「飢えた子羊」レビュー:飢饉を題材にタブーを描くストーリーはひたすらに重いが、その重さゆえに輝いて見える人類の強さと未来への希望もある

プレイレビュー
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内戦が続いたことによる貧困や飢餓で餓死者が続出していた中国の明朝末期を舞台にしたノベルゲーム「飢えた子羊」。10月23日に日本語吹き替えのアップデートが行われた、本作のレビューをお届けする。

飢えた子羊公式サイト
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吹き替え版も素晴らしいがオリジナル音声も聴いてみて欲しい

現在は日本語吹き替えがあり、こちらでプレイするのがオススメの「飢えた子羊」。日本語版は本作のヒロインで主人公でもある満穂(まんすい)を釘宮理恵さんが演じており、壮絶な過去を持っている満穂を見事に演じている。序盤はミステリアスな雰囲気ながら、じょじょに人間らしい感情が溢れてくる満穂は複雑なキャラクターであるが、そんな彼女のことをしっかり捉えて芝居している釘宮さんはさすがのキャリアと実力だ。一方でオリジナル版のHanserさんの演技もとても素晴らしい。音声は設定から切り替えることができるので、ぜひどちらも聴いてみて欲しい。

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さて、「飢えた子羊」は飢饉を題材にしたストーリーであるため、これからプレイしようと思っている人は重い内容であることは承知しているはずだ。ただし、2024年の現代の日本で飢え死にするという状況をどこまで体感として理解できている人はいないだろう。本作は「ダークな世界観が好き」という軽い気持ちでプレイすると壮絶な描写に心を呑みこまれてしまうはずだ。食べるものが無くなり、同じ村の女性や子供を襲ってその肉を食べたり、可愛がっていたペットや死んでしまった家族の肉にまで手を伸ばす描写があるため、心が弱い人は注意。

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ただ、本作の本質はスプラッター要素ではない。どのようにもならない壮絶な状況のなかで、それでも生きようとするものや、未来に託そうとするものの希望を描いている作品だ。ぜひ、最後まで物語を見届けて欲しい。

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極限の状況を描く

ストーリーは事件で家族を失い、生きるために盗賊になった主人公の良(りょう)が人身売買の運び屋として4人の少女を遠方へと届けることになるというもの。その旅のなかで良や満穂の壮絶な過去の境遇も明かされていくことになり、感情移入できる仕組みだ。本作の全体のプレイ時間は10時間に満たないが、とにかく描かれる描写が濃密で、30~40時間の大作ノベルゲームをプレイしたような体感がある。良や満穂の明かされていく過去も驚くが、現在の旅も壮絶。道中で訪れる村の悲惨な状況は目を覆いたくなるだし、少女たちを買った“豚妖”も凄まじい。私利私欲にまみれた豚妖は、自分の悦楽のため、誕生日に子供を食する人物。この食するというのは性的な比喩ではなく、本当に人肉を食べるということ。本作には飢えを凌ぐために人肉を食べる描写もあるが、豚妖は治安を維持することができない混沌とした時代に生まれてしまった醜悪な存在だ。

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主人公の良と相棒である舌(ぜつ)は権力者である豚妖の依頼を断ることができない状況のなかで、どのような選択と決断をするか注目。少女たちと交流して心を通わせるなか、良が彼女たちを豚妖に献上するのか、別の子供を献上するのか、そもそも交流していない子供であれば献上することに問題ないのか。悩む良にはプレイヤーも感情移入するはずだ。盗賊である良は必要であれば人殺しもする悪であるが、快楽のために犯罪を犯しているわけではない。彼なりの正義を持っているのでプレイしているうちに好きになっていくし、そんな彼が少女たちの世話に四苦八苦する姿は微笑ましい。

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また、物語のなかで予想外の行動を取るのが満穂だ。本作には予想がつかない展開や予想の斜め上をいくような衝撃の展開があるが、満穂の行動がトリガーになることが多い。聡明でありながら、ある復讐のために揺るがない意志と決断力を持つ満穂は良と同様にゲームが進むごとに好きになっていくキャラクターであり、プレイヤーの誰もが幸せになって欲しいと願うだろう。

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短編であるため、あまり本編のネタバレはしないものの、多くのユーザーにプレイしてもらいたいと願う1本。飢饉や人身売買、人肉食など壮絶すぎるストーリーではあるが、だからこそ、自分自身が平和な時代に生まれてきたことを感謝できるし、現在も紛争や食糧危機の国があることを考えるきっかけにもなる。ぜひトゥルーエンドまで進んで、作者の伝えたかったメッセージを確認してもらいたい。

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