viviONによる新ゲーム事業「viviON Lab」と「viviON GAMES」について担当者にインタビュー――ゲーム領域に注力する同社のビジョンとは?

インタビュー
0コメント 仁志睦

2026年5月22日から24日まで京都・みやこめっせにて開催された「BitSummit PUNCH」。本イベントに出展していたviviONの新ゲーム事業「viviON Lab」と「viviON GAMES」について担当者へのインタビューをお届けする。

viviONは電子コミックストア「comipo」や書籍出版レーベル「viviON THOTH」、2次元コンテンツの商品を扱うオンラインストア「viviON BLUE」など、さまざまなコンテンツを展開している企業で、グループ会社のエイシスがダウンロード配信サービス「DLsite」を運営していることでも知られている。

そんなviviONだがゲーム事業への取り組みを強化しており、その一環として2026年5月にインディーゲームのパブリッシングレーベル「viviON Lab」の立ち上げとスマートフォンでPCゲームを楽しめるクラウドゲーミングサービス「viviON GAMES」の展開を発表している。

このふたつの事業はそれぞれ独立したものではなく、相互に連携しながら進めていくのだという。これらの事業を通したviviONの狙いや目指しているものは何なのか。BitSummit PUNCHの会場にて、それぞれの担当者にインタビューできたので気になることをいろいろ聞いてみた。

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インディーゲーム業界のニーズに応えるための「viviON Lab」

「viviON Lab」はインディークリエイターのタイトルを取り扱うパブリッシング事業だ。レーベルの立ち上げにあわせてEgg Hatcherの育成ゲーム「明月の娘」、silver978の新作であるサイコロジカル・ホラー「7 Days To Think About It」がSteamにてリリースされることが発表されている。

今回のBitSummit PUNCHでも、viviONブースにて「7 Days To Think About It」と「明月の娘」の前作となる「火山の娘」、DLsiteレーベルの「Lil'tlilia リトリリア - 泉の女神と森の魔女」が「viviON Lab」のプロモーションの一環としてプレイアブル出展されていた。

本事業はパブリッシャーとしてどんな強みがあるのか、なぜインディーなのか、今後の目標をどこに置いているのか。「viviON Lab」の運用全般を担当する事業推進部の池田奈々帆氏に語ってもらった。

――池田さんの本事業における役割から教えていただけますか。

池田:「viviON Lab」の運用面について全般的に担当しております。国内外のクリエイターさんとのやり取りや発売日の調整、ローカライズをはじめとした対応に伴う協力企業さまとのやり取り、発売までのプランニングなど「viviON Lab」に関するほぼ全てのことを手掛けております。

――viviONがパブリッシング事業に参入されるにいたった経緯を聞かせてください。

池田:やはり、インディーゲームがかなり盛り上がってきているというのがありました。今まではviviONではなく、グループ会社のエイシスが運営する「DLsite」でクリエイターさんとやり取りさせてもらっていましたが、その範囲をインディーゲームに広げて、さらにクリエイターさんをサポートしていきたいということで参入した次第です。

昨今、インディーゲームのクリエイターさんの数は急激に増えています。パブリッシャーの数も増えてきてはいますが、まだ需要に対しその数と対応が追い付いていないと捉えています。

また、クリエイターさんとパブリッシャーが対等な関係で理解し合い交渉できるのが理想ですが、そうでない事例も多く耳にしています。たとえば、料率がすごく高いとか、成人向けの作品が関連する場合にはまったく交渉の余地がないというケースとか。私たちは、クリエイターさんお一人おひとりと話し合って条件を定めていくパブリッシャーとなり、この事業を通してクリエイターさんの活躍をお手伝いしたいと考えています。

――そうした業界のニーズがあって、かつビジネスとしても成立する余地が大いにあるという読みもあってのことだと思うのですが、そのあたりはどうでしょう。

池田:もちろん、私たちも慈善事業というわけではありませんので、現実問題としてクリエイターさんからのご期待に全て応えるのは難しいです。

例えば「資金は欲しいけど料率面では一切妥協できない、そのうえで何十万文字の翻訳を何十言語で絶対やってほしい!」といったケースは難易度が高いですね。クリエイターさんそれぞれのこだわりや優先事項を整理して、どういった支援が出来るかビジネス面のバランスも見ながら判断していくことになります。

