ブシロードの代表取締役社長・木谷高明氏へのインタビューをお届け。第1回はトレーディングカードゲーム(TCG)の領域を中心にお話を伺っている。
1月12日に行われた「カードファイト!! ヴァンガード 15th Anniversary ブシロード新春大発表会2026」。その中で2026年のブシロードを占うさまざまな発表が行われた。

その発表を受けて実施した今回のインタビューでは、同社の代表取締役社長・木谷高明氏にトレーディングカードゲーム(TCG)、デジタルゲーム、エンタメ全般の3つのトピックスから話を伺ったので、全3回の連載形式でお届けする。
第1回では15周年を迎えた「カードファイト!! ヴァンガード」、18周年を迎えた「ヴァイスシュヴァルツ」のこれまでに加え、先日発表となった「パルワールド オフィシャルカードゲーム」の展開からもうかがえるカードゲーム市場の展望を聞いている。

インタビュー・編集:TOKEN
文・構成・写真:胃の上心臓
節目を迎えた「ヴァンガード」「ヴァイスシュヴァルツ」……そしてカードゲーム業界の行く末とは
――ブシロードはトレーディングカードゲームのタイトルを数多く運営されていますが、それらの現状や今後の展望についてまずは伺えればと思います。
木谷氏:今年は「カードファイト!! ヴァンガード」が15周年という区切りを迎えましたが、オリジナルのカードゲームタイトルなので長く続けるには中々難しいところがありました。「ヴァイスシュヴァルツ」は創業と同時に企画立ち上げとなり、その翌年のリリースからここまで来られました。この2つは当社のカードゲーム部門の柱で、会社全体で見ても売り上げの大きなところを占める大切な存在になっています。
――そんな2タイトルはユーザーへのアプローチが異なっているところがあるかと思います。この先を見据えた上での展開についてはどのあたりを意識されているのでしょうか?
木谷氏:「ヴァイスシュヴァルツ」は色々なアニメ・ゲーム作品が次々と参加するので、お客様にとって魅力的な、現在流行している作品に参加してもらえるかどうかが大事です。そして、それぞれの作品にファンがいることから、ゲームとしてバランスが取れているかどうかも大事だと考えています。
オリジナルタイトルなら現環境ではこのカードが強い……というのは普通のことですが、「ヴァイスシュヴァルツ」はそれが許されません。どの作品のカードでデッキを組んだとしてもそこそこ戦えないといけないので、バランス調整が大事です。
「カードファイト!! ヴァンガード」は「ヴァイスシュヴァルツ」の真逆とでも言いますか、まったく性質が違っています。基本はアニメの世界観を楽しんでくださるお客様が多いため、カードゲームの領域だけでなくアニメも含めた作品のファンコミュニティを15年間維持することに時間をかけてきました。その結果として、メインであるカードゲームも購入していただけているという印象があります。

――近年では「Shadowverse」のリアルカードゲームを発売したり、「五等分の花嫁」のように作品単体のカードゲームも販売しています。それらの展開の手ごたえはいかがですか?
木谷氏:コラム「木谷高明の視点」の「第56回 カードゲーム業界を変える第4の波」(https://bushiroad.co.jp/company/column/kidani/57 )で語った第3の波……2022年にこれまでは成功すると思われていなかったとあるアニメタイトルのカードゲームが大きな成功を収めたことから、これに続く波が来るだろうと予測しました。
そこからひとつのアニメ・漫画・ゲームを題材としたカードゲームタイトルの時代が来ると考えて、企画から立ち上げたり他の企業様から一緒にカードゲームを作らないかと提案をいただいたりすることが増えていきました。そういった流れで単体IPのカードゲームが増えていったという歴史があります。そして、この傾向は今後も続くと思っています。
次の第4の波が何かというと、グローバル展開、多言語同時リリースが当たり前になることです。2026年7月に発売する「パルワールド オフィシャルカードゲーム」は、日本語版・英語版・簡体字版が同時発売になります。完全に同日にできるかはまだ不透明なのですが、今後はこれが当たり前になると思っています。
カードゲームは時間もお金もかかりますし、遊ぶためにコミュニティに参加すると友達ができます。それらを失いたくないので、ユーザーさんはみんな「このカードゲームは永遠に続くだろう」という幻想を抱くような物しか遊んでくれません。単体IPのカードゲームはキャラ数などが有限なので、これまで中々成功しなかったのはそこに理由があります。
先ほど述べたとあるタイトルが長い歴史のある作品を使ってグローバル展開を成功させたことで、その条件が整い一気に流れが変わったのだと考えています。

