ガストは、PS Vita用ソフト「シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~」のボーカルアルバムおよびオリジナルサウンドトラックを2月27日に発売する。今回、そのタイミングに合わせて、本作の音楽におけるキーパーソンとも言える、ディレクター・土屋暁氏と、歌手・志方あきこさんにお話を伺った。

目次
  1. Ciel nosurge Genometric Concert Vol.1~契絆ノ詩~
  2. シェルノサージュオリジナルサウンドトラック~音と世界の受信記録 Sec.1~
  3. 志方あきこコンサート2013ライラニア~白と黒の歌姫~

「シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~(以下、シェルノサージュ)」は、土屋暁氏が中核となって紡がれる、“遙か七つの次元を越えた先に、本当に存在する世界”というコンセプトを元に展開を行う「サージュ・コンチェルト」の第1弾タイトル。

PS Vitaというデバイスを通してプレイヤーとゲームのキャラクター・イオンがコミュニケーションをとるという設定と、イオンの過去が描かれる壮大なストーリーを、DLCとして順次配信していくという斬新なゲームシステムが話題を呼び、今年の2月21日には今までの配信シナリオや新規コスチュームなどを追加した「シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~ RE:Incarnation(以下、RE:Incarnation)」が発売された。

そんな本作の大きな特徴のひとつが、世界観と相まって独特な雰囲気を醸し出す音楽の数々であり、「アルトネリコ」シリーズに引き続き、土屋氏の作り出す世界観を音楽として表現する存在として、本作の歌唱や楽曲制作に関わっているのが、志方あきこさんだ。

2月27日にファン待望のボーカルアルバム「Ciel nosurge Genometric Concert Vol.1~契絆ノ詩~」と、オリジナルサウンドトラック「シェルノサージュオリジナルサウンドトラック~音と世界の受信記録 Sec.1~」が発売されることを受け、今回、土屋氏、志方さんの両名に、音楽制作におけるポイントや「シェルノサージュ」の世界観を表現する上での苦労などをたっぷりと語っていただいた。

Ciel nosurge Genometric Concert Vol.1
~契絆ノ詩~
シェルノサージュオリジナルサウンドトラック
~音と世界の受信記録 Sec.1~
(左から)土屋暁氏、志方あきこさん

――(志方さんに)最初に「シェルノサージュ」の歌唱や楽曲制作のお話が来て、世界観などの資料を見た時の印象をお聞かせください。

志方さん:参加させていただいていた「シェルノサージュ」が「アルトネリコ」と関連性はあるけれども別の軸の物語ということで、音楽も「アルトネリコ」の音楽性を土台にしながら、「シェルノサージュ」らしさをどのように出していくのかというのを最初に考えました。

光栄なことに音楽を楽しみにしてくださる方がたくさんいらっしゃったことと、土屋さんの構築された世界観が本当に素晴らしく、この世界観を音でどうやって実感を持って表現するか、すごく責任重大だなと思いながら、それに向かっていろいろと制作していきました。

――(土屋氏に)「アルトネリコ」から継続して、志方さんに歌唱や楽曲制作をお願いすることになった経緯はあったのでしょうか?

土屋氏:「シェルノサージュ」を始めとする「サージュ・コンチェルト」シリーズには、 “詩の力が魔法になる”というコンセプトが、世界観の根幹にあります。「アルトネリコ」の時にも志方さんと一緒に音楽を作って、音関連のアドバイスをいただき、世界を広げる上で色々参考にさせていただいておりましたから、今回は是非一緒に作っていただきたいと、そういった想いでお願いしました。

今回、全然違う作品ではあるのですが、雰囲気として同じ世界観で自分の世界を描く上で、志方さんの音楽は必要不可欠だったので、「また一緒にやっていただけませんか?」とお願いしたわけです。

――志方さんは、今作でBGMの制作にも参加されたということですが、そちらの感想についてお聞かせください。

志方さん:BGMと歌、両方とも関わらせていただけるということで、どうすればこの美しくて壮大で、夢のようなこの世界を、音で表現できるのかという点で試行錯誤をしました。

夢セカイは、イオンちゃんが見ている夢の世界ということなので、要所でのイオンちゃんの想いや伝えたいメッセージなどを、BGMにコーラスを入れることによって表現しています。コーラス入りのBGMが夢セカイのそこかしこに散らばっているのは、そういう理由からなんです。

――(土屋氏に)その点に関しても、最初からお願いする予定だったのでしょうか?