私たちは、今回発表しました「viviON GAMES」やグループ会社のエイシスが手掛けている「DLsite」など、グループ事業においてゲームのプラットフォーマーの側面も持ち合わせています。

「viviON Lab」単体で成果を捉えるのではなく、会社やグループ全体を通してクリエイターさんのお役に立っていくことを考えています。

多くの事業を持つことによって、それぞれの事業の強みと弱みを俯瞰し、新たなニーズを満たすことによってクリエイターさんがより活躍できる状態を作るであるとか。そこを補うことによって、別の事業ともシナジーが生まれて我々としてもメリットが出るとか。単体では採算性がちょっと難しいものでも実現が可能な会社だと思っています。

その点で言いますと、ゲームの開発の段階から直接支えるサービスというものが今までのviviONグループにはなかったんです。

ゲームが完成したあとの、クリエイターさんの作品をユーザーさんに届けて収益を上げる「販路」の部分はDLsiteやviviON GAMESが担えます。その前後にあるニーズとしての、クラウドファンディングでの資金確保や、ファンコミュニティの運営に活用できるCi-enというサービスもあります。

ただ、開発に取り組むクリエイターさんに個別に寄り添ってサポートするところは抜け落ちていたので、であればそういったニーズも満たした方がいいよねということでゲームのパブリッシング事業を始めたという面もありました。

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――事業の立ち上げにあたって特に難しかったとか、大変だったことは何でしょう。

池田:基本的なところは、エイシスとして「DLsite」でもやっておりましたので問題なかったのですが、インディーゲームと同人って考え方とかに違うところがありまして、インディーゲーム向けの価値観に変えるところでの難しさはありました。

最近抱えている課題としては、やはりインディーゲームのクリエイターさんってNintendo Switchへの移植を希望される方も結構多いんです。でも、弊社はNintendo SwitchやPlayStationでのリリースをやったことがなくて、そういった知見がちょっと抜け落ちてしまっていたのを課題として感じているところです。

――タイトル探しは、どのように行っておられるのでしょうか。

池田:今回のBitSummitはもちろんのこと各種ゲームイベントに直接足を運んでいます。また、募集フォームを設けておりまして、ご応募いただいたクリエイターさんとも直接話し合ったりしています。

――タイトル探しの際に、特に気をつけて見ているポイントはありますか?

池田:現状の「viviON Lab」のメンバー個々の価値観といいますか、感性で営業しているところはあります。ですから、完全にこういった方針で見ているっていうのはありませんが、個人的には作品の個性の強さ、クリエイターさんが表現したいものを表現している作品を重視しています。なので、一般受けしそうなものより尖っていて印象に残るものの方が、相性がいいと思います。

――インディークリエイターさんとの交渉ではどういった点に留意されていますか?

池田:クリエイターさんがどんな支援を求めているかというのを最初に聞くようにしています。その上で、こういった支援ができますよとはお伝えしていますが、支援できるかできないかって本当にケースバイケースなんです。資金を求めていますといっても500万円という方もいれば、数億円規模でという方もおり、かなり幅があります。翻訳して欲しいという場合でも日本語で1万文字くらいのものから100万文字以上というものまであります。

なので、こういったことはできますということをある程度お伝えしつつ、そのクリエイターさんがどういった支援を求めているのかうかがって、そこからさらに深掘りして、こういったことならお手伝いできます、こういったことはお手伝いできませんといった感じで進めております。

――とんでもない支援を求められたことはありましたか。

池田:のちのちあるかもしれないですけど、今のところ法外なことを求められたことはないです。海外を見据えてやっていきたいから翻訳して欲しいとか、こういった構想があって進めているけど、開発が80パーセントくらいまでいったところで資金難が発生しそうだから助けて欲しいといった合理的な要求をされる方が圧倒的に多いですね。

