東京ゲームショウ2014のコナミステージにて、9月19日、PS4タイトルの無料ダウンロードゲーム「P.T.」のトークショーが開催された。

先月に欧州で開催されたgamescomにて突然ムービーが公開され、PS Storeでダウンロードが開始になった途端、あまりの怖さと難易度の高さに世界中が騒然となった「P.T.」。

制作は「7780s STUDIO」というインディーズゲームスタジオを装っていたが、その正体が小島プロダクションであり、プロデューサーは小島秀夫監督、そうして「サイレントヒル」最新作のプロモーションゲームであったことが判明した時には、またもや全世界が驚いたのも記憶に新しいところだろう。

我々を良い意味で華麗に騙してくれた小島監督らが、「P.T.」についてさまざまな秘話を語ってくれた。その模様をお届けしよう。

司会は、森一丁氏とコナミの広報担当の小林睦氏。そしてステージには小島監督、國府力氏、伊東幸一郎氏らが登壇した。

森氏の「我々を恐怖に陥れたことを謝ってください!」というジョークに、笑いながら「昨日(18日の「P.T.」のトークショーのこと)も謝ったのに、今日も謝るんですか。怖くてすみません!」と頭を下げる小島監督に、会場からは温かい拍手が溢れた。

國府氏は「今回は、Playable Teaser(P.T.)という新しい形での配信だったので、ユーザーの皆さんの反応も心配だったんですけれど、思いのほかすごい反響をいただいて、スタッフ一同喜んでおります」と述べ、伊東氏の「今日は『P.T.』の話と、そして僕たちが今作っている次回作へのお話をさせていただきたいと思います、最後までお付き合いください」というコメントを皮切りに、トークショーが開始された。

何故今回、このような手法を取ったのか?小島監督自らがその理由を明かす!

小島監督は「映画にはティザーというものがあって、そのあとに予告編を作るのですが、ゲームにも予告編はあってもティザーというものがこれまではなかったんです。ゲームをやりながら、その奥にあるタイトルをユーザーの皆さんに能動的に感じてもらおうと。また、我々制作者の名前をあえて隠すことで、未知のものに触れる恐怖を感じてもらおうと思いました」と、その制作意図を語ると、國府氏、伊東氏からは「面白そうだけど、こんな大きな会社が、そんなことをやって本当にいいのか、と戸惑いました」「メタルギアを作っているチームからも全然信用されなかったんですよ。コジプロのメンバーすら全く理解していませんでした」と、当時の驚きの様子を述べた。

今作は、SNS社会である現状を意識して作られたという。またPS4にシェア機能があることも、意識したそうだ。動画を配信しながら世界中で謎と恐怖を共有してクリアすることもできると思った、と話す小島監督。

イギリスの少女が初めて「P.T.」の配信を行って、配信を見ていたプレイヤーと協力してクリアをし、「P.T.」の正体を知ったあと、世界中に「P.T.」クリア者が広がっていく様をワールドマップで明かしてくれた。

欧州のgamescomが「P.T.」の始まりだったためか、英語圏でのクリア者が多く、日本は大分遅れを取っているのが解る

なお、小島監督は「クリアまでは最低でも一週間くらいはかかる」と想定していたそうだ。國府氏、伊東氏はクリアまで一ヶ月はかかると予想。しかし前出のイギリスの少女に4時間でクリアされてしまい、散りばめた謎が次々と解かれてしまうことに眠ることも出来なかったと、1ヶ月前を振り返った。

ちなみに、gamescomから一ヶ月と言えば、まさに現在の東京ゲームショウの時期。そこでこのステージは本来なら「今話題の「P.T.」というゲームをやって、僕らで解いてみよう。え、クリアしたら僕らの名前出てきた!? みたいな、いやらしいことを想定していたんですよ」という、衝撃の秘話も飛び出した。だが実際にはgamescomの出演後、翌朝起きたら解かれていたということで、小島監督の野望も儚く散ったそうだ。

クリア時間は想定外だったが、クリアの仕方としてはTwitchの利用者によるPS4配信機能を使用した想定内のものだったため、充分「P.T.」の目論見は成功し、制作者としては喜ばしいことだと語った。

真の恐怖とはなにか?小島監督の語る「恐怖」

ステージで流された映像は、9月18日に公開されたばかりの新映像。その内容は「P.T.」と同じようでいて違った映像だったため、「サイレントヒルズ」の新しい映像がきた! と思われたそうだが、それは小島監督が「P.T.」を作るにあたって社内のプレゼンのために作ったという、貴重な初期映像だった。

その初期映像は、3人のデザイナーと1人のシナリオ担当者という、たった4人で制作されたものだったそうだ。

「本来ならきちんとゲームの形としてプレゼンしたかった」という小島監督。だが、その裏では「メタルギアソリッドV ザ・ファントム・ペイン(以下MGV TPP)からプログラマーが来ない。モデラーも来ない。というわけで、いいからもうムービーにしてくれ、と頼みました」と、同時に二つのプロジェクトを進行させる苦労も明かした。

このムービーは、とりあえず制作者の4人全員が「とにかく怖いと思うもの」をひたすら盛り込んだもので、恐怖を感じる「間」などはまったく意識しないで作られたという。そなわち、そこから更に「P.T.」というゲームへと発展させていく中で、我々を震撼させた恐怖は生まれていったと言えるだろう。

