カプコンより、9月14日に発売となったシリーズ最新作・3DS「モンスターハンター4」。インタビュー後編では高低差を使ったアクションやモンスター、新武器について聞いてきたので紹介しよう。
2013年9月14日に「モンスターハンター」シリーズの最新作として発売となったニンテンドー3DS「モンスターハンター4」。発売からわずか4日後の9月17日にはサードパーティーのニンテンドー3DSタイトルとしては、国内最高の出荷本数200万本を達成し、今後もダウンロード版を含め数字を伸ばしていくと思われる。
今回、さまざまなイベントでゲームの概要紹介や、実機でのデモンストレーションを披露している、「モンスターハンター4」プロデューサー辻本良三氏とディレクターの藤岡要氏に本作の開発についてたっぷりとお話を聞くことができたので前編・後編に分けてお届けする。
とにかくストレスフリーに、走り回るだけで楽しいフィールド
――「高低差を生かした立体的なアクション」を採用した理由や苦労を教えて下さい。
藤岡氏:今までのシリーズでは、あくまでも平面のフィールドの中でどう遊んでもらうかを前提に様々な要素を設計していました。しかし、今回はそのフィールドに上下の要素(高低差)をつけたことで、モンスターやプレイヤーの出来る事や対応しなくてはいけない事が非常に多くなり、お互いの行動パターンが増えたのもあって、今まで想定していなかった問題も非常に多く生まれ、どの様に解決するか、日々試行錯誤していました。
――高低差アクションを導入すると決まってから「モンスター乗りアクション」のアイデアが生まれたのですか?
藤岡氏:「モンスター乗りアクション」は違う角度で単純に「乗りたいなー」とは考えていたのですが、それをどう生かすか、どんなシチュエーションで乗れるか、などの細かいことは当時考えるに至ってはいなかったんです。
また「ジャンプすること」も必須で開発したわけではなく、段差や壁をストレスフリーで移動し、それに対応するプレイヤーやモンスターの立ち位置やアクションの仕組みを作っているうちに、段差に走りこんだらジャンプしたり、そのままシームレスに移動できたりするようになると「やっぱりジャンプ攻撃もしたい!」となって、それができるようになると「ジャンプ攻撃を当てたくなる」わけで…「当てた後にも手応えが欲しい」と段階的に欲求をカタチにしていった時、「ジャンプ攻撃」と「乗りアクション」が一つになった感じですね。
――遊んでいるうちに「狙いたくなるアクション」からジャンプのアイデアが生まれたんですね。
藤岡氏:生理的に必要なものを入れていく考え方で「高低差」について挑もうと思っていたので、最初からジャンプを前提に考えてはいませんでしたね。「MH3G」のときに、水中でモンスターといろいろな角度から対峙できることはすごく良かったですし、地上でもその要素を生かしたいと思い、高低差について詰めていきました。
ただ、高低差がネガティブに働くことだけは良くないと考えたので、ストレスフリーにして「走り回っているだけで楽しい」ように作っていたら、ジャンプやジャンプ攻撃などが欲求として積み上がっていき、最終的に今の形になりました。
――最初どうしても段差を探しに行っちゃいますよね。
藤岡氏:そうですね(笑)。体験会などでもユーザーの皆さんたちが自然にそんな行動をしてくれたので、まずは気持ちよくプレイしたいという欲求を実現できたと思います。
――だから「特定のボタンでジャンプする」ことを採用しなかったということなんですね。
藤岡氏:それを採用すること自体には、まったく意味がないと考えていました。自分だけがピョンピョンとジャンプできるのは出発点としておかしいなと。新しいボタンを設定しても、その操作をまた覚えなければならないですし、現時点でボタンの設定にも空きがないので…。
――段差や壁の昇り降りなど、なめらかなアクションに進化した理由は?