ただ、夢として映画化したいと言っていた方はいました。「8番出口」が映画化したじゃないですか。もちろん、絶対やって欲しいというわけではないですけれども、アニメ化や映画化といったメディアミックスを夢見る方が最近は出てきたかなという印象はあります。

――今回のBitSummitでは「明月の娘」と「7 Days To Think About It」が「viviON Lab」のタイトルとして出展されていますが、この2作が第1弾のタイトルになった経緯を教えていただけますか。

池田:やはりインディーゲームのパブリッシングサービスを立ち上げるという段階では、クリエイターさんもなかなか手を出しにくかったかと思うんです。そんな中で、無事に成約までいたってくださったわけで、この作品にあえて絞ったというよりもむしろクリエイターさんの側が選んでくださったという感じですね。

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――「viviON Lab」が公式にリリースされてから反響はありましたか?

池田:実際に応募してくださったディベロッパーさんがすでにいらっしゃいますし、メディアからもお声がけいただいたりしましたので個人的には結構反響があったなあという印象です。正直言いますと、まったくないんじゃないかと思っていたので。1週間後に東映ゲームズさんの発表があって話題を取られちゃいましたけどね(笑)。

ただ、過度に期待され過ぎても困ると実は思っていたりします。昨今のインディーゲーム業界を見ますと、パブリッシャーさんに裏切られたとまでは言いませんが、期待通りにいかなくてヘコんじゃったっていうディベロッパーさんもいらっしゃいます。

数十社にアピールしたけど全然返信をもらえなかったとか、そのうち体験版をプレイしてくれたのはほんの数社で、そこにもお断りされたとか。そういった中で、あまりに期待され過ぎた状態でお問い合わせいただいても、応えられないかもしれないというプレッシャーは正直ありました。反響が無さすぎるのも悲しいですが、あり過ぎてもご要望に応えられない人が出てきてしまい、結果的に申し訳ないという形になる方が上回ってしまったんじゃないかなと思います。

――まずは手広くというよりも、個別に手厚くといった感じですか。

池田:そうですね。まずは少しずつやっていこうという感じで考えております。まだ始めたばかりでもありますし、クリエイターさんとそのゲームにしっかりと向き合うことを取り組みの根底にしています。

クリエイターさんが弊社を選んでくれたことが良い選択であったと思っていただけるよう、まずは社内のリソースも見ながら確実にひとつずつ積み重ねていくよう考えております。

――では、現状としてはどのぐらいのタイトルを扱っていきたいとお考えですか。

池田:2026年度ですと、あと3タイトルぐらいは増やしたいかなと考えております。そこから先はクリエイターさんが損しない形というところを意識した上で、少しずつ様子見をしながら取り扱う作品数を増やしていく形になると思います。

――2026年度の3タイトルは発表ベース、発売ベースのどちらになるのでしょうか。

池田:発表ベースになると思いますので何本発売できるかはわからないです。開発が遅れるということも当然起こりえますし。ただ、「DLsite」の系譜を引き継いでいるからというのもあるんですけど、リリースが遅れたからといってクリエイターさんを急かすようなことは考えてないです。もちろん、あまりにも遅れすぎると話は別ですけどね。

――今回、BitSummitに出展されたわけですが、今後もこのようなイベント出展を続けていきたいとお考えですか。

池田:そうですね。国内外問わずやっていきたいと思っております。この5月にはインドネシアの「Comic Frontier」という、どちらかというとコミケっぽいイベントにも出展してきました。韓国もゲームイベントが多いですし、ゲーム主体のイベントにとどまらず、ゲームやオタクコンテンツが好きな方が集まるイベントに国内外問わず参加していきたいと考えています。

――プラットフォームはSteamがメインになっていくのでしょうか。開発者さんの要望次第ではコンシューマーでの展開もお考えでしょうか。

池田:現時点ではSteamのみになりますけど、SwitchやPlayStationに関しましても現在進行形で検討中ではあります。それと、「viviON GAMES」という弊社が展開するスマホのプラットフォームもありますので、そちらでもリリースしていく予定です。

