CEDEC 2014の最終日となる2014年9月4日、大人気パズルゲーム「ぷよぷよ」シリーズのプロデューサーを務めるセガの細山田 水紀氏の講演「ぷよぷよをプロデュースして感じたこと」が行われた。ここでは、講演の内容をお届けする。

講演「ぷよぷよをプロデュースして感じたこと」では、細山田氏が「ぷよぷよ」をプロデュースするに至った経緯や、「ぷよぷよ」シリーズの展開に関する自身の考え方、そして「ぷよぷよ」を通してチャレンジしていくことの大切さなどが語られた。本稿では、講演の内容をまとめてみたい。

細山田 水紀氏

最初に細山田氏は、茶目っ気混じりのフレンドリーな口調で、自身の経歴や「ぷよぷよ」シリーズの歴史などを振り返った。セガが分社化した際、ソニックチームに入社した細山田氏。当時は、「ソニック」作品のプランナーやディレクターなども務めていた。現在は主に「ぷよぷよ」シリーズのプロデューサーをしており、「ぷよぷよ」の名前がつくタイトルすべてに関わっている。

「ぷよぷよ」に関わったきっかけは、シリーズ15周年を迎える際、「一週間だけヘルプでチームに入って欲しい」と言われ、「一週間だけなら」と承諾。その後、書類を出したら「やっぱり一ヶ月手伝って」と期間延長。気がついたらディレクターやプロデューサーとして「ぷよぷよ」シリーズに深く関わっていくようになっていたとのこと。そんなこんなで続けてきた「ぷよぷよ」シリーズの制作も、2014年9月現在の時点で9年目になるそうだ。

ここ1~2年でリリースした「ぷよぷよ」関連の商品(一部)を紹介。ゲームだけではなく、グッズも幅広く展開されている
「ぷよぷよ」の概要と特徴が描かれたまとめ資料も公開された

ここで細山田氏は、「ぷよぷよ」の定義について、対戦型アクションパズル、かんたん操作、同じ色を4つ以上つなげて消す、連鎖の爽快感などに大別。制作では、これら「ぷよぷよ」に欠かせない要素は大切にしながらも「どこを残して、どこを新しくしていくのか」という事を重要視しているという。いわく「ぷよぷよ」制作の23年間は、ずっとその繰り返しだったそうだ。

また、1994年に登場したシリーズ二作目の「ぷよぷよ通」(アーケード)は完成度が非常に高く、巷では「ぷよぷよ通が最強」と言われることも多い。未だに「ぷよぷよ通」の根強いファンもいるくらいだ。しかしだからといって、新作を作るのを止めてしまったら、それはシリーズの終了を意味するし、そうはなってほしくないと細山田氏は言う。

ただ現実はなかなか厳しいようで、ファンは「ぷよぷよ通」があれば良いと言うし、会社や開発スタッフからは「ぷよぷよ」ではなく、新しいゲームを作りたいという意見も多い。実際、ぷよぷよ=過去のゲームというイメージから、お蔵入りになった商品も存在したそうだ。

細山田氏によると、シリーズ終了のよくあるパターンとして、開発者や関係者が会社からいなくなる、データや資料が不十分といったことが強く起因するという。しかし同氏は、これらの問題に真正面から向き合い、そして解決策を考えた。

まず、関係者がいなくなるという問題に関しては、旧作の「ぷよぷよ」に関わった人に協力してもらったり、ユーザーの意見を参考にすることで解決できることもあるという。データや資料が不十分な時は、シリーズを再立ち上げすることも重要らしく、実際「ぷよぷよフィーバー」はそのプロセスで作られたそうだ。さらに、会社組織なので、失敗したら続編は作りにくいという問題もあるが、そもそも大失敗しそうなものは作らないようにしているという。

さらに、開発では若手スタッフをどんどん起用していくことも大切らしい。そうすることによって、新規ファンの開拓にも繋がっていくのだという。そしてシリーズを継続させていくためには、旧作からのファンと新規ファンを一緒に盛り上げていくためには何をすれば良いのか、ということを突き詰めていくのが重要だとまとめた。

近年のシリーズの展開例も紹介。メダルゲームやパチスロ版など、さまざまな展開を行っている
アニメ展開も視野に入れられていたらしいのだが、残念ながら現実にいたらなかった
過去の「ぷよぷよ」の復刻も積極的に行っている
「ぷよぷよ!!」に搭載されている「ペアでぷよぷよ」。発想は良かったのだが、企画的には不完全燃焼だったらしい。