土屋氏:「アルトネリコ」の頃から一部のBGMや、BGM用のコーラスを作っていただいていたのですが、関わっていただく際に毎回、シナリオなどにも興味を持ってくださって、私がお話するといろいろなアドバイスをくれたりして、それが参考になってシナリオを作り直すといった事もあったんです。その時から、すごく世界のことをわかっていただけているんだなと思っていました。

こちらからすごく莫大な資料をお送りするのですが、全部読んでいただけて、あと(志方さん自身が)ファンタジーがお好きで、ご自身でもいろいろなファンタジー系の世界観をお作りになられているんですよ。音楽だけじゃなくて作品の世界にも精通されている方だなと感じましたし、今までもいろいろなタイトルでBGMをやられていたので、歌曲だけじゃなくて、世界を音サイドから作っていただけないかなというところで、BGMも一緒にお願いすることにしました。

志方さん:光栄なことです(笑)。自分の力不足を痛感することも多いのですが、夢セカイのシナリオ1章ごとに、とても勉強させていただています。

――志方さんが担当された各楽曲について、簡単にですがポイントをお聞かせいただけますでしょうか?

オープニングテーマ「詩無き丘へ」(作詞・作曲:土屋暁、編曲・歌:志方あきこ)

土屋氏:「詩無き丘へ」は私が作曲して、それを志方さんに歌っていただいた、「シェルノサージュ」用に一番最初に作った曲であり、メインテーマになります。同じ世界観の導入ということで、「アルトネリコ」の時もそうだったのですが、今回の世界で描きたいと思うテーマを歌詞にしたものになっています。

そして、実はこれまだ全体の半分だけになっていまして、もう半分はいつになるのかというと、まだ言えないんですよ(笑)。なのでちょっと短めで、「ロング版は?」という問い合わせもあるんですが、まあそのうち、という感じになっています。もちろん、それには理由がありますので、お楽しみにしてください。志方さんには歌ってもらっただけでなく、コーラスアレンジもしてもらっています。

志方さん:コーラスアレンジもおまかせいただけるということだったので、初めにいただいたラインよりもたくさんコーラスを加えています。曲と同じタイミングでいただいたオープニングムービーを見て、緊迫感の感じられるシーンには、より圧迫感のある民謡的なコーラスを入れたほうがいいと考えたり、ムービーのエフェクトが綺麗な部分ではふんわりとした綺麗なコーラスを入れてみようと考えてみたり。

それを土屋さんに提案すると、口だけでお伝えしていても「あ、いいですね!」と、的確にイメージしていただけているので、すごいな土屋さんと(笑)。

――自分の中での表現って、相手に伝わりづらかったりしますよね。

志方さん:特に音楽だと口で説明しても伝わらないことがあるのに、本当に素晴らしいと思います。

土屋氏:いえいえ(笑)。長く一緒にやっていますし、志方さんのアルバムもずっと聴いてますから、「この曲のこんな感じ」と言われれば大体わかるんですよ。

志方さん:音のキャッチボールがスムーズで楽しかったですし、自由にやらせていただけたので、最終的にもりもりとコーラスを入れさせていただきました(笑)。とにかく、大聖堂みたいなところに大勢の人がいるところから始まりますので、あの感じを出すために幾重にもコーラスを重ねました。高いほうも低いほうもパートを足しているのですが、縦のラインと横のラインで壮大な雰囲気が出せていればいいと思います。

土屋氏:バッチリです!