――「viviON GAMES」との連携も視野に入れておられるんですね。

池田:基本的にはそうなんですけど、現状の「viviON GAMES」は相性の良し悪しがありまして、弾幕シューティングや格闘ゲームなどフレーム単位でのシビアな操作や、複雑な操作が要求されるタイトルには弱いと聞いています。そういった作品は最初からがっつり連携という形にはならないかもしれませんが、基本的には連携していく想定で考えております。

あとは作り手の方がどこに展開したいかですね。Steamとコンシューマーのどこそこで出したいというのがモチベーションで動かれている方もいらっしゃるので、どこに作品を置きたいかっていうところでも向き合って対応していくことになると思います。

また、移植のお手伝いもやっていく予定です。ただ、移植作業を全部個人でやりたいというディベロッパーさんもいらっしゃいます。移植回りをパブリッシャーがやると、どうしてもパブリッシャー側に料率が傾いてしまいますから。なので、独自でやりたいという方に関しては、こちらはサポートだけという形になります。

逆に、完全にお任せしたいという場合は、その前提で検討していくことになります。基本的な移植関係はディベロッパーさんでやるけれどもQA(品質保証)だけお願いしたいとか、結構細かなところでの調整もしております。

――今後の短期的な目標と、数年先を見た大きな目標というものがありましたらお聞かせいただけますか。

池田:短期的な目標としましては、行える支援の選択肢を増やしていくというのがあります。現状では、まだSwitch移植とかに関して知見がないので、そういった知見を貯めつつ積極的にやっていけるようなパブリッシャーになりたいと思っております。その上で取り扱う作品数も徐々に増やしていって、パブリッシャー不足を解消できればいいですね。

長期的な目標としましては、世界一のパブリッシャーになろうというようなスタンスではないです。パブリッシャーって、ディベロッパーさんがどういう基準で選ぶかによってすごく変わってくるんです。

たとえば、がっつり二人三脚で企画書段階から一緒にやっていきたいという方もいらっしゃれば、自分の好きにやらせて欲しいという方もいらっしゃいます。パブリッシャー選びも、欧米圏で出したいから欧米のパブリッシャーさんを選びたいとか、ストーリー特化のパブリッシャーさんを選びたいとか、結構多種多様なニーズがあるんです。

なので、世界一のシェアを誇っていくというよりは、ディベロッパーさんの選択肢のひとつとしてちゃんと活用してもらえるパブリッシャーになれればいいなと考えております。

――最後にインディーゲームのクリエイターさんたちにメッセージをお願いします。

池田:基本的に「viviON Lab」は、門前払いはしないというスタンスでおりますので、お気兼ねなく、ご相談いただければと思います。viviON Labは、クリエイターさんの表現したいことを尊重し、クリエイターさんを大切にするというviviONグループに通底する理念で動いております。

まだ立ち上げ段階で、世界に名だたるパブリッシャーと比べるとできない部分も多いかもしれないですが――ご相談いただければ全力で挑戦させていただきます。

――ありがとうございました。

自社でのクラウドゲーミング開発が強みの「viviON GAMES」

「viviON GAMES」は2026年サービス開始予定のスマートフォン向けのクラウドゲーミングサービスだ。PCゲームをスマートフォンで楽しめるというもので、サブスクリプションモデルではなくゲームごとの買い切りモデルを採用している。

注目すべきは独自のクラウドゲーミングエンジン「OOParts Engine(オーパーツ・エンジン)」を活用していること。クラウドゲームサービス「OOParts」が手掛けた技術で、2025年8月の同サービスの終了にともないviviONへと迎えられた。PCゲームをサーバー上で動作させるシステムのためスマートフォンへの移植作業が必要ないのが強みとなっている。

BitSummit PUNCHのviviONブースでは、この「viviON GAMES」の試遊展示も実施。「夜廻三」「制服カノジョ」「片道勇者プラス」など7本のゲームがスマートフォンで楽しめるようになっていた。

