1万本以上のゲームを所持しているゲームコレクターの酒缶さんが、ゲームアーカイブスで配信されているタイトルに携わった方々にインタビューを行う連載企画「ゲームコレクター・酒缶のリコレクションアーカイブス」。第6回目は、プロフェットの岸本良久氏へのインタビュー後編をお届けします。

目次
  1. 今回のリコレクター:岸本良久氏
  2. 「超兄貴 ~究極無敵銀河最強男~」
  3. ●プロフィール

昔遊んで今でも遊べるあのゲームの開発者に話を訊きに行く「リコレクションアーカイブス」の第6回は前回に引き続き、「超兄貴~究極無敵銀河最強男~」の開発者、プロフェットの岸本さんに話を訊いていきます。

今回のリコレクター:岸本良久氏

プロフェット代表取締役。くにおくんシリーズと「ダブルドラゴン」シリーズの生みの親。制作に関わったタイトルは「熱血硬派くにおくん」(AC、FC)、「ダブルドラゴン」(AC、FC)、「超兄貴~究極無敵銀河最強男~」(PS、SS)、「フィーア」(iOS、Android)、「熱血硬派くにおくんすぺしゃる」(3DS)など多数。

岸本氏(以下、敬称略):夜だったので、逃げられてしまって、「怪しいものじゃないです」と呼び止めて話をしたら、たまたま劇団をやっている人だったので。

酒缶:なるほど。では、弁天についている女の子、ミカとエルは?

岸本:それは当時2才だったうちの娘です。僕が横にいて演技しているのを真似させました。

酒缶:娘さんはノリノリでやっていたんですか?

岸本:ノリノリというか、まだ2歳だったのでわけもわからずやっていたんでしょうね。

「超兄貴 ~究極無敵銀河最強男~」

1995年12月29日に日本コンピュータシステムがプレイステーション向けに発売した横スクロールシューティングゲーム。韋駄天と弁天は銀河を恐怖に震撼させる究極無敵銀河最強男を倒すために旅立つ。実写とCGが融合して何かが足された世界観が、唯一無二の雰囲気を醸し出している。2009年3月11日よりゲームアーカイブスで配信されている。

ゲームアーカイブス版
http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0038npjj00252_000000000000000001.html

酒缶:「超兄貴」は、ゲーム内の実写もすごいんですけど、デモのムービーもすごいですよね。

岸本:キレてますよね。

酒缶:あれも絵コンテを作ったんですか?

岸本:いや、あれはスタッフにキレてる女の子がいて、その子が編集するソフトを自由に使って、遊びで作ったモノです。

酒缶:あれは女の人が作った世界観だったんですね。

岸本:ちょっとキレてたんですよ。

酒缶:かなりキレてましたけど(笑)。ゲームを構成しているビジュアルは全体的にキレてましたけど、ゲームのベースやキャラクターは「超兄貴」の1作目を踏襲していますよね。1作目よりも時代設定が前なので、ボスが新規ですけど。

岸本:お話は全部新しくしています。

酒缶:いきなりボスから始まるじゃないですか?あれは何か意味があったんですか?

岸本:意味がないですけど、いきなりボスが登場するというのは、他ではないじゃないですか。

酒缶:弾に当たってやられるとコンティニューになりますよね。

岸本:あれは、股間に1ドットのヒットチェックがあって、本当に1ドットで(笑)。これは楽しく作りましたよね。懐かしいなぁ。今はこういうのを作れないですよね。多分、このようなふざけたゲームを作れたのは最初で最後だと思います。

酒缶:ゲーム自体は結構難しいですよね。ボクはシューティングゲームが苦手なんですけど、イージーモードで最大限にコンティニューと機数を増やしてやっとクリアできました。

岸本:プレステはまだ簡単な方で、サターン版はメチャクチャ難しいですね。

酒缶:サターンの方が難しいんですか……1回死ぬと復活しづらいじゃないですか。あと、プロテインを沢山取った上で、アドンとサムソンが弾に当たらないように気を付けないと、オプションなのに動かなくなるじゃないですか。

岸本:そうですね。

酒缶:シューティングゲームのオプションというと危険なところに潜り込ませてたり、弾避けに使ったりしますけど、このゲームの場合、拗ねてしまって…。

岸本:一応、人間ですので(笑)。

酒缶:当時の開発スタッフはみんなこのノリで突っ走っていたんですか?

岸本:(笑)。結構変なヤツばかり集まっていたので。プログラマーが夜逃げしちゃったのが一番苦しかったですね。1ヶ月間、プログラマーを探しましたから。

酒缶:(笑)。ボスキャラもラフからあのキャラが出来上がっているんですか?

岸本:デザイナーに好き勝手に作らせました。

酒缶:こういうキャラがいきなりアイディアとして出てくるのは恐いですね。このゲームの異様な世界観を作ったのは、企画の方なんですか?グラフィックの方なんですか?

