運転していて違和感がない――「Project Motor Racing」開発に携わるプロドライバー・山野哲也氏インタビュー【TGS2025】ゲームで運転は“100%うまくなる”その理由を語る

東京ゲームショウ2025
0コメント さとうかずや

千葉・幕張メッセにて9月25日~9月28日にかけて開催された「東京ゲームショウ2025」。セガブースに出展していたレーシングゲーム「Project Motor Racing」について、ファクトリードライバープログラムを通じて開発に参加しているプロレーシングドライバーの山野哲也氏に話を伺った。

運転していて違和感がない――「Project Motor Racing」開発に携わるプロドライバー・山野哲也氏インタビュー【TGS2025】の画像

実車のプロドライバーなどが参加しているファクトリードライバープログラム

「Project Motor Racing」は、720Hzの新開発の物理エンジン、Mod対応のGIANTS Engine 10を基盤として、プロフェッショナルレベルのモータースポーツを忠実に再現した、本格レースシミュレーションゲーム。開発を手がけるStraight4 Studiosは、20年以上にわたりシムレーシングの進化を支えてきたキーパーソンたちによる、実力派の開発スタジオ。セガは、スイスのゲームパブリッシャーであるGIANTS Softwareと、日本国内およびアジア市場向け新作タイトルに関するサブパブリッシング契約を締結。本作の製造・販売を担当している。

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ファクトリードライバープログラムは、車両の挙動をよりリアルに仕上げるため、実車のドライバーやシムレーサー(※シムレーシングというバーチャルモータースポーツで活動するドライバー)から、直接フィードバックを得るプログラム。徹底的なテストとリアリズムを追い求める精密な調整を重ねることで、本物を追求するハンドリングを実現しているという。ちなみにこのプログラムは一般からの応募も受け付けているが、もともと現役ドライバーとトップシムレーサーを対象にしていることもあり、応募者の約10分の1しか参加できないというほど、要求レベルが高いものとしている。

山野氏は、全日本GT選手権/SUPER GTにおいてホンダ、トヨタ、マツダと唯一無二の3年連続シリーズチャンピオンを獲得(2004年~2006年)。100年以上の歴史を誇るPikes Peak International Hill Climbでは、いまだトップ10のタイムを保持。JAF全日本ジムカーナ選手権では2024年までに147回優勝し、24回のシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久シリーズなどでもチャンピオンを獲得するなど、“優勝請負人”と呼ばれているベテランドライバー。ちなみに、山野氏のプログラム参加は、セガからのアプローチによって実現したという。

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今回、山野氏がゲームショウに来場し、展示されていた同タイトルの体験機で実際にデモプレイを披露。その後、メディア陣によるインタビューに対応した。

リアルでの実績があるプロドライバーから見て“運転して違和感がない”

――まず、ファクトリードライバープログラムへの打診があったとき、どのように感じましたか。

正直なところ、驚きました。レーシングドライバーの山野哲也として、ゲームやバーチャルのレーシングにおける活躍というものは全くありません。むしろリアルなレーシングの世界で実績を積んできた人間です。なので、「なぜ山野哲也なのか?」「本当に私でいいのですか?」と逆の問いかけをしたぐらいですので。そうしましたら、「本物の車の挙動をこのゲームに落とし込みたい」というお話しをいただきました。そのときに車の運転技術と、ゲームのリンク性が高まると思ったんです。

――ちなみにレーシングゲームなどはプレイされていますか。

全く無いということではないのですが……。昔ですけど、「セガラリーチャンピオンシップ」は、ラリーカーの実車に近いというイメージがあって、よくプレイしていました。ただ、ほかにもいろいろとゲームに挑戦したことはあるのですが、リアルとバーチャルの違いが大きすぎて、まともに走れないことが多かったです。

――ファクトリードライバープログラムの一環として、実際にセガ社内で本作をプレイしたと伺っています。リアルとバーチャルの違いというのを感じましたか。

最初に運転したとき、違和感はあまりありませんでした。そのうえで、走り込んでいけばいくほど車の挙動に対して不満が出てくるのですけど、その不満に対するセッティングの幅がすごく広くて、セッティング自体がものすごくリアルなんです。

