」と称賛。今日は配信で視聴しているという菅野さんに「愛しています!」と熱いメッセージを送った。また、司会者から本公演での選曲のポイントを聞かれ、「自分が好きな曲」と即答。「今日のコンサートは私が主役だから」と言って会場の笑いを誘った。
コンサートは二部構成になっていて一部の前半は「三國志X」の「三國志 続貂」やシリーズ最新作となる「三國志 覇道」の「覇道、その黎明」といった「三國志」シリーズの楽曲が演奏された。圧巻だったのが「三國志V」の「華龍進軍」で、オーケストラでの生演奏が英雄豪傑たちの勇壮な合戦をイメージさせ、この曲が名曲であることを改めて実感させてくれた。
一部後半は「Winning Post9」、「維新の嵐」、「大航海時代IV」といった、さまざまなシブサワ・コウ作品の楽曲で構成。「蒼き狼と白き牝鹿」、「水滸伝・天命の誓い」といった光栄時代の人気シミュレーションの曲も演奏された。どちらも懐かしの名作だけにオールドファンにはたまらなかったことだろう。また、最新シリーズとなる「仁王」の楽曲も演奏されるなど若いファンも楽しめるようになっていた。
シブサワ氏と元ファミ通編集長である浜村弘一氏のトークも行われた。シブサワ氏は改めて40年前を振り返り、パソコン雑誌に掲載されていたゲームのプログラムを直接入力して遊んでいたが、自分の好きな歴史のゲームがなかったため自分で作ることにしたと説明。そして生まれたのがデビュー作である「川中島の合戦」で、以来「楽しい、面白いゲームを作ろう」という思いで、ずっとやってきたと感慨深げに語った。もちろん、ゲームファンの声もモチベーションになっているとのことで、改めてファンへの感謝を述べた。
スマートフォン向けの位置情報ゲーム「信長の野望 出陣」についてもコメント。自分も京都などの町で遊んでみたいと語るなど、本作への自信をうかがわせた。また、近年話題のAIの研究や開発にも力を入れているとのこと。近年の作品では敵武将だけでなく配下の武将もAIで自律的に行動するようになっていて、こうした最新研究でゲームをさらに進化させたいと抱負を述べた。
休憩を挟んでの二部のステージでは「信長の野望」シリーズの名曲の数々が演奏。まずは、新居昭乃さんが「信長の野望 戦国群雄伝」の「時の調べ」、「傍にいるから」を歌い上げた。「時の調べ」は内政時にかかる曲だけに、耳に残っているという人も多いのだろう。戦国乱世のはかなさを思わせる新居さんの透明感のある歌声に来場者たちは万雷の拍手を送った。
そのあと行われたトークコーナーで新居さんはオファーの経緯について回想。当時は菅野よう子さんの曲をいつも歌っていた時期で、そんなときに出会ったのが「時の調べ」だったという。ロマンチックで少し弱々しい感じもある曲だったが、楽譜に「信長の野望」と書いてあり、曲とのギャップに驚いたようだ。当時はゲームのこともほとんど知らず、「よくわからないまま歌っていました」とバツが悪そうに明かした。ちなみに、シブサワ・コウ氏が新居さんの「時の調べ」、「傍にいるから」を生で聞いたのは今回が初めてだったとのことで、「感無量です」と語るなど非常に感慨深げだった。
指揮の志村健一氏とのトークも行われた。志村氏は小学生のときに「信長の野望・全国版」をプレイしたと明かし、「すべての曲に思い入れがあって演奏しながら感極まっています」と、うれしそうに語った。シブサワ氏も、編曲を担当した穴沢弘慶氏のアレンジやコーエーテクモゲームスのサウンドチームの協力により素晴らしいクラシック曲に仕上がったと、改めて感謝を述べた。
本公演のトリを務めたのが平原綾香さんだ。平原さんは「信長の野望・創造」のテーマ曲である「Shine -未来へかざす火のように-」を熱唱。フルオーケストラをバックに圧倒的な歌唱力で歌い上げた。
