千葉・幕張メッセにて9月25日~28日にかけて開催の「東京ゲームショウ2025」。「ファイナルファンタジーXIV」(以下、「FF14」)のプロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏、「モンスターハンターワイルズ」プロデューサーの辻本良三氏、同ディレクターの徳田優也氏による合同インタビューが行われた。

オメガ・プラネテスとコラボの経緯
――まず、オメガ・プラネテス編のクエストは、常設のクエストなのでしょうか。それとも期間限定なのでしょうか。
徳田氏:はい。今日試遊していただけているタイプのオメガ・プラネテスのクエストに関しては、常設のフリークエストです。あとエクストラミッションのクエストとして、クリアしていただくとフリークエストの方に並ぶような形で常設で遊べるようなクエストになります。
――「モンスターハンター:ワールド」に続き2回目のコラボとなりますが、改めてコラボのきっかけを教えていただけますか。
辻本氏:ご存知の方も多いかもしれませんが、僕と吉田さんはすごく仲良くさせていただいていて、もう付き合いでいうと15年以上です。当時一緒に「モンスターハンター」をやったりとかもしていましたけど、その時からずっと「一緒に何かできたら」という話はしていました。
極力を言えば「一緒にゲームを作りたい」ぐらいまでの話をしていたくらいだったんですけれど、吉田さんはそれくらいすごく魅力のあるディレクターだと思っていたんです。
そして吉田さんが「FF14」の担当をされることになって、その時から「何かできれば」という話はあったんですけど、そのあと僕らも「モンスターハンター:ワールド」というタイトルを作ることになって、すごくいいタイミングだなということもあって、まず「モンスターハンター:ワールド」で一度コラボレーションさせていただきました。
うちの開発のスタッフのなかにはやはり、「FF14」が好きなメンバーもいっぱいいますので、すごく面白いアイデアとかも出してくれましたね。
で、今回に関しましては、「モンスターハンター:ワールド」の時のコラボレーションが終わった後も「また何か機会があればできたらいいですね」という話はしていたのですが、もちろんこういうコラボはベストのタイミングであったりとか、それぞれのタイミングであることがとても重要になります。
ですが、去年の夏のGamescom(ドイツのゲームイベント)でうちの開発のメンバーと吉田さんが会う機会があって、そこで「モンスターハンターワイルズ」でも何かできませんか、というお話をさせていただいて、そのあと去年のTGSで実際にホテルの会議場で打ち合わせをして、そこから契約の話とかも当然ありますので、――という細かいお話もさせていただいて、具体的にまとまっていった感じです。

――「モンスターハンターワイルズ」に登場するモンスターは全部生き物ですが、今回あえて機械のオメガ・プラネテスが選ばれたのはどうしてでしょうか。
徳田氏:まず、タイトルアップデート2でセルレギオスとラギアクルスというメイン級の復活モンスターが予定されていて、さらにタイトルアップデート4でゴグマジオスというすごく巨大で強力な攻撃も仕掛けてくるようなモンスターが予定されている中で、他のモンスターと食い味が被らない――重複しないような新鮮味があるモンスターを「FF14」の中から選択していこうという風に考えていました。
我々が「FF14」の遊びの中ですごくいいなと思っているところとして、様々な範囲攻撃を重ねていきながら、プレイヤーに正解の位置取りを選択させていくような遊びが特に面白い部分だと思っていて、そこが一番映えてくれるようなモンスターがいい、という風に考えた時に「オメガが良いのではないか」というところがありました。
さらに、「モンスターハンターワイルズ」が古代文明をモチーフにしたようなバックボーンを持っているタイトルでもありますので、そういう設定面でもシナジーがある部分を模索できるモンスターだと感じましたので、オメガを使わせていただけるようにお願いさせていただきました。
吉田氏:ちょっとだけ補足をさせていただくと、「FF14」に登場するオメガというのは、自己進化を遂げ続ける、超古文明が作り出したAIベースの敵ですが、おそらくオメガ自身は自分を生物だと思っている気がします。
そして、「FF14」の中でのオメガは、「果たしてAIや機械というのは心を思っているのか」というテーマのストーリーが展開されてもいます。
あまり詳しく言うとネタバレになってしまいますので控えますが、素晴らしいストーリーも実装していただいているので、ぜひそこは「モンスターハンターワイルズ」で見ていただきたいなと思います。本当にうまく取り込んでいただいたかなと思っています。