もし自分がサーキットを走っていて、こういう挙動を感じたらここを直すであろうというセッティングをすると、どんどん走りやすくなっていくことを実感しました。それはまさにリアルレーシングの世界で、山野哲也自身であったり、レーシングチームがパドックで行っているミーティングと同じことをゲーム上でできるというのが、すごいと思った点です。

最初の1時間ぐらい運転したとき、ゲーム上のセッティングメニューにはなく、変えたくても変えられないものもありました。そのとき開発陣とオンラインミーティングをさせていただき、その箇所の要望を伝えると「その通りですね。直します」というやりとりもありました。常時開発が続いていて、リアルタイムで更新されていくという、実車でもできないようなことが、ゲームの世界ではできる。ただでさえリアルに走れるのに、もっとリアルになっていくのかと思うと、将来的に楽しみで仕方がないところですね。

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もうひとつ、テストで感じたことをお話しさせていただくと、過去のレーシングゲームでありがちで、私がリアルとバーチャルの違いによってまともに走れなかったことにもつながったことなのですけども。スピードが出れば出るほど景色が流れていくと思いますけど、自分自身が行っているアクセルやブレーキ、ステアリングの操作と、実際の流れる景色との差が結構大きかったり、時差(ラグ)があったりするんです。操作した後に遅れて景色が止まったり動いたりしていくというケースが多いと、結果的にドライビングが遅れてしまうんです。これは、実車であれば本来得られるはずのフィードバック量が少なくなるのと同じことで、そうなるとうまく走れなくなります。

ですが、「Project Motor Racing」ではフィードバックの量がすごく多く、しかも時差が少なくて、リアルなモータースポーツとほぼ同じような感覚で走れるのです。コースの樹木や芝生、ガードレール、土、アスファルト、縁石など……それらのリアル感が普通では考えられないぐらいレベルが高いんです。なおかつスピードを出したときも、ごまかしではない本物の景色が流れているように見えるんです。偽りのない情報量が極めて多いことから安心感を持って運転できた、というのが実際にテストして感じたことです。

ひとつ例をあげるとすると、太陽の光の当たり方です。サーキットは基本的にコースを一周するので、日の当たりがいいところもあれば逆に影になるところもあるように、全体の景色のなかで、太陽の位置が決まっているものなのです。そして、あるコーナーでは木の葉っぱの表がよく見えるというコーナーもあれば、あるコーナーでは、葉っぱが全部日陰になっているコーナーもあったりするんです。ほかにも、路面に対しての太陽の反射がどのように映っているかというところもリアルであったり、葉がたまにちらちらと風で舞っていたり、鳥が飛んでいるといった光景も見られます。レースにおける自然に感じられる世界がゲームのなかにあると思っています。本当に違和感がないというのが第一印象で、よくここまで作られたと感じています。

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「ゲームで本当に運転がうまくなるのか」という疑問には「100%うまくなります」

――ゲームやシミュレーターの高度化から、シムレーサーであったりレーシングゲームでうまかった方が、リアルなプロレーサーとして活躍している方も現れるようになりました。長年モータースポーツに関わってきたなかで、こうした状況をどう見ていますか?

とてもいいことだと思います。そもそも車を運転するまでが大変なことなのです。免許を取るにしても教習所に何日間も通わなければいけないとか、費用も相応にかかります。車を所持したとしても駐車場問題があったり、遠出をしたりするのも難しいという状況もあり、車に対していい環境とは決して言えません。日本の場合は、免許を取る人が少なくなっていますし、どんどん車離れの方向にいっているのも現状です。

一方、ゲームのほうを見ると、実はレーシングゲームを遊ぶ方はかなり多いですし、幅広く受け入れられているタイトルも実際にあります。子どもたちがゲームを通じて車に親しんでもらえる環境そのものはありますし、その延長線上に、本作があるとも思っています。運転が上手くなりたいと思ったときに、運転操作やライン取りのうまさを身につけることができるゲームであると感じています。

また、「ゲームで本当に運転がうまくなるのか」という疑問もあるかと思います。これについては、はっきりと「100%うまくなります」と言えます。車のパフォーマンスを引き出す際に大事なのは、挙動の変化について、どれだけドライバーにフィードバックされるかです。そして、そのフィードバックは目から受け取るものがほとんどです。実車を運転していても、挙動の変化は目から情報を得ています。