「viviON GAMES」ならではの強みとは、OOParts Engine導入の過程で重視したことは何か、通信や操作面での問題はないのか。なぜサブスクではなく買い切り型にしたのか。「viviON GAMES」の責任者である辻勝明氏に本事業に関するさまざまな疑問について、お話をうかがった。

viviON事業推進部の辻勝明氏。
viviON事業推進部の辻勝明氏。

――「viviON GAMES」はクラウドゲームのサービスと考えてよいのでしょうか。

辻:そうなんですけど、いわゆる一般的なクラウドゲーミングと同じところもあれば、ちょっと違うところもあります。「ゲームがスマホでいつでも」というのをキーワードに運用しております。確かにクラウドゲーミングの技術なんですけど、我々は自社でクラウドゲーミングの開発をやっておりましてエンジニアも社内にいます。

他の会社さんですと、パブリッククラウドから提供されているクラウドサービスのシステムを使って運営されている会社が多いです。それに対して我々は昨年買収した「OOParts Engine」をベースにし、自社開発していることもあって非常にコスト面を抑えられています。

――OOParts Engineを買収された時点で、このサービスを視野に入れて動いていたということなのでしょうか。

辻:そういう方向で広がる可能性はあるなと考えてはいました。我々は今年viviONとしてゲームの領域に注力していこうという方針を取っていまして、池田が担当している「viviON Lab」もすでに始まっています。今までプラットフォームの会社はプラットフォームだけやっていて、パブリッシャーもやっている会社はなかなかなかったので、両方やっているというのはかなりの特徴になると思っていました。

我々はもともとプラットフォーマーですが、社内にマーケティングの部署や海外対応している部署もあったりするので、パブリッシャーとしてそういったような動きもできます。本来であれば、そうした部隊を動かす場合は極力自分のメディアの中に囲い込んでっていう戦略を皆さん取られると思うんですけど、そうではなくてスマホに関しても我々は別に囲い込む気はないですし、PCゲームはSteamさんで遊んでいただいてかまわないと思っています。逆に、プラットフォーマーとパブリッシャーの両面を持っているのは我々ぐらいなので、クリエイターさんの選択肢も広がるんじゃないかなと思っています。

――そうした考えからこのサービスの企画がスタートしたという感じだったのでしょうか。

辻:我々は長くプラットフォーム事業をやってきたこともあって、ゲームだけではなく漫画、書籍、音声コンテンツなどのクリエイターさんたちとも長いお付き合いがあって信頼関係もあるんですね。そういったところと、このクラウドゲーミングの技術を組み合わせて「viviON GAMES」という形でゲームの領域で新しく注力していける土壌が整ったことがスタートになっています。

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――とはいえ、OOParts Engineをそのまま流用したというわけではないですよね。

辻:結構手を入れました。我々のエンジニアはもともとバリバリのゲーマーなので、すごく面白がってくれていて1個でも多くゲームを届けられるようにしたいと日々開発をしてくれています。OOParts Engineを買収してきたときからすると今は全然バージョンも違いますし、安定性が高まって動くタイトルも格段に広がっています。

――技術面で特に重視された部分はありますか。

辻:クラウドゲーミングなので、どうしても遅延というものは発生してしまうというのがあります。それをいかに短くしていくかっていうところと、接続圏外になったときにゲームに戻ってこられるか。5分も10分も経つとさすがに切れてしまうんですけど、ちょっと20秒圏外になりましたというときにゲームに戻ってこられるかはすごく大事で、今も100%完璧とまではいかないですが、ユーザー体験を損なわないよう心がけてやっています。

――やはり遅延とか回線切れといったところに神経を使われているんですね。

辻:そうですね。ただ、自社でやっていることもあって接続先のサーバーさんはいくらでも選びようがあるんです。たとえば、A社だけに繋げているわけではなく、お客様のいる国とか地域によって、じゃあこの国の人はここのB社のサーバーに繋げようとか、この軽いタイトルはC社のサーバーでいいけど重いタイトルはこっちに繋げようといった感じで最適なサーバーが選べるよう、さまざまな会社さんとやり取りをさせていただいています。どこかのサーバー会社さんのサービスに乗っかっていると、そこしか選択肢がなくなってしまうので、そういう意味ではなかなか汎用性が広いのではないかと思っております。

