デジタルハリウッド大学駿河台キャンパスにて12月2日に開催された「ゲームプロデュース&ディレクション」講義の第9回をサイバーコネクトツー代表「松山洋」氏が担当。その模様をレポートする。

目次
  1. 「ゲームプロデュース&ディレクション」第9回「ゲームクリエイターの職種と目指し方」
  2. 質疑応答
  3. 講義の最後に学生たちが挑んだ「試験」とは?

アクワイア代表の遠藤琢磨氏が同大学の准教授として、ゲーム業界を始めとした各界の著名人を特別講師として招き、全15回にわたり開催される「ゲームプロデュース&ディレクション」講義のうち、第9回目をサイバーコネクトツー代表「松山洋」氏が担当。「ゲームクリエイターの職種と目指し方」と題し、プロデューサーとディレクター以外の、プランナー・プログラマー・グラフィッカー・サウンドクリエイターなどの職種と仕事内容の解説が中心に講義されたので、その模様をお伝えしよう。

「ゲームプロデュース&ディレクション」第9回「ゲームクリエイターの職種と目指し方」

ゲームクリエイターとは?

「ゲームクリエイター」は、「これを作る!」という目的のもと職種混合で集まってゲームの制作を行う集団であること、企画者をプランナー、アーティストをデザイナーと呼称しているのは日本だけらしく、海外ではデザイナーは「ゲームデザイナー」と解釈されるので、世界水準に合わせ、サイバーコネクトツー社内ではこのように統一されており、社内の人間は全てゲームクリエイターであることも語られた。

ちなみに、年一回全スタッフが強制的に「アイデアコンペ」に参加することが義務付けられており、サウンドクリエイターやプログラマーも含め「ゲームのアイデア1つも作れない人間はゲームクリエイターを名乗るな」という理念があり、全員企画書を作っている。

ゲームデザイナー(プランナー)

ゲームデザイナーとは「ゲームを設計し、制作を進行する人」であり、企画書や仕様書を作り、アフレコの台本や外注資料、デバッグ資料などさまざまな役割を持っている。

アーティスト(グラフィッカー)

アーティストは、ゲームの映像表現を担う人で、ゲーム業界の中でもっとも職種が多様化して分散している。サイバーコネクトツーでは3Dポリゴンを中心としたゲームタイトルを手がけることが多く、3Dに関連した職種のクリエイターが多く働いている。

キャラクター/BG(背景)モデラー

CGツールを使ってキャラクターや背景をモデリングする職種。最近ではテクスチャーを描いてモデリングして貼り付けて終わり、ではなく質感(シェーダー)を組み上げて設計することが必要で、1つのモデルを作成するのにかなりの時間を要する。

松山氏によると、モデラーを志望している人は、将来ほぼゲームクリエイターにはなるのは難しいと明かされ、日本で1,2を争えるようなキャラクター/背景モデラーになれるなら話は別だが、現在では中国に発注するほうが安く、自分が目指す道、現状の業界について無頓着だと、ゲーム業界の仕事は務まらないと語られた。

現在のサイバーコネクトツーでは、並みのキャラクター/BG(背景)モデラーでは採用されない。特に世界で売れているゲームタイトルのグラフィックのほとんどが中国で制作されており、ゲームをクリアした後のエンドロールを見ていても分かる。そういった点もプロのゲームクリエイターはまったく見方が変わるという。

キャラクターアニメーター

モデリングされたキャラクターに動きを付ける職種。サイバーコネクトツーでは動きが多いタイトルを手がけており、社内の70%はアーティスト、さらにその中の70%がアニメーター。採用に関しては3DCG業界で足りず、セルアニメーションの制作経験者を招いている。また、アニメーション原作などのタイトルではモーションキャプチャーは使わず、100%手付けのアニメーションにこだわっている。

シネマティックアニメーター

ゲーム内のイベントシーンや必殺技などの映像演出を行う職種。動きを作るだけでなく、カメラ、カット割りやレイアウトなどを含めて、カッコイイ演出を求められる。サイバーコネクトツーではこの職種の募集も多いとのこと。社内ではまさに花形。

インターフェイスデザイナー

ゲーム内のアイコンやゲージなどの表示まわりを設計・デザインする仕事。ゲーム業界ではこの職種が特に枯渇している。ゲームの仕様が多様化している昨今、それを分かりやすく、使いやすく表現する力が必要で、開発の初期から最後まで作り直しが多い職種。