「パルワールド オフィシャルカードゲーム」はアメリカからの反応に驚き
――「パルワールド オフィシャルカードゲーム」はやはりそういったグローバル展開を見越してスタートされたのでしょうか? また、実際に企画が成立するまでの経緯もお教えください。やはりブシロードさんから動いたのでしょうか、それともお相手とのコミュニケーションの中で進んだのでしょうか?
木谷氏:それは両方です。この先、単体IPのカードゲームを作るとするならば、日本でしか人気のないタイトルはほとんど出て来られないかもしれないと考えています。やるとしても今後の他のタイトルを踏まえたものか、何らかのしっかりとした理由がなければできません。
――やはり、今後カードゲーム化するものはグローバルなヒットが見込めるものになるのですね。「パルワールド」のようなゲームタイトルもカードゲーム化の候補に入ってくるのでしょうか?
木谷氏:少なくとも、日本だけでなく東アジアでも人気があることは最低条件です。欧米での人気もあればより良いです。そういうタイトルやテーマがあるならオリジナルタイトルでも構いませんし、ゲームだけに留まりません。
今は「パルワールド オフィシャルカードゲーム」も含めた既に発表済みのタイトルだけでなく、話し合いレベルの企画も含めると来年以降も4つくらい候補があるので、そのうちの2つぐらいは実現するのではないかと思っています。
既に11タイトル運用していて、この先は閉じていくタイトルも出てくるかもしれません。ですが、2つ無くなった後に3つ増えるくらいのペースで増えていくのかなと。私自身はマックスで15タイトルまでは増えても構わないと思っていますが、きっとそれぐらいが運用できる限界だとも感じています。
売り上げやファン数はまだまだ足りていませんが、タイトル数に関しては世界で一番カードゲームを運用している会社だと自負しています。
――「パルワールド オフィシャルカードゲーム」で大事にしている事と、これからの展開についてもお聞かせください。
木谷氏:原作再現をいかにするのか、という部分は大事にしています。後はカードゲーム自体が面白いんです。私もプロデューサーとして立っていますし、今回はプレイヤーとしても遊んでみようと思っているぐらいです。夏ごろに国内のカードショップを講習会で回るつもりでいます。一般の方にカードをお披露目する最初の機会は「カードゲーム祭2026」になります。

――1月の新春大発表会で「パルワールド オフィシャルカードゲーム」を発表した際の反応はいかがでしたか? やはりゲームのユーザー比率で考えても海外の方が反応があったのでしょうか?
木谷氏:国内に関しては公認大会を開催する店舗を募集し120店舗くらいになったのですが、当初はもっと少ないものと思っていました。なので、思った以上に取り扱っていただけることに驚きました。海外に関してはアメリカからの反応が大きくて、日本の何倍にもなったので本当に驚いています。
――海外展開の際も店舗さんを回られたり講習会をされたりするのでしょうか?
木谷氏:日本国内では先ほどお伝えしたおよそ120店舗や、イベントに関しても「カードゲーム祭2026」を皮切りに講習会をやっていきます。全世界350店舗で講習会をやりつつ、10個くらいの大きなイベントでグローバルにできるといいなと考えています。
――カードゲームの遊びの部分の方向性は、時代にあわせてどんなことを考えているのでしょうか?
木谷氏:ルールも時代によって変化していきます。流行は移り変わっていくので、それにあわせてルールも変えていくようにしています。開発スタッフ自身が「パルワールド」のユーザーでもあるくらい、本作はゲーム自体も面白いです。でなければ、私も自分でやるとは言いません。
同じカードゲームで遊ぶ人たちのコミュニティを維持するということ
――「カードゲーム祭」の開催も含めて、TCG業界におけるブシロードのアプローチは一線を画すところがあるように思います。おそらく今後も波があるとは思うのですが、今後一年くらいの展望をお話しできる範囲でお教えいただけますか?
木谷氏:ブシロードと他社の違うところは、複数……それもかなりの数のタイトルを同時に運用しているところです。さらに、3年ほど前から「カードゲーム祭」に他社を誘致し始めて、今年は19社が出展してくださることになりました。かなり色々なお客様たちが来場されるので、イベントとしても大きくなっていると思います。
昨年の3割増のペースでチケットが捌けているので、今年は27,000枚は売れると踏んでいます。カードゲームのイベントとしては世界一大きい規模になりました。年々、海外からのお客さんも増えていることも大きいです。
――海外ではこういったカードゲームのイベントはあるのでしょうか?
木谷氏:ボードゲームなどは盛んですが、あまりないと思います。
――実際にこういったイベントに参加してみると、同じ会場で同じゲームをしている人がこんなにも集まっていることに感動しました。
木谷氏:イベント会場に実際に来てみると驚きますよね。歩いている人だけでなく、座ってカードゲームをプレイしている人が少なくとも1,000人はいるのですから。「カードゲーム祭」の会場だと椅子が約8,000席くらいありますが、それだけあれば7,500席までは埋まるので朝からその人数がせーのでプレイします。これは圧巻です。
ライブはステージに向かってみんながキャストを応援するような形ですが、カードゲームはそんな8,000席の一角ごとにきちんとジャッジを置いているので、また違った運営の手間や苦労があります。
今は世知辛い世の中ですが、やっぱり人は誰かがいるところに集まってきます。後は、その場所が楽しそうなところかどうか。
なのでイベント時にスタッフがハキハキと応対することも大切にしています。運営側が厳しそうな顔をしていたら客入りが悪いのかと心配になりますし、近寄りがたい雰囲気になってしまいます。
――本当にそう思います。以前、「ゴジラ カードゲーム」の体験会にも参加させていただいたのですが、その際の運営の方の対応も本当に丁寧でした。
木谷氏:「ゴジラ カードゲーム」も本当にゴジラがお好きな方が来てくださいます。ルールも原作を再現していますが、きっとゴジラが好きじゃないとあのルールがどういうことなのか、把握するのも難しいのではないかと感じていたくらいです。
そういう一面が強くなったので、片方ではより一層カードを投資の対象として見る方も増えてしまったのかなと思わなくはないのですが、そういう時代だからこそブシロードは楽しく面白く遊ぶ空間を作ることを重視したいと思っています。違反者に対して弊社はとても厳しいですし、もしかしたら一番厳しいかもしれませんね。
――商品を売るということだけでなく、実際にそれを遊ぶ皆さんがその楽しさを共有するコミュニティを守る……それが「カードゲーム祭」をはじめとする試みなんですね。

「BanG Dream! Our Notes」の展開も控えるデジタルゲームにおける現状を語った第2回は、後日公開予定だ。
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