メディアコンテンツ研究家・黒川文雄氏主催によるトークイベント「エンタテインメントの未来を考える会」の第12回、「黒川塾(十弐)」が9月27日に開催された。

黒川氏がゲストとのトークを通して、毎回設けているテーマについて考えている「黒川塾」だが、今回は「堀井雄二に訊く ~人生はロールプレイング~」というテーマで、「ドラゴンクエスト」シリーズの生みの親にして、今なお第一線で活躍するゲームデザイナー・堀井雄二氏に、自身のこれまでを振り返ってもらうという主旨で行われた。

ゲストは堀井氏のほか、ゲームのバランスチェック、クオリティ向上に努めてきた「猿楽庁」長官・橋本徹氏、そして大のゲーム好きとして知られるお笑い芸人・エレキコミックの今立進氏と個性的な面々が揃い、終始和やかな雰囲気の中、堀井氏がゲーム業界で活躍してきたその理由が垣間見える内容となっていた。

黒川文雄氏 堀井雄二氏
橋本徹氏 今立進氏
最後には、当日誕生日を迎えた今立氏を祝うなど、終始アットホームな雰囲気のイベントとなった。

前半部分での主な話題は、堀井氏がゲームデザイナーになるまでの道のりについて。もともと漫画家を志していたという堀井氏だったが、働きながら漫画家を目指すのは難しいという理由から早稲田大学に入学した後は、いつの間にかアルバイトとして編集の仕事をするようになったという。

そうして自然に漫画家への夢は諦め、「週刊少年ジャンプ」をはじめとするさまざまな雑誌で編集をやる中、27歳当時に出会ったのがマイコン(マイクロコンピュータの略称)で、当時の最先端だったその技術に影響され、面白いと思った堀井氏は、シンプルなゲームを趣味で作り、自身で遊ぶようになったそう。イタズラが好きだったという堀井氏は、占いのプログラムを作った時にあらかじめ相手のデータを全て入れておいて、実際に占った時の相手の反応を見て楽しむなど、当時から遊び心を持ってプログラムを作っていたようだ。

そしていよいよ「ドラゴンクエスト」が生まれた経緯について語られたのだが、堀井氏がファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)の誕生とともに思ったのが、それまでお金を投入しながら進めるアーケードゲームとは異なり、ずっと遊べるのであればアドベンチャーゲームやRPGが作れるのではないかということ。そうして最初に作られた「ポートピア連続殺人事件」では、メモリの限界がある中でどれだけ驚かせるかに注力、あの結末が生まれたのだとか。

また、「ドラゴンクエスト」においてはまだ編集の仕事をしていたこともあり、発売前の段階で記事でRPGがどれだけ面白いかを伝えることで、当時はまだメジャーでなかったRPGというタイトルに興味を持ってもらうことを意識し、結果的にゲームの成功に結びつけたのだと話した。

その後もさまざまな制作話が飛び出したが、堀井氏のゲーム作りに共通するのは、常にプレイヤー目線でいかにわかりやすくするかを考えているということ。この点についても堀井氏は使いやすさよりもわかりやすさを意識しており、チュートリアルをたくさん用意したりするのは避けているのだそう。

今でもゲーム作りへの意欲を持ち続けている堀井氏は、「遊び手としては現役」というように、さまざまなものを吸収することでクリエイティビティを刺激し、それをゲームのアイデアへと結びつけている。また、ゲーム作りだけではなく、10月9日~14日に行われる舞台「ねぇ、ヒルガオが咲いてるよ。」へのゲスト出演(※堀井氏は12(土)18時、13(日)18時、14(月)17時)のような新たなチャレンジにも積極的に取り組むなど未だに活躍の幅を広げ続けている。

本イベントでは、堀井氏、そして「ドラゴンクエスト」のファンであり、好きが高じてゲームクリエイターになった人などが聴講しており、後半で行われた質疑応答では、これまで質問者が感じていた疑問などをぶつける場面が目立った。

さまざまな質問が寄せられた中で回答の一部を抜粋すると、例えば「軽井沢誘拐案内」はシナリオからゲーム中のアイデアも含めて1人で作っていたことや、ニンテンドー3DSの「すれ違い合戦」にハマっていた時期にヨドバシカメラ マルチメディアAkibaの前で延々とやっていたこと、小池一夫氏に漫画はキャラクターだと教えられ、ゲーム作りにおいてもキャラクターの立て方を意識していることなどが語られた。

また、堀井氏はゲームデザイナーとしての才能を、前述の通り、作り手でありながらも遊び手の目線で見ることができ、また、どうしたらわかりやすくなるかを考えつく点だと捉えているという。そうした発想が、「ドラゴンクエスト」シリーズのような、ストーリーと一体化した、かつ飽きさせないゲームを生み出す何よりのポイントと言えるのではないだろうか。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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