第一幕挿入歌「Ahih rei-yah」(作詞・作曲・編曲・歌:志方あきこ)

土屋氏:これは完全に志方さんの完パケ曲で、こちらからお渡ししたのは、シチュエーションとシナリオと、「少し和風が入っているといいな」という要望だけでした。シナリオも全部「ハイ!」とお渡しするだけで作っていただいているので、志方さんが第一幕のお話を読んで、イオンになって紡いだ曲という感じで作っていただいてます。

特にこの楽曲に関しては私はノータッチでして、最初に3曲ぐらい方向性を決めるためのデモ曲をいただいて、「どれがいいですか?」と言われて選んだぐらいです。それ以外のイメージは、ほぼ志方さんがイオンになりきって作っていただいています。

志方さん:最初、イオンちゃんというキャラクターでお話をいただいた時に、正直「私、イオンちゃん大丈夫かしら?」と思ったんですよ(笑)。私、「アルトネリコ」ですとパワーのあるキャラクターを担当させていただくことが多かったので、イオンちゃんのほんわかとした、温かみがあって優しい感じで歌えるのかな、と。

ですので、この曲のアイデアを考える時に、どういう風にイオンちゃんらしさを出すか、なおかつ私がやらせていただいているということには土屋さんの中で意味があるはずなので、その兼ね合いはすごく悩みました。

そしてデモを出す時には、私の中のイメージのイオンちゃんと、少し私らしさがありつつもイオンちゃんらしいものと、ちょっと冒険した曲という3曲を出させていただきました。個人的には1曲目の一番イオンちゃんらしい曲が選ばれるのではないかと思っていたのですが、結果的に2曲目のちょっと私らしいニュアンスの入った曲が選ばれました。

なぜ私がイオンちゃんの歌を歌ったのかという理由についてあとでお話を聴いてみたところ、後半になればなるほどイオンちゃんが成長していき、その過程と成長による彼女の変化をダイナミックに歌で表現してほしいということでした。ですので、これからもそのご期待に少しでもお応えできるように、頑張っていきたいと思っています。

序盤で歌われる「Ahih rei-yah」では、イオンちゃんが迷っていて、まだ歩きはじめたばかりの頼りなさがありつつ、芯はしっかりしていて、やる時はやるという部分を見せつつも、まだそこまでいかないというさじ加減が難しく、(土屋さんに)いろんなアドバイスをいただけてあの形にまとめられました。私だけの判断だったらイオンちゃんっぽい、もっと明るめでふわっとした曲になっていたと思います(笑)。

土屋氏:そのあたりの難しさも含めて、志方さんを信頼しているところがあるんですよ。イオンは明かせないところがすごく多いのですが、ちゃんと今後につながる意味があってお願いしています。今、ほとんどのプレイヤーの方は「イオンってこういう歌を歌うんだ」という感覚で聴いてくれていると思うんですが、実はキャラクターにはものすごい葛藤があって、特殊な事情もあります。

そういうのを志方さんが全部わかった上で作ってくださるのですごく悩んでしまわれるのですが、全てに意味のある一曲になって上がってくるので、こちらとしてはそれを聴くと嬉しいですし、楽しいですね。

第三幕挿入歌「QuelI->{ein te hyme};」(作詞・作曲・編曲・歌:志方あきこ)

土屋氏:第三幕はもっと大変でしたね。第一幕の時には、イオンに限らず、力を持つものであれば誰でもそう思うであろう「みんなを救いたい」という想いが歌になっているので、力を込めやすいんですよね。

第三幕の歌は、イオンの決意表明の歌になっているのですが、決意表明の立ち位置としてはまだ青いんですよね。「何とかしなきゃ!」ということで頑張って独り立ちして、自分も前に出てひとりで話せるようになりたい、みんなのために頑張りたいという気持ちを、まずは聴いてくださいという曲になっています。

とはいえ、パワフルな歌でも、おちゃらけた歌でも、儀式的な歌でもないので、「イオンらしさを出しつつ、内心の強さを出せませんかね?」という感じのオーダーでお願いした曲です。

志方さん:例えば、優しい感じでみんなにバーンと聴いてもらうというアプローチであればいろいろと浮かぶのですが、そうではなくて、芯の強さはあるけれども、バーンといき過ぎないというスリリングなお話をいただいて(笑)。作る上での根幹として、一番初めに「イオンちゃんはズバリどういう子ですか?」と聞いた時に、普段フニャッとしている子だけどやる時はやる子だと伺っていたので、第三幕ではやる時はやる子の片鱗を上手く表現できたら、期待にお応えできるのではないかということを念頭に置いて作らせていただきました。