この曲は菅野よう子さんが作曲した、「信長の野望」シリーズを象徴する曲のひとつである「OVERTURE」をアレンジしたもので、平原さんが自ら曲を加筆。さらに松井五郎氏が詞を手掛けるなど、「みんなが愛を込めて作ることができた作品」と平原さんは振り返った。また、「信長の野望・創造」に自身をモデルにした武将が登場したことから、「平原武将を作ってくださってありがとうございました」とシブサワ氏にお礼を述べ、来場者を笑わせた。
さらに平原さんは自身の代表曲である「JUPITER」を披露。シブサワ・コウ氏の40周年に華を添えた。シブサワ氏はこの歌に感銘を受け、平原さんにお願いしたいと思ったと語っており、眼前で聞くことができて感動もひとしおだったに違いない。
最後を飾ったのはシリーズの最新作である「信長の野望・新生」の「決起、戦に臨まん」と、シリーズの人気を確立した「信長の野望・全国版」のテーマ曲「OVERTURE」。そして、すべてのプログラムが終了したあと、シブサワ・コウ氏とゲスト陣がステージに勢揃いし、鳴りやまない拍手の中、本公演は幕を下ろした。
「三國志」、「信長の野望」シリーズのファンにはおなじみの定番以外の曲も数多く盛り込まれるなど、非常に充実した内容になっており、2時間を超えるステージだったにも関わらず、まったく長さを感じなかった。シブサワ・コウ氏のクリエイター人生が凝縮された、40周年にふさわしいコンサートで来場者も満足だったことだろう。
「シブサワ・コウ40th記念コンサート」楽曲一覧
1.桃園の誓い「三國志」 1985年 作曲:菅野よう子
2.黄河~揚子江「三國志」 1985年 作曲:菅野よう子
3.魏のテーマ、呉のテーマ、蜀のテーマ「三國志Ⅱ 1989年 作曲:向谷実
4.華龍進軍「三國志V」 1995年 作曲:服部隆之
5.三國志 続貂「三國志X」 2004年 作曲:池瀬広
6.飛龍乗雲「三國志14」 2020年 作曲:大塚正子
7.覇道、その黎明「三國志 覇道」 2020年 作曲:坂部剛
8.悠然と進むもの「Wining Post 9」 2019年 作曲:五十嵐一歩
9.夢の旅人「蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン」 1987年 作曲:川上進一郎
10.合戦 -武田軍-「決戦III」 2004年 作曲:小六禮次郎
11.オープニング ~無頼の宴~「水滸伝・天命の誓い」 1989年 作曲:木下伸司
12.龍馬「維新の嵐」 1988年 作曲:菅野よう子
13.勇躍「大航海時代IV PORTO ESTADO」 1999年 作曲:高木庸旬
14.Freed From This Mortal Coil「仁王」 2017年 作曲:菅野祐悟
15.William「仁王2」 2020年 作曲:菅野祐悟
16.時の調べ 1988年 作詞:霜月智恵子、作曲:菅野よう子
17.傍にいるから 1988年 作詞:霜月智恵子、作曲:山本光男
18.覇道 -疾駆「信長の野望 覇道」 2022年 作曲:平松建治
19.オープニング ~群雄決起~「信長の野望・戦国群雄伝」 1988年 作曲:菅野よう子
20.狼煙「信長の野望・武将風雲録」 1990年 作曲:菅野よう子
21.風雲「信長の野望 Online」 2003年 作曲:川合憲次
22.現世夢幻「信長の野望・全国版」 1986年 作曲:菅野よう子
23.天下攻防「信長の野望・全国版」 1986年 作曲:菅野よう子
24.Shine -未来へかざす火のように- 作詞:松井五郎、作曲:菅野よう子、平原綾香
25.Jupiter 作詞:吉元由美、歌唱:平原綾香
26.決起、戦に臨まん「信長の野望・新生」 2022年 作曲:吉田孝志
27.OVERTURE ~信長の野望~「信長の野望・全国版」 1986年 作曲:菅野よう子
全編曲:穴沢弘慶
撮影/大山雅夫
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