「シュレディンガーズ・コール」レビュー:電話越しの対話を通して、“人と人が繋がる意味”を描く終末ADV

プレイレビュー
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集英社ゲームズが2026年5月28日に発売予定のNintendo Switch/PC(Steam)向けタイトル「シュレディンガーズ・コール」の先行プレイレビューをお届けする。

本作は、インディースタジオ「Acrobatic Chirimenjako(アクロバティックチリメンジャコ)」が開発を手がけ、集英社ゲームズがパブリッシングを行うタイトル。「世界最後の電話アドベンチャー」として、記憶を失った少女メアリが、月が落ちて人類が消滅する世界で死にきれない魂たちと、電話を通じて向き合う情感豊かな体験が特徴だ。

また、開発チーム「Acrobatic Chirimenjako」のAchabox氏、入交星士氏、ame氏と、プロデューサーを務めた集英社ゲームズの林真理氏にお話を伺っているので、ぜひこちらのインタビューもあわせてチェックしてほしい。

生と死の狭間に取り残された「世界最後の話し相手」

本作は月が落ちて人類の歴史が唐突に幕を閉じた、消滅まであと21ナノ秒という極めて短い時間しか残っていない世界が舞台だ。見知らぬ部屋で目覚めた記憶喪失の少女「メアリ」は、謎の黒猫ハムレットに導かれ、一台の黒電話を取ることになる。受話器の向こうから聞こえてくるのは、心残りを抱えたまま死にきれずにいる魂たちの声で、メアリは彼らの未練に寄り添い言葉を交わしながら、少しずつ心残りを解き、救いをもたらしていく「世界最後の話し相手」としての役割を担っていく。

「シュレディンガーズ・コール」レビュー:電話越しの対話を通して、“人と人が繋がる意味”を描く終末ADVの画像
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本作のゲーム進行は魂を救う一連の流れで構成されており、プレイヤーはまず“同じ悲しみを抱えた”電話相手を「確定」させるため「誰かのために生きていたい」「自分を嫌う気持ち」「信じ抜けば必ず叶う」など、自らの信念を選択するところから始まる。救うべき相手が定まったら会話パートへと移り、電話で本人や関係者に連絡を取ったり、未完了通話と呼ばれる世界に月が落ちたときに話していた「人生最後の通話」を聞いたりして、各キャラクターの心残りに関する情報を集めていく。

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例えば第1章「ルーシー編」では、とある事件で投獄され息子「ウィリアム」に自らを母と名乗れずにいる女性のストーリーが描かれる。ウィリアムへの想い、事件の背景に隠された真相、徐々に浮かび上がる不自然な点……など電話越しに感じられる思いと、終盤にかけて少しずつ明らかになる真実、メアリの話し相手として寄り添う対応が絡み合い、ヒューマンドラマとして自然と感情が揺さぶられた。

幻想的で没入感の高いシステムと演出

また、こうしたドラマを単に読み進めるのではなく、プレイヤー自身が黒電話を手に取り、能動的に物語へ介入していく感覚が印象的だ。メインキャラクターや関係者もメアリと同じく記憶を無くしており、電話越しに語られる言葉は曖昧でときに食い違い、断片的にしか“真実”を示してくれない。そのためプレイヤーは手帳を何度も開き、残されたキーワードを眺めながら、相手が何を伝えたがっているのかを自分なりに推察していくことになる。

「シュレディンガーズ・コール」レビュー:電話越しの対話を通して、“人と人が繋がる意味”を描く終末ADVの画像
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このようなインタラクティブな体験を通すことで、物語が受け身に消費されるテキストではなく、プレイヤー自らが咀嚼して読み解いていく出来事へと変わっていき、少しずつ相手の輪郭が見えてきたとき、受話器の向こうにいる誰かは単なる登場人物ではなく、“自分”に救いを求めるひとりの存在として立ち上がる。

だからこそ通話上で選ぶ受け答えは、単なるストーリーを進めるための選択肢ではなく、メアリとプレイヤーの相手を救いたいという感情が徐々に同期していき、各章のクライマックスでは「大事な決断をした」という緊張感と実感で没入感を大きく高めていた。

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各章では、家族、友人、恋人といった身近な関係性の中で生まれる後悔や心残りがテーマとなっており、誰しもが共感しやすい普遍的な感情が丁寧に描かれている。それと同時に、プレイを進めていく中でメアリ自身の記憶も少しずつ蘇っていき、シナリオの縦軸として「メアリとは何者なのか」「黒電話が置かれた謎の部屋とは何なのか」という謎へと繋がっていく構成は白眉で、最後までダレずにプレイできた。

「シュレディンガーズ・コール」レビュー:電話越しの対話を通して、“人と人が繋がる意味”を描く終末ADVの画像
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そして本作の魅力はストーリーの完成度はもちろん、従来のアドベンチャーゲームやビジュアルノベルとは一線を画す独自の演出にもあるだろう。絵本のような優しく柔らかなタッチのグラフィックを基調に、万華鏡を覗き込んだような抽象的な映像、思わず驚いてしまうような電話の呼び鈴音、画面のフラッシュや揺らぎ、光の明滅といった美術効果が、幻想的でファンタジックな雰囲気を醸し出す。

BGMもアンビエントなミュージックから不穏にかき乱すようなストリングスまで、シーンの盛り上がりに合わせて絶えず変化し、一種の映像作品としても儚い世界観と狂気・終末の雰囲気を表現する重要な要素となっていた。

世界最後の21ナノ秒に、あなたは誰と話す?

SNSやメッセージアプリ、チャットツールが当たり前になった現代では、誰かと繋がることそのものは決して難しくない。テキストを送り、既読が付き、気軽に連絡を取り合える一方で、交流自体がどこか“軽く”なりつつある側面もあるだろう。だが「シュレディンガーズ・コール」で描かれた電話越しの対話は、その対極にあった。

受話器を取ってダイヤルを回し、不明瞭な相手の言葉に耳を澄ませ、ときには沈黙や息遣いすら感じ取りながら、ゆっくりと言葉を返していく。本作はそんなアナログなコミュニケーションを通して、「人と人が繋がるとはどういうことか」を静かに問いかけてくる作品だった。

本作に登場する人々は皆それぞれに後悔や未練を抱えており、“誰かに話を聞いてもらうこと”を求めている。だからこそプレイヤーが物語を傍観するのではなく、受話器の向こう側にいる誰かの痛みに寄り添おうとしてきた積み重ねが、「自分は誰かとどう向き合ってきたのか」と自然と考えさせる。本作は終末を描きながらも不思議な温かさを持った作品で、クリア後ふと誰かの声を聞きたくなり、自ら電話をかけたくなるような感情を静かに残していくタイトルだった。

RPGとADVが好きなフリーのゲームライター。同人ノベルゲームは昔から追っているのでそこそこ詳しい。面白ければジャンル問わずなんでもプレイするのが信条。 X:https://x.com/sigh_xyz Bluesky:https://bsky.app/profile/sigh-xyz.bsky.social note:https://note.com/sigh_xyz

※画面は開発中のものです。

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