採用されたジョブについて
――今回、参戦ジョブとして暗黒騎士とピクトマンサーが発表されていますが、こちらのジョブ選定はどのように行われたのでしょう。
徳田氏:「FF14」はすごく歴史の長くてたくさんジョブもあるというところで、去年のGamescomの時に、「何か今、人気のある熱いジョブってありますか」というところを吉田さんに相談させていただいたところ、このピクトマンサーが絵画を重ねていって魔法を撃つようなビジュアル的にも面白いジョブがあると伺いまして、それを社内にも持ち帰って色々検討させていただいたところ、ビジュアル的にも面白いですし、絵を重ねていくというところがモンスターハンターにはない、それでいてシナジーをもたらすような遊びにもなり得ると感じましたので、まずピクトマンサーを採用させていただきました。
さらに、ライトユーザーの方でも「FF」とのコラボレーションであるということが、一目見てわかるようなジョブも何かしら採用したいなというところで、最初は白魔道士や黒魔道士とかもアイデアとしてはあったのですが、ピクトマンサーが魔法系の要素というところもありましたので、「では何か他にシナジーがあるようなものないか」という風に考えた時に、暗黒騎士が「FF14」ではタンクジョブでありながら、さらに自分の体力を犠牲にしながらアビリティを撃っていくようなジョブだったので、そういった要素をモンスターハンターに入れたら面白いものができるのではないかという風に考えて、暗黒騎士の方も使わせていただくようにお願いいたしました。
幸いそちらもご快諾していただきましたので、その2つを採用させていただきました。

――「FF14」側からそのまま設定を色々持ってくるわけにはいかないと思いますが、「モンスターハンター」なりの落とし込み方とかに、苦労されたり大変だった部分などはありますか?
徳田氏:「モンスターハンター」にはMPという概念がなかったりだとか、クールダウンの管理の仕方でもアクションゲームとMMORPGで違う部分がありますので、そのテイストを持ってきながらも、「モンスターハンター」のアクションの中にいかに落とし込むかというところでは苦労しました。
今回の試遊ではピクトマンサーしかお伝えできていませんけれども、暗黒騎士に関しましては27日のステージで色々お伝えできればと思っていますので、そのあたりのギミックの詳細はステージの方をご覧いただければと思います。
吉田氏:「すごいことするな」っていう感想だけは言っておきます(笑)。
徳田氏:僕は正解の位置取りを選んでもらうような遊びというところが、アクション性に繋がっていく部分というところで、シナジーがあると感じています。
それを打開する手段っていうのがMMORPGと違って、アクションだとアクション的な打開策ももちろんあるんですけれど、ジョブロールみたいなものでできる要素っていうのもやや限られていたりしますので、その一つの打開策として「防御障壁」というものを設けて防御障壁をいかに入手してコントロールしていくか、みたいなところを思いつくまではなかなか難航しました。
この打開策が検証できてからやっと道筋が見えた感じで、いろんな開発が流れていきましたね。

コラボクエストの難易度は?
――今回のコラボクエストの試遊の時、色々試していたら時間切れになってしまったんですけれど、クエストの難易度としてはどのくらいをイメージされているんでしょうか。
徳田氏:「モンスターハンター:ワールド」の時にコラボしたベヒーモスみたいに、特殊なルールを理解すればクリアできるけれども、……というぐらいの難易度を目指しています。
今回はサポートハンターが、いろんな役割をある程度分担してくれるようになっているので、結果的にはベヒーモスよりも敷居が低いような形にはなっているかなという風には思っています。
――オメガがまさかパンクラ(パントクラトル)までしてくれるとは思わず、本当にびっくりしました。ちなみに吉田さんに質問なんですけど、今回オメガというキャラクターをモンスターハンター側に預けてコラボレーションしていただく際に、「ここは守ってほしい」みたいな要望は出されたんでしょうか。
吉田氏:「FF14」でかなりレイドをされていた方にしてみると、実は「FF14」のオメガ……特に「次元の狭間オメガ」のレイドを最後までプレイされてる方には、オメガ自体が心を持ったか持たないかみたいなところでグダグダにされてしまうとさすがに心情的に辛いんじゃないか、というところがあったので、なので今回は「プラネテス」という別個体を作ることにしました。
さらに、もともと「FF14」側のオメガと絡んでいくっていうストーリーは、これであればおそらく思い切ってハンターとしてオメガと戦いつつ、従来の「FF14」側のオメガやアルファも含めて面白いストーリーにできるんじゃないかということは、こちらからご提案させていただきました。
ちなみに僕もパンクラするだろうなと思っていたので、非常に楽しみです。

――「FF14」と「モンスターハンター」シリーズは、これまでにも多くのIPコラボを行ってきましたが、今回のように近い時期に双方のゲームにコンテンツを追加する形のコラボは、比較的珍しいと思います。お二人は、今回のコラボでどのような効果を期待されていますか? また、実現までの過程の中で、何か想定外の困難はありましたか。
吉田氏:プロデューサーという観点から言えば、本来それぞれのファンベースが盛り上がって、それぞれのゲームをまだプレイしてない人たちが手に取るきっかけ――例えば「モンスターハンターワイルズ」のファンの方が「FF14」を手に取るきっかけになったり、まあ逆もしかりで、そういう機会を作っていこうというのが、建前です(笑)。
ただ、冒頭で良三さんがおっしゃっていたように、もう15年以上我々は純粋な開発者として会社を超えてリレーションを築いてきたので、どちらかというとゲーム業界がとにかく盛り上がって、大きな2タイトルが収益とか利益とかを抜きにして思い切って面白いことをやろうぜっていうのが、少なくとも僕は本題なのかなと思っています。
これによってやっぱり開発チームも両方ものすごい大きな刺激を受けて、新しいものに取り組めるという機会でもありますし、そこが一番ゲーマーにとってもそれぞれのファンの方々にとっても、我々にとっても効果としては大きいところなのかなと思っています。

