エレクトロニック・アーツが2013年に発売を予定しているPC用ソフト「シムシティ」。東京ゲームショウ2012にて、本作のリードプロデューサー・Kip Katsarelis氏に合同インタビューが行えたので、その模様をお伝えする。
2013年に発売予定の「シムシティ」は、Maxis(旧Play)レーベルが開発を手掛ける都市開発シミュレーションシリーズ最新作。フレンドと一緒に世界を変えることができるマルチプレイモードを導入し、昔からのファンだけでなく新たな世代のプレイヤーも楽しめる内容になるという。
今回は、アメリカ・サンフランシスコのMaxis Studioにいる本作のリードプロデューサー・Kip Katsarelis氏に、Skypeを通じてインタビューが行えたのでその様子をお伝えしよう。
都市開発シミュレーターとして、さらに進化した「シムシティ」
――本作のグラフィックには、実写をまるで模型を映したかのように見せる「ティルトシフト」技法が採用されています。なぜ今回この表現技法を選んだのでしょう?
Kip Katsarelis氏:「ティルトシフト」という技法があることを知り、ゲームに取り入れてみたいと思ったのが始まりです。すでにPVなどでもお見せしましたが、非常に美しく本物の模型のような表現が可能です。「シムシティ」という作品にすごくマッチしていますよね。
――では、ティルトシフト技法を取り入れることでゲームはどのように変わりましたか?
Kip Katsarelis氏:表現の幅がかなり広がったと思います。工場から立ち上る煙や火力発電所で石炭が使用され減っていく様子、人々の動きや水辺の表現など、すべてこの技法で再現できますので、緻密かつ相当美しい街並みが作れると考えています。
これまでのシリーズに比べ、システムやグラフィックなどで一から作り直しているところが多いですが、ティルトシフト技法を含めゲームとしてよい方向に進化しましたので、プレイヤーの皆さんには、自分が本当にその街にいるかのように感じていただけたら嬉しいです。
――本作で作成できる街のサイズを教えてください。
Kip Katsarelis氏:具体的な数値で言うのは難しいですが、「シムシティ4」で選択できた中型サイズのマップと同じくらいの規模とお考えください。
ただし、1つの街作りも重要ですが、今回はマルチプレイによる近隣の街との連動性が重要になるので、街の大きさだけではなく「地域」としての考え方が必要になるでしょう。
――これまでになかったような目新しい施設は登場しますか?
Kip Katsarelis氏:おなじみのものもありますし、新たに登場する施設もたくさんあります。また、施設はカスタマイズが可能で、警察署ならばガレージを増設したり牢屋を付け足したりすることができます。
その他には、スクールバス用のバス停も作れますし、路線バスの会社を作って近隣の街まで走らせるようなこともできます。
また、新たな要素として街の経済を活性化させるような大きなビジネスを呼び込むことが可能になっています。例えば石炭の採掘会社や、ギャンブルの施設やスポーツのチームなどですね。
――ユーザーが全く新しい機能をもった施設を作成するなど、UGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)についてはどのようになりますか?
Kip Katsarelis氏:今はまだ詳細はお伝えできませんが、MaxisはこれまでもUGCの制作環境をサポートしてきましたし、「シムシティ」ファンの方々も楽しいMODを作成してきましたので、そういった文化はファンコミュニティという意味でも重要な要素だと思っています。
――現時点ではPC版のみの発表となっていますが、今後PS3やXbox 360、その他のタブレットなどへの対応は検討されていますか?
Kip Katsarelis氏:過去にもコンシューマー機への対応で好評をいただいたことはありますが、現時点ではPC版の開発を最優先に行っています。それ以上については、まだお伝えはできません。
――データセーブについて教えてください。どのようなセーブ方法になりますか?
Kip Katsarelis氏:オンライン上にデータをセーブする、クラウドセーブ形式を採用しています。これにより、プレイ環境さえあればどこにいてもゲームの続きが再開できるようになっています。また、ゲームの進行に合わせたオートセーブも採用しています。
――本作で新たに導入されるマルチプレイモードについてお聞きします。電力供給など、他のプレイヤーやフレンドの街との相互発展的な協力が可能とのことですが、公害などのマイナス要因が拡散してしまうこともあるのでしょうか?
Kip Katsarelis氏:他のプレイヤーの街に住人が職場を求めたり、電力や水源の供給などで協力できるほか、火事の被害なども拡散していきます。また、自分の作った都市の犯罪発生率が高い場合は、近隣都市に犯罪者たちが移動して治安を悪くしてしまうこともあります。
もちろん工場都市などの場合は、空気公害が近隣都市に及ぶこともありますよ。
――では、そういったマイナス要因が拡散してしまった場合、どのようにして被害の拡大を抑制すれば良いのでしょう?
Kip Katsarelis氏:1つは、フレンドと協力して対処することです。犯罪なら警察、火事なら消防署など、被害を沈静化させるための施設を効果的に配置するのがいいでしょう。これが一番ですね。
ただし、犯罪などで最悪の治安状況になってしまった場合、フレンドが街を放棄することも考えられます。そのような時はフレンドの街を乗っ取り、自分で再建していくことも可能です。
――非常にデリケートな質問になります。2011年に日本では震災に伴う原発事故が発生しました。本作では原発は登場しますか?また、シミュレーションという意味で、原発の事故なども発生しますか?
Kip Katsarelis氏:まず、昨年日本で起きた大災害については、開発陣を含めしっかりと理解しているつもりです。それを踏まえたうえでのお話として聞いてください。今回の「シムシティ」にも、これまで同様に原発は登場します。また、事故も発生します。
それは、「シムシティ」というゲームの根幹がシミュレーターであり、実際に起こりうる物事はゲームの中でも発生させるという開発ポリシーがあるためです。どのような施設があると、どんなことが起こり、どういった危険が発生するのか、そして事件や事故が起きた時にどうやって街を再建していくのか―そういった要素をプレイヤーに擬似体験してもらうためにも、これまで通りに原発ユニットは登場させています。
――では、「シムシティ」ならではの災害についてお聞きします。今回は、どのような非現実的な災害が発生しますか?過去作品のようにゴジラやUFOなどは登場しますか?
Kip Katsarelis氏:その点については、残念ながらまだお話できないのですが、もちろんゲームはゲームとして楽しんでもらえるように作らないといけないと思っているので、何かしらのゲームらしいアクシデントを用意する予定です。
――ありがとうございました。