――移植作業が不要になるとのことですが、操作面も不要なのでしょうか。

辻:ゲームごとに一番いいキー設定にするといったことは我々の方でやらせていただきます。もちろん、「このキーを使うからね」といったご連絡はいただけた方がありがたいんですが、我々だけでも全然やっていけます。DRM(※)のかかっていない状態で作品をお預けいただければ、移植に関することはすべて我々の方でやらせていただきますと。

※デジタルコンテンツの不正利用や複製を防ぐ技術

――仮想コントローラーだと操作感が違ってくるというのもあったりすると思うのですが、そのあたりはどうお考えですか。

辻:BitSummitで実際に試遊してもらって、皆さんに感想を聞いているんですけど思っていたよりも全然意識しないでプレイできているというお声をいただいています。今の操作も最終版ではなくて、まさに工夫している最中なので、より良いものにできると思っています。ゲームによってはBluetoothで接続するタイプのコントローラーにも対応していて、スマホを画面にしてゲームコントローラーでプレイするみたいな遊び方もできますので、それであればまったく違和感なく普通に遊んでいただけると思っています。

――とはいえ、UI回りなどがスマホ向きではない作品もあるとは思います。

辻:スマホの小さい画面ではどうしてもプレイしづらいといった相性の問題はあると思っています。そこに関してはローンチ時はちょっと難しいと思いますが、画面の一部だけをピンチアウトして拡大するとか、いろいろ研究をしています。プレイヤーの方で何か工夫をすることで、クリエイターさんがこのサービス用にフォントサイズなどを変えたりせず、PC版をそのままご提供いただければ遊べますよという形がいいんじゃないかなと思っていて、今も進めさせていただいています。

――推奨スペックが高いゲームに関してはどうでしょう。

辻:それも大丈夫です。サーバー側で全部処理していますので、ものすごい3Dのゲームでも全然動きます。ただ、どうしても遅延問題が発生するのでFPSのゲームや格闘系や弾幕系といったあたりは現時点ではちょっと難しいかなと思っています。

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――サブスクではなく、買い切り型にした理由を聞かせてもらえますか。

辻:ここは弊社のこだわりのポイントなのですが、もちろんサブスクにはサブスクの良さがあるとは思っています。ただ、クリエイターさんとユーザーさんの両方の声を聞くと、ユーザーサイドでは毎月料金がかかるのはイヤだっていう声が結構あるんです。

クリエイターさんサイドでは、サブスクだと最新のゲームはちょっと置きたくないということで、どうしても扱えるタイトルが古いタイトルになりがちなんです。皆さんが遊びたいのってやっぱり最新のゲームだと思いますので、そういったタイトルを扱わせていただくためには、やはり買い切りモデルの方が適していると思ったんです。サブスクだとゲームクリエイターさんにお戻しできる料率が下がってしまうなどの問題もあり、買い切り型の方がクリエイターさんにきちんと利益を還元できるというのもありました。

――どれくらいのタイトルを展開される予定でしょうか。

辻:リリース時には30タイトルくらい揃えられそうです。ただ、BitSummitでのクリエイターさんの反響を見ていると、もうちょっと増えたりするかもという感覚も徐々に出てきていまして、まだ決めきっていない状態です。

頑張ったけど10タイトルくらいしか取れないんじゃないかと思っていたこともあったんですけど、予想していた以上にクリエイターさんの反応が良かったんです。じゃあちょっとゲームを送るんで動くか試させてください、みたいなやり取りをさせていただいて、これぐらい動くんだったらいいですよ、みたいな声がだんだん積み上がってきています。

――では、結構な本数がいけそうですね。

辻:ただ、最初から一気に100本とかになると……クリエイターさんとゲームユーザーさんにご迷惑をおかけしないというのは信頼にすごく関わるところですので、そういう意味ではちょっと慎重なスタートになるかなと思います。

――ちなみに、タイトルを預かってからサービスを展開できるようになるまで、どれぐらいの期間がかかるのでしょうか。

辻:最短だと1週間かからないです。ゲームごとに何かを最適化しているわけではないですから。ただ、理論的にはPC上で動いているゲームはそのまま動くんですけど、先ほども言いましたとおり重くなったりしないかとかチェックする時間はどうしても必要になります。ですから、どれぐらいというのはちょっと言いにくいですが、今までのスマホゲーム化のような、それこそソースコードを1個1個変えてみたいなところから比べると圧倒的に短い期間で出せると思っています。