今回CDになる時に、やる時はやる前のフニャッとした感じをすごく表現したいと思っていました。舞台になると衣装もそれなりに豪華なものを着て、皇女であることをバーンと出す歌を歌っているのですが、舞台に上がる前はやっぱりイオンちゃんはすごくドキドキしていたり、「私、大丈夫かな?」という気持ちが強くあったと思うんです。

その部分があってこそ、後半部分があるということで、CDでは前半部分をつけ足して、そこで悩んだり、足が震えたり声がかすれちゃうかもしれないけど、それでも頑張って伝えたいことがあるというのを表現しているので、テンションの違いを聴いていただければいいなと思います。

第二幕挿入歌「天地咆吼」(作詞・作曲・編曲:志方あきこ、歌:城 南海(きずき みなみ))

志方さん:歌い手の城さんが、悠久の流れを感じさせるような朗々とした、ふくよかな美しい声をお持ちの方なので、その持ち味を活かしながらもカノンちゃんとして表現したいと思いました。自分で曲を作っていると無茶なことをするのが多いのですが、他の歌い手の方に無茶を強いるのは失礼にもあたってしまいますし、初めて他の方の曲を書かせていただいたので、城さんの良さとカノンちゃんの良さを出すことに悩みました。

曲自体はある意味破壊を促すような曲なので、攻撃的な面を持っているのですが、その攻撃性だけを前に持っていってしまうと、カノンという存在の一方しか表現していないし、なおかつ城さんの声の良さを打ち消してしまうことになるので、勢いのある攻撃的な部分と、どうしてそうあるべきかという信念を朗々と伝える2つの緩急をつけて表現すると、そのあたりが伝わるのではないかと思い、試してみました。

テンポもガラッと変わって、鼓舞するようなところはテンポを早めに、その理由や信念を伝えて、かつ城さんの声の美しさを表現するようなところは割とゆったりめに表現しました。

――(土屋氏に)こちらもある程度、志方さんにおまかせという感じだったのでしょうか?

土屋氏:基本的にはカノンはこういう人で、この歌はこのために歌っているというのを教えただけです。普通、「どういう風にやればいいですか?」という感じになると思うのですが、志方さんの場合、「こんな感じとこんな感じで作ってみましたけど、どちらがいいですか?」みたいにいろいろと考えて提案していただけるので、こちらは決めるだけでした。

――楽曲に対して、注文をつけるようなこともほぼないということでしょうか?

土屋氏:これは比較的全体に言えることなんですが、音楽を作る人や絵描きの人、シナリオライターの人に対しては、基本的に私が素敵だと思える人にお願いしてやってもらうことにこだわっています。その理由として、その人が世界観を一緒に作ってくれる人であることは前提なのですが、何より私がその人の作品を尊敬できるということがあります。

その人におまかせすることによって、自分が蓋をしてしまうよりもいいものができるので、そういう良さをすごく大事にしたいと思っています。自分ひとりの作品だったら、全部自分の枠の中に入れてしまうという作り方もあるのですが、やっぱり志方さんやntnyさん(「シェルノサージュ」のキャラクターデザインを担当)みたいに、その人の持ち味を活かして、自分の世界と合わせて一緒にいいものを作っていくというのをやりたいのです。

そのためには、自分がその人を尊敬できなければできないし、その人も私の世界を気に入っていただけなければできないと思っていますし、世界観が決まったら、その後作ってもらうものに関しては感性を爆発させてほしいんです。そうやって出来たものだからこそ、クオリティも高くなると思いますし、みなさんにも喜んでもらえると思っています。ですので、曲の旋律や盛り上がりなど、曲そのものの技巧などに関するツッコミやダメ出しはほとんどしないです。

志方さん:「シェルノサージュ」の世界を見通しているからこそ、要所ですごく適切なアドバイスをしてくださいますね。これだけまかせていただける、自由度が高いということは、逆に責任重大でまるで挑戦状をいただいている気分で「期待に応えられるかしら?」と悩む部分も多いのですが、またそういう時に質問したりすると、面白かったり、適切なお答えが返ってくるので、それにいつも助けられているという感じです。