辻本氏:僕もプロデューサー目線の効果としては一緒です。やっぱりコラボレーションしている以上、お互いのタイトルで遊んでない方はやっていただきたいという気持ちはもちろんあります。ただ、やっぱりここまで大きなコラボレーションになってくると本当に簡単にできることではなくて、お互いの信頼関係がないと絶対にできないんですね。
信頼関係はもちろん、お互いの相性であったりとか、お互いを信用しているというところがとても重要になります。なので、お互いがゲームに向き合う姿勢であったりとか、考え方であったりとか、そういう点で信用しているからこそ一緒にここまでのことができるというところは、すごく大きいと思います。
吉田氏:もちろんスケジュールコントロールっていうのは難しいところがあるんですけれど、できれば両方やってもらうために、あえて完全に重ねるのは避けましょうと。
なぜなら「FF14」の光の戦士たちは兼ハンターだったりもしますし、ハンターの皆さんもときおりヒカセンになる方もいらっしゃると思うので、同時にやっちゃうとどっちもやらなきゃいけなくて大変なので、そこだけは時期を空けて全力で両方のプレイヤーの方たちが楽しめるように、というところは、話し合って決めさせてもらいました。

今後のコラボの可能性
――「モンスターハンターワイルズ」はネルスキュラやラバラバリナなど、鋏角種のモンスターが多く登場します。今回登場するオメガ・プラネテスの行動パターンも、鋏角種のモンスターに分類されているんでしょうか。
徳田氏:骨格は鋏角種ベースではあるんですけど、ラバラバリナの動きみたいなものは直接入れてるわけではありません。
オメガのモーションとかもスクウェア・エニックスさん側からいただきましたし、さらに我々の方でアクションゲームに適用させるために新規で描き起こしたものが中心になっています。
リソースの使い回しはかなり少ない、かなりオリジナリティあるモンスターにはなっているかなと思います。

――クエスト中にオメガがネルスキュラのクローンを生成しましたけれど、これについて何かお話しできることがありますか。
徳田氏:オメガ・プラネテスのクエストの途中でネルスキュラ・クローンを生成して、デルタアタックを防ぐために急いでネルスキュラ・クローンを倒さなければいけないという仕様が今回の試遊版に入れられていますけれど、実際のサイドミッションにおいてはネルスキュラ・クローンにもちゃんとストーリーベースで役割が与えられています。

――今回のコラボを踏まえて、今後さらに両タイトル間で実現したいアイデアだったりとか、将来的にこう目指しているコラボの形とかがあれば、ぜひお聞かせ願います。
吉田氏:あんまり言うと、変に広がっちゃうからなぁ……(笑)。
僕の中では、前回「モンスターハンター:ワールド」でクロスオーバーさせていただいた時にちょっとやり残した部分もあったなという後悔もあったので、一度実はアライアンスレイドとして丸2年がかりで「モンスターハンター」をテーマにやるのはどうだろうというのを議論したくらいでした。
双方盛り上がって面白いことができて、双方のクロスオーバーってところも成し遂げられるんであれば、面白いが一番かなと思っていますので、あんまりアイデアに制約はつけずに、今回また双方のクロスオーバーをたくさんの方に遊んでいただいて、フィードバックも拝見した上で、相性が本当に素晴らしいと言っていただけてるのであれば、また何かやれる機会はぜひ持ちたいなとは思っています。
辻本氏:吉田さんとももう15年以上の付き合いですし、多分これからも付き合っていただけると思うので、何か一緒にやるということは可能性としては絶対あるとは思いますけど、ただ、むやみやたらにやればいいものでもないとは思っています。
ちゃんとしたタイミングで、ちゃんとしたものが、お互い提供できるタイミングであったりとか、そこら辺をちゃんと考えながら、今後のことは考えていきたいと思ってますけれど、それが今の時点でじゃあ次はどのタイミングで何をしようとかっていうのがあるわけではないです。
――最後にこの「モンスターハンター」側のアートの注目ポイントについてお聞かせください。
徳田氏:ストーリーテラーであるアルマとオメガを中心に、ストーリーに関わるジン・ダハドがちらっと入っていたり、そこにチョコボとかも入っていて、コラボに入っている要素をたくさん盛り込んだアートにしていただきました。
吉田氏:ちなみに「FF14」のサイトでは、「FF14」側のキービジュアルが見れますが、これからまだフルトレーラーとかもありますので、そこはもうしばらくお待ちください。
ちなみに我々がさすがだなって思ったのが、オメガって微妙に首傾げてるのが特徴なんですよ。「FF5」で初めて出た時からこうだったんですけど、さすが理解力が違うなって思いましたね。当然監修とかチェックはさせていただいたんですけど、愛が違うなとは思います。
――ありがとうございました。
(C)CAPCOM
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