「ぷよぷよ」20週年が終わるタイミングになると、セガもフリートゥプレイ(F2P:基本プレイ無料)をやったほうがいいのでは、という意見が社内で出るようになってきた。

実はアーケードでF2Pタイトルをやりたいという話もあったそうなのだが、時代が早すぎたため却下。「ぷよぷよ」もかなり早い段階からアイテム課金の構想があったらしいのだが、そもそもこの構想が出たのは、アイテム課金のシステムが確立していなかった時期。そのため、当時はお蔵入りにせざるを得なかったという。しかし、そんな時期を経て2013年にリリースされた「ぷよぷよ!!クエスト」は、サービス10日目で100万ダウンロード。現在は1000万ダウンロードを達成するなどの快進撃を続けている。「ぷよぷよで基本プレイ無料」という構想に、やっと時代が追い付いてきたということだろう。続けてリリースされた「ぷよぷよ!!クエスト アーケード」は、なんとかゲームセンターに足を運んでもらおうという想いから制作されたタイトル。アーケードでF2Pにチャレンジしている数少ない作品でもあり、2013年11月7日時点で導入店舗数890、可動から8ヶ月で500万プレイヤー動員を達成。スマートフォン版との連携も積極的に行っている。

ここで細山田氏は、2014年2月6日にニンテンドー3DS、Wii U、PS Vita、PS3で発売された「ぷよぷよテトリス」(PS4とXbox One版は2014年12月4日に発売予定)を発売した理由について、「ぷよぷよ」と「テトリス」がアクションパズルというジャンルにおいて、群を抜いた完成度を誇っているからと説明。一番大きいところ(テトリス)とコラボレーションするという理由もあるが、何より対戦の楽しさをユーザーに味わって欲しいという想いが強いようだ。

さらに、Red Bull主催の大型イベント「Red Bull 5G」のフリージャンル部門で、「ぷよぷよ!!」が採用されたことも、「ぷよぷよテトリス」を作る大きなきっかけだったらしい。大会の盛り上がりを強く感じた細山田氏は、ユーザーが競い合いながら楽しめる「ぷよぷよ」を最新機種で盛り上げていきたいと実感。それが、「ぷよぷよテトリス」の制作に繋がったのだ。

「Red Bull 5G 2014」では、「ぷよぷよテトリス」の採用も決まっている

ここで話題は、ふたたび「ぷよぷよ」の定義について。細山田氏は、先に述べた「ぷよぷよ」の定義に加え、時代・タイミングに合わせて変化させていくことが重要だとまとめた。

お客さんの細分化されたニーズに応えていくことはもちろん、新しいことにチャレンジしていくことも重要なのだという。細山田氏いわく「ぷよぷよ」はとてもチャレンジしにくいタイトルらしいのだが、それでもチャレンジしていかなければならないと強く主張。そのチャンレンジは、パズルRPG「ぷよぷよ!!クエスト」、アーケードで基本料金無料でサービスした「ぷよぷよ!!クエスト アーケード」など、さまざまな形で行なわれている。

また「ぷよぷよ」のプロデュースで重要視していることについては、「お客様がやってほしいこと」、「自分・チームがやりたいこと」、「会社がやってほしいこと」、「利益(赤字はNG)」にプライオリティを付けること。そこで重要になってくるのは、「自分のやりたいこと」を必ず1つ以上は入れるということだ。また、そのやりたいことの1つはユーザーがほしいもの、やりたいものであるべきだとも。

さらに、近年求められる企画の傾向として、面白さや勢いだけではNGになってきているという。そのため、会社に利益を出すため、面白さと商売の要素をミックスさせた企画が望ましい。なぜ売れるのか、どういう作戦で行くのかなど、企画の段階から突き詰めていくことが大切だと、細山田氏は語った。終盤では、プロデューサーや管理職の方へのお願いとして、若手にディレクターを経験させることや、なるべく自分の手に終えそうなプロジェクトを経験させることなどを提示。特に、若手にチャンスを与えていってほしいと強く語っていた。

そして最後に、ゲーム開発ではスタッフ同士仲良くしてほしいとコメントして、講演を締めくくった。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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