――初回特典のコメンタリーブックの内容で、特に注目してほしいポイントはありますか。

土屋氏:コメンタリーブックの中には、歌曲の世界設定的な解説と、その歌が歌われた時の状況、アーティストさんのコメントが書かれています。

基本的にゲームをやっていてもそこまでは見えないようなことも書かれていますし、ゲームをプレイされていない方でもシチュエーションがわかるような説明がされています。あと、志方さんを始めとする参加アーティストさんの素敵なメッセージが入っていますので、併せて楽しんでいただけたらと思っています。

――サウンドトラックCDにボーナストラックとして収録される「煌の砂漠を旅する少年」についてもお聞かせください。

志方さん:初めは特にボーナストラックというお話はなかったのですが、あるといいなと思って、勝手に作ってしまいました(笑)。

土屋氏:実はこちらから頼んだわけではなかったんですよ。お話いただいた時はビックリして、「そんなの大歓迎ですよ!」とすぐに快諾させていただきました。

志方さん:実はゲーム中のステージごとの廃墟で使おうと思っていた曲で、結局使わなかったボツ曲があったのですが、せっかくなのでサントラの世界観の最後を締めるかたちで作れるといいなと思って聴いていただいたところ有難いことに喜んでいただいて、ついでにこの曲のタイトルまで考えていただきました。

――廃墟で使おうとした楽曲を活かしたということですが、楽曲自体もそのイメージを引き継いでいるのでしょうか?

志方さん:はじめに曲をスケッチした時のニュアンスを残しつつも、サウンドトラックのボーナストラックとして収録するということを意識して、「旅」というモチーフを強化しました。民俗的な要素を盛り込みつつ、イオンちゃんが夢セカイで心の旅をしている気持ちを表現しています。

――タイトルをつける時もそのイメージからつけたということですか?

土屋氏:3、4回自分でリテイクして、自分でしっくり来るかたちでタイトルを決めさせていただきました。

――昨年発売された「ライラニア」に収録されている、「シェルノサージュ」のイメージテーマソング「ラ・シェール」についてもお聞かせください。

志方さん:土屋さんの曲はスケールが大きくて、そのスケールの大きさにも理由があって、音ひとつひとつが美しく意味がある、ひとつの世界のような楽曲を、どれだけ自分が表現できるかというところでいつもドキドキしながら曲をいただいています。それを私のアルバムを手にとってくださった方に聴いていただいて、「シェルノサージュ」の世界に興味を持っていただけたら嬉しいです。

また、各シナリオのEDで流れる「ラ・シェール」は、シナリオが進むごとにどんどんコーラスが足されていって、徐々に完成するかたちで提案させていただいた楽曲なのですが、早めにその完成形が出ているということで、私のように先に完成系や結末がしりたいお客さんにはいいかなと。実は私は推理小説を、先に最後の結末を読んでから、安心して最初から読むタイプです(笑)。加わっていく歌詞の内容にも全て意味があるので、聴き比べて楽しんでいただけたら、より「シェルノサージュ」の世界の奥の深さや、歌に意味があるということを楽しんでもらえるのではないかと思います。

――先日発売されました「クルトヒュムネス」でも、新たにクローシェ(「アルトネリコ2」に登場)の楽曲を書き下ろされていますが、そちらの内容についてもお聞かせください。

志方さん:実は途中まで、「1」のミシャと接戦で毎日結果が変わるという状態でした。「最初から作る曲決まってるんじゃないの?」という声もありましたが、全然違うんですよ(笑)。クローシェが使うパスタリエと、ミシャが使うヒュムノスは系統が違っていたので、「私はどっちの言語を復習すればいいの?」と、オロオロしながら結果を見守っていました。

最終的にクローシェに決まり、新約パスタリエの復習をじっくりしました(笑)。今の自分がそのまま表現すると「2」の楽曲は全然違ったアレンジや、側面をもつ曲になると思うんですが、「今の私がどう表現するか」ではなく、あの当時の私だったら、きっとこういう風に表現するだろう、クローシェの解釈はきっとこうだろうと思い出すことが必要だったので、ある意味過去の自分を辿る旅という感じで作っていました。

クローシェの曲に関しては、ゲームのお話が始まる前、13歳の頃の歌ということで、完成度というよりは、荒削りで、責任感が強いあまり、視野が狭くなっているという一生懸命すぎるがゆえの未熟さというものをきちんと表現したいと思っていました。