そこで、話題は「恐怖とは何か」へと移る。小島監督は「とにかく何が起こっているかわからない、というところに、ポンと放り込まれる。自分がその場にいるという臨場感を、一番大事にしようと思いました。誰かが用意した装置の中に置かれるというよりは、いきなりその場に自分がいる、という感覚を持たせられれば、あとは何も起こらなくてもひょっとしたら怖いかな、と思って最初は作りました」と、「P.T.」の一番始まりの部分について語った。

また、グラフィッカーである國府氏は、その立場から「現実世界からスムーズに感情の移入ができるように、見た目から頑張ろうと思いました。次世代機ならばどうにか表現が出来そうなので、その辺を考えながら作りました」と、小島監督とは違った目線での恐怖の演出を考えていたそうだ。

「一歩を踏み出せばいいのに、その一歩を踏み出すことが出来ないような恐怖を作りたかった」と、小島監督は続けた。だが、当初は従来のホラーゲームと変わらないような内容で、「これではない」と、違う手法を伊東氏と話し合ったという、小島監督。

それを受けて「P.T.」を制作をしたという國府氏らだったが、彼らは本来グラフィック担当でゲーム作り自体には疎く、やってはいけないようなことを盛り込みすぎ、リッチに細かいところまで作りすぎてしまったそうだ。後になってプログラマーがやってきた時点で「こんなもの出来るか」とひどく怒られたとの秘話には、会場からどっと笑い声が上がった。

その結果、「MGV TPP」では数十キロの距離を60フレームで表現しているのに、「P.T.」は30メートルの距離を30フレームで作るという、ゲーム作りに携わっている人ならば仰天の発言も飛び出した。

なお、「P.T.」はそういった経緯で作られたこともあり、本来ならばゲームとしてきちんと調整を行うべきところを、あえて調整を行わずに残したという。他の人がクリアできたからといって、それと同じことをしてもクリアできないようなランダム要素は小島監督のほうでもきちんと認識し、だがそれをあえて残すことによって、訳がわからないという恐怖感の演出に利用したそうだ。これも「7780s STUDIO」という謎のスタジオで「P.T.」という名前で配信したからこそ出来たチャレンジで、これが小島プロダクションの作った「サイレントヒルズ」というタイトルならば絶対に出来ないことだと語った。

更なる「恐怖」の追及

墓場や廃墟が怖いのは当たり前。普段、日常生活でわざわざ墓場などに行く人もなかなかいないだろう。それよりも何もない綺麗な廊下、綺麗な浴室、そういう日常で普通にある場所が怖い、というものを作りたかったという小島監督。浴室や洗面台なども、汚す汚さないで相当もめたという。当初は風呂場にリサの首無し死体があったそうだが、それも結局は撤去することになり、現在の「P.T.」の形に落ち着いたそうだ。

そこまで恐怖を追及した作品を、いざ「MGV TPP」のチームメンバーにプレイさせようとしたところ、誰も協力してくれなかったという。

そこで上記画像のような専用のプレイルーム(?)を伊東氏のデスクの隣に作成したとのこと。それでも誰も来てくれなく、結局は小島監督自らが強引に「MGV TPP」のチームから人を連れてきて無理矢理プレイさせたという話題には、会場のあちこちから笑いが漏れた。

「MGV TPP」のチームのメンバーは恐怖へのプライドが高いようで、プレイをさせても露骨な叫び声が聞こえることはなく、むしろ「あそこバグなんじゃない?」などダメ出しの感想ばかりが多かったそうだが、伊東氏は自分のデスクの横で、「ひっ」というような押し殺した叫び声が時折聞こえることに、かなり満足したようだ。

会場では、「真の恐怖」を乗り越えた勇者たちだけが観ることが可能な「サイレントヒルズ」の予告動画を、特別に見せてもらうことができた。

また、その後には小島監督と共に「サイレントヒル」の最新作を手掛ける、映画「パシフィック・リム」の監督も務めたギレルモ・デル・トロ監督からのメッセージ映像も流れた。

デル・トロ監督は小島監督のことを「素晴らしいストーリーテラーだ」と高く評価し、「真に迫る映像表現、本物の感情、ドラマを見せてくれる」と熱弁した。そして「ゲームならば映画ではやれないようなことも出来るし、小島監督とコラボできることはたまらなく魅力的です。サイレントヒルズは、かなり刺激的で恐ろしいゲームにします。お楽しみに!」と、新作「サイレントヒルズ」に相当の意欲を持って取り組んでいる様子を覗かせた。

最後に國府氏は「もう『P.T.』の謎はほぼ解かれていますが、まだ完全に解けたか怪しい部分もありますので、ぜひダウンロードして挑んでみてください」と意味深な言葉を述べた。伊東氏は「今日、会場(東京ゲームショウ)で皆さんは色々な素晴らしいゲームを見てきたと思いますが、我々も皆さんを喜ばせていきたいと思います」と語り、小島監督は「今回はティザーということでこういう形で出しましたが、本編がこれより怖くないとおかしいですよね。猛烈にこわいものを出します。そのために特殊な構成も考えています」と、ファンに期待をして「サイレントヒル」の最新作を待っていてほしいと告げ、イベントは終了した。

KONAMI 東京ゲームショウ2014特設サイト
http://www.konami.jp/tgs/

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