藤岡氏:壁を作った際に、ハンターの動きにも変化がつきましたが、モンスターももちろんそこにアプローチしてきますから、今までの動きだけではストレスになってしまうため、自由に動けるようにしました。今まではフルフルが壁に張り付いても、剣士だと降りてくるのを待っていました。
しかし、本作では壁や段差からでも非常にアプローチしやすいエリアがあるので、そういうシチュエーションになると自分から壁に飛びついて攻撃しにいったりと、同じモンスターを狩るときでも行動に変化がでてくるはずです。「このアクション足してみようか」と無理に入れたわけでなく、ここでも自然に欲求を盛り込んでいけたのが良かったと思っています。
生態や質感なども「生物好き」スタッフがこだわったモンスターたち
――ゲーム中のモンスターはかなり生き生きと動いていますが、グラフィックやモンスターの挙動の表現などで苦労した点を教えて下さい。
藤岡氏:表現に関しては、フィルターの使い方や質感についても、だいぶ見直しに挑戦できましたし、モンスターの動きもどこまでシームレスにできるかをテーマとして、作り込んでいきました。その成果もあって、どこでもへっちゃらで登ってきたりしますよ。特に動きは生き生きと表現することが出来たと思っています。
――モンスターがさまざまな場所に登れるようになって攻略法も変わってきますね。
藤岡氏:高低差があることでプレイヤーの目先も変わり、段差を探してジャンプ攻撃を仕掛けてからの展開に夢中になると、これまでのモンスターとの関わり方も変わってくると思います。ティガレックスに関しても突進したり、噛みついたりといった行動は変わらずしてくるんですが、今までとは違う感触になっているはずです。開発側も「ティガレックスに新しいことさせてみよう」と動きなどを追加していくと愛着が湧いてきて、担当者がティガレックスのことがどんどん好きになっていったという話もあります(笑)。
――ドスジャギィは余裕だったのに、今回ちょっと苦労してイラっとしましたよ(笑)。
藤岡氏:こんなところまで来るの!?って感じですよね(笑)。
辻本氏:ヤツは小さくて乗りにくいですしね(笑)。
藤岡氏:ティガレックスの開発担当者は「ティガレックスは暴れるモンスターなんです!」と凝りまくったら、もう大暴れしちゃって…。
――パッケージモンスターを「黒蝕竜ゴア・マガラ」にしたのはなぜですか?
藤岡氏:「謎めいたイメージ」がストレートに伝わるようなデザインにしたくて、目がなかったり、翼膜がマントのように不気味にひらめいたりと、ちょっとファンタジックなデザインを取り入れてみました。でも、ゲームをプレイしていると、なぜあんな形状をしているのか、どういう生態のモンスターなのか、など、だんだんとリアリティーが出てきて謎が解けていくと思うのでぜひ物語を楽しんでください。
――「狂竜ウイルス」「狂竜症」のアイデアはどのようにして生まれたのですか?
藤岡氏:今までの「高難度クエスト」ではモンスターの攻略の難易度を上げるだけだったんですが、そう仕組みに対して違ったステータスを持たせたくて、ウィルスに侵されて凶暴化するモンスターという要素を最初に考えていました。そして、ゴア・マガラの生態を構築していく際に、ゴア・マガラのばら撒く鱗粉とウイルスという設定がうまくハマりそうだったので、そのアイデアを合体させ、さらにプレイヤーにも感染するという新しい属性を考えることができました。
――「鋏角種」「両生種」「蛇竜種」のモンスター種が追加されましたが、モンスターのデザインや生態などを実現するのに苦労した点は?
藤岡氏:新しい骨格については毎回挑戦しています。モンスターを製作しているスタッフに「カエル好き」「虫好き」など生き物の生態が好きな人が集まっているので自由にデザインを作ってもらっています。今までのシリーズにいない、ヘビのような「蛇竜種」は特に作ってみたかったんですよ。デザイナーが特にノリノリで作っていたので助かりました。
――テツカブラもまさかアゴを使ってあんな動きをするとは思いませんでした。
藤岡氏:新しい種を作ることで出てくる発想もあるんです。新しいモンスターに新しいアイデアをしっかりと盛り込むことができたと思っています。
――イャンクックが復活したのは、やはり本作から始めるルーキーハンターのためですか?
辻本氏:ポジション的にはマスコットキャラクター的な感じですね。
藤岡氏:イャンクックは倒さなくても物語は進みます。ただ「懐かしいな!」と思ってもらえれば嬉しいです。先生役として登場させるというより「イャンクック」という個性が根付いているので、そのまま可愛がってもらえれば。本作では先生役は「ケチャワチャ」からいろいろと学べるはずです。
――モンスターのネーミングを考える際に苦労することは?