エフェクトアーティスト

ゲーム内のエフェクト(効果)を表現する仕事。特にアクションゲームでのエフェクトはとても重要であり、サイバーコネクトツー社内ではこの部門のアーティストを育てている。業界的にも目指す人が比較的少ないため、狙い目の職種でもある。

デザインを担う職種

そのほか、キャラクターのイメージ・デザインを行う職種「キャラクターデザイナー」、キャラクターの装身具をはじめとした、小道具のデザインを行う職種「プロップデザイナー」、ゲームの雰囲気・テーマ・イメージなどをキャラクターや背景など絵で表現し、視覚化する職種「コンセプトアーティスト」が存在する。

プログラマー

ゲームを制作する人、制作をサポートする人。ゲーム業界を目指すのであれば、例えアーティスト・デザイナーでも、プログラマーがどうやって仕事をしているのか、どんな言語や性質の作業をしているのかをしっかりと理解しておくことが重要となる。

また、今までコンシューマ向けのタイトルであまり必要でなかった、ソーシャルゲームを作るための技術を担うデータベースエンジニアが新しい職種として業界に必要とされているのが現状。

サウンドクリエイター

ゲームにまつわるBGMや効果音(SE)などあらゆる「音」を制作する人。音を快適に鳴らすことができるサウンドプログラマー、収録した音声の加工(通信や水中での会話など)をするコンポーザーも必要。

クリエイターを支える職種

上記で紹介した職種のほかに、テクニカルアーティスト、ネットワークエンジニア、サーバーエンジニアも必要となる。機材管理、QA(品質管理)、ローカライズ、宣伝広報、総務・人事も、もちろん必要な職種であり、さまざまな人間が開発に関わっている。

ゲームクリエイターを目指すために必要なこと

目標を明確にする!!

自分が具体的にどのような職種に就きたいのかを明確にする。

「プログラマーになることは決めているけど、どういうプログラマーになるのかは決めていない」といった人間は論外となる。サイバーコネクトツーでは「ゲームがとにかく好き、ゲーム業界が好き、入社したらなんでもやります!」といった人は雇えないと松山氏は話している。

また入社応募の際のポートフォリオに関して、学校などで作らされた課題、石膏デッサンなどを送ってくる人は不合格、ある一定のレベルで絵が描けることの証明は、ゲーム業界のアーティストを目指す者にとって「描けて当たり前」とのことだ。自分が本当にやりたいことを詰め込んだポートフォリオが松山氏は見たいと話している。

スケジュールを見積もる!!

普段からどんな作業もスケジュールの見積もりをしっかり立てるクセをつける。

「今月いっぱいに○○という作品を作ってください。提出は月末」という課題に対してほとんどの学生が「提出の前日に完成するスケジュール」を組む。だが、プロフェッショナルは1ヶ月を第1・2週の2週間で設計・仕様、仮組、本組を完了し、第3・4週でさまざまな人間にモニタリングしてもらう。特にサイバーコネクトツーでは独自のモニター会を実施して、実際にターゲットとなるユーザーにモニタリングを実施し、修整を重ねる。このようなスケジュールの立て方は、学生の頃から実践することが大事となる。

チーム制作の経験を積む!!

プロのゲーム制作はチーム制作。できるかぎりチーム制作の経験を積んでおく。

「NARUTO-ナルト- ナルティメット」シリーズなどサイバーコネクトツーが手がけるタイトルはプロジェクトスタート時は約30人ほど、ピーク時は約100人を超え、作業時期は長期間チームで作業をする。海外の大型タイトルなどでは1チーム300人を超える細分化をしているところもある。人とコミュニケーションを交わすことが苦手な人はゲーム業界に向かないので、早めに克服することが大事。松山氏も人前で話すことが苦手で、恥ずかしがり屋だったと話す。

つくったゲームの意見を聞く!!

つくったゲームはなるべくたくさんの人にプレイしてもらい、たくさんの意見をもらう。

学生時代に絵がうまい人は誰かに見られそうになると、どうしても隠してしまう。だがこれからプロを目指そうとしているアーティストはできるだけ多くの人に見てもらいたいと思い、自分の作品を恥ずかしがることは辞める。たくさんの指摘を早い段階で受けることが重要。プロになったら自分の作品を「多くの人に見て、触って欲しい!」と思うようになると松山氏は熱く語った。ただ、家に帰ってお母さんに見せるのは「オススメしない」と話した。理由は「お母さんは息子・娘に甘く、大絶賛するから」である。

アンテナをMAXに!!