「2」ですでに発表されている楽曲というのは、「私はひとりじゃなくてパーティのみんなが支えてくれているんだ」という安心感と、気持ちの余裕の上でできている部分もありますが、今回の楽曲ではそれが全くなく、孤独に責務に向かおうとしている悲壮感、それから責任感を表現するために、今の私では選ばないマイクを選択したり、歌い方も今ではきつい感じの歌い方をしないんですが、わざとサビにそういう歌い方を当てたりしました。

全体的に切迫した感じを出したくて、ただこれも加減が難しくて、聴き苦しくなるといけないですし、聴き苦しくない範囲で聴いてると胸がしめつけられるような曲を目指したんですが、大丈夫だったでしょうか?

土屋氏:すごくよかったですよ。発売後、お客さんからアンケートをいただいてるんですが、「安定のクローシェだ」という感じで評判がよくて、さすがだなと思っています。

志方さん:「クローシェってこうだったよね」と懐かしく思っていただけるような、新しさというよりはちゃんとクローシェを表現できるように頑張りました。

――「シェルノサージュ」では、今後もシナリオが続くことで新たな楽曲が生まれると思いますが、今後どういった楽曲にしていきたいというビジョンはありますでしょうか?

土屋氏:「シェルノサージュ」はイオンの視点のお話なので、当然イオンがいろいろと世界に関わっていきます。今後のイオンの変化があるからこそ、志方さんにお願いしている意味がありますし、もう「Ahih rei-yah」の時からユーザーさんにヒントは十分に与えています。

要するに、イオンって子はどんどん世界と関わっていく子なので、まあ、なんというか、そういう感じの歌になっていくのではないですかね?(笑)

――志方さんのほうでも作りたい楽曲のイメージは持っているのでしょうか?

志方さん:「シェルノサージュ」の世界を表現しつつ、イオンちゃんの苦悩と、それを乗り越えて成長していく姿を曲で表現していくのが、毎回楽しくもあり、すごくやりがいもあり、そして大変です(笑)。でもこれだけまかせていただけることは、音楽がゲームの中で注目を浴びにくい分野なので、本当にありがたいことだと思っています。

――おふたりは長く一緒にお仕事をされていると思いますが、改めて、互いの印象についてお聞かせください。

土屋氏:私はどちらかと言うと、諦めるのが早いのですが、志方さんは諦めることを絶対にしない人ですね。もの凄いこだわりと、絶対に作り上げるという徹底した意志をお持ちなので。だからクオリティの高いものを生み出せるのだと思います。

私なんかは、いろいろな事情があって切ってしまう場合もあって、そこは後々でユーザーさんから指摘されてしまう部分になってしまうのですが、志方さんの楽曲に関しては全くそういうのないんですよ。期待を裏切らない、「シェルノサージュ」プロジェクトの良心です(笑)。

志方さん:ここまで信頼いただける、そしてこちらから提案したことを面白がっていただけるので、クリエイターとして嬉しい限りです。私は、土屋さんがどういう風に見えるかというと、「すごく大きなびっくり箱」というイメージなんです。土屋さんの頭の中って絶対、ほかの世界とつながっていて、だからこんなにすごい世界だったり、面白いアイデアが浮かんでくるのではないかと常に思っていて、いつも楽しく参加させていただいています。

七次元とつながっているので、これからも素敵な世界やお話、設定やアイデアが出てくると思うので、それを待ち構えて曲にしていきたいと思います。

――志方さんが考える、「シェルノサージュ」の魅力は何ですか?

志方さん:「アルトネリコ」の時もそうだったのですが、私はやはり世界観が大好きで、「シェルノサージュ」の世界に触れていると、実際に自分がそこにいるような、そういう確かな何かを感じさせる魅力があるんですよね。それは確固とした作りこみがあるからできていることなので、そこで生み出される世界観が一番の魅力だと思います。

あとは何が起こるかわからない、ドキドキさせてくれる作品なので、これからもきっとプレイヤーのみなさんがびっくりするような展開や設定が待っていると思います。みなさんにはワクワクして待っていただきたいという気持ちがあります。

――「RE:Incarnation」も発売されたということで、気になる「シェルノサージュ」の今後の展開についてもお聞かせください。

土屋氏:「RE:Incarnation」が出た後は、少し空きますが、次の「セカイパックVol.4」を4月18日にリリースします。その後に関しても、またロードマップを敷いていきますので、そちらをご参照いただければと思います。