藤岡氏:毎回大変ですね(笑)。ただ意味は込めたいと思っていますし、ただ単に文字の羅列だけではなく、イメージや語感、響きなどでそのモンスターの特徴を表したいと思って毎回命名しています。モンスターの数も多くなってきたのもあって、なかなか難しくなってきてますが…(笑)。
辻本氏:こっちは覚えるのがホントに大変なんです…(笑)。特に「サボアザギル」が…。
藤岡氏:まずは半分に区切って覚えてくれれば。モンスターの名前は全部半分に切って覚えられるようになっているので。
――お2人の一番お気に入りのモンスターはどれですか?
藤岡氏:僕は毎回リオレイアと言っています。遊んでて楽しいですね。シンプルなモンスターが好きなんで、パワーファイターのテツカブラも好きですね。
辻本氏:僕は変わったヤツが好きなんで、サボア…ザギルですね。あのモンスターは本当にインパクトがありますよ。
藤岡氏:ブヨンブヨンなんですよ~(笑)。
新たな武器と既存の武器にも、とにかく楽しめる要素を
――新武器「操虫棍」「チャージアックス」を採用した理由は?
藤岡氏:ナンバリングとして発売する際は新武器を必ず入れようと決めており、少なくとも1種類、できれば2種類作ろうと考えました。まずは自由にどんな武器にしようとアイデアを集めて決まったのが「操虫棍」でした。昔から「虫使い」のようなアイデアもあったので、新しい感触の武器に昇華できないかと考えていました。それでいて操作感はキャッチーでテクニカルな武器になっています。普通に虫を飛ばして攻撃方法とする、ということはしたくなくて、新しい武器固有の距離感や特徴を持たせたいと考えていました。そこで強化エキスを採取できたり、セルフでジャンプができたりとアイデアがだんだん固まっていきました。チャージアックスはストレートにガッシャンガッシャンと遊んでもらえる「合体」をテーマに作っています。
――操虫棍で、武器を利用して自らジャンプできるようにした理由は?
藤岡氏:飛ぶというアクションを体験しやすく、立ち位置が変わることで目線も変わるので、段差を利用しなくても跳ね上がって、モンスターの上から攻めていける武器も1種類くらいあってもいいかなと思って作りました。
――既存の武器の調整で苦労した点は?
藤岡氏:既存武器の調整も、まさに欲求のかたまりですね。高低差を考えた時に「この武器で、このシチュエーションで、こんなアクションをしたい!」と純粋に楽しいアクションを実現しています。
辻本氏:基本はすべての武器のアクションがカッコ良くなっていますね。個人的には片手剣のモーションが特にカッコイイんです。
藤岡氏:通常、ジャンプというのは段差の上から行うのですが、片手剣は「段差下からでもジャンプ攻撃」が狙える唯一の武器ですね。段差間際での攻防に特徴があると思います。双剣の鬼人回避を段差に向けて使うとモーションがめちゃくちゃカッコイイですよ。ハンマーは武器出し状態でタメながらジャンプできるメリットがあります。
――ギルドクエストを作る際に苦労したところは?
藤岡氏:コミュニケーションツールとして「モンスターハンター」を考えていた時に、自分だけのクエストを交換したり、友達と一緒に遊んだり、とうものがありました。それがギルドクエストなのですが、そういった要素に絡めて、「その装備って何?」といった話題も生まれないかと思い、ちょっと光っていたり、少し形状の違う装備など、通常手に入る装備とは違うデザインが入手できる遊びを入れてみました。自慢の要素にもなるかもしれませんし、性能も変わってくるので、エンドコンテンツとして楽しんでもらいたいですね。
――それでは最後に、これから「モンスターハンター4」をプレイしようと考えているハンターたちにメッセージをお願します。
藤岡氏:本当にお待たせしてしまって申し訳ありませんでしたが、そのぶん開発は全力で作ることが出来ました。今回、この場で話しているだけでも語り尽くせないほどたくさんの要素を入れる事が出来たのでそれが皆さんのコミュニケーションのひとつになると思っておりますし、僕も一緒に楽しみたいと思っていますので長く多くの人と遊んでくれたら嬉しいです。よろしくお願いします。
辻本氏:今回の「モンスターハンター4」はかなりのボリュームを用意しておりますが、今後ダウンロードコンテンツなどもたくさん用意しており、長い間遊べますし、常に持ち歩きたいなという気持ちになると思います。また10月20日から「モンスターハンターフェスタ」も開催します。入場無料で、「モンスターハンター」集大成のお祭りとなりますので、ぜひみなさんで来てください!
――ありがとうございました。