ゲーム業界の最新の技術・用語・情勢を多く、詳しく知っておく。

クリエイター・エンタテイナーを目指すには、たくさんのことを知る必要がある。ただ自分が好きなものだけを見る・遊ぶのは所詮「一生消費者」のまま。それにプラスして「現在売れているもの」を見ることが大事。売れているものには必ず秘密があり、多くの消費者に支持されている覆せない実績を学ぶことは必須。世の中の動向や知識、「なぜ売れているのか」という分析も必要で、与えてもらうことに慣れている人も不向きである。

最後に

ゲームクリエイターとはさまざまな職種により構成されており、どのように職種が存在し、それぞれに何を求められるのか、多職種によるチームで制作を行うゲーム開発現場においては、当然理解しておくべきことである。特にインターネットで何でも調べることができるので、すべて理解しておく。

そして、ゲームクリエイターを目指す上でもっとも大事なことは、「つくりたい」ではなく「つくる」、「やりたい」ではなく「やる」ことが重要となること、この講義から「つくりたい」「やりたい」の言葉はNGワードにすることをおすすめすると、松山氏は語った。

知っていなければならないキーワード(業界編)

□GDC
□ANIME EXPO
□E3
□JAPAN EXPO
□コミコン
□ゲームズ・コンベンション
□CEDEC
□SIGGRAPH
□IGDA
□CERO
□ESRB
□CESA

知っていなければならないキーワード(技術編)

□スカルプトモデリング
□プロシージャル
□物理ベースレンダリング
□グローバルイルミネーション
□デザインパターン
□スクリプト
□GPGPU
□SVN
□GIT
□Unreal Engine
□Unity
□アジャイル開発

質疑応答

――コミュニケーション力やチームワークはどれほど必要ですか?サイバーコネクトツーでの工夫を教えて下さい。

松山氏:週に一回、月曜日に東京と福岡でテレビ会議システムでつながっており、スタッフ同士のPCもイントラネットでつながっています。社内では雑誌、映画、アニメなどのBlu-ray、DVDソフトなど約8000アイテムを常設しており、自由に読んだり、レンタルも可能です。こういったコンテンツは社内では「見ていて当たり前」なんで、見ていなければ怒られます。

――キャラクターゲームを制作する上でサイバーコネクトツーが気を付けていることは?

松山氏:お預かりしている版権ですので、自分たちが作りたいもの、そしてそのIPを待ち望んでいる人たちの期待に応えることを一番に考えています。

――オリジナルタイトルを制作する上でサイバーコネクトツーがこだわっている点は?

松山氏:IP使用タイトル、完全新規タイトル、スマートフォンタイトルなどどのようなタイトルもまったく一緒のこだわりを持って作っています。ただオリジナル作品の設定や設計、バックボーンなどは細かくこだわって設定しています。

――アジアのゲーム市場への参入の予定はありますか?

松山氏:すでに実施しています。ただこの10年間成長した市場ではありますが、アジアに関してはコピー天国でもあり正規のパッケージが売れない状況ですが、これからもアジアには注目しています。

――これからのゲーム市場についてどうお考えですか?

松山氏:「面白ければ売れる」「面白くなければ売れないで会社がなくなる」そしてゲームが売れずに他のエンターテイメントに取って替わられると思います。我々は常に市場やお客さんの顔を見ながら、わがままを通しながら、面白いものを作っていきたいと思っています。

講義の最後に学生たちが挑んだ「試験」とは?

松山氏による、「ゲームクリエイターの職種と目指し方」講義の質疑応答の最後には、今回Gamer編集部を含めてメディアの取材を入れたことについて、松山氏が未来のクリエイターを育てるこの講義をしていることを、メディアを通してたくさんのユーザーに伝えることが、現在の松山氏の役割だと話してくれた。講義が終わっても生徒とコミュニケーションを取り、ちょっとした生徒の質問にも耳を傾けていたのが印象的だった。

また、受講した生徒にはちょっとした小テストが実施。ゲームが好きなら知っていて当たり前のこと、ゲームが好きでも知らないことなど、多彩な問題が出題されていた。興味のある人はぜひ挑戦してみては?

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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