「学マス」ホテルのロビーで起きた小さなミラクルは、「副業中」の同僚と交わした最高のハイタッチ【年末年始企画】

2025年年末年始企画
0コメント ばかいぬ

Gamerで執筆しているライターに、年末年始に合わせて自由に書いてもらおうという企画。本記事ではばかいぬがお届けします。

「学マス」ホテルのロビーで起きた小さなミラクルは、「副業中」の同僚と交わした最高のハイタッチ【年末年始企画】の画像

9月20日・21日に行われた、「学園アイドルマスター(以下、学マス)」の初星学園大運動会のDAY2に行った時のことです。

本作に限らず、実はライブ等のリアルイベントって久しぶりの参加だったんです。あの日、会場を包み込んでいた熱さは、今でもワクワクする気持ちが思い出せるほどのものでした。

そんなイベントだと、終わって会場を出た後でも、体はちゃんと疲れているのに、心だけはまだ席に取り残されているみたいになりますよね。声は少しかすれて、拍手しすぎた手のひらがじんわり熱い。そんな、ふわふわした状態のまま、所用があって都内のとあるホテルに立ち寄りました。

暖色の明かりが優しく広がる静寂なロビー。さっきまでの熱気とは対照的な、落ち着いた空間です。私はと言えば、イベントグッズの1つである、ロゴが入ったナイロンジャケットを羽織ったまま。普段使いに全く耐えられるデザインというのもありつつ、たぶん心がまだ、DAY2の延長戦を望んでいたのかもしれませんね。

ふと背後から、凛とした、それでいてどこか親愛の情を含んだ声が聞こえました。

「プロデューサー様、お疲れさまでございます」

一瞬、誰のことだろうと思いました。

アイマスシリーズ自体は以前から嗜んでいました。しかし、ここまで熱中したのはおそらく「学マス」が初めてのこと。日常のふとした瞬間に「プロデューサー」という肩書きで呼ばれることに、私の頭はまだ完全には順応していなかったのです。

2秒くらい間を置いて「私か!!」と気づいて振り向くと、そこにはビシッと制服を着こなしたホテルマンの方が立っていました。柔和な笑顔を浮かべ、私の着ているナイロンジャケットに視線を注いでいます。

私はやっと理解しました。あ、これ、ジャケットだ。私のナイロンジャケットが、私を「プロデューサー」にしているんだ。

ようやく状況を理解した私は、少し照れくさくなりながら、「あ……あなたも、ですか?」と問いかけました。

いわゆる「同業者」なのか。それとも単に、このジャケットを見てファンだと気づいてくれただけなのか。

私の問いかけに対し、そのホテルマンの方は、仕事中とは思えないほどの悪戯っぽい笑みを浮かべました。ホテルマンの方は、少しだけ声を落として、まるで機密情報を共有するみたいに言いました。

「ええ。今は副業中なんですが……」

その言葉を聞いた瞬間、私は思わず吹き出しそうになりました。

副業中。

つまり、彼にとっての「本業」は、アイドルをプロデュースすることであり、この立派なホテルでの業務はあくまで「副業」であると。アイマスPの間では伝統的に使われるジョークですが、まさかこんな格式高いホテルのロビーで、しかも完璧な接客スマイルのホテルマンから聞くことになるとは思いもしません。

そう言いながら彼はさらに、周囲に気づかれないよう、スッとポケットから雨夜燕のアクリルスタンドを取り出したのです。

「燕のプロデューサーさん!!」

ホテルマンらしい立ち居振る舞いと、制服のポケットに推しのアクスタを忍ばせているというガチ勢ぶりのギャップにキュンと来て、一気に親近感が湧き上がりました。

私は嬉しくなって、つい先ほど会場で発表されたばかりの「あるニュース」について話題を振ってみました。

「大運動会のニュース、見ました?」

するとホテルマンの方は、少し申し訳なさそうに首を振って、

「いえ……。もしや、燕関係ですか?」

と言うんです。

この「もしや」の温度がとても良かった。期待していいのか、でも期待して違ったら恥ずかしい。その手前で、ちゃんと礼儀正しく待っている感じ。

「お見せしてもいいですか?」

と一言断ってから、私はスマホを取り出し、公式から発表されたばかりの「燕、実装決定」の報を画面に映し出しました。

画面を覗き込んだ彼。その瞬間、ホテルマンとしての仮面が半分ほど剥がれ落ちたように見えました。

「……叫びそうです」

叫びそう、で止めてくれるホテルマンのプロデューサーさん。ホテルのロビーですからね、叫ばない。でも、叫びたい思いは隠さない。絶妙な社会性と、オタクの正直さの両立に、気づけば私は、思わず手をハイタッチの形に上げていました。

「おめでとうございます!」

私がそう言うと、彼は一瞬だけ「えっ」となったのち、きっとお仕事モードの時とはまた違う一番の笑顔で、私の手に自分の手を重ねてくれました。

ホテルのロビーが、ほんの一秒だけ会場のスタンドに戻った気がしました。歓声と拍手の代わりに、礼儀正しい微笑みと控えめなハイタッチ。でも、その時だけは、私たちはただの「燕担当プロデューサー」と「通りすがりの同僚」だったと思います。「同じものを大事にしている人と、同じ瞬間を共有できた」という手触りがありました。

誰かの喜びを、自分のことのように喜べる。
見ず知らずの相手と、心の底から「おめでとう」を言い合える。
学マスというゲームが繋いでくれた、ささやかながら、とても温かい時間でした。

その後、彼はすぐにまた完璧なホテルマンの顔に戻り、「お気をつけてお帰りくださいませ」と深く一礼してくれました。その姿には、どこか晴れやかなオーラが漂っていたように思います。

見知らぬ人と、たまたま居合わせた場所で、たまたま着ていたジャケットをきっかけに、同じニュースで心が跳ねる。そんな偶然が、ちゃんと現実に起きるんだなと思いました。

ライブやイベントの醍醐味って、ステージの上だけじゃなくて、帰り道にも落ちているんですね。行き帰りの電車の中で、あるいは立ち寄った飲食店で、そして今回のようにふと足を運んだ先の一幕で。同じ「好き」を共有する仲間と出会い、言葉を交わす。そんな予期せぬ交流の中にこそ、忘れがたい思い出が宿るのだと、改めて教えられた気がします。

あの時のホテルマンのプロデューサーさん。突然のハイタッチに応じてくださり、本当にありがとうございました。あのハイタッチの音を、私は忘れないと思います。またいつか、どこかのライブ会場か、あるいは「副業先」で、お会いできる日を楽しみにしています!

とあるIT企業でWebコンテンツ系のお仕事をしながら、個人で時おりGamerの記事や「ラブライブ!」関連の書籍等で取材・執筆しています。ゲームジャンルではアクションRPGと育成シミュレーションLove。リアルではコーヒーの香りがする本屋さんが好き。 HP:https://bakainu.net/

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