岸本:全体ですね。開発初期に、ボディビルの雑誌とホモ系のエロ本をかき集めました。当時、新宿に事務所があって、2丁目に行くとその手のショップが3件くらいあったので、後輩を連れて行って、「この世界観だからな!」と。

酒缶:(笑)発想を常識とは違うところに飛ばす必要があったんですね。

岸本:普通の神経ではこのゲームを作れないので、開発スタッフの全員を気絶させようと思っていました。その結果、自分のケツを出して隣のスタッフに写真を撮らせて、その写真をスキャンして背景を作るようなデザイナーが出てきました。

酒缶:(笑)。一応、シリーズ作品なんですけど、完全にぶっとんだオリジナルな作品なんですね。

岸本:使っているのは最初の「超兄貴」のキャラクターくらいで、中の世界観は完全にこちらで作っちゃっています。

酒缶:そんなゲームを1995年に作ったんですよね。すでに17年くらい経っていますけど……。

岸本:そうですね。うちの娘も二十歳なので。

酒缶:今でもこのゲームを新ハードで遊べるんですけど、当時は売れることを考えて作ってました?

岸本:(笑)。考えてはいましたけど、普通のゲームじゃないので……。自由に作らせてもらえたので、かなり話題にはなりました。こういうゲームは余程お金を出す会社が腹を据えてやらないと作れないですよね。ゲームを作ることを楽しめたのはこのゲームくらいです。「くにおくん」や「ダブルドラゴン」は自分が主人公になった気分で作っているんですけど、このゲームは狂っているので、ふざけて作れました。

酒缶:今年は「ダブルドラゴン」25周年ということで、「ダブルドラゴンネオン」というタイトルがありますけど、この作品は設定的には1作目からの流れなんですか?

岸本:いや、全然別モノです。監修に入った時には5割くらい出来ていて、「ここはこのキャラクターを使ってくれ」とか「ここの音楽は過去のシリーズで使ったものを使ってくれ」という指示はしています。一応、「ネオン」は番外編の扱いにしているので、「1」や「2」の流れとは全く別の空間の話になります。

酒缶:なぜ「ネオン」なんですか?

岸本:SF系の得意な会社だったので、多分、そういう設定をしたかったんだと思うんですよ。最後はロボットが出てきて、そういう世界になっているので。

酒缶:「ネオン」は「ダブルドラゴン」25周年に発売されるタイトルですけど、アメリカだけで日本では発売されないんですね。

岸本:やっぱり、「ダブルドラゴン」はアメリカの方が強いですね。1作目も200万本くらい売れてます。日本だと「くにおくん」の方が強くて、「ダブルドラゴン」は7掛けくらいでした。

酒缶:「ネオン」を遊ぶには、海外版のPS3かXbox 360が必要なんですよね。

岸本:ゲームの内容は凝っていて、「ダブルドラゴン」というよりはスクロールゲームとして精度の高いモノになっています。

酒缶:日本でもどこかから配信されるといいんですけどね。テクノスさんのゲームは、去年が「くにおくん」25周年、今年は「ダブルドラゴン」25周年ということで、両方とも区切りが付いたところですけど、今後、岸本さんの関わられているゲームはスマホが中心になりますか?

岸本:今、話せることはないのですが、発表したら取材に来てください。

酒缶:わかりました。取材に行かせてくれる媒体があれば、ぜひ。現状の仕事とは関係なく、今、岸本さんが作りたいゲームって何かありますか?

岸本:格闘モノも本当はやりたいです。「くにおくん」や「ダブルドラゴン」ではなくて、新しいモノを。

酒缶:ベルトスクロール系の格闘ゲームですか?

岸本:いや、作る時には、ベルトスクロールとか対戦格闘とか、そういうことは外して考えるんです。3Dは使うと思うんですけど、対戦格闘みたいなものを作るとなると、「空手道」のお決まりのパターンから抜け出せないんですよね。ゲーマーが遊んで喜ぶレベルではなく、格闘家が納得のいく格闘ゲームが作りたいです。ダメージメーターも一切付けない。だからゲーム画面はシンプル。ビジュアルだけで、だんだん弱っているのがわかるようにする。でも、そういうモノを作るには、お金が掛かるんですけど(笑)。

酒缶:「超兄貴」的な方向性のモノにはならないんですか?

岸本:こういうゲームはいくらでも作りたいんですけど、そういう機会はこの業界ではないと思いますよ。よっぽどチャレンジ精神のある会社じゃないと作れないですよね。こういう楽しいモノというのはなかなか売れないんですよ。自己満足の世界ですから。

酒缶:でも、期待して待ってます。ありがとうございました。

訪問後記

今年は「ダブルドラゴン」シリーズが25周年だったため、「超兄貴」の取材に便乗して「ダブルドラゴン」のこともいろいろと聞いてしまいましたけど、両作品が岸本さんにとって全く違ったスタンスで作られたゲームだったため、タイトルを対比して見られる面白い取材になりました。岸本さんがイメージする新しい格闘ゲームがいつか実現されることを期待しています。

●プロフィール

酒缶(さけかん)/ゲームコレクター

1万本以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。ニンテンドードリームにて「酒缶が訪う」連載中。最新作は3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」。

■公式サイト「酒缶のゲーム通信」
http://www.sakekan.com/

■twitterアカウント
http://twitter.com/sakekangame

■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション1」
http://www.pubooks.jp/item/detail?id=386

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※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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