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――同時期に情報が公開された「viviON Lab」とも連携していくとお聞きしたのですが、どういった形か聞かせてもらえますか。

辻:先ほども申しましたように、我々はプラットフォームを持っていて、かつパブリッシャーでもあるというところが最大の強みだと思っています。クリエイターさんから見たら、ゲームを1個預ければスマホゲームにしてくれるし、世界に届けてくれるし、Steamにも置いてくれる。それをちゃんとマーケティングしてくれて、海外ユーザーにもっと届けようとなったら海外ユーザー向けのマーケティングにも対応してくれる。これらをすべてやるのはプラットフォームだけではなかなか難しいんですが、我々は一気に両方できます。

もちろん、Steamだけでやっていきたいというのであれば、それはそれで全然構わないです。何か制限をつけてということは一切ありません。また、将来的なビジョンとして、ユーザーさんとクリエイターさん双方のニーズがあれば、弊社は書籍の出版やグッズの製造販売も行っておりますので、そういった形でゲームのポテンシャルをより広く世の中に広めるというところでも、お力になれる可能性があると思っております。

――いろいろなシナジー効果があるわけですね。

辻:完全にブラウザ上で動いているのも特徴のひとつです。あえてそういう風にしているのにはちょっと理由がありまして、要するにURL1個あれば誰にでも「遊んでね」って言って渡せるんですね。で、我々のグループはVTuberの運営なども行っていまして、そうした方にゲーム実況とかで宣伝していただくときに、コメント欄の一番上にURLを表示して、「このゲームはここで遊べます」「ここで買えます」みたいな形にできるんです。見ている人はスマホで購入できて、そのままゲームマシンになるという。その一体感の体験っていうのは結構強いなと思っています。

――冒頭部は無料でプレイできて、ここから先は購入みたいな形もできるのですか?

辻:それもできます。プロモーション用に無料のタイトルをご用意するとか、ハードルの低いところから入っていただけるように今後も設計していきたいですね。

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――今回のBitSummitに出展してみて、まだ初日ですが手応えはありましたか(※)。

※インタビューを実施したのは初日の5月22日

辻:思っていた以上に反響がすごくて、「買い切りなの? だったらちょっと興味あるんだけど、後で連絡して」みたいなことがたくさんありました。実際に遊んだユーザーの反応というのを開発陣もすごく気にしていたんですけど、「全然気にならないですよ」「普通に楽しんでます」みたいな声をたくさんいただけて、少し自信にも繋がったかなと思います。

あとは一般ユーザーの方にたくさん遊んでいただいて、そのお声をどう反映していくかですね。当然、今の時点で完璧などとは思っていないです。ただ、ウチは自社に開発陣がおりますので、今日のフィードバックとかテストログとかも全部追っていってリリースまでにちょっとでも良いものをお出ししたいと思っています。

また、リリースしてもそれで終わりではなく、海外展開するとなったら海外のサーバーにちゃんと繋がるようにとか、やりようはいっぱいあるので、それらをどんどんやり続けてユーザーさんのネガティブな体験を少しでも無くしていきたいと思います。

――最後にリリース直後の短期的な目標と将来の展望を聞かせてもらえますか。

辻:短期的な目標数字は公開していないのですが、1人でも多くの方に新しいゲームの遊び方に触れてもらうことを目指して今はその準備に全力をあげています。

サービスのローンチ時に、まずは日本国内向けの展開を予定していますが、私たちは「世界のviviON」を社内のキーフレーズとしており、将来的には世界の皆さんに日本のコンテンツをお届けすることができればいいなとすごく思っております。

そのためにも、ぜひ「viviON GAMES」にご興味を持っていただいて。まずはクリエイターさんということになると思うんですけれども、お声がけいただければ我々の方で動く、動かないというのも含めて、ご提案できると思うので気軽にご連絡いただければすごくうれしいです。

――ありがとうございました。

※画面は開発中のものです。

本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。

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