――昨年末に「コミックマーケット」に出展されて、そこでゲームと連動したアイテムとして「フィラメントスター」を販売されましたが、そちらの反応はいかがでしたか。

土屋氏:「フィラメントスター」はすごくゲームと密着したコンテンツだったので、それもあって、大勢の買っていただいた方に「すごく良かった」と言っていただけました。「フィラメントスター」も七次元世界の中のひとつでして、ゲームの外までゲームという企画でやっていて、初めてゲームの中のものが物質化したのが、イオンが描いた本という作りになっています。

ゲームの中でイオンが実際に絵本を描いているシーンを見せつつ、こちらに送られてきて届いたという、一連の流れがゲームの世界になっているというプロジェクトでやらせていただきました。買っていただいたみなさんは、「すごくイオンらしかったし、こういう企画はすごく面白い」と言っていただけています。今はバーチャルななじげんやで買えなかったお客様にまた増版したものを、2月末にお届けする予定なので、まだの方はもう少々お待ちください。

――志方さんの今後のお仕事などについてもお聞かせください。

志方さん:実は、3月24日にコンサートをやるのですが、そこで「シェルノサージュ」と「アルトネリコ」の曲をいろいろとアレンジして演奏予定です。「シェルノサージュ」のシャールの曲をアレンジしてロングバージョンで作りましたので、ぜひ「はっはー」を聴きに来てください(笑)。

――志方さん自身のファンだけでなく、「シェルノサージュ」で志方さんの曲を好きになった人にも楽しめる内容になってそうですね。

志方さん:自分で作っておいてなんですが、私自身、シャールの曲がすごく好きなので(笑)。

土屋氏:あれ、すごい人気ですよね(笑)。

志方さん:なので、あれを別のかたちでロングバージョンとして作ってみたいと思っていました。

土屋氏:十分ゲームの中でもロングなんですけどね(笑)。3分以上あるんですよ。

志方さん:あと、サントラのほうも実はサントラ用にアレンジしていて、少し違った感じになっています。

また、コンサートでは別のコーラス曲をロングバージョンにして歌っているので、もしよかったら聴きに来ていただけると嬉しいです。

――最後に、ご自身のファン、「シェルノサージュ」ファンの方にメッセージをお願いします。

土屋氏:「シェルノサージュ」という作品は、ものすごく音楽に重きを置いている作品です。音楽なしでは語れないゲームというのを私は目指していて、「アルトネリコ」の時もそうですが、音楽に対して比重の高い作品をやって、その甲斐ありまして、ユーザーさんからとても思い入れを深く持ってもらったり、すごく感情移入してもらったりと、評価いただいているところがあります。

今回もそういうところを目指してやっていますし、音が全ての媒体の中で一番、想いを伝える力があると思っていますし、今後も心に響くゲームを作っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

志方さん:これからどんどん「シェルノサージュ」の世界が広がって、物語が深部へ向かって怒涛の勢いで流れていくと思いますので、その勢いに振り落とされないように頑張って、いい感じにみなさまに歌を伝えていきたいと思います。イオンちゃんの成長を私は歌を作って表現していくので、みなさんもゲームをプレイしながら一緒に体験していただけたらと思います。末永くよろしくお願いします!

――ありがとうございました。

Ciel nosurge Genometric Concert Vol.1~契絆ノ詩~

遥か七つの次元を超えた先に、本当に存在する世界を舞台にした、PS Vita用ソフト 「シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~試練編」ボーカルアルバム。志方あきこさんが歌うオープニングテーマ曲の他に、志方さん、城南海さん、霜月はるかさんが歌うセカイパックの挿入歌を含む5曲を収録。本作の世界観に、詩と物語でどっぷりと浸れるボーカルアルバムとなっている。

トラックリスト

01.「詩無き丘へ」
02.「Ahih rei-yah」
03.「天地咆吼」
04.「QuelI->{ein te hyme};」
05.「ネプトリュード(Class::NEPTLUDE=>extends.TX_CLUSTERS/.)」

発売日

2013年2月27日(水)