唯一、実車とゲームとの違いにG(重力加速度)があります。ゲームだと前後左右にGがかかるということはありません。ただ、Gのかかり方が運転スキルやマシンコントロールに影響するかと問われると、僕個人としてはあまり関係がないと思っています。それでいくとモニターからの情報が全てであり、ゲームで映し出されるものの精度が高ければ高いほど、実写と同じことが起きているということになります。したがって、ゲームによって車の運転が上手くなる人は増えていくという風に考えています。

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上達が早くなるには“オーバースピードを体験すること”

――車をうまく走らせたい、速く走らせたいと思う方が多いなかで、リアルでもゲームを含むバーチャルでも通用するような、上達が早くなるアドバイスというものはあるのでしょうか。

その質問はいいですね。特にバーチャルで気軽にできることがあるとすれば、オーバースピードで走ること。そして、それを体験することです。

そもそもスポーツは限界に挑戦することが醍醐味でありますし、モータースポーツもスポーツですし、eスポーツもスポーツだととらえています。モータースポーツにおいて、ドライバーは車の性能を引き出すための操作をする役割を担っています。エンジン、ブレーキ、サスペンション、タイヤなどのピークがどこにあって、性能を引き出すためにはどうしたらいいのかにチャレンジすることだと思います。そして単純に考えると、ゆっくり走行していたらピークはわからないですよね。ピークを突き破るには、オーバースピードを体験するということが、一番わかりやすく伝わるのかなと思います。

例えばコーナーに対して速度が速すぎると、曲がりきれずにコースアウトしたり、あるいはスピンしたりしてしまうということは、ご理解いただけると思います。その挙動の変化を体験するということは、ピークの向こう側を経験するということになります。と同時に、ピークにたどり着く過程も経験していることになります。そこで、ピークの向こう側からピークとなるところに戻すことが、より速く車を走らせること、そして技量を向上させることにつながると考えています。なので、バーチャルのような気軽にできる環境だと特にそうなのですが、ピークに対して挑戦をし、ピークを超えてオーバースピードで起きる出来事を体験することが上達の近道だと思います。

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――「Project Motor Racing」や、レーシングゲームに興味を持っている方に向けたメッセージはありますか。

私自身、ゲームであることを忘れてしまうゲーム、と感じています。何年かに1回はレーシングゲームをプレイすることがあるのですけど、やはり時差があって、途中で気持ち悪くなってしまうんです。でも「Project Motor Racing」は、ずっと夢中で、黙々と走りたくなるぐらいのものです。ある意味ゲームっぽくない感じがして。本物の車を、本物のサーキットで、本物の景色のなかで走っているという気持ちにさせてくれるものです。

山野哲也としては、車が大好きというのもあるのですけど、運転がうまくなることが最大の目的で、今チャンピオンを取り続けていても、もっと運転がうまくなりたいと、いつも思っています。「Project Motor Racing」は運転がうまくなりたい人に、車を持つとか、免許を取る手前の段階からリアルな車の運転を味わえて、しかも技量を上げることができるゲームソフトであることは間違いないです。実車に比べたら敷居が低く手軽な形で始められると思いますし、より多くの方にプレイしていただける環境になれば、運転がうまくなる人は増えるでしょう。そのことに貢献できるぐらい、期待できる内容だと思っていますので、ぜひ楽しんでください。

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本業はお堅い会社の会社員。かつてはテクノロジー&ビジネス情報メディアの硬派(自称)なIT系編集記者であったにもかかわらず、ゲームエンタメ担当としてこれまで特定のキャラにスポットをあてたゲーム記事や、キャラコンテンツのライブイベント記事を書き続け、特に「アイドルマスター」と「ラブライブ!」シリーズは、10年以上にわたってあわせて100本以上を執筆。諸般の事情により、副業ゲームエンタメライターとして寄稿も行うことに。 アイマス歴は、アーケード版ロケテスト1回目からのプレーヤー。 X(旧Twitter):https://x.com/310kazuya

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