品番

FFCT-0026/GUSTCD-11006

価格

1,890円(税込)

シェルノサージュオリジナルサウンドトラック~音と世界の受信記録 Sec.1~

PS Vita用ソフト「シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~」のゲーム中で奏でられるBGM、コーラス曲など全35曲が収録されたオリジナルサウンドトラック。ボーナストラックとして、このCD用に志方あきこさんが描き下ろした楽曲「煌の砂漠を旅する少年」も特別収録。

トラックリスト

1.GATE::49.212.40.208
2.序言ノ響
3.はじまりの道標
4.コズミックシティ
5.宵闇の花
6.ExecuTron
7.約束~小さな出会い~
8.万寿沙羅
9.おててつないで♪
10.安らぎの時
11.夢と機械と秘密基地
12.Crisis
13.優凜ノ彩
14.不穏
15.Sympathy~テレフンケン~
16.喪失の欠片
17.慟哭
18.ちいさなはな
19.ahih rei-yah~繋ぐ想い~
20.RELUXISM
21.ツーショット
22.帝立ジェノメトリクス同調調停院
23.帝立天文学量子波動学研究所
24.約束~忘れえぬ夢~
25.剛毅果断 26. 一本街燈
27.HACK=MAGIC
28.駆け抜けろ!
29.Genometrics
30.UNDERPOLIS
31.夕焼け通り
32.夢の栖
33.STARGAZE~銀河飛行~
34.フラスコの海
35.煌の砂漠を旅する少年(Bonus Track)

発売日

2013年2月27日(水)

品番

FFCT-0027/GUSTCD-11005

価格

2,100円(税込)

志方あきこコンサート2013ライラニア~白と黒の歌姫~

開催日時

2013年3月24日(日) 17:00開場/18:00開演
※開場・開演時間は変更となる可能性がございます。

会場

ゆうぽうとホール
http://www.u-port.jp/hall/

料金

6,800円(税込)

主催企画

フロンティアワークス

チケット購入

e+(イープラス)
http://eplus.jp/laylania/ (PC&携帯)

一般抽選販売

抽選申込期間:2013年2月23日(土)10:00~2013年2月28日(木)
当落発表:2013年3月2日(土)午後
入金期間:2013年3月2日(土)~2013年3月7日(木)21:00

一般先着販売

申込開始:2013年3月9日(土)10:00~

※1申し込みあたり4枚までとさせていただきます。
※未就学児童の入場はご遠慮下さい。
※座席の配置はファンクラブ先行のお客様優先となります、ご了承ください。
※転売目的のご購入は固くお断り申し上げます。悪質な転売が確認できた際はご入場をお断りさせていただく場合がございます。

志方あきこコンサート2013「ライラニア~白と黒の歌姫~」は、ライラニアという架空の世界を舞台に繰り広げるコンセプト・コンサートです。

白と黒、それぞれの歌姫によって歌われるというコンセプトのもと、白の歌姫は「幻想」、黒の歌姫は「民族」をキーワードにアレンジされた楽曲を、どちらが真の歌姫か競う物語をベースにライブ・アレンジして披露。選曲の方向性はこれまでの志方あきこの世界を踏襲し、力量あるミュージシャン達によって演奏される曲達は「ライラニア」というコンセプトを得てその魅力を増すことでしょう。

これまでの代表曲の数々は、時には繊細に、時には意外なほど大胆にアレンジされ、まさに当コンサートでしかお聴き頂くことのできない新しい形でお贈りいたします。さらに、来たるべき4thアルバムに収録予定の新曲も当コンサートにて先行披露いたします。

「ライラニア」物語とのリンクによる楽曲の新たな一面をお楽しみいただきながら、幻想系から民族系まで、志方あきこの魅力を伝えるコンサートを目指してまいります。

ライラニア公式サイト
http://www.laylania.com/

志方あきこフロンティアワークス公式サイト
http://www.fwinc.co.jp/music/shikata/

公式Twitterアカウント「志方あきこPR」
https://twitter.com/Shikata_PR

シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~ RE:Incarnation

ガスト

PSVitaダウンロード

  • 発売日:2013年2月21日
  • 15歳以上対象
  • PS Storeダウンロード版、オンライン専用
シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~ RE:Incarnation

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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